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2025年11月10日月曜日

多職種で連携するために

ムラのミライの山岡です。今回は、講師派遣先である全国小規模保育協議会 医療的ケアチャプター様のご協力をいただき、保育者向けのメタファシリテーション体験セミナーについて、研修内容や参加者の声をご紹介します。


多職種で連携するために

まだ夏の暑さが残る9月、私は神戸市にある(特活)こどもコミュニティケアを訪問しました。こどもコミュニティケアさんも所属する全国小規模保育協議会 医療的ケアチャプター様から講師派遣の依頼をいただき、メタファシリテーション研修を行うためです。
研修は90分で、全国組織であるため対面とオンラインハイブリッドでの開催でした。参加者は、小規模保育施設で医療的ケアが必要な子どもたちの保育を行っている施設管理者、保育士、看護師、言語療法士など約30名。みなさん大変熱心に聞いて下さり、ワークにも主体的に取り組んで下さいました。


子どもの権利とメタファシリテーション

研修では、以下のような5つの内容をお話ししました。

・子どもの権利の紹介

・コミュニケーション・セルフチェック

・メタファシリテーション3つのルール

・事例紹介(管理者と保育士が、現場での課題を振り返る編)

・練習問題

ムラのミライでは、子ども・子育て支援者を対象とした研修は、まず「子どもの権利」の紹介から始めています。それは、子どもの権利を知っていただき、子どもの権利を尊重する手段の一つとして、メタファシリテーションを活用して欲しいと考えているからです。



次に、自団体のコミュニケーション・セルフチェックには、3月に発行した『子ども・子育て支援活動サポートブック』のチェックリストを利用しました。みなさんの組織では、いくつチェックが付くでしょうか?チェックが2つ以上付いたという方は、サポートブックに他団体の事例が掲載されていますので、ぜひ読んでみてくださいね。



保護者の話が聞けないのは、「人手不足」が原因?

事例紹介では、管理者がスタッフの課題を整理できなかった事例と事実質問への置き換え例をご紹介しました。

<登場人物>

・スタッフ(保育士3年目):保護者から子どもの話をうまく聞けないと悩んでいる

・マネージャー(保育士10年目):管理責任者、現場での課題を知り保育の改善に繋げたい

下図のような会話、みなさんの職場でもないでしょうか。マネージャーは、『人手不足だけが本当に課題なのか』と疑問を抱きながら、その場を離れてしまいます。

 さて、ここでクイズです。仕事で「保護者(クライアント)の話が聞けなくて…。」と悩んでいる部下の話を聞く時、何を質問すれば、部下がその時の出来事を思い出して答えてくれるでしょうか?

1. なぜ、聞けないの?

2. どんなふうに難しかった?

3. 最近、いつ保護者(クライアント)と話した?


・・・答えは、3番です。1番のように、何があったかを聞く前に『理由』を聞いてしまうことで、忙しいから、人手不足だからなど、言い訳を引き出してしまいます。2番は、相手の認識から質問することで、何が起きたかが見えにくくなってしまいます。そこで、「最近、いつ〇〇した?」と実際に起きた出来事(事実)を思い出してもらいます。そして、「誰と何を話したのか、その前にも同じようなことがあったか」と時系列で聞いてみると、相手と一緒に課題を整理して、振り返ることができます。

最後の練習問題では、保育現場での支援者同士の会話の中から、事実を聞く質問と事実を聞けない質問を答えるドリルに取り組んでいただき、質疑応答に移りました。 参加者からは、保護者に子どもの状況を聞きたかった事例や、支援者間で情報共有をする方法などについてご質問いただきました。

また研修後、参加者から感想や実践報告をいただきました。『自分の質問の癖』に気づいた方や、保護者や子どもたちの状況を知るために、早速「いつ」質問を使い、『相手の状況把握』に役立てている方もおられました。今後も、保育や子ども支援の現場でこうした研修ができれば嬉しいです。ご参加下さった皆様、ありがとうございました!



