2020年12月4日金曜日

「管理が大変」の中身を分解してみたら・・・

私が活動するNPO法人おーでらすでは、人も自然も「イキイキ」と暮らせる地域を目ざす活動の一環として、鳥獣害の防止とコントロールの支援に取り組んでいます。
2019年に講座に参加して以降、活動現場にメタファシリテーションを取り入れています。
 


先日、一人の農家さんに「電気柵の管理が大変だからワイヤーメッシュを入れたい」と言われ、その設置指導を行ったのちの様子を聞きに行きました。
ワイヤーメッシュでは田んぼ全体を囲むことができなかったので、他のところは電気柵を設置すると言っていたのですが、できていませんでした。


そこで、もしかしたら年間の農作業のスケジュール管理もできていないのかもしれない・・・と思い、年間を通しての作付け品目や面積、作業にかかる日数、手伝ってもらっている人手、その人の賃金など、事実質問を使って聞いてみました。

すると・・・「こんなに作業があるの?!」とびっくりしました。


この状態で電気柵の設置・管理は無理だということがわかりました。

ご本人も無理なのはうすうすわかっていて、最終的には、機械で除草作業ができるところを電気柵で守り、機械が入れない所をワイヤーメッシュに切り替えていく方向で話がまとまりました。


さらに、ワイヤーメッシュや電気柵を設置する時期も「この時がいい!」というのがわかり、作業を効率的に行えるイメージができました。


改めて、私自身も「メタファシリテーションを使った時の効能はこういうことか~」と実感した瞬間でした。
まだまだ、引き際がわからずしゃべりすぎてしまう部分もありますが、少しずつ身について来ているようで、うれしくなりました。

 

今野万里子 (特活)おーでらす 代表理事)

 

柵の設置作業をしたときの様子。

 

2020年11月12日木曜日

「いつ」「最近」を聞くだけで出てくる、意外なエピソード

2020年10月26日、愛知県のとある山を車で走っていると、以前は茅葺屋根であったであろう家が密集している集落が見えてきました(茅葺屋根の上からトタンでカバーしてある屋根)。
道路沿いに茅葺き屋根がそのまま見える状態の家が1軒だけ残っていたので、写真を撮ろうとカメラを持って車を降りました。
その家は空き家のようで、写真を撮ろうと周りを見ていた時に、近くを犬の散歩をしていたおじいさんが声をかけてくださいました。

おじいさん(以下Sさん):いいカメラ持ってるね。なんかの取材?

私:いえ、通りがかりに趣きのあるお家を見つけたので思わず車を停めてしまいました。ここは写真をとっても大丈夫かご存知ですか?(私有地の看板がたっていた)

Sさん:大丈夫だよ!奥にもっと立派な古民家があるよ。ついて行ってあげるから、写真とったらいいよ。

私:ありがとうございます。お願いします。私は〇〇市からドライブで来た加藤愛子といいますが、お名前を伺ってもいいですか?

Sさん:Sだよ。この家は10年以上前に市が家主から譲り受けて、改装して宿泊施設にしたんだ。手前の建物はコミュニティセンターで地域の野菜も売っていたんだよ。茅葺屋根が珍しくて、雪が降ったときなんか写真家の人がたくさん来たり、一時期は観光客がたくさん来たんだけどね。10年前くらいに相続の関係で元の家主が返して欲しいと言ったもんで閉鎖したんだ。

私:そうですか、こんなにいいお家をそのままにするなんてもったいないですね。

Sさん:そうだよ。ここの屋根なんて杉で作った明治くらいの様式だよ。

私:詳しいですね。失礼ですがSさんはおいくつなんですか?

Sさん:今年76になるね。君のおじいさんくらいだな。

私:そうですか。とってもお元気でお若いですね!生まれも育ちもこちらの集落ですか?

