2015年3月31日火曜日

クイズでおさらい!年度末の集大成!(問題編)

2014年度最後のブログは、クイズで締めたいと思います。
今年1年間の練習の成果を発揮できるよう、頑張ってください!

クイズは3問、すべて三択の問題です。
対話型ファシリテーションを意識して、答えを探してみましょう。

【第一問】難易度:★☆☆
久しぶりに会った友人とカフェでのんびりおしゃべりをしています。
次の質問の中で、イメージではなく事実を知ることが出来るのはどの質問でしょうか。
1.      ホントに久しぶりだね。最近どう?
2.      最近忙しいって聞いたんだけど、昨日とか何してたの?
3.      引っ越したんだってね。なんで引っ越したの?

ヒント:5W1H型の質問で、使ってはいけないものが2つありましたね。


【第二問】難易度:★★☆
おしゃべりをしていると、友人が悩みを相談してきました。
最近寝坊癖がひどくて、早起きが出来ないようです。
寝坊癖の原因を探る糸口となるのは、どの質問でしょう。誤った選択肢を選んでください。
1.      そうなんだ。一番最近で寝坊したのはいつだい?
2.      なんで寝坊するようになったの?
3.      一番最初に寝坊癖に気付いたのがいつか覚えてる?

ヒント:相手の考えを尋ねるのではなく、事実を思い出させることが重要です。


【第三問】難易度:★★★
来年からネパールに長期滞在することになった友人。
これまで全く触れたことのない現地の言葉に、不安を抱えているそうです。
途方に暮れる友人の悩みを解決するには、どのような質問をすると良いでしょう。
1.      ネパール語ってどれくらい難しいの?
2.      実際に現地に行ったらどうにかなるんじゃない?
3.      これまで他の言語をマスターしたことはある?

ヒント:過去に似たような事例がなかったか、思い出してもらうことがポイントです。

皆さん、如何でしたか?
クイズの正解は、次週お知らせします。お楽しみに!


2014年度インターン 山下)


2015年3月24日火曜日

ネパールの村で見た、和田さんの神業ファシリテーション

私は、201411月から外務省のNGO海外スタディ・プログラム」に参加し、ソムニード・ネパールでの4ヵ月間の実務研修を経験してきました。
ソムニード・ネパールはネパールでムラのミライと一緒に活動する仲間。ムラのミライと、ソムニード・ネパールが共有しているファシリテーション手法・考え方がどのようにプロジェクトに活かされているか学んできました。
そんな4ヵ月間のネパールでの研修の合間に、運よく和田さん(ムラのミライ共同代表)のファシリテーションを見る機会に恵まれました。今回は、ネパールのとある村での和田さんと村のオッチャンの会話をご紹介します。(親しみを込めて、この記事ではこの二人を「和田さん」、「オッチャン」と呼びます。)

― ― ― ― ―

和田さん:この村では、水源からパイプラインを引いて生活のための水をとっているという話を聞いたが、パイプラインの長さは?コストはどれくらいかかったのか知っているか?パイプラインを設置したあと、パイプラインは誰のものになるんだ?支援した団体?村?
オッチャン:パイプラインの長さは10km。コストは200万ルピー。そのうち、70万ルピーは自分たちが労働することで負担したよ。
和田さん:パイプラインの耐用年数は知っているか?
オッチャン:80cmの深さで埋めて、80年耐用すると聞いたよ。
和田さん:それは誰が言ったの?
オッチャン:(とある援助団体の名前を挙げて)●●が言った。
和田さん:それはあなたたちが十分に管理したとしての理想的な状況だろう。コスト知らずにメンテナンスはできない。パイプラインの長さが10kmと言ったけど、数km先のトラブルをどうやって知るのか?維持のためのプランについてはすでに議論したのか?
オッチャン:パイプラインが完成したあとに●●と村で合意書を作ったんだ。
別のNGOスタッフ:ネパール語で?
オッチャン:いや、英語で。
和田さん:なるほど。ところで、私の見立てだと、この村は、水をちゃんと貯めるということをしていないのでは?以前の水源はもう足りなくなったから、またパイプを引いて遠くの水源から水を供給しようとしている。でも、ほら、この子を見てごらん(と、そばにいる子どもを指さす)。今着ている服はちょうどいい。でも、2年後、3年後、ましてや10年後に同じ服が着られるかな?(着られない、と村人の合いの手)。子どもは成長するから、それまで着ていた服が着られなくなるだろう。村も同じことが起きているんじゃないか?村のサイズそのものが大きくなったらどうする?以前の水源も、村の人口が増えたから足りなくなったんだろう?じゃ、今度の水源も、これ以上人口が増え続けたら、使い続けるだけなら、足りなくなるよね。水源というのは銀行みたいなものだね。もし、貯金していれば、長いことお金を引き出しながら使うことができる。でも何も貯金していなかったら、お金はすぐになくなってしまう。(ここで別のオッチャンが、何やら納得したような声を出す)





