2021年4月27日火曜日

「ちゃんと」薬はまいたのに・・・

とある国の農業局職員と農家の会話です。
農業局職員は、新しい害虫忌避剤を普及させるための研修を農家に対して実施しましたが、農家からまだ虫が出ると知らせが入りました。
そこで、きちんと薬剤を散布しているのかどうか、確認するための質問を試みます。

役人 こんにちは。この前、唐辛子について私が指導した有機殺虫剤は撒きましたか?
農家 撒きましたよ。
役人 原材料は何を使いましたか?
農家 いわれた通りに(詳細は言わず)。
役人 30倍の水で薄めて、と研修で伝えましたが、その通りにしましたか?
農家 しました。
役人 効きましたか?
農家 効いたところもあるけど、まだ虫は出るね。なんで完全に効かないんだろう?
役人 ちゃんと葉っぱの後ろまで撒いておいてくださいね。

このような農家とのやり取りでは、「研修で指導したようにやっているようだけどなあ・・・」とあやふやな感じのまま、最後は職員からの指導で終わる会話になってしまっています。
そこで、メタファシリテーションのセオリーに従って聞いてみると、次のようになります。

役人 こんにちは。今日もインゲンがまた一段と成長していますね。立派ですね。
農家 はい、脇芽の摘心もやってるので、蔓の伸びがすごいんです。
役人 唐辛子の個所を見てもいいですか?。
農家 はい。(移動して)この前、教えてもらった有機殺虫剤は撒きましたよ。でもまだ虫がつくんです。
役人 そうですか。最後に撒いたのはいつでしたか?
農家 今朝です。
役人 薬剤は何から作りましたか?
農家 教わった通りに(詳細を言う)。
役人 何の道具を使いましたか?見せてもらってもいいですか?。
農家 これです(小さな手桶)。これのここまで原液を入れました(指で指しながら)。
役人 なるほど、ちょっとペットボトルで容量を量ってみましょう。だいたい100ミリリットルですね。これを水と混ぜたんですよね?何を使いましたか?
農家 これです(噴射器)。これの半分まで水を入れました。
役人 5リットルの容量の内2.5リットルですね。0.1リットルの原液に2.5リットルの水。この前、私がどれくらいに薄めるか言ったことを覚えていますか?
農家 何か違ったかな。よく覚えていないな。もう一回教えてくれ。
役人 手桶のここまで原液を入れたら、この噴射器の半分より少し多いくらい、水を混ぜてください。原液の30倍です。
農家 なるほど。
役人 撒いた時は、どのように噴射しましたか?
農家 (葉っぱの上に噴射器の先を向けて)こうやって・・・。
役人 葉っぱの後ろに虫を見たことはありますか?
農家 あるよ。・・・そうか、葉っぱの後ろも撒かないといけないな。

前の会話に比べて、農家の反応が随分と違うようになりますね。
まず最初に、良いところを見つけて農家の自己肯定感を高めています。
そして、量を確かめる際には、何グラム・何ミリリットルという単位を極力使わずに、実際に使った道具を目で確かめます。
実際に使った道具を見せてもらうことで、単なる「手桶」「噴射器」等の言葉から想像する大きさではなく、同じものを見ながら実際の量を確認できるのです。
これも一つの共通認識を持つ、ということです。

また、具体的に聞くということは、農家の人に散布した時のことを再現してもらうということです。
そうすることで、何が足りなかったのかを自分で見つけることができ、最後の「葉っぱの後ろにも撒く」という言葉を農家自身が言えるようになるのです。

(前川香子 ムラのミライ 海外事業チーフ)

 


 

2021年3月17日水曜日

「生きづらさ」の、外に出る

生きづらいという言葉がここ数年、メディアで良く聞かれます。
背景には色々とあるでしょうが、私はその原因の一つに、なんでも二極化して判断する社会の構図があると思っています。儲かるか儲からないか、好きか嫌いか、男か女か、若いかそうでないか、勝ち組か負け組か。
そうやって決めてしまった方が、敵味方が明確で戦いやすいし、何より、それ以外の色んなことを考えなくていい。その波にうまく乗れず、半ば諦観していた私に「おまけ組」の存在を示してくれたのが本著です。