Sさん:そうだよ。ここから数軒隣の家だよ。ほら、あそこに見えるのは僕の畑だよ。(畑の周りを囲ってある金属の柵が目に飛び込んできたので、獣害について聞いてみたいと思った)

私:広い畑ですね!今あの畑には何の野菜が育っていますか?

Sさん:今はネギ、玉ねぎ、大根、人参、白菜くらいかな。

私:Sさんが育てられたのですか?

S:そうだよ。僕が全部やってるんだ。

私:たくさん育てられてすごいですね。あの畑の周りの柵もSさんが取り付けたのですか?

Sさん:うん、まぁね。

私:いつ取り付けたんですか?

Sさん:5~6年前かな。市役所に申請すると補助金をだしてくれるようになったもんで。

私:そうなんですね。その前は何も囲いはしていなかったのですか?

Sさん:そうだね、お金も手間もかかるから。
5~6年前に補助が受けられることになって、ありがたい。

私:市役所は設置する時何を補助してくれたのですか?

Sさん:柵の費用と設置も手伝ってくれたな。

私:そうですか。あの柵には電気が通っていますか?

S:いや、あれは通っていない。猿が出る地域ではもっと目が細かくて上からも侵入できないような電気柵を使ってると思うけど。ここでは鹿や猪が出るよ。鹿なんかしょっちゅうで、よく道を歩いてるよ。

私:そうなんですか!最近ではいつ鹿を見ましたか?

Sさん:今日のお昼頃も道歩いとったよ。

私:昼間から歩いているんですか!ここ最近で何か捕まえた動物はいましたか?

Sさん:つい今さっき家の裏に仕掛けたかごにアライグマがかかってたよ。(日付時刻入りの写真を見せてくれた)

私:すごい!今このアライグマはどこにいるんですか?

Sさん:まだ家の裏にいるよ。

私:まだいるんですね!罠に餌は何を入れたんですか?私の祖父も畑で捕まえようとしたのですが、だめだったんです。

Sさん:(自慢気に)魚肉ソーセージを入れたんだよ~。

私:そうですか!それはいいことを聞きました。私の祖父にも伝えておきます。そういえば、さっき鹿が昼間から歩いているのを見たと言われていましたが、Sさんが小学生くらいの時には見かけたか覚えていますか?

Sさん:いや、その頃はないね~。だんだん鹿の鳴き声が家にいても聞こえるようになってきたんだよね。夜8時にもなると山から雄鹿が求愛する声が聞こえるんだよ。

私:聞こえるようになってきたのはいつごろか覚えていますか?

Sさん:たしか僕が40歳くらいのときだったから、36年位前かな。

私:よく覚えていらっしゃいますね。その時期にこの地域で地域開発事業や大きな出来事があったのですか?(これは曖昧質問かも。そして私の憶測が色濃く反映された質問。)

Sさん:どうだったかなぁ、、、。じつは40歳ごろ市役所の地域観光課にちょうど務めていて、鹿の声を利用して、「鹿の声を聞く会」といったツアー旅行を企画したんだ。当時は鹿の声なんて珍しいから50人くらい人が集まって、名古屋から観光バスでお客さんが来たんだよね。その時は鹿がうまく鳴いてくれるように祈ったもんだよ。結局ちゃんと鳴いてくれてお客さんは喜んでくれたからよかった。そんな事があったから、鹿が降りてくるようになったタイミングは印象深く覚えているんだ。

私:そうでしたか~。面白いですね!他にもそういったツアーを企画されたことはありましたか?

Sさん:夏には「カジカガエルの声を聞く会」を企画したら、これもたくさん人が集まったんだよ!

私:カジカガエルって私は初めて聞きましたけど、最近でもこの辺りで見られたことありますか?

