2009年7月1日水曜日

水・森・土・人 よもやま通信 第14号「誘惑・障害に溢れるオラたちの実践の道~建設編~」

 


目次

1. 石と砂利そして技術者
2. 政府スキームの誘惑
3. 遠くを見据えて


今年の雨季は少し早くに到来する、かも。
というモンスーン予報が5月下旬から流れ始め、浮き足立つ黄門様やスタッフ、マーミディジョーラ村(以下、マ村)、ポガダヴァリ村(以下、ポ村)、ゴトゥッパリ村(以下、ゴ村)のオジサン、オバチャンたち。
しかし相変わらず暑い日が続き、予報も「やっぱりもう少し後だ」と毎日毎日言い続け、結局6月も、熱波に何度も襲われた。けれども、本格的に雨が降る前に、今までに堆積土除去作業をしたため池など灌漑設備を強化しなければならないので、気温が45度を超える日も、オジサン・オバチャンたちは資材の調達から人員のコーディネート、実際の土木作業に汗を流し続けた。

今号では、マ村の中でも山頂に位置する集落での作業について、特にご紹介しよう。

 

1. 石と砂利そして技術者

資材の調達と一言で言っても、かなりの重労働である。

コンクリート作りには、セメント、砂、砂利、そして砂利よりも少し大きめの石が必要であり、チェックダムや堤の壁には鉄筋がいる。それぞれが何十キロ単位で用意しなければならないのだが、ほとんどの村はトラックが入っていけるような場所ではない。この集落もしかり、山の麓に積み上げられた砂やセメントを担いで、約1キロの山道を登っていかなければならない。



コンクリートを固める時には、気泡を抜くための機械(掃除機くらいの大きさ)を使うのだが、これも大人二人がかりで担いで運んでいく。オバチャンたちは、砂をかごに入れて頭に載せて山を登る。
オジサンたちは、セメントの袋を天秤棒に下げて、あるいは肩に担ぎ上げて、岩がゴロゴロした山道を歩く。
「オー、ホイ」という掛け声を麓から山頂へ向かって、あるいはその逆に投げかけ、お互いを鼓舞しながら、半日以上かけて資材を運び込むのだ。

そして、早速作業を始めるとの連絡を受けたので、様子を見に行ったある日のこと。
「ラマラジュさん、見てください」
と、村の青年ガンガイヤが嬉しそうに、砂利と石の小山を指差す。聞けば、近隣の村から調達した砂利と石は質も大きさも悪く、これでは特に基礎となる部分のコンクリートには適していないと判断し、自分たちで岩を砕いて作ったとの事。しかも、作り方も知らず道具も持っていないこの集落の人たちは、何人かが砂利作りに長けた隣の州にいる同じサワラ語を話す村まで行って、道具の使い方から石の選び方を教わってきてから、借りた道具でこれらの砂利を作ったのだ。

「岩は、明るい灰色でほどよく割れやすくないといけないんだよ」

「大きさも、ほら、こうやって土台の枠をしっかり固定して、ハンマーで思いっきり叩くと、きれいにそろうの」

「見てみて、タコができちゃった」
と、自分たちで新しく技術を身に付け、必要な材料を用意したという自信と嬉しさに満ち満ちた顔で報告してくる。
また、石材を扱ったり壁塗りをする職人は、遠方から腕の良い職人たちを連れてきて、作業が終わるまでの期間、寝場所と食事を無料で提供する、と言う。
「この人たちは、セメントを無駄にしないし、短時間でパパッと素早く、しかもきれいに仕上げてくれるんですよ」
と、自慢する村の人たち。




これが、政府による建設作業だったりすると、お役人が用意した資材で、お役人が連れてきた職人によって、お役人の監督の下、作業が進められ、村の人たちは単なる賃労働者に過ぎない。
質が悪くても、技術がヘタクソでも、自分たちに何かを言う自由は無く、ましてや「労賃がガッポリもらえるなら、どんなモノでも作りまっせ」という根性が見え隠れしており、作業過程の効率化など考える気もさらさら無い。