20歳を過ぎてくらいから徐々に、世の中の理不尽や自分の現状への不満みたいなものと戦うよりも諦観する方向に気が向き始めていました。
小さい頃からクラスのグループやらヒエラルキーやらに順応できなかったり、高偏差値主義の高校生活についていけなかったり。大学に入れば、SDGsの授業でジェンダーについて討論した後に「それでも生む機能があるのなら使ってほしい」と言ってくる男子学生。家では、毎日見聞きする「家事を手伝ってますよ」レベルから深まらないジェンダー論議。就活では、今や新卒は神話と言われて中途で受けるも職歴や専門性で他と劣ると言われ、若いから新卒へと言われて行くと大卒と比べ若くないと言われ。
そうやって波に上手く乗れないでいると、いくら自分に信念があっても、ずっと揺らがず立ち続ける事は簡単なことではありません。就職エージェントに相談しても、私のことを聞こうとも理解しようともせず、「○○と○○のどっちかしかない」、もしくは「早くどちらかになれないなんてヤバくない?」と感じさせてくるのはなぜ?人はもっとグラデーションで、その度合いを見ようとしなくちゃ互いの存在を認めあえないのではないか。
ちょっと熱くなりました、すみません。本当は○○組とかはなくて、あるのはあなたと私という存在なんだ。おばちゃん信金で語られる「おまけ組」は、ずっとモヤモヤを抱えて、おかしいと感じることに対して立ち続けることを投げ捨てようとしていた私に、それを言語化して、もう一度自分を肯定する勇気を与えてくれました。


私はインドに縁もゆかりもなく、行ったこともないのですが、きっと日本社会よりも過酷な社会の仕組みの一番下の方で生活しているおばちゃん達が、原さん達との対話の中で、少しずつ自分たちの存在を肯定し、力を付けて、勝ち組でも負け組でもない、自分達の存在を勝ち取っていく姿は清々しいもので、こちらの気持ちまでさわやかになりました。
また、長らく経済的に苦しい環境に加え、外から持ち込まれた貧困の指標や支援のものさしで良いように計られてしまってきたがために培ってしまった“生きる術”を持つおばちゃん達に対して、その術を当然のことだと肯定し、常におばちゃん達と事実を確認しながら、おばちゃん達の可能性を見守っていた原さん達の我慢から、何が誠実なのかを考えました。
原さん達が指示をするわけでも提案をするわけでもないのにおばちゃん達が信金を設立して運営しているのは、それが、おばちゃん達が必要だと思うおばちゃん達の物だからです。そんな当たり前のことなんだけれども、社会のあらゆる関係性や構造の中で忘れ去られてしまうことを、既存の開発支援の定説や制約の中でも貫こうとする原さん達の姿勢に、また頑張ってみようというエネルギーをもらえました。

本書の内容とは別に、原さんの語り口や伝え方にも心の温かみや勇気をもらえる人は多いと思います。まず、途上国での支援という一見壮大で難しいテーマですが、ニュースの討論コーナーで専門家が話しているような専門用語とか理論解説などはほぼ出てこず、終始、原さん達とおばちゃん達による無声映画に原さんが活弁しているという感じで、途上国支援に馴染みのない人にも楽しめます。
そんな調子で、大学院で学んだ原さんが理論武装をしたまま現場を求め、たくさんの失敗をしたことをベースに話が語られていきます。失敗した自分を下げすぎず、開き直るわけでもなく、失敗からの改善を高らかに誇示するでもない。おばちゃん達の会話が、便宜上、岐阜弁で語られていることも、このおばちゃん達が良い人達とも悪い人達とも映らない、身近な人達の会話のように迫ってくるものがあります。そのような伝え方だからこそ、国際協力や開発をやろうとして前のめりになっている人には、じわじわと身につまされる思いがしてきて、結果として自分を振り返る機会を与えてくれます。そして、自分がどのくらい前のめりになっているかどうかを確認できるでしょう。
もちろん、支援に対しては、様々な立場での様々な考え方はあるでしょうが、自分がどう受益者の人達と関わっているのかを振り返る指標には成り得ます。そうして、いつでも帰ってきたくなるバイブルになっていくことと思います。私にとってもそのような作品になっています。
私はこの全体としてバランスの良い伝え方がとても好きなので、いつか自分もこのように伝えられる人になりたいと思います。

(田中沙知 メタファシリテーション講座修了生)

 

 

2021年3月8日月曜日

獣害対策地域リーダーの役割って?モヤモヤを事実質問で整理

ある日の某NPOオフィス。スタッフのAさんは、インターンのBさんから相談を受けていました。
Bさんは今度、ある自治体に「獣害対策地域リーダー」として赴任する予定です。先日、配属先の役場に研修に行ってきたのですが、どうもそれ以来、自分がこれから果たすべき役割についてモヤモヤし始めているので、話を聞いてほしいということでした。