Sさん:うん、見てはないけど今年の夏も声が聞こえたからまだいるんじゃないかな。

ここでSさんの連れていた老犬がクンクン吠えて早く帰りたそうだったので、お礼を言って別れました。
10分くらいしか立ち話できませんでしたが、「いつ?」と聞いていくとアライグマをついさっき捕まえたことや昔ツアーを企画したエピソードなど、予想もしなかった話題が飛び出してきてとても興味深かったです。

この会話を書き出したのは対話から3週間経ったころでしたが、事実質問で質問を繋げていくと、その時どんな質問をしてどんな会話の流れになったか、メモを取らなくても後から鮮明に思い出せました。

また、こう書き出してみると、もっと深堀りして質問できたポイントがたくさんあると気づきました。

◆この地域の茅葺屋根の家
→この地域やSさん自身の住環境、生活様式、自然資源の変化が聞けたかも

◆Sさんの畑
→Sさんの畑や周囲の畑の栽培作物の歴史、地域の産業が聞けたかも

◆鹿の声が聞こえるようになった時期
→何か地域で環境に変化を与えるきっかけとなる出来事があったか聞けたかも

◆獣害の実際の被害
→実際にいつ、誰が、どれだけの被害にあったか、被害の状況を聞けたかも

◆柵の設置、捕獲用の罠、捕獲後の動物への対応
→行政がいつから、どんな経緯で、どんなサポートをしてきたか聞けたかも

◆地域に生息している動物(カジカガエルは固有種、アライグマは外来種)
→昔はいたのに見かけなくなった生物、昔はいなかったのに今では見かける生物やその時期を聞くと周辺地域からのモノ・人の行き来による環境変化が聞けたかも


この場面に遭遇したときに聞けるエントリーポイントはたくさんありましたが、自分は何を知りたいのか、そのためには何を聞くべきか、限られた時間の中で瞬時に判断できる観察力と瞬発力を磨きたいです。


加藤愛子 ムラのミライ 研修事業コーディネーター)


これは私の祖父が自宅の畑に埋めておいた筒状の罠でモグラを捕獲した時の様子。
ちなみにアライグマの罠には、知人からのアドバイスで「あんドーナツ」を餌にした
そうですが、猫がかかったそうです。あんドーナツが餌なら私が罠にかかってもおかしくないかも。



 

2020年8月14日金曜日

会話の引き際が大事! 父との対話の中で効果発見

私はすぐに提案したり、前のめりに質問してしまう癖があり、相手が自分で答えを見つけられるように会話できていないと自覚しつつもなかなか直せないでいました。
そんななか父との対話で偶然、提案や前のめり質問をしなかったため父が自分で行動を起こしました。

晩ごはんが済んだあとの父との会話。
父がいつものように食後に高血圧の薬を服用しようとしたところ、「もう残りが少ないから病院にもらいに行かないと」と言ったことに対して、着地点を“父に薬に頼る以外の対処法がないか思い出してもらう”と着地点を設定して聞いてみました。

私:高血圧の薬っていつから飲んでるんだっけ?
父:倒れたあとだから、9年前かな。

私:今朝は血圧測ったの?
父:うん、最近高くて上が140あったんだよね。

私:あらま。倒れる前は医者に血圧高いと注意されたことあったの?
父:いや、なかったね。

私:入院した時は血圧高いって言われたの?
父:うーん、というか血圧の薬は血液をサラサラにするために飲んでるんだわ。ドロドロだと血圧が上がって血管つまるといかんで。

私:ふーん。薬を飲む以外に血液をサラサラに保つ方法は病院で説明された?
父:水をたくさん飲むことと、サラサラにする食べ物も教えてもらったな。

私:そうなんや。今日仕事には水持っていった?
父:500mlのペットボトル持っていった。

私:水筒はもってるんだっけ?

