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2026年3月3日火曜日

「水破産」の時代に生きるということ (1)


第 7 回「SDGs 岩佐賞」を農林水産・食の部でムラのミライが頂きましたので、受賞の直接の理由となった水と土の保全で、ムラのミライがどのような取り組みをしてきたのかを、お話ししようと思います。

ところで、この一文のタイトルが、ずいぶんとセンセーショナルなのが、気が引けますが、これは私の造語ではありません。

「水破産」、英語では「Water Bankruptcy」。

この言葉は、国連大学の「水、環境、健康研究所」が今年2026年に出した報告書のタイトルに使われています。正しくは、「Global Water Bankruptcy」、地球規模で水が破産状態にあるということですね。副題に「Living Beyond Our Hydrological Means in the Post-Crisis Era」とありますから、「危機の後の水資源の限界を超えた時代に我々は生きている」と言うことでしょうか。
危機などという時期はもう過ぎている、すでに水資源は破産状態だと言うのですから、穏やかではありません。でも、「相当やばい状態だぞ」というのは、この20年ほど私たちムラのミライのメンバーが現場で感じ続けていたことです。そして、この20年ほど、ムラのミライはこの「やばい」状態をなんとかする闘いを、微力ながら続けてきたと言えます。



私たちが、何を見、何をしてきたかを述べる前に、この国連大学の報告書で言う「水の破産」状態とは何を指すのか、巻頭の要約の部分の記載を見てみましょう。この要約では、水の破産状態を12の見出しで紹介しています。

1.        地球は世界的な水破産時代に入った。

2.        数十億人が水不足に苦しんでいる。

3.        地表の水は広範囲にわたり減少している

4.        湿地帯は大陸規模で消滅させられてきた。

5.        地下水の枯渇と地盤沈下は後戻りができないほど広範囲にわたっている。

6.        氷圏の減少は、重要な「水の貯蔵庫」の消滅につながる。

7.        主要な農業地帯で水資源が枯渇しつつある。

8.        土地と土壌の劣化が水につながるリスクを増幅させている。

9.        干ばつの人為的要因が増大し、それに伴う損失が非常に高くついている。

10.     水質の悪化により、利用可能な水資源が縮小している。

11.     惑星規模の淡水境界が越えられた。

12.     既存の水資源管理と課題の設定はもはや目的に適わなくなった。[1]

 

会社で言うと、経営危機という状況ではなく、すでに破産してしまっていると、最大限の表現で水資源の状態を表現していますね。もう本当に後がないのだよ、と。

いわゆる先進国の都会に住んでいると、水資源の危機(もう危機と呼べる時期は終わっているのでしたね)と言われてもピンときません。だって水道の蛇口を捻ると水がジャブジャブ出てくるのですから。それに夏になると、近年決まって大雨、洪水の災害のニュースが飛び込んできます。これって、水が必要以上にある、余っているのでは、などと思わせるような印象を与えますよね。しかし、実は毎年の洪水と水の破産状態は、同じコインの裏と表、同じ原因に基づいています。このことは、おいおい説明していきます。


ところで、上記の「破産状態」の項目のうち、私たちムラのミライに直接関わっているのは、7番目と8番目の項目です。何せ、ムラのミライは、団体の創設以来主に関わってきたのは農村です。私も、主な国を挙げるだけでも、インド、ラオス、ネパール、インドネシア、イラン、ケニア、セネガルで多くの村をつぶさに観察してきました。これから、そこで何を見てきたのかをお話しするのですが、その前に、上記2項目、

7. 主要な農業地帯で水資源が枯渇しつつある。

8. 土地と土壌の劣化が水につながるリスクを増幅させている。

のそれぞれが、どのように要約されているのか、ざっと全体の状況を理解するために、少し長くなりますが、引用しておきます。

まず、農業地帯での水資源の枯渇については、こうあります:

世界の淡水取水量の約70%が農業に使用されている。約30億人と世界の食糧生産量の半分以上が、地表水・土壌水分・積雪・氷河・地下水を含む総貯水量が既に減少中または不安定な地域に集中している。17000万ヘクタール以上の灌漑農地(フランス・スペイン・ドイツ・イタリアの国土面積を合わせた規模に相当)が、高いまたは非常に高い水ストレス下にある。[2]

 

また、土地と土壌の劣化については、以下のようです: 

世界の農地の半数以上が現在、中程度から深刻な劣化状態にあり、土壌の保水力を低下させ、乾燥地帯を砂漠化へと追い込んでいる。塩害だけでも、約8200万ヘクタールの天水耕作地と2400万ヘクタールの灌漑耕作地——合わせて1億ヘクタール以上の農地——を劣化させ、世界の主要な穀倉地帯の一部で収穫量を減少させている。[3] 

ここで注意しておかなければならないのは、上記の現象は全て人為的行為によってもたらされたということです。そのことは、このレポートの本文にもはっきりと書かれています。以下がその引用です。 

世界の主要な帯水層の約70%が長期的な減少傾向を示しており、その多くは帯水層の圧縮や貯留能力の喪失により、人間の時間尺度では事実上不可逆的な状態にある。並行して、農業由来の塩分・硝酸塩・農薬汚染、産業・鉱業汚染、深層揚水により溶出する天然ヒ素・フッ化物により地下水質は劣化しており、一部の帯水層では物理的には存在するものの、経済的・生態学的に利用不能な状態となっている。[4] 

さらに、こう続けられています。 

世界の農地の50%以上がすでに中程度から深刻な劣化状態にあり、土壌の保水力を損ない、乾燥地帯の砂漠化進行を加速させている。塩害だけで約8200万ヘクタールの天水耕作地と2400万ヘクタールの灌漑耕作地が劣化している (合計面積はフランスとスペインの国土を合わせた面積を上回る)。これにより土壌肥沃度が損なわれ、地下水や地表水が塩類で汚染され、世界の主要穀倉地帯の一部で収穫量が減少。地域・国家・地球規模で食料安全保障、健康、生計が直接脅かされている。[5]



なぜこんなことが起きるのか、結論から言ってしまえば、水の使い過ぎです。あるいは、水を使いすぎることを前提とした農業を、この数十年続けてきたことの結果としてこのような危機的状況、いや破産状態でしたね、になっています。でも日本は大丈夫だ、などと思っていたら、それは戯言です。日本の食料自給率がカロリーベースで38%だということは、よく知られていますね。

つまり、私たちは、自分たちが食べるものの6割以上を輸入に頼っているわけです。国産の肉も、その飼料はほとんど輸入に頼っているわけですから、輸出元で水資源が枯渇すれば輸入している食料が途絶える可能性だってあるわけで、畜産業はそのものが成り立たなくなることもありうるわけです。 

さて、前振りが長くなりましたが、これからが本題です。昨年の3月まで、土と水の保全のプロジェクトをしていたセネガルの話からしましょう。

 

続く


出典
[1]GLOBALWATER BANKRUPTCY -Living Beyond Our Hydrological Means in the Post-Crisis Era-“United Nations University Institute for Water, Environment, and Health Richmond Hill, Canada, 2026  p10

[2] ibid. p11

[3] ibid. p11

[4] ibid. p28

[5] ibid. p28 


和田信明ムラのミライ シニアコンサルタント)

2025年11月10日月曜日

多職種で連携するために

ムラのミライの山岡です。今回は、講師派遣先である全国小規模保育協議会 医療的ケアチャプター様のご協力をいただき、保育者向けのメタファシリテーション体験セミナーについて、研修内容や参加者の声をご紹介します。


多職種で連携するために

まだ夏の暑さが残る9月、私は神戸市にある(特活)こどもコミュニティケアを訪問しました。こどもコミュニティケアさんも所属する全国小規模保育協議会 医療的ケアチャプター様から講師派遣の依頼をいただき、メタファシリテーション研修を行うためです。
研修は90分で、全国組織であるため対面とオンラインハイブリッドでの開催でした。参加者は、小規模保育施設で医療的ケアが必要な子どもたちの保育を行っている施設管理者、保育士、看護師、言語療法士など約30名。みなさん大変熱心に聞いて下さり、ワークにも主体的に取り組んで下さいました。