【Aさんの心の声:「リーダーの役割について、部署内の共通認識がないのでは?検証してみよう】
A:(役場の中で)最初に「リーダーが必要で、こういう仕事をしてもらいたい」と話してくれたのは誰?
B:主任です。住民と町の橋渡しをしてほしいと言われました。
A:他に同じことを言われた人はいる?
B:はい。係長です。説明会の時に言われました。あまりにきれいなことを言われたので、どこかの言葉をそのまま言っているのかな?って思いました。
A:そうか~。他にも同じことを言っている人っていた?
B:聞いたのはその二人です。課長には言われませんでした。
A:なるほど、その二人から他に聞いた話はある?
B:はい。主任が「去年は雪が少なくてイノシシの被害が多かったけど、今年は雪が多いから、イノシシの数が減って被害も減ってくれるといい」と言っていました。その時、「イノシシの被害が減ったら、私の仕事なくなっちゃうのかな?」って思いました。
A:なるほど。

【Aさんの心の声:どうやら、モヤモヤの原因は部署の共通認識以前にもあるかも。よし、では方向転換して・・・】
A:主任からイノシシの被害をどうやって把握しているか、 聞いたことある?
B:はい。猟友会の人が巡回していて、住民の人から聞いたり、巡回中に見つけたら報告してもらっていると言っていました。
A:住民から直接役場に報告する仕組みがあるか聞いた?
B:聞いてないですが、見せてもらった報告は猟友会からだけでした。
【Aさんの心の声:あれ、もしかして役場は被害状況を把握できていないのでは?】
A:サルの被害もあるんだっけ?
B:はい。サルの被害は一部の人が騒いでいるだけだと言っていました。
A:主任はその人と直接話をしたか聞いた?
B:してないと言っていました。役場にも直接話が来たわけではなく、知り合いを介して「こういう情報がある」って伝わってきただけです。
A:そうか~。
B:はい。その知り合いの人が「電気柵を張ったらいいよ」とアドバイスしたら、その人が「そういうことじゃない、一度見に来て話を聞いてほしい」と言っていた・・・と言っていたそうです。
A:で、その後、役場は話を聞きに行ったかどうか聞いた?
B:行ったとは聞いていないです。
A:そうか~。サルの被害はその人だけなのかな?
B:町内全体にサルは出没していて、猟友会が巡回してると言っていました。
A:なるほど。猟友会の人が巡回始めたのって、いつからだっけ?
B:去年の8月からです。
A:そっか~、去年からか~。
B:はい・・・。
A:その前はどうやって、把握していたんだろうね?
B:わからないです・・・。おととしはほとんど被害がなかったといっていました。
A:うん。おととしはほとんど被害なかったのね・・・。
B:はい・・・。
A:(沈黙)
B:(少ししてから)・・・何も把握していないってことなんですね!把握していないから、リーダーの役割もイメージできていないんですね。
研修では事務仕事しかしていないから、被害がなかったら事務員みたいになるんじゃないかと、心配でした。私いらないんじゃないかな?って思っていたんです。
私が入ったら、まず最初に、町に被害情報が上がってくる仕組みを作ろうと思います!
モヤモヤが晴れました!

具体的な被害状況が把握できていない、ということを一つひとつ確認し、Bさんがそれを咀嚼するのを待ったAさん。その結果、Bさんは、まず被害状況を把握する、という大事な仕事の第一歩を自ら発見することができました。
そこに自分自身の役割を見出すことができて、モチベーションが上がったBさん。これからの活動が楽しみです。

(宮下和佳 ムラのミライ 専務理事

 

写真はインドのおサルさん
(本文とは無関係です)


 

2020年12月4日金曜日

「管理が大変」の中身を分解してみたら・・・

私が活動するNPO法人おーでらすでは、人も自然も「イキイキ」と暮らせる地域を目ざす活動の一環として、鳥獣害の防止とコントロールの支援に取り組んでいます。
2019年に講座に参加して以降、活動現場にメタファシリテーションを取り入れています。
 


先日、一人の農家さんに「電気柵の管理が大変だからワイヤーメッシュを入れたい」と言われ、その設置指導を行ったのちの様子を聞きに行きました。
ワイヤーメッシュでは田んぼ全体を囲むことができなかったので、他のところは電気柵を設置すると言っていたのですが、できていませんでした。