ここで、私は食器を洗うため席を立ち、会話をやめました。
その後、父が自分で
「そういえば去年母さんに保冷できる1.5リットルの水筒買ってもらったな。どこにあったっけ?」
と言って、水筒を探し、次の日にさっそくお茶を入れて持って行きました。

普段だったら、「水筒もって行きなよ」って提案していたと思いますが、たまたま会話をやめたことで父が自分で「水筒を持っていく」と決めた。会話の引き際がすこし分かった会話でした。

みなさんも周りの方との対話にメタファシリテーションを試してみてください。
暑い夏が続きますが、私の父のようにたくさんお水を飲んで熱中症にならないようお過ごしください。



加藤愛子 ムラのミライ 研修事業コーディネーター)


2020年6月28日日曜日

地域で助け合う、子育ての輪_第3話_西宮で迎える産前産後の子育て実態調査の実態

 【記録】西宮で迎える産前産後の子育て実態調査の実態(プロジェクトの記録 第3話)

In 608プロジェクト通信 西宮「地域で助け合う、子育ての輪」 by master

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」の記録

第3話(2019年6月28日号)「西宮で迎える産前産後の子育て実態調査の実態」

執筆=原康子

目次

ア・リトルと一緒にゼロから調査をつくる(2018年4月〜6月)
調査して何が分かるのか分からない?!(2018年9月)
調査無事終了終、報告書づくりがスタート(2018年11月〜2019年3月)

ア・リトルと一緒にゼロから調査をつくる(2018年4月〜6月)

今回は、西宮で産前産後を迎える方を対象にした子育て実態調査の実態を、原がお伝えします。

これまでに、いろいろな調査をしてきました。
大きな調査ですと、インドのいくつかの州政府スタッフや村人を相手に、小さな調査ですと、スラムのおばちゃんたちを相手に。
自分が直接インタビューするような調査もあれば、調査をする人にトレーニングをすることもありました。

どの調査でも共通していたのは「事実で実状を知ること」。
西宮プロジェクトa little(ア・リトル)をパートナー団体として実施した調査。
実は、日本で調査をするのは初めてのことでした。

2018年4月から6月までの3カ月間、こんな話し合いが続きました。
「何のために調査をするのか?」
「調査をどう活用したいのか?」
「何を聞くのか?」
「誰に聞くのか?」
「誰が調査員になるのか?」
「どのように聞くと実情が聞けるのか?」
質問表を作っては、作り変え、作っては作り変えという作業を何度もしました。
何度目かの話し合いで、やっと「何のために調査をするのか?」が見えてきました。
「西宮での産前産後の子育ての実状を把握した上で、今後の講座やサポートの中身を
考え、西宮での子育てを助け合える仕組みづくりにつなげる」

という調査の目的が決まりました。
そして私たちは、次の5つのテーマを選びました。
-妊娠・出産・子育ての講座について
-産前産後のサポートについて
-現在の家事(育児)について
-妊娠・出産・育児の悩みごとについて
-パートナーとの関係について
インターネットのアンケートに協力していただく方は、妊婦さんとそのパートナー、
0才から3才のお子さんをお持ちのご家族となりました。
またアンケートとは別に、調査員が1対1で上述のような産前、産後の方たちにインタビューをすることもやってみようとということになりました。

一般には
「どうしたいですか?」
「○○があったらいいと思いますか?」
というような「希望」や「将来のこと」を聞くアンケートが多いのですが、こうした質問は、相手の「考え」や「気持ち」は聞くことができますが、「事実」としての「現状」は、なかなか浮かび上がってきません。

そこで、この調査では、過去に実際に起こった事実を具体的に聞くことで、子育て中の方たちの実状を把握しようとしました。

ア・リトルのメンバーを中心に、西宮市内で子育て中の知り合いにもお声をかけていただき、個別インタビューを担当する調査員になってもらいました。
調査員として集まった方は女性が6人。
彼女たちには、インタビュー調査に協力していただく方に、産前産後に起こったことを思い出してもらいながら話してもらえるようなインタビュー方法の研修もしました。