子どもの権利とメタファシリテーション

研修では、以下のような5つの内容をお話ししました。

・子どもの権利の紹介

・コミュニケーション・セルフチェック

・メタファシリテーション3つのルール

・事例紹介(管理者と保育士が、現場での課題を振り返る編)

・練習問題

ムラのミライでは、子ども・子育て支援者を対象とした研修は、まず「子どもの権利」の紹介から始めています。それは、子どもの権利を知っていただき、子どもの権利を尊重する手段の一つとして、メタファシリテーションを活用して欲しいと考えているからです。



次に、自団体のコミュニケーション・セルフチェックには、3月に発行した『子ども・子育て支援活動サポートブック』のチェックリストを利用しました。みなさんの組織では、いくつチェックが付くでしょうか?チェックが2つ以上付いたという方は、サポートブックに他団体の事例が掲載されていますので、ぜひ読んでみてくださいね。



保護者の話が聞けないのは、「人手不足」が原因?

事例紹介では、管理者がスタッフの課題を整理できなかった事例と事実質問への置き換え例をご紹介しました。

<登場人物>

・スタッフ(保育士3年目):保護者から子どもの話をうまく聞けないと悩んでいる

・マネージャー(保育士10年目):管理責任者、現場での課題を知り保育の改善に繋げたい

下図のような会話、みなさんの職場でもないでしょうか。マネージャーは、『人手不足だけが本当に課題なのか』と疑問を抱きながら、その場を離れてしまいます。

 さて、ここでクイズです。仕事で「保護者(クライアント)の話が聞けなくて…。」と悩んでいる部下の話を聞く時、何を質問すれば、部下がその時の出来事を思い出して答えてくれるでしょうか?

1. なぜ、聞けないの?

2. どんなふうに難しかった?

3. 最近、いつ保護者(クライアント)と話した?


・・・答えは、3番です。1番のように、何があったかを聞く前に『理由』を聞いてしまうことで、忙しいから、人手不足だからなど、言い訳を引き出してしまいます。2番は、相手の認識から質問することで、何が起きたかが見えにくくなってしまいます。そこで、「最近、いつ〇〇した?」と実際に起きた出来事(事実)を思い出してもらいます。そして、「誰と何を話したのか、その前にも同じようなことがあったか」と時系列で聞いてみると、相手と一緒に課題を整理して、振り返ることができます。

最後の練習問題では、保育現場での支援者同士の会話の中から、事実を聞く質問と事実を聞けない質問を答えるドリルに取り組んでいただき、質疑応答に移りました。 参加者からは、保護者に子どもの状況を聞きたかった事例や、支援者間で情報共有をする方法などについてご質問いただきました。

また研修後、参加者から感想や実践報告をいただきました。『自分の質問の癖』に気づいた方や、保護者や子どもたちの状況を知るために、早速「いつ」質問を使い、『相手の状況把握』に役立てている方もおられました。今後も、保育や子ども支援の現場でこうした研修ができれば嬉しいです。ご参加下さった皆様、ありがとうございました!



<参加者の声>

・今回の研修で尋問にならない聞き方や、思い出しながら聞き出していく方法がとても勉強になった。医療機関受診のタイミングやこうした方がいいよなと思っていても、すぐに解決策やアドバイスをせず、話を聞きながら一緒に整理して、保護者が主体的に受診行動をとれるように関われたらいいなと感じた。

何を聞くべきなのか、把握しておくべきことは何なのかを自分の中で前もって考えておくことも必要であると思うし、問題を決め付けたまま質問を重ねるのではなく、相手と同じ目線で事実を確認していく中で、一緒に課題を見つけられるような姿勢も忘れずに持っていたいと思った。