<参加者の声>

・今回の研修で尋問にならない聞き方や、思い出しながら聞き出していく方法がとても勉強になった。医療機関受診のタイミングやこうした方がいいよなと思っていても、すぐに解決策やアドバイスをせず、話を聞きながら一緒に整理して、保護者が主体的に受診行動をとれるように関われたらいいなと感じた。

何を聞くべきなのか、把握しておくべきことは何なのかを自分の中で前もって考えておくことも必要であると思うし、問題を決め付けたまま質問を重ねるのではなく、相手と同じ目線で事実を確認していく中で、一緒に課題を見つけられるような姿勢も忘れずに持っていたいと思った。

・トラブルや課題のある話では、なんで?どうして?と聞きたくなるが、それを、いつ?の問いに変えることで、答える側は事実を思い出しやすくなることを知った。実際に演習する中で、すべての質問を「いつ?」に変えてみると、答えがはっきりと浮き出し、答えやすくなることを体験できた。

・講座の中で、講師の方から実際に事実質問を投げかけられたとき、とても答えやすく、そこから詳しく質問をしていただくことで思い出す内容がはっきりとしていくことを実感した。また、事実を知っていく質問の投げかけが、尋問となってしまわないよう、要所要所で相手の言葉を復唱し、共通理解につなげていく大切さを改めて学んだ。

・今回の研修で自分の質問の仕方ひとつで、相手から得られる答えが全然違ってくること、相手との関係性に大きく影響が出ることを学び、実際に保護者とのやり取りで実践してみた。
園での食事量が少ない子どもの保護者に「何時に朝ご飯を食べている?今朝は何を食べた?どれくらいの量を食べた?昨日は何を食べた?」と質問することで、朝ご飯を食べる時間が遅く、どのメニューであってもたくさんの量を食べていることがわかった。そして、この子どもはお腹があまり空いていないから園でのお昼ご飯が進まないんだなとアセスメントすることができた。

・特にスタッフへの言葉かけは難しく感じており、スタッフの困りごとなどを知りたくても、情報が少なくわかってあげられなかったことが多かったと思う。質問の仕方を変えてみるなど、本日教わった手法を取り入れてみたい。

・相手の話を聞きながら、すぐに自分なりに解釈してしまうこともあるなと気が付くとともに、俯瞰して聞く練習をしていきたいと思った。自己肯定感に配慮するというところでは、改めて大人も子どもも個人は尊重されていることを実感した。

・メタファシリテーション手法を意識して職場内の対話が進むと、お互いの自己肯定感や達成感を保ちながら、気持ちよく仕事ができると思う。まずは自分が実践できるよう今回の学びを少しずつでも活用していきたいと思う。

・メタファシリテーションの3つ目のルールに『求められないアドバイスはしない』とあり、アドバイスまでいかなくても、相手の話を遮ってしまうことや、先に提案をしたり、話をかぶせてしまったりする癖があるので、話したくなっても意識して我慢し、相手の主体性を大切に会話するようにしたいと思う。

・「メタファシリテーション」という言葉は、今まで私生活であまり聞かない言葉で、研修を受けるまでは具体的にどんな話が聞けるのだろうかと思っていた。実際に研修を受けてみると、とても身近な課題内容でした。特に日頃の子どもたち、保護者とのやり取りや個別面談での場面が浮かびやすかった。

・講義の中で印象に残ったのは「相手のペースに合わせること」という言葉。言葉数か少なく、コミュニケーションが苦手な方との最近の会話を改めて振り返り、言葉数やペースの違いに改めて気付くことができた。まずは相手の話をじっくり聞くこと、そこから会話を広げていくことや、無理強いなく答えやすい質問をしていくことを意識して今後も密にかかわっていき、まずは信頼関係を築くことを目標にしていきたいと思う。

・職場でも、相手の話を自分なりに解釈して聞き、事実を理解しないまま、求められていないアドバイスをしたことも多くあっただろうと思う。問題解決をするためには、何が問題かを知る必要がある。まず「事実」を共有することから一緒に考えることができる。相手が本当に伝えたいことは何かを知ることができるように、質問の仕方や聞く姿勢を変えていきたいと思う。コミュニケーションの大切さを改めて感じた。


===

ムラのミライでは、保育や子ども・子育て支援の現場で子どもの権利を尊重するための事業や研修を行っています。講師派遣について、ご関心がある方はお問い合わせフォームから予算・内容などお気軽にご相談ください。

山岡 美翔 ムラのミライ事務局長)

サポーター会員募集中:一人ひとりの「小さな声」を社会の変化につなげるために

2023年10月23日月曜日

思春期の子どもとのコミュニケーション講座ができるまで

子育てに活かした3原則とメタファシリテーション(R)