例えば「よくお子さん連れで出かける場所はどこですか?」と聞かないで、「この1週間でお子さんと一緒に出かけた場所はどこでしたか?」と聞くようにしたり、「悩みを相談できる人はいますか?」と聞かないで、「産後の心や身体に悩みを相談した人は誰でしたか?」
「その人はどこに住んでいる方でしたか?」と具体的に事実を聞くような研修です。
こうして、いよいよ7月から調査がスタートしました。

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調査して何が分かるのか分からない?!(2018年9月)

100人を目標にしていたインターネット上のアンケートには、すでに80人くらいの方が回答してくださり、対面でのインタビューも目標の50人に近づいていた9月のある日のミーティング。
順調スタートから2カ月ほど経ったときです。

「この調査をやって、一体何がわかるのか、よくわからなくなってきた」
とア・リトルのメンバーに言われました。
対面でのインタビューでは、質問表のほかに西宮市の地図を使って、実際に産前産後のサポートや相談で頼った人の家にシールを貼ってもらう調査もあったのですが、
「この地図で、何がわかるのか、わからない。」
とも言われてしまいました。


「4月から6月まで、3カ月もかけて、何のための調査か、何を聞くのか、どうやって聞くのか、ずっと話し合ってきたのに〜」
と、かなりショックでした。

質問の一つ一つは細かい事実ですから調査途中には、全体像は、なかなか見えてきません。
「わからなくなった〜」というのは無理もないことなのです。



6人の調査員は、質問表や地図を片手に、1人で何十人もの人を相手に、具体的な事実を、繰り返し聞いていきました。
それは、森をみるのでも、木を見るのでもなく、木の葉の一枚、一枚を見るような作業です。
葉の一枚、一枚はとてもとても小さくて、その1枚、1枚が森を作っていることが、見えなくなってしまったのかな、と思いました。

それに調査を開始した7月までは月に何度も集まって、ミーティングをしてお互いに疑問な点はその場で話し合ってきましたが、7、8、9月は、調査で忙しくしていて月に1度の定期ミーティングでお互いに顔をあわす程度です。
そんなときは、メッセンジャーのグループを使って、4月から6月までの間に話し合った「何のための調査か?」という点を思い出してもらえるよう、
4月の最初のミーティングで話したときのこと
「何度も質問を考えて、今の調査表を作っていったこと」
などについて何度かメッセージを送りました。

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調査無事終了、報告書づくりがスタート(2018年11月〜2019年3月)

7月に始まったアンケートや個別にインタビューする調査は4カ月後の11月初めには無事終わりました。
調査員の皆さんの力で、合計104人にインターネットのアンケートにご回答いただき、そのうち59人が個別インタビューにご協力いただきました。

11月からは、アンケート結果の集計と報告書づくりの作業が始まりました。
ア・リトルの皆さんと一緒に、報告書を少しずつ完成に近づけてゆくなかで、産前、産後の女性たちの声にならない「助けて」という叫びが聞こえてきました。
次号では、調査を通じて聞こえてきた産前産後の方、特に女性が家事と育児と仕事を一人で抱え込んでいる現状とその解決策の光りが見えた調査結果についてお伝えしますので、どうぞお楽しみに。

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2020年5月30日土曜日

地域で助け合う、子育ての輪_第2話_“地域で助け合う”ってどういうこと?

 【記録】“地域で助け合う”ってどういうこと?(プロジェクトの記録 第2話)

In 608プロジェクト通信 西宮「地域で助け合う、子育ての輪」 by master2019年5月30日

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」の記録

第2話(2019年5月30日号) 「“地域で助け合う”ってどういうこと?」の巻

執筆=山岡美翔

こんにちは、第2回は私、山岡美翔が担当します。
みなさんは最近、誰かのちょっとしたひと言で「ふっと心が軽くなった」ということはありますか?
私は先日、子ども園に通う娘と二人で電車に乗っていたとき、隣り合わせた60歳くらいの女性の方に、声をかけられました。
「“今が一番かわいい時よね”って私もよく言われたけど、育てている親の方はそんなこと気が付く余裕もないくらい、必死よね」
こう言ってもらえて、数十年前に子育てしていた方も、私と同じ気持ちだったんだなと思うと、なんだか心がふっと軽くなりました。

