2019年6月28日金曜日

地域で助け合う、子育ての輪_第3話_西宮で迎える産前産後の子育て実態調査の実態

 【記録】西宮で迎える産前産後の子育て実態調査の実態(プロジェクトの記録 第3話)

In 608プロジェクト通信 西宮「地域で助け合う、子育ての輪」 by master

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」の記録

第3話(2019年6月28日号)「西宮で迎える産前産後の子育て実態調査の実態」

執筆=原康子

目次

ア・リトルと一緒にゼロから調査をつくる(2018年4月〜6月)
調査して何が分かるのか分からない?!(2018年9月)
調査無事終了終、報告書づくりがスタート(2018年11月〜2019年3月)

ア・リトルと一緒にゼロから調査をつくる(2018年4月〜6月)

今回は、西宮で産前産後を迎える方を対象にした子育て実態調査の実態を、原がお伝えします。

これまでに、いろいろな調査をしてきました。
大きな調査ですと、インドのいくつかの州政府スタッフや村人を相手に、小さな調査ですと、スラムのおばちゃんたちを相手に。
自分が直接インタビューするような調査もあれば、調査をする人にトレーニングをすることもありました。

どの調査でも共通していたのは「事実で実状を知ること」。
西宮プロジェクトa little(ア・リトル)をパートナー団体として実施した調査。
実は、日本で調査をするのは初めてのことでした。

2018年4月から6月までの3カ月間、こんな話し合いが続きました。
「何のために調査をするのか?」
「調査をどう活用したいのか?」
「何を聞くのか?」
「誰に聞くのか?」
「誰が調査員になるのか?」
「どのように聞くと実情が聞けるのか?」
質問表を作っては、作り変え、作っては作り変えという作業を何度もしました。
何度目かの話し合いで、やっと「何のために調査をするのか?」が見えてきました。
「西宮での産前産後の子育ての実状を把握した上で、今後の講座やサポートの中身を
考え、西宮での子育てを助け合える仕組みづくりにつなげる」

という調査の目的が決まりました。
そして私たちは、次の5つのテーマを選びました。
-妊娠・出産・子育ての講座について
-産前産後のサポートについて
-現在の家事(育児)について
-妊娠・出産・育児の悩みごとについて
-パートナーとの関係について
インターネットのアンケートに協力していただく方は、妊婦さんとそのパートナー、
0才から3才のお子さんをお持ちのご家族となりました。
またアンケートとは別に、調査員が1対1で上述のような産前、産後の方たちにインタビューをすることもやってみようとということになりました。

一般には
「どうしたいですか?」
「○○があったらいいと思いますか?」
というような「希望」や「将来のこと」を聞くアンケートが多いのですが、こうした質問は、相手の「考え」や「気持ち」は聞くことができますが、「事実」としての「現状」は、なかなか浮かび上がってきません。

そこで、この調査では、過去に実際に起こった事実を具体的に聞くことで、子育て中の方たちの実状を把握しようとしました。

ア・リトルのメンバーを中心に、西宮市内で子育て中の知り合いにもお声をかけていただき、個別インタビューを担当する調査員になってもらいました。
調査員として集まった方は女性が6人。
彼女たちには、インタビュー調査に協力していただく方に、産前産後に起こったことを思い出してもらいながら話してもらえるようなインタビュー方法の研修もしました。

例えば「よくお子さん連れで出かける場所はどこですか?」と聞かないで、「この1週間でお子さんと一緒に出かけた場所はどこでしたか?」と聞くようにしたり、「悩みを相談できる人はいますか?」と聞かないで、「産後の心や身体に悩みを相談した人は誰でしたか?」
「その人はどこに住んでいる方でしたか?」と具体的に事実を聞くような研修です。
こうして、いよいよ7月から調査がスタートしました。

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調査して何が分かるのか分からない?!(2018年9月)

100人を目標にしていたインターネット上のアンケートには、すでに80人くらいの方が回答してくださり、対面でのインタビューも目標の50人に近づいていた9月のある日のミーティング。
順調スタートから2カ月ほど経ったときです。