和田さん:この村の人は、みんなヤギを飼ってるね。あなたのところのヤギの飼い葉はどこから取ってくるの?
オッチャン:ほら、この木の葉っぱ(と、そばに立っている木を指す)から、十分採れるから、大丈夫だ。
和田さん:ほう、で、あなたのところ、みるところ2匹ヤギがいるけど、この木の葉っぱは何日もつんだ?
オッチャン:2日・・・
和田さん:そうすると、2日経った後は?
オッチャン:山に取りに行く。
和田さん:飼い葉になる草や木は、植えてるの?
オッチャン:植樹はしているぞ。森林局が苗をくれた。でも、もっと苗を援助してくれるといいんだけどな。
和田さん:植樹は、苗を植えるだけじゃないよ。いまある木から種を収穫して、いい種を選んで植えることもできる。枝を挿すだけで生える木もある。接ぎ木をすることもできる。いろいろなやり方がある。それを学べば、他に頼らなくても、自分たちでいくらでも森を豊かにできる。



NGOスタッフ:お話をさせてもらってありがとうございました。今日は私たちがたくさん質問しましたけど、あなたたちから私たちに聞きたいことはありますか?
オッチャン:ワシらは知識が少ない。今日のような、知識をインプットする機会があると嬉しい。外国からの新しい知識は役に立つ。ワシら、これまで20年くらい、いろんな外部の団体からの「援助」を受けてきた。でも、そういうことが自分たちでできたら、援助に頼らなくてすむんだ!
和田さん:今日の話は何も外国からの新しい知識ではなく、土や木が教えてくれるもの。どうやって森を守っていけばいいかは、土や木の声に耳を傾けること。そうすると守っていくことができますよ。

― ― ― ― ―

ここまで、いくつかのやり取りは省略しましたが、通訳を介してものの20分。
国際機関やNGO、さまざまな団体からの援助を受けている村。そんなところに来た私たち外国人。「新しい支援のために来たのかも!」と思ったかどうかは定かではありませんが、「支援がほしい」モードで村のことを話し始めた村のオッチャン。ですが、最後には「援助に頼らなくていいのに」という言葉を引き出しました。しかも、最後まで村人たちが誰ひとりとして出ていかず、いつの間にか他の村人も集まって、話が終わったら拍手。村のオッチャンたちがどんどん話に引き込まれていく様子が感じられました。

このとき、この村の様子をざっと見た和田さんは、「土や水、森を保全する村づくりが行われていないので、いつ災害が起こってもおかしくない」と見立てていました。和田さんによると、とある一つの質問がオッチャンにとって、事実に基づいたやり取りを始めるための「キラー質問」だったそうです。そこで“つかみ”に成功すると あとはどんな変化球を投げても相手が受け止めてくれるとのこと。みなさん、どの質問だと思いますか?

答えは・・・「和田さん:ほう、で、あなたのところ、みるところ2匹ヤギがいるけど、この木の葉っぱは何日もつんだ?」の質問だそうです。

ここでオッチャンは「2日」と事実を答えざるを得ない。そこから事実に基づくやり取りのサイクルに入ります。その後の苗のやり取りを通じて、「自分たちができるんだ」と気づく…というわけです。


(研修事業コーディネーター 田中十紀恵)

2015年3月17日火曜日

初デートにも使える?!距離を縮める会話の仕方

以前からご紹介している「事実質問」には、話している相手との距離をグッと縮める力があります。

みなさんが最近「あの人と喋っておもしろかったな。また会いたいな!」と思ったのはいつでしょうか?また、その人とはどんなやりとりをしましたか?
もしかすると、その相手は、知ってか知らずか「事実質問」をしていたのかもしれません。
というのも、会話の中で曖昧な質問をするのではなく、相手の経験などの具体的な事実を聞くことで、「あの人とまた喋りたいな!」と思わせることができてしまうからです。

さて、曖昧な質問とは、一体どのようなものでしょうか?
例えば、私が大学時代に1年間滞在したインドネシアから帰国した際、久しぶりに会う友人みんなに聞かれて困った質問があります。