そこで、もしかしたら年間の農作業のスケジュール管理もできていないのかもしれない・・・と思い、年間を通しての作付け品目や面積、作業にかかる日数、手伝ってもらっている人手、その人の賃金など、事実質問を使って聞いてみました。

すると・・・「こんなに作業があるの?!」とびっくりしました。


この状態で電気柵の設置・管理は無理だということがわかりました。

ご本人も無理なのはうすうすわかっていて、最終的には、機械で除草作業ができるところを電気柵で守り、機械が入れない所をワイヤーメッシュに切り替えていく方向で話がまとまりました。


さらに、ワイヤーメッシュや電気柵を設置する時期も「この時がいい!」というのがわかり、作業を効率的に行えるイメージができました。


改めて、私自身も「メタファシリテーションを使った時の効能はこういうことか~」と実感した瞬間でした。
まだまだ、引き際がわからずしゃべりすぎてしまう部分もありますが、少しずつ身について来ているようで、うれしくなりました。

 

今野万里子 (特活)おーでらす 代表理事)

 

柵の設置作業をしたときの様子。

 

2020年11月12日木曜日

「いつ」「最近」を聞くだけで出てくる、意外なエピソード

2020年10月26日、愛知県のとある山を車で走っていると、以前は茅葺屋根であったであろう家が密集している集落が見えてきました(茅葺屋根の上からトタンでカバーしてある屋根)。
道路沿いに茅葺き屋根がそのまま見える状態の家が1軒だけ残っていたので、写真を撮ろうとカメラを持って車を降りました。
その家は空き家のようで、写真を撮ろうと周りを見ていた時に、近くを犬の散歩をしていたおじいさんが声をかけてくださいました。

おじいさん(以下Sさん):いいカメラ持ってるね。なんかの取材?

私:いえ、通りがかりに趣きのあるお家を見つけたので思わず車を停めてしまいました。ここは写真をとっても大丈夫かご存知ですか?(私有地の看板がたっていた)

Sさん:大丈夫だよ!奥にもっと立派な古民家があるよ。ついて行ってあげるから、写真とったらいいよ。

私:ありがとうございます。お願いします。私は〇〇市からドライブで来た加藤愛子といいますが、お名前を伺ってもいいですか?

Sさん:Sだよ。この家は10年以上前に市が家主から譲り受けて、改装して宿泊施設にしたんだ。手前の建物はコミュニティセンターで地域の野菜も売っていたんだよ。茅葺屋根が珍しくて、雪が降ったときなんか写真家の人がたくさん来たり、一時期は観光客がたくさん来たんだけどね。10年前くらいに相続の関係で元の家主が返して欲しいと言ったもんで閉鎖したんだ。

私:そうですか、こんなにいいお家をそのままにするなんてもったいないですね。

Sさん:そうだよ。ここの屋根なんて杉で作った明治くらいの様式だよ。

私:詳しいですね。失礼ですがSさんはおいくつなんですか?

Sさん:今年76になるね。君のおじいさんくらいだな。

私:そうですか。とってもお元気でお若いですね!生まれも育ちもこちらの集落ですか?

Sさん:そうだよ。ここから数軒隣の家だよ。ほら、あそこに見えるのは僕の畑だよ。(畑の周りを囲ってある金属の柵が目に飛び込んできたので、獣害について聞いてみたいと思った)

私:広い畑ですね!今あの畑には何の野菜が育っていますか?

Sさん:今はネギ、玉ねぎ、大根、人参、白菜くらいかな。

私:Sさんが育てられたのですか?

S:そうだよ。僕が全部やってるんだ。

私:たくさん育てられてすごいですね。あの畑の周りの柵もSさんが取り付けたのですか?

Sさん:うん、まぁね。

私:いつ取り付けたんですか?

Sさん:5~6年前かな。市役所に申請すると補助金をだしてくれるようになったもんで。

私:そうなんですね。その前は何も囲いはしていなかったのですか?

Sさん:そうだね、お金も手間もかかるから。
5~6年前に補助が受けられることになって、ありがたい。

私:市役所は設置する時何を補助してくれたのですか?

Sさん:柵の費用と設置も手伝ってくれたな。

私:そうですか。あの柵には電気が通っていますか?

S:いや、あれは通っていない。猿が出る地域ではもっと目が細かくて上からも侵入できないような電気柵を使ってると思うけど。ここでは鹿や猪が出るよ。鹿なんかしょっちゅうで、よく道を歩いてるよ。

私:そうなんですか!最近ではいつ鹿を見ましたか?