「この調査をやって、一体何がわかるのか、よくわからなくなってきた」
とア・リトルのメンバーに言われました。
対面でのインタビューでは、質問表のほかに西宮市の地図を使って、実際に産前産後のサポートや相談で頼った人の家にシールを貼ってもらう調査もあったのですが、
「この地図で、何がわかるのか、わからない。」
とも言われてしまいました。


「4月から6月まで、3カ月もかけて、何のための調査か、何を聞くのか、どうやって聞くのか、ずっと話し合ってきたのに〜」
と、かなりショックでした。

質問の一つ一つは細かい事実ですから調査途中には、全体像は、なかなか見えてきません。
「わからなくなった〜」というのは無理もないことなのです。



6人の調査員は、質問表や地図を片手に、1人で何十人もの人を相手に、具体的な事実を、繰り返し聞いていきました。
それは、森をみるのでも、木を見るのでもなく、木の葉の一枚、一枚を見るような作業です。
葉の一枚、一枚はとてもとても小さくて、その1枚、1枚が森を作っていることが、見えなくなってしまったのかな、と思いました。

それに調査を開始した7月までは月に何度も集まって、ミーティングをしてお互いに疑問な点はその場で話し合ってきましたが、7、8、9月は、調査で忙しくしていて月に1度の定期ミーティングでお互いに顔をあわす程度です。
そんなときは、メッセンジャーのグループを使って、4月から6月までの間に話し合った「何のための調査か?」という点を思い出してもらえるよう、
4月の最初のミーティングで話したときのこと
「何度も質問を考えて、今の調査表を作っていったこと」
などについて何度かメッセージを送りました。

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調査無事終了、報告書づくりがスタート(2018年11月〜2019年3月)

7月に始まったアンケートや個別にインタビューする調査は4カ月後の11月初めには無事終わりました。
調査員の皆さんの力で、合計104人にインターネットのアンケートにご回答いただき、そのうち59人が個別インタビューにご協力いただきました。

11月からは、アンケート結果の集計と報告書づくりの作業が始まりました。
ア・リトルの皆さんと一緒に、報告書を少しずつ完成に近づけてゆくなかで、産前、産後の女性たちの声にならない「助けて」という叫びが聞こえてきました。
次号では、調査を通じて聞こえてきた産前産後の方、特に女性が家事と育児と仕事を一人で抱え込んでいる現状とその解決策の光りが見えた調査結果についてお伝えしますので、どうぞお楽しみに。

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2019年6月25日火曜日

本当に水は”ない”のか?(活動報告会参加報告その1 セネガル編)


2019年69日、京都で開催されたムラのミライの活動報告会に参加しました。
これから2回にわたって、セネガルと子育て分野の活動報告についてまとめていきます。

まず、セネガル駐在員の菊地さんによる、若者農家育成プロジェクトのお話。

セネガルの活動地での降水量は日本の4分の1ほど、雨季は約3ヶ月しかない。
加えてここ1~2年は村にある井戸の塩化がひどく、農業に使う水が不足しているという。
結果、地方で農家として生計を立てることが難しく、多くの若者が都市部に出稼ぎに流れている。

しかし、雨季には水はたっぷりあるのです。

菊池さんは、こんな問いかけをしました。
「雨季にある水を乾季でも使うためには、何をすればいいでしょう?」

工夫して水を活用する
実際にプロジェクトでやったことは、まず、「たくわえる」こと。傾斜に草を植える、堤防を作るなど、土から水が流れないための工夫をしたといいます。
次に、「節約する」こと。少ない回数で効率的な水やりをするため、一日に数回水をやっていたのを、朝一回だけに。また、植物の根元に藁を敷き詰めることで蒸発を防ぐという、地域にある知恵を活用している農家さんもいました。

セネガルの報告を通して、「あるものを最大限利用する」ことの重要性を痛感しました。
時間がない、機会がない。自分の行動を振り返らず、ついつい「ない」ことを言い訳にしている自分が重なるようで、どこか恥ずかしさを覚えました。
ないものではなく、あるものに注目する。セネガルの若者が地方でも農業で生計を立てられるように、水やりを工夫する。私にとっても、どんな組織にとっても必要な視点だなと感じました。

