2016年8月30日火曜日

「あの研修のインパクト、あった?」がわかる、たったひとつの質問


皆さん常々お感じのことと思うのですが、事実質問の神髄は、講義だけではなかなか伝わりにくいものです。ですから、現場に行った際には、できるだけ自分でやってみせることにしています。
今回は、ミャンマーで活動している日本のNGOの現地スタッフに研修した際に行った、その手のデモンストレーションのひとつを紹介します。

そのNGOは、農村の女性たちを相手に母子保健についての研修を長年実施してきました。現地スタッフたちが、少し前に行った母子保健研修の参加者の家を訪ねて、研修のインパクトをモニターする現場に私が同行した際のことです。

彼らは、研修の内容を覚えていますか」、「その後実践してみましたか」など教わったばかりの事実質問を使って研修の効果を聞き出そうと努めるのですが、あいまいな答えや、こちらに迎合したような受け答えが多く、本当にインパクトがあったかどうか今一つはっきりしません。
そこで「じゃあ今度は私が少し聞いてみましょう」と、その家のお嫁さん(仮にAさんとする)に聞き始めました。

私「その研修には、一人で行きましたか?」
A「隣の人といっしょに行きました」
私「帰りもいっしょでしたか?」
A「はい、いっしょでした」
私「帰り道で、その人と研修のことについて何か話しをしましたか?」
A「いいえ、特に」
私「家に帰って何をしましたか?」
A「食事の準備を始めました」
私「家には誰がいましたか?」
A「夫と義母がいました」
私「研修のことについて何か聞かれましたか?」
A「いいえ」
私「あなたから何か話しましたか?」
A「いいえ」
私「他の誰かに話したりはしませんでしたか」
A「上の娘には、飲み水を清潔に保つ必要性について少し話しました」

同行した日本人スタッフのEさんはこのやり取りの意味がよくわかったらしく、他の現地人スタッフに「本当によかったのなら、誰か他の人に話すよね」などと私に代わって解説してくれました。

次に行ったところでは、何人かがこれを真似て同じように聞き込んでいったのですが、他の人に話したという例にはほとんど出あえなかったようです。Eさんたちは少々がっかりしたものの、これを契機に研修全体のやり方の見直しを始めたそうです。その後は、このことに限らず、これまでにも増して、研修の効果を上げるための工夫を続けているとのことです。

「研修(講義、授業、イベント、映画、コンサートなどなど)は、どうでしたか?」「よかったですか?」と聞くのではなく、「帰り道に誰かとそれについて話をしましたか?」「その後誰かに、例えば家族や友人にそのことを話しましたか?」と聞いていくというのが、インパクトを聞き出すための鉄則です。
答えが「いいえ、特に」だったら、それまでです。

逆に「はい」だったら、「誰にですか」「いつですか」「何をどんな言葉で伝えましたか」「その方は、どんな反応を見せましたか」などなどと具体的に聞き込んでいくことで、その人が何にどんなインパクトを受けたのか、さらには、何をどう伝えれば、その感動や学びをその場にいなかった他者に伝えることができるのか、などなども具体的に学ぶ機会にもなります。

実は私は今週末からまたアフガニスタンでの稲作技術普及プロジェクトの研修のために、イランに行くのですが、次回の研修のテーマのひとつが「農民から農民への普及(farmer to farmer extension)」なのです。そこでは、上記のような質問術を伝えながら、「技術研修に参加した農民が他の農民にも思わず話したくなるような研修とはどんなものだろう」と問いかけていくことになるでしょう。


中田豊一 ムラのミライ 代表理事)



http://muranomirai.org/trg2016cfindia
講師の技を見て、マネて・・・現場での研修は効果大

2016年8月16日火曜日

もしかして、浮気?

みなさんお待ちかね、クイズで対話型ファシリテーションシリーズ。
今回は「恋人との対話」の場面です。

恋愛に悩みはつきものですよね。
でもその悩み、あなたの思い込みではありませんか?
今回は、ある恋人達を対話型ファシリテーションで「すれ違い」から救いましょう!

最近、恋人であるB男さんから連絡が途絶えている・・・と不安でいっぱいのA子さん。
心の中は
「最近なにか悩んでいる様子だったなぁ。」
「他に好きな子ができたのかな。」
「このまま自然消滅してしまうのかな。」
とネガティブ思考に陥ります。
でもめげてはいけません。
そんな不安を押し殺し事実質問で彼の心をのぞいてみましょう。

<問題>
夜19:00すぎ、A子さんは携帯をとり、B男さんに電話をかけます。
「もしもし。」
B男さんが電話にでました!

さぁ問題です!
B男さんに最初に投げかける言葉は次の3つのうちどれが適切でしょうか。

①「久しぶり!なんで連絡くれなかったの?」

②「久しぶり!最近忙しいの?」

③「久しぶり!今何してたの?」



正解は…………
③の「久しぶり!今何してたの?」でした!