「あっ、久しぶり~!インドネシアから帰ってきたんだ。どうやった?」

この投げかけ、みなさんなら、何と答えますか?
私と友人の実際の会話はこのような感じでした。

私「あ、うん、楽しかったよー」
相手「そっかー、よかったなー。ええなー、私も行ってみたいわぁ」
・・・・・・(会話終了)

これは、普段なら「これから授業やわ~。じゃあね。」と、何気なく済ましてしまうただの挨拶だったのでしょう。
でも、1年ぶりに日本の友達と喋る私にとって、会う人会う人と、上のような進展のないやりとりを繰り返すのは苦痛でした。
「みんな、私が1年間も海外に行って何をしたかとか、何を感じたとか、興味ないん?『どうやった?』って聞かれたって『楽しかったよ』以外に答え方ないやんか!」と、真剣に家族に嘆いたこともありました。

しかし、海外留学に行く友人が周りに多かった私は、留学帰りの友人に自分が何と話しかけているか振り返ってみると、全く同じことを聞いていることに気がつきました。
しかも、「事実質問」という概念に出会うまでは、「じゃあ他にどういった質問の仕方があるのか」と考えても、何も思いつきませんでした。





さて、ここで具体的な事実を聞いてみるとどうなるでしょうか?

「いつ帰ってきたの?」
「インドネシアから日本まで飛行機でどれくらいかかった?」
「どこかで乗り継ぎした?」
「その国でも旅行した?」
「そういえば、ずっとインドネシアにいたの?それとも他のアジアの国に旅行に行ったりした?」
「へぇー、旅行したとき荷物は滞在先に置いていったの?それともまさかバックパックで全部運んだの?」
「住んでたのはどんなところ?学生寮?ホームステイ?」
などなど・・・

このような質問なら私はインドネシアでの経験をそのまま答えることができますし、聞き手もテンポよく次の質問に繋いでいくことができます。
こういったやりとりをすれば、私は何かしら面白いエピソードを話すことができたかもしれないし、お互いの共通の体験を語ることだって出来たかもしれません。
次その人と話をするときも、「そういえば前にこんな話をしていたけど・・・」という会話の出発点にもなったでしょう。

もちろん、すでに仲の良い友人とのやりとりでは、事実質問の力を借りずとも「実のある会話をしているよ!」という方はたくさんいらっしゃると思います。
しかしながら、頻繁に顔を合わす知人、同僚、近所付き合いのある人など「よく話はするけど実はどんな人なのかよく知らない」といった相手の場合はどうでしょうか?
または、初デートなんかでこの質問法を使うと効果的かもしれませんね。

「自分は話しベタでなかなか人と仲良くなることができない!」という方、話のネタを探す前に、まずは「聞く」ことから始めてみませんか?

(海外事業コーディネーター 近藤美沙子)


  



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2015年3月10日火曜日

「理解させる」ということ

対話型ファシリテーションを構成する事実質問。
これまでこのブログでは、その練習方法や日常での使用例を紹介してきました。
実際に現場ではどのように使われているのでしょう。
今回は、インドから届いたプロジェクト通信から事例を紹介したいと思います。

ムラのミライ(旧称ソムニード)で研修を受けた村の人たち。
今度は他の村に指導員として自ら研修を行っていきます。

最初の研修テーマは『流域って何?』というもの。
すでにB村から、流域という単語を何度も聞いてきているので、それがキーワードだというのは分かっている。
果たしてどういう風にそれを理解させるのか。

最初に指導員デビューをしたのは、4人の内3人。
村のリーダーでもあるモハーン、指導員エースのアナンド、最年少で負けん気の強いシマハチャラン。
「雨の中、外に立つとまず体のどこに雨が当たりますか?」
よしよし、いつもの例が飛び出したぞ、と指導員を会場後ろから見守るラマラジュさん(ソムニード・インディアの名ファシリテーター)。
「どういうこと??」という顔で、指導員を見つめる村の人たち。

状況を想像しやすいように説明する指導員たちだが、別の例も飛び出した。
「ここに小っちゃい子がいますね。この子を水浴びさせるとき、手桶で上からザバーとかけると、どのように水は流れますか?」
「あぁ、頭か!」
「頭から、お腹に流れていくね」と答える村の人たち。
こうして、いつものごとく流域とは山の頂上から平野の川まで、水の入口から出口までのエリアだということを『説明』した指導員たち。
だけど、これじゃぁモノ足りないなぁと筆者も思っていた矢先、モハーンが村の人たちに一つの課題を出した。

「ではみなさん、村の地図を描いてみてください。あなたたちが薪を採ってくる山、畑地がある山、集落はどこにあって、田んぼはどこまで広がっているのか。そうそう、川や池もあれば描いてください。」

