2025年11月10日月曜日

チームで支援をするために

ムラのミライの山岡です。今回は、講師派遣先である全国小規模保育協議会 医療的ケアチャプター様のご協力をいただき、保育者向けのメタファシリテーション体験セミナーについて、研修内容や参加者の声をご紹介します。


チームで支援をするために

まだ夏の暑さが残る9月、私は神戸市にある(特活)こどもコミュニティケアを訪問しました。こどもコミュニティケアさんも所属する全国小規模保育協議会 医療的ケアチャプター様から講師派遣の依頼をいただき、メタファシリテーション研修を行うためです。
研修は90分で、全国組織であるため対面とオンラインハイブリッドでの開催でした。参加者は、小規模保育施設で医療的ケアが必要な子どもたちの保育を行っている施設管理者、保育士、看護師、言語療法士など約30名。みなさん大変熱心に聞いて下さり、ワークにも主体的に取り組んで下さいました。


子どもの権利とメタファシリテーション

研修では、以下のような5つの内容をお話ししました。

・子どもの権利の紹介

・コミュニケーション・セルフチェック

・メタファシリテーション3つのルール

・事例紹介(管理者と保育士が、現場での課題を振り返る編)

・練習問題

ムラのミライでは、子ども・子育て支援者を対象とした研修は、まず「子どもの権利」の紹介から始めています。それは、子どもの権利を知っていただき、子どもの権利を尊重する手段の一つとして、メタファシリテーションを活用して欲しいと考えているからです。



次に、自団体のコミュニケーション・セルフチェックには、3月に発行した『子ども・子育て支援活動サポートブック』のチェックリストを利用しました。みなさんの組織では、いくつチェックが付くでしょうか?チェックが2つ以上付いたという方は、サポートブックに他団体の事例が掲載されていますので、ぜひ読んでみてくださいね。



保護者の話が聞けないのは、「人手不足」が原因?

事例紹介では、管理者がスタッフの課題を整理できなかった事例と事実質問への置き換え例をご紹介しました。

<登場人物>

・スタッフ(保育士3年目):保護者から子どもの話をうまく聞けないと悩んでいる

・マネージャー(保育士10年目):管理責任者、現場での課題を知りチームの改善に繋げたい

下図のような会話、みなさんの職場でもないでしょうか。マネージャーは、『人手不足だけが本当に課題なのか」と疑問を抱きながらその場を離れてしまいます。

 さて、ここでクイズです。仕事で「保護者(クライアント)の話が聞けなくて…。」と悩んでいる部下の話を聞く時、何を質問すれば、部下がその時の出来事を思い出して答えてくれるでしょうか?

1. なぜ、聞けないの?

2. どんなふうに難しかった?

3. 最近、いつ保護者(クライアント)と話した?


・・・答えは、3番です。1番のように、相手の課題を分析する前に理由を聞いてしまうことで、忙しいから、人手不足だからなど、言い訳を引き出してしまいます。2番は、相手の感覚から質問することで、何が起きたかが見えにくくなってしまいます。そこで、「最近、いつ〇〇した?」と実際に起きた出来事を思い出してもらいながら、「いつ、誰、何、どこ」と事実ベースで聞いてみると、一緒に何が課題かを振り返ることができるようになります。

最後の練習問題では、保育現場での支援者同士の会話の中から、事実を聞く質問と事実を聞けない質問を答えるドリルに取り組んでいただき、質疑応答に移りました。 参加者からは、保護者に子どもの状況を聞きたかった事例や、支援者間で情報共有をする方法などについてご質問いただきました。

また研修後、参加者から感想や実践報告をいただきました。『自分の質問の癖』に気づいた方や、保護者や子どもたちの状況を知るために、早速「いつ」質問を使い、『相手の状況把握』に役立てている方もおられました。今後も、保育や子ども支援の現場でこうした研修ができれば嬉しいです。ご参加下さった皆様、ありがとうございました!



<参加者の声>

・今回の研修で尋問にならない聞き方や、思い出しながら聞き出していく方法がとても勉強になった。医療機関受診のタイミングやこうした方がいいよなと思っていても、すぐに解決策やアドバイスをせず、話を聞きながら一緒に整理して、保護者が主体的に受診行動をとれるように関われたらいいなと感じた。

・登園時の受け入れや、保護者との面談もステップを踏んでいるところなので、今回学んだことを活かした事実質問ができるように意識して話をしたい。また、何を聞くべきなのか、把握しておくべきことは何なのかを自分の中で前もって考えておくことも必要であると思うし、問題を決め付けたまま質問を重ねるのではなく、相手と同じ目線で事実を確認していく中で、一緒に課題を見つけられるような姿勢も忘れずに持っていたいと思った。

