2021年12月15日水曜日

子育て支援団体の読書会に潜入!

先日、メタファシリテーション講座ステップ1に受講された追立さんより読書会のお誘いをいただき、参加してきました。
長久手子育て協力隊のイベントとして「対話型ファシリテーションの手ほどき」を題材にした読書会です。

参加者が本を読み、お互いの感想を話し合う、というのが私の読書会のイメージでした。 

しかし、実際は以下の方法で行われました。 

  • 各チャプター(4-5ページ)にわけ、11チャプターを読む
  • 読んだ内容を用紙3枚程度にまとめる
  • 全体で各チャプターの内容を発表・説明

その後、事実質問を作る練習を3人のグループで行い、事実質問の練習をするワークも行いました。

読んだ内容を自らの言葉でまとめ、発表することで理解が深まるのはとても良い方法。 

参加者からはこのような声もいただきました。

「普段、自分がどれだけ思い込みばかりで話していたか認識できた」
子どもには、なぜ質問ばかりしていたが、なぜがダメな理由がわかった

事実質問は難しいし、質問がでてこなかった

シンプルな手法ですが、容易に習得できる技術ではなく奥深い対話術であるメタファシリテーション。そのため、半年から1年以上かけて研修を行うことも近年増えてきました。

兵庫県西宮市のNPO法人a little(ア・リトル)地域で助け合う子育ての仕組みづくりをおこなうなど、以前からムラのミライは子育て支援のメタファシリテーションを行っています。

教師であり、子育てや教育に携わる追立さんはこのようにおっしゃっていました。

子育てをとりまく環境(職場、地域など)をどのように子育てにつなげていくか模索しており、職場や地域にメタファシリテーションのように事実に基づいたコミュニケーション支援が浸透していくことが必要。

家庭内でメタファシリテーションを使えるようになりたい!という声は、私が担当する講座に参加する方もよく言われます。
20221月から、子どもとの対話にフォーカスした講座を開催します(下記)。興味があるかたはチェックしてみてください!

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー) 


関連講座

 
 


 

2021年12月8日水曜日

「子どもが安心して話せる大人を増やそう」プロジェクトの始まり

始まりは子育て中の親を対象にした小さな子ども向けの講座

2016年から2019年くらいまで、親しい友人から「子育てに使えるようなメタファシリテーションを教えてほしい」と言われたことをきっかけに、子どもをもつ親のためのコミュニケーション講座を試験的に岐阜県や京都府で何度か開催しました。

その間、2018年から3年間、兵庫県西宮市で、NPO法人a littleと一緒に、妊婦とその家族、そして小さな子どもを持つ親、その支援者向けのコミュニケーション講座を実施してきました。

このような講座を受講してくれた小さな子ども(10歳以下)を持つ親たちからは、「子どもの話が聞けるようなった」「子どもの方からどんどん話してくれるようになった」などの反響がありました。

また支援者からは、「支援者も支援される側も楽になる対話を学べた」などの声が聞けました。その一方で、思春期の子どもを持つ親からは、「このやり方では子どもとのコミュニケーションは改善しない」という声も寄せられました。



 中田代表による思春期コミュニケーション講座での「2つの鉄則」

その思春期の親を対象とした「思春期の子どもとのコミュニケーション」連続講座を2019年以降始めたのが、メタファシリテーション手法を編み出した中田豊一(ムラのミライ代表理事)です。自身の子育てや身近な人々の子育てについてのさまざまな相談に、メタファシリテーション手法で対応してきた経験を元に組み立てたのがこの連続講座でした。

この講座に参加した親たちに、講座で教わった通りに子どもへの対応を変えると、子どもとの関係が劇的に改善したという成果が現れ始めました。中田はこの講座の最初に必ず「理屈はともかく“2つの鉄則“をやってみよう。必ず相手との関係が変わる」と伝えます。それは、次の「2つの投げかけをやめる」ということでした。

 「なぜ○○できなかったの?」

 「○○すればいいのに」

10代の子どもを持つ親として、またあるときは記録係として、私はこの中田の講座に繰り返し参加し、どうやって親の子どもへの対応を変え、行動変化につなげていくのか、そのやり方をどのように親に伝えるのかを学びました。

そのような過程を経て、私自身も、思春期の子どもや身近な人とのコミュニケーションについての講座の依頼がPTAなどからあれば受けるようになりました。そのような講座は、中田のように、「2つの鉄則」から始めるようにしてきました。

単発の講座ばかりではありますが、教え方や紹介する事例は、回を追うごとに、参加者の理解と実践を助けるようなものになってきた、との手応えを感じています。

 

講座参加者の発言に20代のころの自分が蘇る

2020年から続くコロナ禍で、対面での講座はなかなか実現せず、しばらくはオンラインでの講座が続いていましたが、この202112月、久しぶりに実現した対面での講座を実施しました。ある地方自治体が開催した「身近な人とのコミュニケーション」講座では、30名ほどの市民が参加しました。