私(中田)が、メタファシリテーション(R)手法のもともとの創設者である和田信明の開発援助の現場でのあまりに見事な対話術に出会って驚愕したのが2000年。
それを自分のものにすべく練習を始めたのですが、その際に私が練習相手に選んだのが、一番手近にいて、しかもやり取りにいくらでも時間を割ける2人の子どもでした。

本格的に練習を始めた2002年頃、娘が10歳、息子が6歳ほどでしたが、その後、彼らが大学を出る頃までの間、対話術の練習と試行、さらには体系化のための分析にフルに利用させてもらいました。


そこで依拠した主な原則は、次の3つでした。

1)「なぜ?」「どうして?」と聞かない

特に、終わったことに対して、「なぜ〇〇しなかったのか?」とは絶対に尋ねない。

2)相手が求めてこない提案(アドバイス)をしない

相手が求めてこない提案やアドバイスをこちらから与えることを厳に慎み、できる限り質問の形をとる。

3)他者との比較をしない・一般論に基づく働きかけをしない

「〇〇君はこんなことができるそうだが、お前はできないのか?」などという他者との比較、あるいは「お姉ちゃんなんだから、〇〇すべき」などという一般論に基づく働きかけは決してしない、などでした。

これだけの制約を自分に課すだけでも本当にたいへんでしたし、それに代わる働きかけ方を見出して実行するのはますます容易でありませんでした。

対等で信頼関係に満ちた親子関係と子どもの主体的な進路選択

しかしながら、これらを地道に積み重ねていった結果、私の対話術は着実に上達し、さらにうれしいことには、子どもたちとは対等で信頼に満ちた関係が築かれて行ったのです。それが、子どもたちの自由で主体的な進路選択にも繋がったようです。
長い人生ですので、これからもこの関係が続くかどうか、その選択が本当によかったかの保証はまったくありません。とはいえ、子育て期間を振り返ってみて、業務上の目的のために子どもたちを練習台に使わせてもらったことが、結果としてお互いにとっての豊かな関係に繋がったことは、幸運以外の何ものでもありませんでした。

成果がでる/でないの分かれ道

今さらながらですが、この経験を、私に比べれば年若い皆さまと共有することで、よりよい親子関係のために少しでもお役に立てていただければという思いから、この手法の開発と普及に努めてきたわけです。
関係は複数の要素の相互作用で成り立っています。
コミュニケーションの改良だけで、確実に改善するという保証はないわけものの、これまでの経験から改めてわかったのは、成果が出るかどうかは、まず、ご自分の状況をどのように受け止め、それに基づき、どう自分を変えていけるかにかかっているということです。
 
中田 豊一(ムラのミライ 代表理事)

 

→思春期の子どもとのコミュニケーション講座の詳細・お申し込みはこちら



 

2023年9月25日月曜日

再開します、思春期の子どもとのコミュニケーション講座

コロナ禍で中断

コロナ禍以前から、思春期に入った(入る直前の)お子さんとどう接していいのか、戸惑っている方の声を、私の周囲ではかなり頻繁に耳にしていました。
成長過程での一過性の問題で済む場合がほとんどなのでしょうが、この時期の親子のコミュニケーションの齟齬が、運悪くお子さんの心に傷を残したり、親子関係を将来にわたって損ねたりすることも少なくない現実を垣間見てきました。

ムラのミライの子ども・子育て支援チームの講師たちは、国際協力の現場では最強のコミュニケーションツールとして知られるメタファシリテーション(R)手法を使って、日本国内で子育てに悩む親御さん向けに研修を開催し、2016年以降、子どもとのコミュニケーションでも大きな成果を挙げてきました。特に小学校低学年くらいまでのお子さんを持つ保護者を対象にしたものは、コロナ禍の間もいろいろな形を取って続けてきました。

しかし、思春期の子どもたちとのコミュニケーションを扱う講座は、2020年以来中断されてきました。そこには、オンラインだけでは微妙なニュアンスを伝えにくいとい事情があったためです。

しかしながら、一般のメタファシリテーション(R)講座(ステップ1〜3)子ども・子育て支援者向けの講座の参加者などから、思春期の子どもとのコミュニケーションに特化した講座を開催してほしいとの要望が多く寄せられて来たことを受けて、対面での講座が可能になった今、思春期の子どもとのコミュニケーション講座(以下略、思春期講座)を再開することになりました。