→後半につづく

(笠見 友香 ムラのミライ インターン)

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2019年6月18日火曜日

「今日は何時に・・・」研修モニタリング セネガル農家編

ムラのミライは2017年2月から、西アフリカのセネガルで、若い農家の人材育成に取り組んでいます。
以下は2018年4月、ムラのミライスタッフの前川香子が、これまでの研修のモニタリングのために村を訪れた時のやり取りです。

前川   「今日は何時に水やりをしましたか?」
村人S 「朝の6時~8時です。夕方にもしますよ」
前川   「水やりの水を節約する方法について、聞いたことはありますか?」
村人S  「聞きましたよ。研修では朝の時間帯、遅くても9時頃までに水やりをするといいと聞きました。でも、朝に水をやると、井戸の水が途中でなくなってしまうんですよね。だから、水が増えるのを待って夕方にもやります」
前川  「なるほど。水やりを朝だけにしてみたことはありますか?」
村人S  「ないですね」
前川  「そうなのですね。では、水やりをした水が蒸発しないで土の中に留まるようにする方法を知っていますか?」
村人S  「知りません」

前川  「向こうにある唐辛子の苗に何かかぶせてありますよね?」
村人S   「あぁ。あれはワラ(藁)をかぶせてあります。風よけのためと、水やりをした時に衝撃が少なくなるようにそうしているんですよ」
前川   「ワラの下の土を触ったことはありますか?」
村人S   「ありますよ」
前川   「他の何も被せたり敷いたりいない土と比べるとどうですか」
村人S  「ワラを被せてある土のほうが湿っていますね」
前川    「そうですよね」

Sさんは、土に水分を蓄える方法を知らなかったのですが、実はその方法をすでに別の目的で実践していたのですね。
前川は、Sさんへの質問を通して、ワラを敷くことによる保水効果を気づかせようとしたのでした。

別の畑では、村人Mさんがこんな事を言っていました。
「これは知り合いから聞いたやり方なんだが、ピーマン畑でワラを敷いているんだ。ワラを敷くと水やりの回数が減ったり、雑草が生えにくかったり、農作業が楽になることが分かったよ」

井戸の水が限られているこの村にとっては、水やりの水を確保することがとても重要です。

「畑にワラを敷く」という、同じ行為をしていても、保水ができる(=水やりの水を節約できる)という効果に気付いた農家さんと知らなかった農家さんがいました。

そんな農家さんたちがお互いに学び合えるように、機会を作るのも私たちのできること。
今年は特に農家さんたちの畑での学びを大切に、実地での研修をしていく予定です。
菊地綾乃 ムラのミライ 海外事業コーディネーター)



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2019年6月11日火曜日

「え!こんなに?」住民による現状分析 セネガル農家編

ムラのミライは2017年2月から、西アフリカのセネガルで、若い農家の人材育成に取り組んでいます。
2018年1月に、ある村で実施した農家研修の一コマをご紹介します。

「キャベツの栽培工程を全部、順番に書き出してみてください。使う農具や肥料、水の量、働く人数も全部です」
講師の和田からこんな課題を出され、グループで頭をひねる研修生たち。
それでも話し合いながらなんとか書き出し、内容を発表。

あるグループの発表では、100平方メートルのキャベツ畑で・・・  
1 草取り 5人で30分
2 耕し  5人で30分
3 植替え 5人で30分
4 水やり 5人で30分
5 収穫  5人で30分
 
どうやら「30分」がお好みのよう。



和田から一言。
「植替えが30分とあるけれど、本当に30分で終わるの?」

そこで、実際に計算してみます。

ちょっと複雑ですが、みなさんも考えてみてください。

50㎝毎に苗を植えるとして、1辺あたり20本の苗になる。
→全部で400本の苗なので、1人当たり80本の苗を植える。
→1本の苗につき、<苗を運んでくる、土を掘る、植える、土をかける>の動作で2分かかるとして、80本×2分=160分=2時間40分