目次

初めてのプロジェクトミーティング
調査で何を聞けば「助け合い」に繋がるのか
「助け合わない子育てが当たり前」は、いつから?
「ダメダメお母さん」という思い込みの正体
まずは「今、どんな子育てをしているか」を知る

初めてのプロジェクトミーティング

さて、2018年4月「西宮で広げる、地域で助け合う子育ての輪プロジェクト」(以下、西宮プロジェクト)がスタートしました。
4月12日に、初めてのプロジェクトミーティング。
ミーティングに参加したのは、a little(ア・リトル)の運営メンバー5人(ようこさん、ゆうこさん、きょうこさん、かなさん、しょうこさん)とムラのミライのと私。それに「なんだか面白そうなプロジェクトだな~」と飛び入り参加した和田信明(ムラのミライ海外事業統括)です。
ミーティングでは、役割分担やスケジュールについてあれこれ決めた後、7月からスタートする「子育て実態調査」の話になりました。

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調査で何を聞けば「助け合い」に繋がるのか

以下にご紹介するのは、調査のことを話し合っていたときの和田とア・リトルの皆さんとのやりとりです。

和田:「調査とは、仮説を検証すること」という話がさっき出ていましたね。
では、仮説とは何でしょう?
一同:???
(山岡、心の声:仮説って、予想とか予測みたいなことかな…?)

和田:仮説とは、「きっと〇〇だろう→だから△△を知りたい」ということです。
ようこさん:これまで2015年からやってきた家事サポート(料理、掃除などの有料家事サポート)の経験から、産後に“足りないものは何か”、“何があれば子育てが楽になったか?”、“何が特にしんどいのか?”などを知りたいです。
和田:皆さんの聞きたいことは「産後の子育て」のことなのですね?
一同:はい、そうです。
和田:「産後」とはいつから、いつまでのことですか?
ようこさん:出産してから3カ月後くらいまでかな。でも子どもから目が離せない3歳くらいのお子さんがいるご家庭に家事サポートに入ることも多いから、調査では子どもが3歳になるまでの家庭を対象にしたい。それに、産後だけではなくて、産前からサポートは必要だと思うので、妊娠中(産前)のご家庭のことも聞きたいな。
和田:では、今回の調査では、産前から3歳のお子さんがいるご家族のことを細かく聞いてゆく、ということになりますね。

かなさん:さっきから何度も家事サポートの話がでているでしょう。私、ア・リトルの家事サポートはいいなとは思うのだけど、ぶっちゃけ、自分は家事を外注するのは抵抗があるの。
和田:かなさんは、家事サポートを利用したことがありますか?
かなさん:家事サポートのモニターをしてほしいと頼まれたときに、一度利用しただけです。
ようこさん:何人か家事サポートのモニターをしてもらって、分かったのは“家事サポートは頼みにくい”という意見が結構あったこと。その理由は“夫に遠慮がある”、“一人で家事ができない自分はダメなお母さんという気がする”、“お金がかかる”など。調査では、何がハードルになって家事サポートを頼みにくいのか、という事実も知りたいです。

ゆうこさん:(調査に協力してくださる方)ご自身のことや、産前や産後の体や心のことについても聞きたい。
和田:ご自身のこととは、何を聞きたいのですか?
ゆうこさん:家事サポートを利用したら楽になるのに、という人は多いのに、家事をなかなか手放せない女性に何人も会うのですよ。
和田:そのような意識を変えたいということですか?
ゆうこさん:“家事も育児も私(女性)がしないとダメ”、“私はダメな母親”と、女性が思い込まなくていいように“ア・リトルがいるよ”と助け合いの輪を広げてゆけたらな、と思います。

ゆうこさんが“家事も育児も私(女性)がしないとダメ”と思い込んでいる女性が多い、と言ったあと、和田が「いつから子育てを助け合わなくなったか」という話をしました。
私はその話を聞き、「助け合わない子育てが当たり前」になったのは、私たちの母親世代からだったことを改めて理解しました。

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「助け合わない子育てが当たり前」は、いつから?