・トラブルや課題のある話では、なんで?どうして?と聞きたくなるが、それを、いつ?の問いに変えることで、答える側は事実を思い出しやすくなることを知った。実際に演習する中で、すべての質問を「いつ?」に変えてみると、答えがはっきりと浮き出し、答えやすくなることを体験できた。

・講座の中で、講師の方から実際に事実質問を投げかけられたとき、とても答えやすく、そこから詳しく質問をしていただくことで思い出す内容がはっきりとしていくことを実感した。また、事実を知っていく質問の投げかけが、尋問となってしまわないよう、要所要所で相手の言葉を復唱し、共通理解につなげていく大切さを改めて学んだ。

・今回の研修で自分の質問の仕方ひとつで、相手から得られる答えが全然違ってくること、相手との関係性に大きく影響が出ることを学び、実際に保護者とのやり取りで実践してみた。
園での食事量が少ない子どもの保護者に「何時に朝ご飯を食べている?今朝は何を食べた?どれくらいの量を食べた?昨日は何を食べた?」と質問することで、朝ご飯を食べる時間が遅く、どのメニューであってもたくさんの量を食べていることがわかった。そして、この子どもはお腹があまり空いていないから園でのお昼ご飯が進まないんだなとアセスメントすることができた。

・特にスタッフへの言葉かけは難しく感じており、スタッフの困りごとなどを知りたくても、情報が少なくわかってあげられなかったことが多かったと思う。質問の仕方を変えてみるなど、本日教わった手法を取り入れてみたい。

・相手の話を聞きながら、すぐに自分なりに解釈してしまうこともあるなと気が付くとともに、俯瞰して聞く練習をしていきたいと思った。自己肯定感に配慮するというところでは、改めて大人も子どもも個人は尊重されていることを実感した。

・メタファシリテーション手法を意識して職場内の対話が進むと、お互いの自己肯定感や達成感を保ちながら、気持ちよく仕事ができると思う。まずは自分が実践できるよう今回の学びを少しずつでも活用していきたいと思う。

・メタファシリテーションの3つ目のルールに『求められないアドバイスはしない』とあり、アドバイスまでいかなくても、相手の話を遮ってしまうことや、先に提案をしたり、話をかぶせてしまったりする癖があるので、話したくなっても意識して我慢し、相手の主体性を大切に会話するようにしたいと思う。

・「メタファシリテーション」という言葉は、今まで私生活であまり聞かない言葉で、研修を受けるまでは具体的にどんな話が聞けるのだろうかと思っていた。実際に研修を受けてみると、とても身近な課題内容でした。特に日頃の子どもたち、保護者とのやり取りや個別面談での場面が浮かびやすかった。

・講義の中で印象に残ったのは「相手のペースに合わせること」という言葉。言葉数か少なく、コミュニケーションが苦手な方との最近の会話を改めて振り返り、言葉数やペースの違いに改めて気付くことができた。まずは相手の話をじっくり聞くこと、そこから会話を広げていくことや、無理強いなく答えやすい質問をしていくことを意識して今後も密にかかわっていき、まずは信頼関係を築くことを目標にしていきたいと思う。

・職場でも、相手の話を自分なりに解釈して聞き、事実を理解しないまま、求められていないアドバイスをしたことも多くあっただろうと思う。問題解決をするためには、何が問題かを知る必要がある。まず「事実」を共有することから一緒に考えることができる。相手が本当に伝えたいことは何かを知ることができるように、質問の仕方や聞く姿勢を変えていきたいと思う。コミュニケーションの大切さを改めて感じた。


===

ムラのミライでは、保育や子ども・子育て支援の現場で子どもの権利を尊重するための事業や研修を行っています。講師派遣について、ご関心がある方はお問い合わせフォームから予算・内容などお気軽にご相談ください。

山岡 美翔 ムラのミライ事務局長)