あら、大変。
ひとりあたり2時間以上かかる計算になりました。
想定していた30分とはだいぶ違いましたね。

こんな風に具体的に考えていくと、必要な時間や道具や人数がハッキリとしてきます。

極めつけに出された課題は、「それぞれの工程にかかる費用を出してください」というもの。
この課題に取り組んだ農民たちからは、「最初の苗床作りだけで、こんなに費用がかかるのか!?」なんていう声が聞こえてきます。
それもそのはず。農民たちはこんな作業をほとんどしたことがなかったのですね。

「私たちはただただ働いてきましたけど、こんな事はなにも考えずに働いていたんですね」
最後にある農民が言い残しました。

ムラのミライの役割の一つは、誰も問わなかったことを問うこと、それによって、今まで農民たちが考えなかったことを考えるきっかけとなることです。
自分たちが行っていることを事実に基づいて聞いていくだけなのですが、そこから自分たちで気づくことがあるのですね。そんな気づきこそが、次の行動へとつながっていくのです。

菊地綾乃 ムラのミライ 海外事業コーディネーター)



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2019年6月4日火曜日

a littleの皆さんに聞いてみた メタファシリテーションとa little

ムラのミライa little(以下、ア・リトル)は、「西宮で広げる、地域で助け合う子育ての場プロジェクト」を2018年4月から行っています。2019年5月、ムラのミライとア・リトルがプロジェクトの1年目を振り返る場に、広報ボランティアとして同席しました。
私の広報ボランティアとしての役割は、ムラのミライが持つメタファシリテーションの力をわかりやすく伝えることです。その難しさに喘いでいる私は、ムラのミライがプロジェクトにもたらしたものについて、ア・リトルのみなさんにお聞きしました。

「聞くこと」が持つ力

ア・リトルのようこさんは、「聞くこと」が持つ力について話してくれました。

最初は、メタファシリテーションの手法「聞かないといけない」「アドバイスしてはいけない」というのが苦しかったです。私はアドバイスをして人の役に立ってきたと思っていたので、アドバイスできないことは、人の役に立てていないという気持ちでした。
でも続けていくうちに、聞くことは、自分で答えを導き出すことで問題解決に結びつくメソッドだとわかりました。上手に聞きさえすれば、アドバイスしなくても解決にたどりつくことができます。
このスキルを身に着けたことで、アドバイスという、ともすれば人を傷つけてしまう可能性があるものを使わずに、人の役に立つことができるようになりました。

家族との会話の変化

また、ゆうこさんは、プロジェクトでの効果に加えて、家族との会話の変化を語ってくれました。
5歳の娘との会話が変わりました。保育園での一日の様子を聞くとき、前はざっくりと「お昼何食べた?」などと聞いていましたが、今は「今日は園庭にでたの?」など具体的に聞くようにしています。するとそれをきっかけに本人が思い出して、こんなことをした、あんなことがあった、と一日の出来事を次々と話してくれるんです。
また、メタファシリテーション講座に夫と出たら、夫との会話も変わりました。「a littleの会員何人増えた?」等具体的に聞いてくれるようになり、関心を持ってくれている、知ろうとしてくれていると感動しました。メタファシリテーションはパートナーシップにも役立ちます。生活全般で役に立っています。

力を信じて引き出す

その他にも、
メタファシリテーションは「人の力を信じて引き出す」手法だと思います。その人以上のものを求めるのではなく、その人らしくいられるように接することで、その人が力を出すのを待つ。そのスキルを手に入れて、人への接し方の層が厚くなったように感じます。
 ムラのミライの二人(同プロジェクト担当の原・山岡)は、いつも肯定して聞いてくれるので、うれしくなって次々話してしまいます。力を伸ばしてくれる存在。計り知れないエネルギーを感じます。
 ムラのミライが持っているのは共感力。信頼してくれていて、ああしろこうしろ言わない。見守ってくれている。だからがんばろうと思えるのです。
などのお話をお聞きすることができました。広報ボランティアとして初めて参加したミーティングは、ムラのミライがア・リトルにもたらしたものについて知ることができるうれしい時間となりました。

中川 智子 ムラのミライ 広報ボランティア)



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