その講座の最後に参加者からのコメントや質問を受ける時間を設けたのですが、その時、ある20代の女性がこうコメントしました。

 「なぜ○○できなかったの?」、  「○○すればいいのに」講座の中で「この二つを最近誰かに言ったことはありますか?」と講師に聞かれたとき、私はハッとしました。私は、誰でもない「私」自身に、昨日も今日も「なぜ○○できなかったの?」や「○○すればいいのに」と言っていたのです。そして、この2つの言葉が私自身をずっと苦しめていたことがわかりました。
 私が親から言われ続けてきたことを、大人になった今、今度は心の中の「私」が私に言い続けて、私をとても辛くさせていることに気づきました。今日の講座を受けて、もし私がこの2つの言葉を「私」に言うのをやめたら、すごく楽になるんじゃないかと思いました。』

少し俯き加減で発言するこの女性の顔を見ながら私が気づいたのは、目の前の彼女はまさに20代のときの私自身だということでした。なぜ私が2016年から試行錯誤しながら、子どもや身近な人とのコミュニケーションをテーマにして講座を続けてきた理由がわかった瞬間でもありました。

私自身が、この
2つの言葉に長い間苦しめられてきたのです。長い時間をかけて克服したつもりでも、時々フラッシュバックのように「○○できないだめな私」という、「根拠なき自己嫌悪の悪循環」に陥ってしまうことがあります。私も、2つのNG投げかけを自分にするのをやめて楽になりたかったのです。そして楽になる人を1人でも増やしたかったのです。

 私が当事者「子どもが安心して話せる大人を増やそうプロジェクト

 現在ムラのミライでは、子ども・若者の支援に関わる20代・30代の支援者に向けて、「子どもが安心して話せる大人を増やそうプロジェクト」を準備中です。

「なぜ○○できなかったの?」、「○○すればいいのに」の2つの投げかけをやめてみよう、子どもの話が聞ける質問をしてみよう、という教材作りからスタートさせる予定です。
メタファシリテーションの技術をわかりやすく伝えることで、子どもの話が聞ける大人を1人、2人と増やしていこう、というプロジェクトです。

この2つの投げかけに苦しめられた10代、20代の「私」を1人でも減らしたい。子どもの話を聞ける大人が増えることで、楽になるのは子ども・若者たちだけではないと思います。
私も含め、多くの大人が、子どもの話を聞けるようになれば、子どもの頃から苦しんできた言葉の数々から自由になる、そんなヒントが得られるはずです。言うなれば、子どもが安心して話せる大人を増やそうプロジェクト」は、むかし子どもだった「私」が当事者です。話を聞いてもらえなかった多くの大人も「当事者」となるプロジェクトなのです。「むかし、子どもだった大人」も当事者として結果として支援されるような、「支援する側」にも「支援される側」にもなるプロジェクトです。

これから折に触れてプロジェクトの内容や進捗をお伝えしていく予定ですが、ぜひ1人でも多くの「むかし子どもだった」たくさんの大人の参加をお願いしたいと思っています。

原康子 ムラのミライ 研修事業チーフ)

 


2021年11月11日木曜日

「気づかせてやろう」と前のめりにならず、相手の話を聞く

自分が対話相手に勧めたいことを、質問の形で気づかせようとしてしまう。
これは、メタファシリテーションを学び実践し始めた方によくある、つまずきポイントです。

実は私もメタファシリテーションを学び始めた当初は、同じような失敗を繰り返していました。
「この人はわかってないから、事実質問を使って気づかせてやろう!」
こういった意図で事実質問をしても、うまくいった事はありませんでした。

メタファシリテーションは「相手の話を聞く技術」です。

1人では言語化できなかった出来事の1つ1つの過程を、事実質問により思い出させることができ、また聞き手も相手の事実を知ることができます。
この過程があってこそ、対話相手が課題に気づき、解決に向けて動き出すのです。

では、これに関する事例を紹介させてもらいます。


シチュエーション:ある製造業の人事部の部長と部下のAさんとの会話。

対話事例1

部長:明日の1 on 1面談会議の資料は作った?
Aさん:今作成中ですが、見ていただけますか?
部長:(資料をチェックし、追加して欲しい内容がある。直接指示するより、事実質問で気づかせてみよう・・・)過去の面談実績について、資料に入れるよう誰かに指示されたことある?
Aさん:いや、されたことはないです。
部長:じゃあ面談方法の補足資料を入れるように誰かに指示されたことある?
Aさん:いや、それもないです・・・・両方追加しておきます!