戦後まもない1950年代は、まだまだ台所や風呂を近隣の家同士で共有していたところも多く、日常的にご近所で調味料を貸し合ったり、子どもを預け合ったりしていました。
高度経済成長期を迎えた1960年代、若い夫婦の間で団地暮らしがブームに。
団地では台所も風呂も独立し住宅設備が整備された一方、母親が団地の密室で子育てをするようになります。
そして現在、そうした母親に育てられた世代が親になり、「子育ては母親がするもの」と思い込んで、子育ても家事も母親一人が担っているというのが現状だったのです。

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「ダメダメお母さん」という思い込みの正体

この話を聞いて、私が産後に感じた「ダメダメお母さん」という思い込みの正体に気づきました。
私の母親も結婚後、生まれ育った地方から神戸の団地に移り住みました。
父親は出張が多く、団地の閉ざされた空間で、母親は幼い子ども2人を育てながら、すべての家事を一人でこなしていました。
子育てが思い通りにいかない時もあり、母親は何度かノイローゼになりそうになったそうです。
それでも母親は「家事も子育ても、自分一人でやるのが当然」とその役割を担っていました。

そして、私も子どもが産まれて、誰にも頼らず、母親のように「一人で」子育てをすることが、「良い母親」だと思い込んでいたのです。
だからこそ、産後に子育てがうまくいかなかった時に、「一人で子育てをできない母親」=「ダメダメお母さん」と落ちこんでしまったのでした。

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まずは「今、どんな子育てをしているか」を知る

ア・リトルの活動を担っている会員のなかには、結婚後移り住んだ西宮で、知り合いもおらず、孤独な子育てをしていた経験がある方もいます。
2018年度に西宮プロジェクトで行う調査では、そんな経験をしてきた女性たちにも調査員となってもらえたら、という話になりました。
翌週のミーティングまでに、各自で「3歳までの子どもがいる方たちに、どんな子育てをしているか」、「産前(妊娠中)には、どんな準備をしたか」などの事実がわかる質問を考えてくることになりました。

この4月の会議から1年ちょっとが過ぎ、2019年5月半ばに調査報告会が終わったところです。
次回は、私にとっても、ムラのミライにとっても、初めてとなった「子育て実態調査」の中身をお伝えします。

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2020年4月22日水曜日

Zoomでメタファシ体験セミナー!

4/19(日)に、ムラのミライの香子さんによるメタファシ体験セミナーに参加しました。

午前は青年海外協力隊向け、午後は対象を定めない講座でした。
人に中々会えない状況の中、久しぶりの講座ということで少し緊張していましたが、Zoomを使うと他の方の名前が一目で確認できたり、二人ずつなどのグループ分けができたりなど、その便利さに感心するばかりでした。

午前の協力隊向けセミナーでは、ムラのミライのメタファシのきっかけとなったインドの村での青年ガンガイヤとのエピソードを紹介しました。
土地なしの「かわいそうな村人」という思い込みフィルターが“What”を使った事実質問をすることで剥がれ、唐辛子を山で自作する「リアルな彼の姿」を浮かび上がらせたのです。

また、午後のセミナーでは、香子さんが事実質問のみの対話、「なぜ」「どう」のNGワードを使った対話を二名の方と実践しました。会話の切り口は今日のお昼に食べたもので、どちらもにこやかで自然な会話でした。

二つの対話の唯一の違いは事実質問のみか、そうではないかということ。何気ない日常会話であれば、「どうして」「どうだった」などの思い込み質問を織り交ぜることもあります。ただ、課題解決において、相手と自分との話していることの認識を一致させる必要があるとき、これらの言葉は事実を曖昧にしてしまう落とし穴になりかねません。