・トラブルや課題のある話では、なんで?どうして?と聞きたくなるが、それを、いつ?の問いに変えることで、答える側は事実を思い出しやすくなることを知った。実際に演習する中で、すべての質問を「いつ?」に変えてみると、答えがはっきりと浮き出し、答えやすくなることを体験できた。実際の現場は抽象的なやりとりになりがちで、後から振り返ったときの記憶も曖昧になってしまうことを減らせるように、今回の手法を意識して使えるようにしたいと思った。

・講座の中で、講師の方から実際に事実質問を投げかけられたとき、とても答えやすく、そこから詳しく質問をしていただくことで思い出す内容がはっきりとしていくことを実感した。また、事実を知っていく質問の投げかけが、尋問となってしまわないよう、要所要所で相手の言葉を復唱し、共通理解につなげていく大切さを改めて学んだ。

・今回の研修で自分の質問の仕方ひとつで、相手から得られる答えが全然違ってくること、相手との関係性に大きく影響が出ることを学び、実際に保護者とのやり取りで実践してみた。
園での食事量が少ない子どもの保護者に「何時に朝ご飯を食べている?今朝は何を食べた?どれくらいの量を食べた?昨日は何を食べた?」と質問することで、朝ご飯を食べる時間が遅く、どのメニューであってもパンケーキ3枚、オートミールを多いなお皿1杯分など、たくさんの量を食べていることがわかった。そして、この子どもはお腹があまり空いていないから園でのお昼ご飯が進まないんだなとアセスメントすることができた。

・子どもだけでなく、保護者や一緒に働いているスタッフに対して話をする機会が多いので、本日の研修で知ったことを取り入れていきたいと思う。特にスタッフへの言葉かけは難しく感じており、スタッフの困りごとなどを知りたくても、情報が少なくわかってあげられなかったことが多かったと思う。質問の仕方を変えてみるなど、本日教わった手法を取り入れてみたい。

・相手の話を聞きながら、すぐに自分なりに解釈してしまうこともあるなと気が付くとともに、俯瞰して聞く練習をしていきたいと思った。事実質問をする場面は、実際保育者間や保護者様とのやり取りの中で、日々必要なタイミングがあるため、ルールやポイントを詳しく知ることができてよかった。自己肯定感に配慮するというところでは、改めて大人も子どもも個人は尊重されていることを実感した。

・メタファシリテーション手法を意識して職場内の対話が進むと、お互いの自己肯定感や達成感を保ちながら、気持ちよく仕事ができると思う。まずは自分が実践できるよう今回の学びを少しずつでも活用していきたいと思う。

・メタファシリテーションの3つ目のルールに『求められないアドバイスはしない』とあり、アドバイスまでいかなくても、相手の話を遮ってしまうことや、先に提案をしたり、話をかぶせてしまったりする癖があるので、話したくなっても意識して我慢し、相手の主体性を大切に会話するようにしたいと思う。

・「メタファシリテーション」という言葉は、今まで私生活であまり聞かない言葉で、研修を受けるまでは具体的にどんな話が聞けるのだろうかと思っていた。実際に研修を受けてみると、とても身近な課題内容でした。特に日頃の子どもたち、保護者とのやり取りや個別面談での場面が浮かびやすかった。

・講義の中で印象に残ったのは「相手のペースに合わせること」という言葉。言葉数か少なく、コミュニケーションが苦手な方との最近の会話を改めて振り返り、言葉数やペースの違いに改めて気付くことができた。まずは相手の話をじっくり聞くこと、そこから会話を広げていくことや、無理強いなく答えやすい質問をしていくことを意識して今後も密にかかわっていき、まずは信頼関係を築くことを目標にしていきたいと思う。

・親である自分の思い込みで、子どもによく確認せず「善かれ」と思って子どもに非を認めさせ、改めさせようとしていたと思う。「心配だから聞かせて」「いつ〇〇したの?」を積極的に使っていきたいと思う。同じように職場などでも、相手の話を自分なりに解釈して聞き、事実を理解しないまま、求められていないアドバイスをしたことも多くあっただろうと思う。問題解決をするためには、何が問題かを知る必要がある。まず「事実」を共有することから一緒に考えることができる。相手が本当に伝えたいことは何かを知ることができるように、質問の仕方や聞く姿勢を変えていきたいと思う。コミュニケーションの大切さを改めて感じた。


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ムラのミライでは、保育や子ども・子育て支援の現場で子どもの権利を尊重するための事業や研修を行っています。講師派遣について、ご関心がある方はお問い合わせフォームから予算・内容などお気軽にご相談ください。

山岡 美翔 ムラのミライ事務局長)