2019年から2020年にかけての思春期講座でわかったこと

2019年から2020年にかけて、コースごとに回数などは違うものの、合計3コース、延べ20名(講座回数、受講人数要確認)の講座を実施したところ、少なめに見積もって半分以上の参加者が、3回目の講座までに、お子さんとの関係がはっきり変わり始め、回を重ねるうちには、不登校などいくつかの深刻なケースにおいても、顕著な進展が見られたとの報告を受けています。
この手法をお伝えすることで、よりよい親子関係を築くための一助になること、そして、それによってお子さんの心身の成長に少しでもお役に立てると、関係者一同、強く思うようになってきました。

新講座をお勧めしたい保護者の皆さん

新思春期講座は、10歳から20歳くらいまでのお子さんとのよりよいコミュニケーションを望む保護者の方にお勧めしたいと思っています。
お一人の参加も、パートナーとの参加もどちらでも歓迎いたします。
講座で扱う内容は、親子間の日常的・一般的なコミュニケーションで、コミュニケーションや関係作りが深刻な状況にある場合も想定しています。
但し、不登校、引きこもり、DV、知的障害、発達障害などがある場合は、既に専門の支援機関に相談し、何らかの対処を始めているケースに限ることにさせていただきます。
それがまだの場合、個別の対応が必要となり、大きな時間とエネルギーを割かざるを得ない可能性があります。
他の受講者の方とのバランスを考慮して、この講座へのご参加は残念ながら遠慮願うこともありますが、該当するかどうか明確でない場合は、まずはご相談ください。
学習支援など、思春期のお子さんたちの居場所に勤務されておられる方や、教育、福祉などの専門職の方も、ご自身で養育されている思春期のお子さんとのコミュニケーションに実践していただける場合に限って、ご参加いただけます。

 

新講座の3つの特徴

講義・練習・互いの実践内容の共有と検討を繰り返しながら、コミュニケーション技術を習得していきます。少人数(定員4人)で丁寧に進めていく予定です。

1)    自己肯定感を高める対話の仕方を学ぶ

「事実質問」を使って質問を組み立てることで、お子さんの自己肯定感を高め、信頼関係を築くことができます。それが、主体性を育むことにも繋がります。
講座では、まず「自己肯定感を下げるやりとり」と「自己肯定感を高めるやりとり」を識別できるようになり、次によりよいものに変換していくための考え方と対話術を習得します。
たとえば、「どうして〇〇しなかったの?」のような質問の形を取った押し付けや非難を止め、当人の気づきを促すことができるような質問に変えていくスキルと関わり方を学びます。これまで無自覚だった自らのコミュニケーションのクセに自覚的になることさえできれば、誰でも習得でき、実践できる技能で、構成されており、この部分が講座の中心になります。

2)コミュニケーションの場の作り方を学ぶ

思春期に入ると、親子のコミュニケーションの時間が少なくなるのは自然です。
それに従って親はせっかくの機会を、提案や助言、場合によっては、何かを問いただすために使いがちですが、前のめり過ぎると、両者の距離をかえって遠ざけることになります。
講座では、コミュニケーションの場を意識的かつ計画的に作り出し、活用する技術を学びます。

3)感情的になった場合の対処方法を学ぶ

メタファシリテーション(R)の基本的な姿勢は、感情的にならないで、自分のコミュニケーションのあり方を冷静に観ることにあります。
とはいうものの、よそ行きの顔をする必要がない家族を相手にすると、つい感情的になるのは自然なことです。
しかしいつもそうだと対話は深まりません。講座では、冷静にお子さんと向かい合うためのセルフモニタリングとセルフコントロールの方法を、メタファシリテーション(R)手法の原理に基づいてお伝えします。

以上の3つを数回の講座で、すべて詳しくやるには時間的に無理があるものの、参加者の皆さんの実際の状況などを材料に使わせていただきながら、最低限のことは、具体的かつ実践的にお伝えします。
講座の日程や参加費などはホームページをご覧ください。
思春期のお子さんを持つ保護者の皆さんのご参加をお待ちしています。

中田 豊一(ムラのミライ 代表理事)

2023年1月11日水曜日

子どもの世界に入って話を聴く

新年明けましておめでとうございます。ムラのミライスタッフの山岡です。2022年は、メルマガやブログを読んで下さりありがとうございました。本年もムラのミライをどうぞよろしくお願いいたします。

