2020年1月10日金曜日

Terangaの国セネガル

今年開催されるオリンピック招致の際に、ある言葉を日本の文化としてアピールしたスピーチが話題になりましたが覚えていますか?

「お・も・て・な・し」

実はセネガルにもTeranga(テランガ)という文化が強く根付いています。
Terangaとは「おもてなし」「ホスピタリティ」「シェアする」といった意味です。

実際にここ数ヶ月でもいたるところでセネガルの方のTeranga精神を感じました。
例えば、仲良くなると「うちにご飯食べに来なよ」と誘ってくれます。
ご飯を食べるときには大皿に盛ったご飯をみんなで分けながら食べます。
盛り付けられている魚・肉・野菜などの具がまるごと乗っているものを、全員がまんべんなく食べられるようにちぎって分けます。

また、アタヤという甘いミントティーを軒先で作っている人がいると、「アタヤ飲んでいきな~」と誘ってくれたり、とにかく知っている人も知らない人も分け隔てなく招いてくれます。

私が泊まっている宿のガードマンさんやそのお友達が話したり、テレビを見ているところによく混ぜてもらっていますが、毎晩アタヤを作って、断らない限り次から次へと勧めてくれます。一日にいったいいくらアタヤに出費するのか気になり、事実質問で聞いてみました。

私(以下、A):今日はアタヤに使う茶葉は何パック買ったの?
ガードマン(以下、B):今日は3パックかな。
A:昨日は何パック買ったの?
B:昨日も3パック買ったね。
A:どこで買ったの?
B:近くのブティック(商店)だよ。
A:1パックいくら?
B:150Fだったね
A:て、ことは3パックで450F(約90円)だね。じゃあ、お砂糖は何袋買ったの?
B:今日はsoow(ヨーグルト)も作ったから2袋買ったよ。
A:それも商店で買ったの?
B:うん。でもアタヤだけ作る日は1袋で大丈夫だよ。
A:砂糖は1袋いくらだったの?
B:一袋これも150F。
A:2袋で300F(約60円)か。じゃあ、ミントはどこで買ったの?
B:これもブティックで100F(20円)くらいだったかな。
A:じゃぁ、アタヤを沸かす燃料の炭はいくら?
B:一袋100F(20円)でこれもブティックで手に入るよ。
A:何でもブティックで手に入るんだね。てことは合計950F(190円)かぁ。一月、30日とすると28,500F (5,700円)!

Bさんも頭では大体わかっていたけど計算したことは無かったようで少し驚いていましたが 、すかさずこう言われてしまいました。
「これはTerangaだからお金じゃないんだよ~。僕が一生懸命働くのは友達にこうやってアタヤを配って楽しい幸せな時間をシェアするためなんだ。Richという事はただお金をたくさん持っていることじゃなくて、どれだけそれをみんなのために使えるかなんだ。それに心からTerangaしていたら神様はちゃんと見ていて、困ったときには仲間が助けてくれるんだよ。」

はい、ごもっともです。
事実質問したことでいくら出費しているかだけでなく、彼らのTerangaの考えも聞くことができました。同時に、自分がいかに「自分のもの」「他人のもの」の線引をしているか自分にも気づきがありました。そもそも、そこに境界線の意識をあまり持たない彼らにとってはアタヤの出費など気にならなかったのかもしれません。セネガルの人にとってTeranagaし合うことは助け合いネットワーク作りとしても大切な意味合いを持っていると思います。
疲れていたり時間がなかったり、余裕がないとすぐに自分優先になってしまう私。
お金や置かれた状況に余裕がなくても、相手のことを優先するセネガルの人の姿勢には教わることばかりです。

相手が快適に過ごせるように細やかに心配りする日本の「おもてなし」
別け隔てなく相手を受け入れ、幸せを分かち合うセネガルの「Teranga」
方法はそれぞれだけれど、「相手を想う」という一番大切な部分は日本もセネガルも共通しています。

さぁ、みなさんは明日どんな“おもてなし/Teranga”をしますか?