Sさん:今日のお昼頃も道歩いとったよ。

私:昼間から歩いているんですか!ここ最近で何か捕まえた動物はいましたか?

Sさん:つい今さっき家の裏に仕掛けたかごにアライグマがかかってたよ。(日付時刻入りの写真を見せてくれた)

私:すごい!今このアライグマはどこにいるんですか?

Sさん:まだ家の裏にいるよ。

私:まだいるんですね!罠に餌は何を入れたんですか?私の祖父も畑で捕まえようとしたのですが、だめだったんです。

Sさん:(自慢気に)魚肉ソーセージを入れたんだよ~。

私:そうですか!それはいいことを聞きました。私の祖父にも伝えておきます。そういえば、さっき鹿が昼間から歩いているのを見たと言われていましたが、Sさんが小学生くらいの時には見かけたか覚えていますか?

Sさん:いや、その頃はないね~。だんだん鹿の鳴き声が家にいても聞こえるようになってきたんだよね。夜8時にもなると山から雄鹿が求愛する声が聞こえるんだよ。

私:聞こえるようになってきたのはいつごろか覚えていますか?

Sさん:たしか僕が40歳くらいのときだったから、36年位前かな。

私:よく覚えていらっしゃいますね。その時期にこの地域で地域開発事業や大きな出来事があったのですか?(これは曖昧質問かも。そして私の憶測が色濃く反映された質問。)

Sさん:どうだったかなぁ、、、。じつは40歳ごろ市役所の地域観光課にちょうど務めていて、鹿の声を利用して、「鹿の声を聞く会」といったツアー旅行を企画したんだ。当時は鹿の声なんて珍しいから50人くらい人が集まって、名古屋から観光バスでお客さんが来たんだよね。その時は鹿がうまく鳴いてくれるように祈ったもんだよ。結局ちゃんと鳴いてくれてお客さんは喜んでくれたからよかった。そんな事があったから、鹿が降りてくるようになったタイミングは印象深く覚えているんだ。

私:そうでしたか~。面白いですね!他にもそういったツアーを企画されたことはありましたか?

Sさん:夏には「カジカガエルの声を聞く会」を企画したら、これもたくさん人が集まったんだよ!

私:カジカガエルって私は初めて聞きましたけど、最近でもこの辺りで見られたことありますか?

Sさん:うん、見てはないけど今年の夏も声が聞こえたからまだいるんじゃないかな。

ここでSさんの連れていた老犬がクンクン吠えて早く帰りたそうだったので、お礼を言って別れました。
10分くらいしか立ち話できませんでしたが、「いつ?」と聞いていくとアライグマをついさっき捕まえたことや昔ツアーを企画したエピソードなど、予想もしなかった話題が飛び出してきてとても興味深かったです。

この会話を書き出したのは対話から3週間経ったころでしたが、事実質問で質問を繋げていくと、その時どんな質問をしてどんな会話の流れになったか、メモを取らなくても後から鮮明に思い出せました。

また、こう書き出してみると、もっと深堀りして質問できたポイントがたくさんあると気づきました。

◆この地域の茅葺屋根の家
→この地域やSさん自身の住環境、生活様式、自然資源の変化が聞けたかも

◆Sさんの畑
→Sさんの畑や周囲の畑の栽培作物の歴史、地域の産業が聞けたかも

◆鹿の声が聞こえるようになった時期
→何か地域で環境に変化を与えるきっかけとなる出来事があったか聞けたかも

◆獣害の実際の被害
→実際にいつ、誰が、どれだけの被害にあったか、被害の状況を聞けたかも

◆柵の設置、捕獲用の罠、捕獲後の動物への対応
→行政がいつから、どんな経緯で、どんなサポートをしてきたか聞けたかも

◆地域に生息している動物(カジカガエルは固有種、アライグマは外来種)
→昔はいたのに見かけなくなった生物、昔はいなかったのに今では見かける生物やその時期を聞くと周辺地域からのモノ・人の行き来による環境変化が聞けたかも


この場面に遭遇したときに聞けるエントリーポイントはたくさんありましたが、自分は何を知りたいのか、そのためには何を聞くべきか、限られた時間の中で瞬時に判断できる観察力と瞬発力を磨きたいです。


加藤愛子 ムラのミライ 研修事業コーディネーター)