2023年4月で、ムラのミライは設立30周年を迎えます。今年は、国際協力の分野に加え、新たに子ども支援や職場、医療・福祉分野での研修や報告会を企画しています。皆様とお目にかかれる機会が増えることを、今からとても楽しみにしています。

子ども支援者へのプログラムスタート

2022年10月から兵庫県の子ども支援者を対象として「子どもの話を聴く技術 体験プログラム」を実施しています。11月には、メタファシリテーション体験セミナー受講後の参加者の実践や疑問をヒアリングしました。今回は、フリーで子ども支援の活動に携わっているAさんの現場でのお話をご紹介します。

Aさんのお話を聞いたのは、一緒に体験プログラムを担当しているすずめさん(こどもサポートステーション・たねとしずく代表 大和陽子さんの呼び名※)で、私は記録を担当しました。Aさんとすずめさんのやりとりのなかで、特に印象に残っている2つのお話を皆さんにもご紹介したいと思います。
 

聞きたいことを脇に置いて、まず子どもの話を聴く

Aさん(子ども支援者):調味料づくりのワークショップに参加した小学生と作業しながら、この作業が生活とリンクしているのを知って欲しくて、相手の生活の事を意識して聞きました。
ずずめさん:どんなことを聞きましたか?
Aさん:「何か調味料を手作りしたことはある?」、「それは誰とつくったの?」という感じで聞きました。
すずめさん:その子は、醤油絞りをしたことがあったのですか?
Aさん:はい、フリースクールでやったことがあるそうで、すでにどんな作業があるか知っていました。
すずめさん:他には、どんな質問をしましたか?
Aさん:「家でも醤油絞りをしてみた?」とか。そうそう、私が聞きたかったこと(普段の暮ら)を聞く前に、以前だったら「どうでもいい」と思っていた話がたくさんできたんです!「今日は何を食べたの?」「ここには何に乗ってきたの?」「車には何人乗ってたの?」と事実で聞けたのです。
「私が聞きたいこと」をまず脇において、子どもの話をじっくり聞く時間が大切なんだなと感じました。

Aさんのお話を聞き、これまでもこうして子どもの話を丁寧に聞いてこられた経験があって、事実質問を知り細かく聞くことでより共通理解を深めることができたんだなと感じました。

Aさんに質問がないか聞いたところ、「空想の話は事実ではないから、どうやって話を聞けばいいんですか」と質問をして下さいました。

子どもの世界に入って話を聴くことが安心感に

Aさん:低学年で想像の世界が大きい子だと、空想の話ばかりしてきます。そういう子にはどう話を聞いたらいいでしょうか。
すずめさん:話を「なぁに?」と聞くことが子どもの安心感に繋がります。『Aさんだったら、空想の話を聞いてくれる』ということが安心感になる。子どもは発達段階に応じて現実の話をする日がくるし、相手が大人でも想像の話を聞く存在は必要だと思います。
事実質問を使えば、子どもにとっては答えやすく、会話の練習にもなります。支援者は、子どもから空想の答えが返ってきたら、それについていつ、どこ、誰とさらに聞き、キャッチボールを繰り返します。子どもの話したい世界に、大人が入っていく。いつ、誰と質問をすることはあくまで手段で、目的は子どもとの信頼関係をつくることです。
Aさん:それはよく分かります。いつ、どこで、とかそれだけに捕らわれると手法だけになってしまって、「寄り添う」とか、「子どもの世界に入って聞く」という姿勢を忘れてしまいそうになります。
すずめさん:メタファシリテーションの目的は、信頼関係を築いて行動変容に導くことなので、Aさんの気付きがとても嬉しいです。
Aさん:その言葉を一番聞きたかったです。手法に陥るのが不安でした。何が不安かは分からなかったけど、今の言葉を聞いて安心しました。子どもの世界に自分が入って、事実質問をしてみるというのが納得できました。

お二人のやりとりを聞いて、Aさんが率直に事実質問への不安を聞かせて下さり、その疑問が晴れたことがとても嬉しかったです。

また、すずめさんの「子どもの世界に入って聞く」という言葉が、「子どもの目線で」や「対等に」と言った言葉よりも、ずっと分かりやすい表現で、私自身の学びにもなりました。