PS:ムラのミライのセネガル駐在員 菊地さんは、
すぐに些細なことや相手の気持ちに気づき、さり気なくフォローして下さったり、
どこかにちょっと外出したらお土産を用意して下さったり、
「おもてなし」と「テランガ」を兼ね備えています^^

(加藤愛子 ムラのミライ インターン)


セネガル・プロジェクトへのご寄付を募っています。
バナーのリンク先で、プロジェクトの背景・これまでの成果・今後の活動などをご覧頂けます
http://muranomirai.org/donationsenegal2019

2020年1月9日木曜日

地域で助け合う、子育ての輪_第7話_頼りにする、頼りにされるネットワークの広がり

 

【記録】頼りにする、頼りにされるネットワークの広がり(プロジェクトの記録 第7話)

In 608プロジェクト通信 西宮「地域で助け合う、子育ての輪」 by master2020年1月9日

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」の記録

第7話(2020年1月9日号)頼りにする、頼りにされるネットワークの広がり

執筆=山岡美翔 ムラのミライ理事

新年を迎え、新しい目標を立てられた方もいらっしゃるでしょうか。西宮プロジェクトでは、2020年も西宮市で助け合う子育ての輪を広げようと、前話でお話ししたパートナーシップ講座、地域子育サポーター養成講座に向けた準備がすでに始まっています。
今回は、そんな講座のお知らせをするとともに、西宮プロジェクトのパートナーであるNPO法人a little(ア・リトル)と西宮市の初めての協働イベント「もうひとつの両親学級」についてのご報告です。11月30日に実施した「もうひとつの両親学級」では妊娠中のご夫婦を対象に、一人ひとりに寄り添ったバースプランづくりやマタニティヨガなどを行いました。
イベント後も参加者とア・リトルの間に「頼りにする、頼りにされる」新しいネットワークの広がりが生まれています。私たちの活動が、プロジェクト通信を読んで下さっている皆様の、がんばりすぎない暮らしのヒントになれば嬉しいです。

目次

「もうひとつ」の両親学級
新しい家族を迎えるための18の質問
「家族以外の話し相手は本当に必要でしょうか?」
夫婦で知っていること、知らないことを整理することが、子育てのスタートラインに
時間を忘れて相談できる保健師・助産師相談ブース
出汁を取らない料理講座?
「頼りにする、頼りにされる」ネットワークにあなたも参加しませんか?

「もうひとつ」の両親学級

「もうひとつの両親学級」は、2019年11月30日に西宮市未来づくりパートナー事業の一環として実施しました。行政との協働を通じて、昨年度私たちが出会えなかった初めて妊娠・出産を迎える方と出会い、繋がることが目的です。今回西宮市と協働イベントを実施したことで、例えば「家族以外の誰に頼ったらいいのか分からない」、「赤ちゃんと過ごせる場所は公園以外には思いつかない」という方にも多く出会うことができました。


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新しい家族を迎えるための18の質問

イベントは午前・午後の二部制で、妊娠中のご夫婦が①バースプランづくり、②保健師・助産師相談、③マタニティヨガ、④マタニティフォト、⑤ミニ料理講座の5つのブースを順番に回りました。ムラのミライの原と私は、最初のバースプランづくりブースの企画・進行を担当し、ア・リトルのゆうこさんがリソースパーソンとして産後の体験を話しました。


私たちが用意したのは、「新しい家族を迎えるための18の質問」です。一般のバースプランは、最初から計画に入りますが、まずは現状認識=「知らないことを知る」ことを目標にご夫婦で質問票に答えてもらいました。ご夫婦の妊娠・出産・子育てについての知識や経験、ネットワークを思い出し、現状の点数をつけ、出産までに準備することを整理していただくことができました。



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「家族以外の話し相手は本当に必要でしょうか?」

午後の部のバースプランづくりでは、時間に余裕があり参加者からたくさんの質問がありました。特に印象的だった質問は、参加男性から「産後家族以外の話し相手は本当に必要でしょうか?」と聞いていただいたこと。ア・リトルのゆうこさんが、産後ブルーや産後クライシスの実体験を話し、質問をされた男性は真剣にメモを取り、それ以外の参加者の方にとっても家族以外のネットワークがあるとき、ないときの違いについて知っていただく機会となりました。

私自身も、初めての妊娠のときには、結婚後に引っ越した街で、夫と職場の人以外の話し相手がいませんでした。妊娠による退職を機に職場の人とも話す機会がなくなり、産後は夫としか話せず、だんだんと苛立ちが募りました。でも、参加者の方と同じようにそもそも産前には、家族以外の子育て支援のネットワークがあることはもちろん、家族以外の人に頼っていいということすら知りませんでした。