→部長の質問は事実質問であるものの、話を聞く質問ではなく、Aさんは「指示された」と感じているかも。

対話事例 2

部長:明日の1 on 1面談についての会議の資料は作った?
Aさん:今作成中ですが、見ていただけますか?
部長:(資料を見る)・・・いつから作成し始めたの?
Aさん:昨日夕方、課長に指示をされた後に作成し始め、明日までに仕上げる予定で した。
部長:要点がまとまっていて、とても見やすい構成だね!資料作成にあたり、テンプレートを何か使ったのであれば教えてもらえる?
Aさん:はい、異動前にいた営業部で使用していたテンプレートを使いました。
部長:今度他のみんなにも共有しといて。ちなみに、人事部で使用しているテンプレートがあるのは知っている?
Aさん:はい、課長から4つほど共有していただきました。
部長:4つもある事、知らなかった(笑) 4つの違いは課長から説明はされたの?
Aさん:社外用と社内用の会議資料用テンプレートです。
部長:そういうことね!社内用のは使ったことある?
Aさん:はい、今月の月例会議の際に使いましたが、その時は先月にBさんが作成した月例会議資料を元に作成しました。
部長:じゃあ、今回の1on1面談会議の以前の資料は読んだ事はある?
Aさん:まだなかったので、同期のZ君に見せてもらうようメールをしたところです。それを見て資料を仕上げるので、またチェックしてください!

→ 資料を作成する過程を思い出す質問をすることで、Aさんの事をより知ることができた。また、余計なアドバイスをしなくても済んだ。


繰り返しになりますが、メタファシリテーションは聞く技術です。
実践練習をする際、まずは事例2のように相手の話を聞く事実質問を心がける事をオススメします。

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー) 


関連講座

「新卒が1年で辞める理由がわからない…」 悩める人事部のためのメタファシリテーション

 


2021年9月24日金曜日

「聞く」ことは、職場の人間関係を良くする方法

製造業で働く浅井さん(仮名)は、3年ほど前に講座を受講されて以来、メタファシリテーションを使い職場で良好な人間関係の構築に取り組んでおり、その成果やインパクトについて定期的に進捗報告をしてくれています。

「納期に追われ、みんなが病んでいき、職場に活気もなくやばいんです!」

浅井さんが講座を受講時に話してくれた職場の問題です。

 

具体的には、

      トップダウンの社風が根強い

     職場改善をしようと集まって意見を出し合うものの、その場しのぎの意見ばかりで、会議が終わったあとのアクションに繋がらない

     部下を思って提案をするものの、響いてないみたい

 

課長である浅井さんは上司とのやりとりにも苦労しつつ、部下とのやりとりにも悩んでいました。
浅井さんいわく、部下には仕事の指示は明確に伝え、ミスした時は「なぜミスをしたのか」をしっかり問いただすことで同じミスをしないように指導してきたと。
部下と良好な関係を作るために、雑談をしようとするも、あたりさわりのない会話で終わり、本音で話してくれているのかわからないともおっしゃっていました。

 

では受講前と受講後で、浅井さんの質問がどのように変わったのでしょうか。

 

シチュエーション:昨日納期であったが、まだ納品していない部下の渡辺さんとの会話

Before

浅井:まだ納品してなかったの?

渡辺:はい、すみません。

浅井:なんで遅れたの?

渡辺:B社とのプロジェクトに関する業務で忙しく、納品先のA社は比較的納期に寛容なので後回しにしています。

浅井:なんで後回しにするの?納期守るのは当たり前でしょ!?A社も大事な取引先だから、先方が大丈夫っていっても約束は守らなきゃだめだよ!

渡辺:はい、気をつけます・・・・

 

After

浅井:昨日の作業は朝から何してた?

渡辺:8時に出社後、B社との打ち合わせのあとに、見積書作成などしていたら15時くらいになってしまって。16時納期指定のA社に納品するパーツのチェックをしていたところ、破損箇所が見つかって。

浅井:その後どうしたの?

渡辺:A社の担当者の松田さんに電話して事情を説明したところ、ちょうど在庫を保管する場所がないから、来週月曜日納品でも良いと言われました。

浅井:そうか、それならよかった。最近オンラインでの打ち合わせが増えたけど、松田さんに最後に会ったのっていつ?

渡辺:先月末の31日です。実は、松田さんとはオンラインでの打ち合わせは行っていないんです。回数は減らしても、会って話したいと。会って話すと雑談することもできて、先日会った時に、こんな話もしていたんです。」

 

浅井さんは失敗を重ねながらこのようなやりとりを続け、少しずつコツをつかんでいったようです。
結果、部下から話に来てくれたり、仕事の提案をしてくれることも増えたようです。
関係性が良くなるだけではなく、それによってお互いモヤモヤしとした気持ちを抱えず仕事が効率的にできてきたとおっしゃっていました。

浅井さんが自らのコミュニケーション方法を見直し、気づいたことを教えてくれました。

「今までは相手の話を聞いているようで、聞いてなかった。相手の状況を聞くことが、”言い訳”だとおもっていたけど、実は違った。事実を聞くことで、自分が知らないこともたくさんあったし、相手が課題整理できるのだと気づいた。」 

 

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)

 

 

海外の活動地での筆者