この課題を聞いた時、初めて研修を受ける村の人たちにできるのか?と私たちは疑ってしまった。
ソムニードは、指導員が使う研修マニュアルというものを作っている。1回の研修の重要ポイントや、研修の流れ、何を問うべきかのヒントなどが書かれている。
そしてそのマニュアルのヒントに「参加者の村の山から平野までのおおよその図を描く」という部分があるのだが、筆者たちは「指導員が村の人たちから聞き取って描く」としていた。
今までの経験では、初めて自分たちの村の地図を描く時には丸1日は優にかかったものだが、果たして40分後。

「できましたー!」と発表する村のオジサンたちの手で拡げられた模造紙には、驚いたことに山から田んぼまで綺麗に収まり、畑やメインの大木、砂防ダムや池や井戸、道路に脇道にと、縮尺は無論正確ではないが、大まかな概要がわかるようになっている。
BGTP村の人たちが、あまりにも描けなかっただけ??と内心首をかしげる筆者。
そして、この地図を使って、さらにアナンドが続ける。
「この地図はあなたたちの村についてですね?では、ここに雨雲が来ました。どのように雨が降って水が流れてきますか?」
最初と同じ質問だが、使う材料が違う。
村のオバチャンも、「この山のこの川を通って、こんな風に流れて来て、田んぼに来るの」と、大声で言う。
何人かの意見を待って、アナンドが尋ねた。
「そうですね、この山から水が流れて来て、田んぼの下の川へと流れて出ていく。では、ここ(山の頂上)からここ(川の先)までを何と言いますか?」

「・・・ウォーターシェッド(流域)??」

「どこの?」
「・・・オラ達の村のウォーターシェッドか!」
そして何度も「ウォーターシェッド」とおまじないのように言い続ける村の人たち。
その顔は、まさしく『腑に落ちた』表情だった。

言わされるのではなく、自身で気付いたとき、
初めて本当に理解して使うことが出来るようになります。
たったひとつの言葉でも、自分で理解しているか否かで、
その後の行動は大きく変わってくるのです。

さぁ、私たちも、対話相手に「発見」させることが出来るファシリテーターを目指して頑張りましょう。


2014年度インターン 山下)

2015年3月3日火曜日

事実質問ならぬ、事実返答!?

ムラのミライが対話型ファシリテーションの手法を広めているとは言え、
世界にはまだこの手法を知らない人がたくさんいます。
こうしている瞬間も、世界中で空中戦が繰り広げられています。

「最近どう?」「仕事は順調?」「大学生活は楽しい?」
「最近恋人できたんだってね。どんな感じなの?」

あちこちで空中戦が行われているからこそ、
私たちは空中戦を仕掛けてくる相手から多くのことを学ぶことが出来ます。
曖昧な質問に曖昧な答えを返せば、そのまま曖昧な会話が展開していきます。
しかし、そこで具体的な答えを返せば、そのあとの会話も具体的になっていくのです。

例えば、
「彼氏とはいつもどんな感じなの?」という質問に対して、
. 「まぁ仲良くやってるよ。」
. 「昨日はお互い読書しながら一緒にいるだけだったよ。
先週は映画見に行ったし、まぁ仲良くやってるよ」
という2つの返答を考えてみましょう。

. のように答えた場合、相手のコメントも無難なものになることが予想されます。
「それはなによりだね。けんかとかはしないの?」といったところです。
あまり触れてほしくないのかな...と、次の話題を考えた方がいい時もあるかもしれません。

. のように答えた場合、具体的なコメントを返せる範囲は無限に広がります。
「君は何の本を読んでいたの?」「彼氏は何の本を読んでいたの?」
「映画は何を見たの?」「自分も最近本を読んだ/映画を観たよ」などなど。
ひとつのやり取りから、どんどん会話が膨らみます。

このように、空中戦による質問でも、事実による返答をすることで、
相手も会話しやすくなり、具体的な情報を交換することが出来るのです。
ちょっとした工夫で、お互いの理解も深まるのではないでしょうか。

今回私がお伝えしたかったのは、
事実質問の練習の場は自分が質問するときだけではないということです。

空中戦や地上戦という概念を知ったところで、
いきなり事実質問だけで質問を構成するのが難しいように、
そもそもこの概念を知らない人はもっと会話に苦労している、
または何も考えず、ただ喋っているのではないでしょうか。

「いつもは~?」タイプの答えづらい質問にムッとするのではなく、
曖昧な質問を具体的なものに変換しながら、
相手を地上戦に引きずり込む一石二鳥の練習法。ぜひお試しあれ!


2014年度インターン 川島)