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夫婦で知っていること、知らないことを整理することが、子育てのスタートラインに

参加者の方には、「新しい家族を迎えるための18の質問」に答えることで、「何を知らないのか」、「何を知っておくと頑張りすぎなくていいのか」についてご夫婦で持っている情報や知識には差があることを実感していただくことができました。こうして二人で足並みを揃えていただき、次は保健師・助産師相談ブースです。バースプランブースでも特に質問が多かった家族以外のネットワークやサポートについては、経験豊富な保健師、助産師から情報を提供していただいたほか、産後1か月を養生したア・リトルゆうこさんの部屋を再現し展示しました。

私も第二子を妊娠中だったので、ここからは参加者としてイベントに参加。相談ブースでは、地域子育てサポーター養成講座講師でもある助産師の森田さんに「第二子出産の不安」について質問をしました。

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時間を忘れて相談できる保健師・助産師相談ブース

私には、子ども園に通う娘がいます。私が第二子を妊娠してから、赤ちゃんを抱っこすることを一番の楽しみにしているのですが、首が座らないうちから幼児に赤ちゃんを抱っこできるのか不安でした。ちょうどイベントの前日も、私が「抱っこするのは、首が座ってからだから春になる頃かな。」と言うと、「そんなにたくさん待てないよ。すぐに抱っこしたいのに…。」と悲しそうな顔をしていました。

森田さんに相談すると、「生まれたての赤ちゃんでも、どんどん上の子に抱っこしてもらって下さい。」と驚きの一言。抱っこの仕方は、まず親が上の子を抱っこし、その上に赤ちゃんをもたれさせるようにして親が支えるようにする、そうすることで上の子も抱っこできるだけではなく、自分が一番で、下の子が二番だという順序を実感し、安心するそうです。

参加者に対して保健師・助産師の数が多かったこともあり、時間を忘れて他にも何気なく疑問に思って誰にも聞けなかったことまで色々なことを相談することができました。産前は男女ともに、仕事をしていて相談窓口が開いている平日の時間帯には相談に行くことが難しく、産後も赤ちゃんの定期健診では、参加人数が多く、保健師・助産師さんと話す時間が限られているので、このように産前の週末に、ゆったりと夫婦で相談できる機会はとても貴重だと感じました。

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出汁を取らない料理講座?

私が参加して一番嬉しかったのは、最後のミニ料理講座。ちょうど、バースプランで頭を使い、マタニティヨガで心身ともに緩まり、心地のいい疲労感と空腹を感じていたときでした。料理講座と聞いて、調理実習があるのかと構えていたら、なんと美味しい炊き込みご飯とお味噌汁を食べながら話を聞くだけの30分。講師は、ア・リトル会員でもあるにしごやゆみこさん。短い時間で、産後養生のための栄養価の高く、簡単に作れるレシピを実演して下さいました。

紹介のあった産前産後の料理のポイントは、たった2つ。①食事作りの「合格ライン」をぐぐっと下げてみること。いつも通りを目指さず、一汁一菜や、大皿プレート料理を取り入れると洗い物も減り、男性でも簡単に料理に取り組むことができます。②「まごわやさしい」を意識すること。試食した炊き込みご飯の具材は、切り干し大根としらすだけ、みそ汁は玉ねぎ、人参、しめじだけだったのですが、栄養価の高い乾物や、魚・野菜のうまみのおかげで、出汁が入っていないのに大満足の料理でした。

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「頼りにする、頼りにされる」ネットワークにあなたも参加しませんか?

「もうひとつの両親学級」から二日後、参加したお一人の方から赤ちゃんが生まれたという嬉しい報告がありました。また他の参加者は、ア・リトルが毎週開催しているマタニティヨガに引き続き参加して下さったり、家事サポートの依頼があったりと、両親学級のあとも参加者が繋がり、「頼りにする、頼りにされる」ネットワークが広がっています。

2020年の講座は、いよいよ2月から始まります。3月には座談会も予定していますので、関西の方、お近くに来られる機会がある方のご参加をお待ちしています。

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