「子どもの話を聴く技術体験プログラム」活動報告会を開催

個別フォローアップでは、Aさん以外の参加者からも「子どもの話を聞けた話」や、「現場での課題」について聞くことができました。2023年3月に「子どもの話を聴く技術体験プログラム」活動報告会をオンラインで開催しますので、子ども支援者の方の気づきを皆さんにも聞いていただければ嬉しいです。

2023年も、子ども支援現場での研修を通して、子どもの話をじっくり聴ける大人が増え、「子どもが安心して自分の意見を言える場所」を増やしていきたいと思っています。本年も皆様のご理解・ご協力をいただければ幸いです。
(ムラのミライ 事務局長代行 山岡美翔

西宮での子育て支援プロジェクトでご一緒した大和陽子さんが、2022年、こどもサポートステーション・たねとしずくを設立されました。大和さんには、本プログラムの企画・運営にご協力いただいています。

2022年10月31日月曜日

事実質問で話を聴かれた子どもたち

普段は少ない「事実で話を聴く」ケース

メタファシリテーション®講座に参加した皆さんのなかで、特に初めて対話練習をした際に、「だいたいは〜」とか「いつもは〜」、「みなさんは〜」「○○は好きですか?」という、事実は聞けない質問を無意識に連発してしまった記憶のある方は多いことでしょう。

YouTube、テレビ、ラジオにアクセスすれば、相手の「考え」を聞いているインタビューや、出演者のやりとりにあふれています。一度試しに「事実で話を聞くスイッチ」を入れて、耳から入ってくる情報を注意して聴いてみてください。「事実」を聞いている質問がどれだけあるでしょう?そして「事実」でこたえているケースもかなり少ないことに気づかれると思います。

「事実で話を聞くスイッチは通常オフになっている」という理解でいると、「ここは詳しく聞きたい」という場面で、スイッチを入れねば〜と切り替えることができます。
ただスイッチを入れたからといって、すぐ事実だけで聞けるかというと、そういうわけではないのは講座に参加された皆さんはよくご存知で、やはり日々の練習次第にはなるのですが…。


「事実」を聞かれることに慣れた子どもは...

さて、講座などで繰り返し「事実を聞く質問(以下、事実質問)」について話している私ですが、家にいるときも、常に「事実質問スイッチ」をオンにしているわけではありません。
とはいえ、子どもの話を聴くときはなるべく家にいてもスイッチをオンにしようとは心がけています。

来年15歳になる息子は、生まれたときからかなり長い時間、親から「事実質問」で話を聞かれ続け、聞かれることにも、答えることに慣れています。おまけに彼は、ムラのミライの認定トレーナーたちからも、言葉を覚え始めた時から、事実質問でたくさん話を聞いてもらって育っています。小さな頃は各地の出張に連れて行っていましたから、各地の研修先で、研修参加者からもあれこれと事実質問で話を聞いてもらってきました。

ある日、「事実質問スイッチ」を完全オフにした私(親)は、息子に「期末テストどうだった?」と聞いてしまいました。「あ、しまった!」とすぐに気づきましたが、時すでに遅し。ため息混じりの息子から逆に聞かれたのは次のような質問でした。

・「何日間か期末テストはあったけど、いつの試験のことを聞きたいの?今日の試験のこと?」
・「今日も何科目か試験あったけど、どの科目のこと?」
・「その科目の前回の期末テストと今回のテストの点数の違いが聞きたいの?」

私の「どうだった?」という質問では、「期末テストの何が知りたいのか?」が明確でなかったことがわかり、おまけに…
・「◯◯というサイトを見るとテスト結果がわかるけど、もうそのサイトみた?」
と、これまでに私が彼のテスト結果を知るためにやってみたことがあるかどうか(経験)を
も確認されました。

それらの質問に息子が答えたり、私が学校のサイトを見たりしているうちに、息子の期末テストの結果はわかりました。
私の「どうだった?」にしばらく付き合った後、息子は「過去はもう振り返らない、前しか見ない。」と言い残し、自分の部屋に入っていきました。


「どうだった?」質問に慣れると...

