2018年4月17日火曜日

祖父との対話 怪我をした本当の原因は?


私には86歳になる祖父がおります。
祖父は毎日、散歩に出かけるのが習慣です。

ある日、その祖父が散歩に出かけ、転んで怪我をしたとの連絡が母の携帯電話に入り、祖父の住む家へと向かいました。
祖父が転んだ時は、運良く近所の方が目撃していて、その近所の方が救急車を呼んで下さりました。祖父は顔に怪我を負っていましたが、命には別状がないという事で、搬送された病院で診療を終えた後に自宅へと戻りました。

母と私が祖父の家に駆けつけ、祖父に見舞いの言葉をかけた後に、母は転んだ原因を尋ねるために「なんで転んだの?」と祖父に尋ねました。
祖父はその質問に対して「私は年齢のせいで体力が落ちている、仕方のない事だ。」と言い、その後すぐに母は「軽い怪我で済んで良かった。今後は気をつけて歩いてね。」と言って、母と祖父の会話は終了しました。祖父は、家族に心配をかけた事と、転んでしまった事で落ち込んでいたようでした。

 
その様子を見ていた私は、祖父に対して事実質問を行いました。

私:じいちゃん、顔が腫れて痛そうだね。その怪我をしたのって昨日の何時か覚えてる?
祖父:散歩に出かけたのはお昼過ぎだったと思うよ。
私:昨日のお昼過ぎは晴れてた?
祖父:曇りだった。
私:どこで転んだの?
祖父:いつもの散歩コースで川沿いの道だ。
私:ちなみに転んでしまった時は、後ろに転んだのか、前に転んでしまったのかは覚えている?
祖父:たぶん後ろ側に転んだと思う。滑って体のバランスを崩した。




私と祖父の会話を聞いていた母が「えっ?前に転んだんじゃなかったの?顔に怪我をしているから、前に転んだと思っていた。」と驚いた顔で言いました。

私:滑ったって事は、足場が悪かったの?
祖父:歩道の工事をしていたから、工事現場の仮設の脇道を通った。
私:工事現場の脇道ってどんな状況だったの?
祖父:鉄板がひいてあった。
私:その顔の怪我って、何にぶつかったか覚えてる?
祖父:ぶつかったのは、川沿いの道に車両が入って来ないようにする為のコンクリートの置物だった。

私と母は、顏の怪我を見て、前に転んだと思い込んでいました。しかし、祖父の話を細かく聞いて行くことで、転んだ場所の足場が滑りやすかったこと、実際には後ろに転んだこと、そして顔の怪我は、転んだときに近くにあったコンクリートの置物でできたもの…という状況がわかってきました。私との会話を終えてから、母と祖父は、転んでしまった原因が体力の低下によるものではなく、足場が滑りやすかったためと気がついた様子でした。

後日、祖父の怪我が治ったので、私は祖父と散歩に出かけました。
祖父は私と歩く速度が同じで、姿勢もよく、祖父が転んでしまった原因は体力の低下では無いことがわかったので、私は祖父に「歩く速度も速いし、歩き方も普通だね。体力は落ちてないんじゃない?」と言いました。

その言葉を受けて、祖父はそっけない様子でしたが、祖父は現在も元気に散歩を続けています。

(メタファシリテーション基礎講座修了生 
坂本達也




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