2. 政府スキームの誘惑

この集落でも実は、資材を調達する前に、政府スキームでこの建設作業をしないかと役人がやって来ていた。
「どうしよう」という電話相談を受けた時、黄門様は一言、
「これは、お前たちの事業じゃ。政府スキームでやりたいというならそれで良し。ソムニード(現ムラのミライ)とやりたいというなら、活動計画通りに進めなさい。ただし、政府スキームでやると決めて、役人の都合で結局いつまで経っても始められなかったり、キャンセルされてしまっても、ワシらに泣きついて来んでおくれよ」
と、村の人たちの判断に任せた。

農村での灌漑設備の建設や修繕は、中央・州政府機関が様々な政策の下で各地で行っている。言ってみれば、村の人たちが何の作業をしたいのかがハッキリしていれば、財源の選択は手広くあるのだ。
結局、村で集会を開き、活動計画で決めた作業は全てソムニードと実施する、と決めたわけだが、まぁ、10円でも時給が高い仕事があれば、誰だってそちらに飛びつきたくなるもの。
ただ、時給が少々下がろうとも、「オラたちのオラたちによるオラたちのための活動計画」
を、「オラたちが実行しよう」と決めたのが、青年ガンガイヤが率先する集落の人々である。


この青年ガンガイヤは、去年10月ごろに活動計画を作り始めるための集会を開いているときに、マ村のリーダー、ダンダシに見出され、「この青年を研修にこれから参加させなかったら、集落のリーダーは罰金500ルピー」と、集落全体を一喝した経緯があった。(※よもやま通信10号を参照)
それ以降、この集落のリーダーは罰金を払うどころか、新しい青年リーダーが目覚しく成長しているのだ。


3. 遠くを見据えて

そもそも、ソムニードが目指しているのは、村の人たちが自分たちで課題を探り、それに基づいて活動計画を作り、それぞれの作業に必要な資材や資金を自分たちで確保し、実施して維持管理していくことである。

まだまだ千里の道の第一歩、いや、半歩を踏み出したばかりではあるが、少なくとも、村の人たちは何をしていかなければいけないのか、気がついてきている。

この集落のオジサンがポツリと言った。

「どこに何の設備がどんな大きさで要るのか、いつからいつまで何の作業をしなくてはいけないのか、それにはどれくらいの労働や資材が要るのか、そして誰がするのか、こうやって、これからも計画を立てていかないと、森を育てて水を溜めて使っていくのは難しいねぇ。しかも、5年、10年と続けていかないと」
ナントこのオジサン、研修には一切参加しないで、ガンガイヤ始め研修に参加した村人から内容を聞いてきているだけなのに、全てを理解しているのだ。

「だからキョーコさん、この草の根が終わってもまた事業をやりましょうよ」
と、抜け目無く、資金確保を企んではいるのだが。

そんなこんなやり取りや背景もありながら、この集落では、貯水池の水を田畑へ放水する際に利用する水門と、池に大量に水が溜まったときに放水する堤を、ガンガイヤが采配を振り、時々冗談を飛ばしながらみんなを力づけ、約1ヶ月かかって建設した。
さすが、自分たちで連れてきた職人だけあって、仕上がりがとても綺麗だ。
「いつでも雨よやって来い!」
と、自慢の出来ではあるのだが、6月末になっても連日カンカン照りで地面は乾ききっている。

さてさて、この後は貯水池へ水が流れ込む水路を補強する作業に取り掛かり、そしてモンスーンがやって来ると、植林が始まる。

ポ村もマ村も、色々な誘惑に惑わされ、障害にぶち当たりながら、建設作業を続けているが、それはまた別の話。

そして次号、植林編ではどんな逸話が出てくるのか!?

乞うご期待!


4. 注意書き

黄門様=和田信明。特定非営利活動法人ソムニード(現ムラのミライ)の代表理事。
ラマラジュさん=ソムニード・インディアの名ファシリテーター。過去に同様の建設事業に携わったこともあり、用途別にコンクリートを作る比率も知っているが、今回はガンガイヤたちから効率的にコンクリートの材料を混ぜる裏ワザを教わっていた。
キョーコさん=前川香子。灌漑設備の建設のイロハを今回、村人から学んだ。そして、過去50年間の記録を塗り替えたと報じられた酷暑を同時に体験。暑いなんて単純なものではなかったこの夏。