「何も考えずに期末テストどうだった?」と聞いていたことを、みるみる質問した人(私)に気づかせていくこの質問の数々。期末テストの結果はともかく、さすがこれまで事実質問で聞かれ続けているだけあるなあ〜と感心してしまったのでした。

私が14、15歳だった頃、「期末テストどうだった?」と親に聞かれれば、真っ先に親を心配させないように、細かくテストのことを聞かれないように、という類のことを一瞬で考え、「まあまあがんばったよ」と当たり障りのないように答えていたかと思います。

その「一瞬で考える」作業は、期末テスト以外でも、「最近友だちとどう?うまくやってる?」「体の調子はどう?」「最近、部活はどう?」「進路どうするの?」「新しい担任の先生どう?」「○○検定どうだった?」「体育祭どうだった?」「今日のご飯どうだった?」などなど、「どう?」と聞かれる度に繰り返され、反射神経のようになってきます。相手のことを忖度した回答を一瞬で考えて、当たり障りのないように答える、これを繰り返すと、どうなるでしょう。

そうです、習慣になってしまい、相手への忖度なしで返事ができなくなっていくのです。反射神経が鍛えられ、「どう?」と聞かれたら一瞬で、相手が期待することを考えて答える癖がついてくると、恐ろしいことに相手の忖度した答えが、自分の「答え」のように思えてきてしまうのです。一つ一つのやりとりは、大したダメージを与えませんが、何年も繰り返されれば、忖度に疲れてしまい、「誰とも話したくない」「誰も私のことは聞いてくれない」「忖度する直前の自分の答えがわからいない」となっていきます。


事実質問で鍛えられる、子どもの「相手と分かり合う力」

周りの複数の大人から、「どう?」と聞かれ続けてきた10代の頃の私とは対象的に、事実質問で聞かれ続けてきた息子のような子どもは、相手が細分化せずに、ぼんやり聞いてくる質問にも、事実で答える、質問を確認する、クセがついているようです。

それは言葉を覚え始める年齢から始まるようで、事実で話を聞く訓練を重ねてきた人たちの周りの子どもたちにも共通しているようです。そうした子どもたちに、ついうっかりと「どう?」「なんで?」「みんなもそう?」「すぐ○○するね」などと言ってしまったとき、認定トレーナーや訓練を繰り返してきた講座参加者の周りにいる子どもたちは、私と同じような目に合い、子どものほうから質問されてしまうのです。
・「調子、どう?」というのは、今の状態?それとも朝学校に出かける前のこと?
・「宿題終わった?」と聞いてきたけど、今日は何と何が宿題にあって、そのうち今の時点で、何が終わって、何が終わってないかを聞いてくれたら答えるよ。
・「みんなもそう?」というけど、「みんな」ではないよ、Aさんと、Bさんだけだよ、
・「すぐ帰るね」って、「何時くらいに帰れそうってこと?」
という具合です。

どの子も、相手と事実で分かり合う癖がついています。まだ私の実体験と、認定トレーナーや講座受講者の声がちらほら聞こえてきただけの状態ですから、そういう子どもの数は多くはないのですが、大人の事実を聞く訓練の成果が、子どもからもわかります。


自分で考え、自分で解決策をみつける練習

「どうだった?」以外にも、「なんで?」「〜が好きなの?」「毎日〜しているんだね」「あなたの考えは?」「今の気持ちは?」といった「考え」や「感情」を聞く質問を繰り返しされても、子どもは、大人に忖度して答えることはできるようになっても、それらに的確に答えられるようにはなりません。

一方で、大人に事実で聞かれてきた機会が多い子どもは、生まれながら性格や能力といった部分に大きく頼ることなく、毎日の繰り返しで、知らず知らずのうちに、相手と事実で共通理解を得る力が鍛えられていきます。これは大人が事実を聞く質問で自らのメタ認知を鍛えているのと同時に、子どものメタ認知力も鍛えられている、と言えるのではないかと思います。

大人の質問に答える、子どもも質問する、大人もそれに答える、というこの対話の時間の長さが、そのまま信頼関係につながります。大人から聞かれる事実質問に答えていくうちに、子どもが自然とそのときの考えも感情も的確に伝えられるようになっていきます。

この普段からの積み重ねは、やがて子どもが何らかの問題に直面したときに、問題が生じた背景を事実で細分化し、細分化した部分のどこに解決策があるのか、自分で考え、周りの人からの助言を求めてゆくことにつながると思います。


子どもの話が聴ける大人を増やしたい

ムラのミライでは、大人も子どもも圧倒的に一般的な質問にあふれた環境のなかで、1人でも多くの大人が、子どもの話を事実で「聴ける」ようになるにはどんな方法がよいのか、試行錯誤が続いています。