事実質問を使って事実を思い出すことで、自分にある人脈や経験などの資源を思い出し、自己肯定感をアップし、課題解決に前向きに取り組める。
「何かを解決したいとき、自己肯定感が高いほうがいいですよね」という香子さんの言葉に、その通りだと思いました。

出来ないことが多い状況の中でも前向きに過ごすためには、事実質問を使って自己肯定感をアップさせることがカギではないかなと思いました。

(笠見 友香 ムラのミライ認定メタファシリテーション・トレーナー)

2020年4月17日金曜日

親子のコミュニケーションをよくするためのコツ=鉄板の鉄則  実践編 後編~夫婦で練習してみる~




前号の「実践編 前編」に挑戦された皆さん、やってみて、いかがでしたか?
今回はいよいよ最終回「実践編 後編~夫婦で練習してみる」をお届けします。




時間がかかる事実質問を使った対話術

「夫婦で練習してみる」の前に、少し前回までの復習です。
これまでの入門編、実践編に挑戦された方はお気づきかとおもいますが、
正直なところ、事実質問を使った対話術を習得するには、かなりの練習が必要です。
事実質問が思いつかない場合は、率直に、
「お願いがあるんだけど、〇〇してくれない」とか、
「これはお母さんの意見なんだけど、君はどう思う?」というように、
こちらの意図を明確にした物言いをするのが有効であることもすでに実証されています。

この手法と練習方法を詳しく説明するとかなり長くなります。
本当に関心をお持ちの方は、このブログの最後にあるPDFをご覧になって下さい。
このPDFは、私が書いた「対話型ファシリテーションの手ほどき」という小冊子のダイジェスト版で、
今回のブログ(入門編2回+実践編2回)の読者のために再編集したものです。


夫婦でやってみませんか


4月16日、いよいよ全国にも緊急事態宣言が出され、子どもだけではなく、両親ともに自宅に留まらなければならなくなったご家庭が増えていることでしょう。
母子のやり取りを横から見ているお父さんの中には、「あんなにガミガミ言わなくてもいいのに」と思いながらも、触らぬ神に祟りなしと黙っている方もいらっしゃるでしょう。

普段は、母親任せにしているので急に割って入るのは難しいかもしれません。
そんなお父さんでも、進路選択に際しては、口を出さざるをえなくなる時が必ずやって来るのです。その時に備えて、このお子さんと接する時間が嫌でも増えている今、もう少し参加の度合いを高めるよう努力してはいかがでしょう。


「人の振り見て我が振り直せ」が早道

あるいは、この際なので、このエッセイを二人で読みながら、互いにどう見えているか意見交換してみる機会にするという手もあります。
自分の振る舞いに対して自ら意識的になるのは簡単ではありません。
「人の振り見て我が振り直せ」と昔から言うように互いに気付かせ合うのが早道です。
ただし、その際に大切なのは、頭ごなしに断定的な評価を下したり、上から目線で提案したり、助言したりすることを厳に慎むことです。これが夫婦の間でできなければ、子どもとの間でもできませんよね。
逆に言えば、シングルペアレントの場合、あなた一人が変わればいいだけなので、却って好都合と言えるかもしれませんね。


家にいる時間は自己訓練のチャンス

毎日家族だけで顔を突き合わせていると、互いに感情的になりやすいことを私自身痛感するこの頃です。だからこそ、自分を冷静に客観的に見て、必要な自己抑制をするための自己訓練が必要になります。そういう親の姿を見せることほど素晴らしい教育はないと私たちは確信しています。

最後になりましたが、4回シリーズのエッセイのほんの少しでも「これならできそうだな」というところからでいいので意識してやってみてください。
お子さんへの質問がちょっと変わり、お子さんにもそのことがちょっと伝わったら、とても嬉しいです。