これは私の祖父が自宅の畑に埋めておいた筒状の罠でモグラを捕獲した時の様子。
ちなみにアライグマの罠には、知人からのアドバイスで「あんドーナツ」を餌にした
そうですが、猫がかかったそうです。あんドーナツが餌なら私が罠にかかってもおかしくないかも。



 

2020年8月14日金曜日

会話の引き際が大事! 父との対話の中で効果発見

私はすぐに提案したり、前のめりに質問してしまう癖があり、相手が自分で答えを見つけられるように会話できていないと自覚しつつもなかなか直せないでいました。
そんななか父との対話で偶然、提案や前のめり質問をしなかったため父が自分で行動を起こしました。

晩ごはんが済んだあとの父との会話。
父がいつものように食後に高血圧の薬を服用しようとしたところ、「もう残りが少ないから病院にもらいに行かないと」と言ったことに対して、着地点を“父に薬に頼る以外の対処法がないか思い出してもらう”と着地点を設定して聞いてみました。

私:高血圧の薬っていつから飲んでるんだっけ?
父:倒れたあとだから、9年前かな。

私:今朝は血圧測ったの?
父:うん、最近高くて上が140あったんだよね。

私:あらま。倒れる前は医者に血圧高いと注意されたことあったの?
父:いや、なかったね。

私:入院した時は血圧高いって言われたの?
父:うーん、というか血圧の薬は血液をサラサラにするために飲んでるんだわ。ドロドロだと血圧が上がって血管つまるといかんで。

私:ふーん。薬を飲む以外に血液をサラサラに保つ方法は病院で説明された?
父:水をたくさん飲むことと、サラサラにする食べ物も教えてもらったな。

私:そうなんや。今日仕事には水持っていった?
父:500mlのペットボトル持っていった。

私:水筒はもってるんだっけ?

ここで、私は食器を洗うため席を立ち、会話をやめました。
その後、父が自分で
「そういえば去年母さんに保冷できる1.5リットルの水筒買ってもらったな。どこにあったっけ?」
と言って、水筒を探し、次の日にさっそくお茶を入れて持って行きました。

普段だったら、「水筒もって行きなよ」って提案していたと思いますが、たまたま会話をやめたことで父が自分で「水筒を持っていく」と決めた。会話の引き際がすこし分かった会話でした。

みなさんも周りの方との対話にメタファシリテーションを試してみてください。
暑い夏が続きますが、私の父のようにたくさんお水を飲んで熱中症にならないようお過ごしください。



加藤愛子 ムラのミライ 研修事業コーディネーター)


2020年4月22日水曜日

Zoomでメタファシ体験セミナー!

4/19(日)に、ムラのミライの香子さんによるメタファシ体験セミナーに参加しました。

午前は青年海外協力隊向け、午後は対象を定めない講座でした。
人に中々会えない状況の中、久しぶりの講座ということで少し緊張していましたが、Zoomを使うと他の方の名前が一目で確認できたり、二人ずつなどのグループ分けができたりなど、その便利さに感心するばかりでした。

午前の協力隊向けセミナーでは、ムラのミライのメタファシのきっかけとなったインドの村での青年ガンガイヤとのエピソードを紹介しました。
土地なしの「かわいそうな村人」という思い込みフィルターが“What”を使った事実質問をすることで剥がれ、唐辛子を山で自作する「リアルな彼の姿」を浮かび上がらせたのです。

また、午後のセミナーでは、香子さんが事実質問のみの対話、「なぜ」「どう」のNGワードを使った対話を二名の方と実践しました。会話の切り口は今日のお昼に食べたもので、どちらもにこやかで自然な会話でした。

二つの対話の唯一の違いは事実質問のみか、そうではないかということ。何気ない日常会話であれば、「どうして」「どうだった」などの思い込み質問を織り交ぜることもあります。ただ、課題解決において、相手と自分との話していることの認識を一致させる必要があるとき、これらの言葉は事実を曖昧にしてしまう落とし穴になりかねません。

事実質問を使って事実を思い出すことで、自分にある人脈や経験などの資源を思い出し、自己肯定感をアップし、課題解決に前向きに取り組める。
「何かを解決したいとき、自己肯定感が高いほうがいいですよね」という香子さんの言葉に、その通りだと思いました。

出来ないことが多い状況の中でも前向きに過ごすためには、事実質問を使って自己肯定感をアップさせることがカギではないかなと思いました。

(笠見 友香 ムラのミライ認定メタファシリテーション・トレーナー)