そんな試行錯誤の一つが、コープともしびボランティア振興財団に助成いただいた「子どもの話を聴く技術 体験プログラム」です。
学童保育や子どもの居場所、スポーツクラブなど、子どもと接することが多い人にこそ、この「聴く」技術を身につけてほしいと思っています。90分の講座(オンラインと対面)、個別フォローアップ(事実だけで話を聞いてもらう体験もできます)、動画(マイクロラーニング)をセットになったプログラムです。この体験プログラムは、兵庫県の子ども支援者の方限定ではありますが、11月、12月にはオンラインで全国の子ども支援者の方たちを対象にした講座も予定しています。

引き続き、講座の様子や受講された方たちの声、事実質問をされた子どもたちのお話などもご報告していきますので、お楽しみに。 

原康子(ムラのミライ研修事業チーフ)

イラスト:Moto

2022年7月26日火曜日

子どもの話を「直近のこと」から聞いてみる

暑い日が続きますね。子どもが夏休みになり、いつもと違う生活リズムにまだ慣れないという方もいらっしゃるでしょうか(私もその一人です)。また普段は子どもと接する機会が少ない方も、子どもと接する機会が多くなる時期ですね。
みなさんは、子どもに最近の出来事を聞いてみようと、「最近どう?」と聞いたことはありませんか。

5月に開催した「子どもの話を聞く技術」体験セミナーでは子どもに「最近どう?」、「今日はどうだった?」という質問を封印して、代わりにその時のことを思い出す事実質問をしてみましょうとお話しました。
例えば学校の様子を聞きたくて「学校どうだった?」と聞くと、子どもはなんと答えるでしょうか。もし、最近同じ質問をしたことがある方は、その時の子どもの答えを思い出してみてください。

 

「たのしかった。」で会話がすぐに終わった、あるいは何も答えが返ってこなかったといったことはありませんでしたか。
「どうだった?」と聞かれて、子どもが今日の出来事をぱっと思い出して答えを返すことは、特に小学生の子どもにとってはハードルが高いです。なかには大人の期待する答えを考えて答える場合もあります。
例えば私たち大人でも、上司に「今回の出張はどうだった?」と唐突に聞かれると、つい「勉強になりました」と相手の求める答えを作ってしまいますよね。 

それでは、子どもに今日の出来事を聞きたいとき、みなさんなら「どうだった」を封印して、何から聞くでしょうか。「子どもの話を聞く技術」体験セミナー参加者のAさんは、小学生のお子さんにこのように聞いてみたそうです。

学校からの帰宅途中、6歳のお子さんとの会話

「時系列の近いところから聞いていくと思い出しやすい」とのアドバイスを聞いたので、児童クラブの帰り、子どもに「今日ドッチボールして遊んだ?」、「何して遊んだ?」と聞きました。
そこから娘が自分で、今日学校の授業でもこんなことしたよ、あんなことしたよ、と話してくれました。

「どうだった」と聞きたくなったら、Aさんのように「直近のこと」から子どもの行動に焦点を当てて聞いていくと、子どもが少しずつ今日あった出来事を思い出すことができます。
学校の帰り道で話していたなら、さっき自分と出会う直前は「どこ」にいたのか、「誰」と「何を」していたのかを聞きます。そして「その前はどこにいたの?」と少しずつ過去にさかのぼっていきます。

子どもは、だんだんと児童クラブでのこと、学校から児童クラブに移動したときのこと、教室で終わりの会をしたこと、その前の授業のこと、お昼休みのこと、給食のこと、とその日の子ども自身の行動を思い出していきます。
そして、Aさんのお子さんのように、誰かに話したいほど面白かった経験があったときには、その場面に飛んで話を始めることがあります。


子どもが自ら話を始めたら、チャンスです。それはいつ、どこで?誰か近くにいた?と細かく事実を聞いていくと、まるで自分がその場所にいたかのように、その光景を一緒に見ながら話を聞くことができるはずです。

「どうだった?」と聞かずに直近のことから質問をしていく、というのは遠回りのようですが、十分に子どもの行動を振り返る質問をしておくと、思わぬ子どもの話を聞くことができます。
ご家族でも、近所の子どもでも、支援先の子どもでも、ゆっくり話を聞く時間があるときに試してみてください。そして何か気づいたことがあれば、教えていただければ嬉しいです。

山岡美翔 ムラのミライ理事/事務局長代行)