<解説>
①の「久しぶり!なんで連絡くれなかったの?」は乙女なら誰もが心のどこかで思ってしまうもの。
しかし声に出してはいけません。
”なぜ?”と答えを強要されると彼の口から出てくるものは事実ではなく言い訳です。

②の「久しぶり!最近忙しいの?」は一見事実質問にみえますよね。
”なぜ?”と聞いていないし、忙しいか否かはyesかnoで答えられる。
しかし!最近って…いつですか?今日か昨日か、わかりませんよね。
また、何について忙しいと言えばよいのか、どんな状態を「忙しい」というのか、B男さんは困ってしまいます。
そんなB男さんから出てくる言葉は「まぁまぁ」や「ぼちぼち」です。
事実質問する際は”時系列”と”細分化”に注意しましょう!

③の「久しぶり!今何してたの?」という質問をされると、B男さんは考えることなく、受話器をとる前の行動を思い出します。
この事実質問を最近元気がなく連絡をくれなかったB男さんが悩みの根源をみつけたり、きっかけや原因を思い出してもらうためのエントリーポイント(対話の導入部)にし、どんどん時系列をさかのぼっていきましょう。

B男さん:「もしもし。」
A子さん:「久しぶり!今何してたの?」

この続きは次回に致しましょう!






(ムラのミライ インターン 三谷遥来



★迷ってしまった方、間違ってしまった方はブログの過去の記事や書籍で復習しましょう!

→さらっと読める、メタファシリテーション(対話型ファシリテーション)の入門本。
対話型ファシリテーションの手ほどき」 (700円+税 2015年12月発行)

→丸1日で本格的にメタファシリテーション(対話型ファシリテーション)手法を学ぶセミナー
メタファシリテーション基礎講座

http://muranomirai.org/basictrg201605

2016年8月9日火曜日

メタファシリテーション体験記 おすすめセミナーの効果@我が家

「ムラのミライ」インターンとして活動し始めた私、三谷は先日、7月18日に行われたメタファシリテーション基礎講座に初めて参加させて頂きました。
当日の参加者は私を含めて4名。他の受講者の方々は以前に参加経験があるということで、初心者の私は何度も先輩方に助けて頂きました。
初めての参加だったのでとても不安でしたがセミナー中は終始和やか。私の不安は「ムラのミライ」オフィスの扉を開けた瞬間に飛んでいってしまいました。

午前中は先生からの説明からスタート。午後は練習、練習、繰り返し練習。
ファシリテーターは身の回りにあるものから休日の過ごし方、改めたい習慣など、様々なシチュエーションの中から「事実」だけを引き出していきます。
質問される側は、その時の状況を思い出し質問に答えていきます。すると脳内でどんどん発生してくる言葉、”そういえば”。
「そういえば最近こんなことあったな。」
「そういえば最近あんなもの買ったな。」
「そういえば最近ネットでこんなこと検索したな。」
質問されなければ思い出しもしなかった状況から事実が出てくる出てくる!その場ではモヤモヤしていたことも帰宅後入浴中に 「はっ!」 と、時間差でやってきた事実もありました。その気付いた事実に潜む解決の糸口。人から言われるのではなく、自分で気付くからこそ自分で変化を起こせるのだというメタファシリテーションという手法の素晴らしさを基礎講座で体感することができました。

セミナーでは上手く事実質問ができなかった私。何事も上達には練習が必要不可欠!ということで早速、練習してみようとまず身近な自分自身と母に使用してみることにしました。
我が家の永遠の悩み、それはずばり「服の断捨離ができない!」
季節や流行の流れと共に増え続けてきた服を目の前にして
「最近いつ着たかな?」
「何処に着ていったっけな?」
「その前はいつ着た?」
「何処で買ったっけ?」などと、問いかけていきました。
すると、一年以上着ていない服や、以前に購入した同系色で似た様な服の存在が明らかに!
逆に捨てようと考えていたけども以前は頻繁に会議で着ていたことを思い出し、フォーマル用にとっておこうとクローゼットの前列に昇格した幸運な服もいました。
またこのプチ・メタファシリテーションで整理整頓ができたことに加えて、喧嘩がなくなりました。以前は私が「もう捨てたらー?」と提案していたので母が導き出した答えではありませんでした。
となると、後々必ず出てくる厄介な「捨てなければよかった」問題。我が家でこの問題をめぐる論争は夕飯に響くほど深刻です。しかし今現在この論争が起こっていません!
今回は家庭内という小規模な問題でしたが、大きな規模、例えば国際協力や経営の場で似たような問題を解決しようとした場合、メタファシリテーションを使用した結果5S(整理・整頓・掃除・清潔・しつけの5つの頭文字Sを集めた経営管理法)に結びつき問題が改善した!なんてことになるかもしれません!

メタファシリテーションは私のようなささいな家族問題から社会問題まで、ありとあらゆるシチュエーションに応用できるものだと感じました。私もまだまだ初心者。上達に向けて身近な問題をテーマにして練習していこうと思います。


(ムラのミライ インターン 三谷遥来






読み切り形式でどこからでも読める、対話型ファシリテーションの入門本。
対話型ファシリテーションの手ほどき」 (700円+税 2015年12月発行)


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