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2025年11月6日木曜日

イベント報告:代表継承記念イベント「18年ぶりの世代交代とこれから」

11月に入り、また気温が下がってきていますが、皆さんお変わりないでしょうか。今回は、代表継承記念イベント「18年ぶりの世代交代とこれから」について報告します。

イベントレポート「18年ぶりの世代交代とこれから」

7月の代表継承記念イベントには、国内外から34名もの方が参加して下さいました。
新旧代表の活動への想いはもちろん、活動の歴史やこれまで協働下さった方々のことを知っていただく機会となり、皆様からのあたたかいお言葉に大変勇気づけられました。

 イベントの詳細については、参加者の大森さんがご自身のnoteにレポートをアップしてくださいました。当日の新旧代表のあいさつなども丁寧にまとめて下さっています。まだ読んでいない方は、ご一読いただければ嬉しいです。

📒レポート:認定NPO法人ムラのミライ代表承継イベント「18年ぶりの世代交代とこれから」|大森 雄貴 / Yuki Omori

 


また、イベント後のアンケートにも多くのご回答をお寄せいただきましたので、ご紹介させていただきます。

<イベント参加者の声>

・発表や発言をされる方が、良いお顔をされていて素晴らしい組織だと思いました。

 ・貴団体の歴史を改めて知ることができました。また新旧の代表のお話をお聞き出来たこととで、これからの進展にも期待が大きくなりました。

 ・時間が短くて惜しいなぁ、と思うくらい充実した会でした。2時間でも3時間でも、ずーっと聴いていられそうでした。原さんの心境の変化とかももっと伺いたかったですが、それはまた個人的にお伺いするとして。質問形式もよかったです。
そんな感じで中田さんとさんのパネルトークみたいなものも聴いてみたいなぁと思いましたが、きっとこの前の総会に出席していたらそういう話もあったのでは、と悔やまれるところです。またみなさんにお会いできたら内輪話などこっそり伺ってみたいとおもいます!

 ・これまで触れることのなかった「ムラのミライ」の活動を深く知る機会となりました。一方で、時間が短く限られた場だったため、まだまだ聞きたい話も多かったように思います。

 ・ますます希薄になっていく人と人とのつながりを、濃厚・確実に支えていくことのできるコミュニケーションツールとして、メタファシリテーションが役に立ち、また危うさを裏打ちしていってもらえることを期待しています。

 10年ほど前に、体験講座に参加させていただいたことが、初めての出会いでした。今でも話を聞くとき、「いつ」から聞くととてもスムーズに話が進み、ムラのミライとの出会いをありがたく懐かしく思っています。これからもじわじわとファンを広げていってほしいと思います。

 ・久しぶりにZOOM越しに皆さんにお会いできてとてもうれしく思いました。ムラのミライのこれまでの活動についても知ることができ、また今後の思いを共有いただけたことで私自身も会の活動に対してできることを模索したいと思いました。原さんがおっしゃっていた土壌が地域で、ムラのミライの役割=ミミズの例は、とてもしっくりきました。ミミズを活用して多様な生き物が住む土壌を作っていきたいですね。

 ・率直に心開いてお話ししてくださる態度、そして、イベント前後に頂戴したメール文章や当日の司会進行からも他者尊重と心配りを感じたため。お話を初めて伺いましたが、これらは皆様が海外でも大切に育んで来られ点かと感じました。とても爽やかで清々しい体験でしたし、勉強になりました。ありがとうございました。

 ・私の現場は保育のため、子育て支援についてはとても興味があります。本来、保育所や保育士も子育て支援の業務を担っておりますが、保育を回していくことに精一杯な状況であり、保育所任せにならない保護者主体の子育てをどう支えていくのか模索しながら広場提供などの支援を行っています。
地域という別のアングルからの支援との連携など必要なことは山ほどありますが、保育所側からどのようにアプローチしてよいのか、地域の子育て支援では具体的にどのようなことがなされているのか、いろいろと具体的なお話をざっくばらんに聞く機会があれば、個人的にうれしいです。

===
たくさんのご感想をありがとうございました!支援者の皆様に、ムラのミライの新しい門出を応援いただき、心強く感じました。今後もこうしたムラのミライの役職員の顔が見えるイベントを続けられたらと思っています。

 次回は、9月に行った保育現場でのメタファシリテーション研修について研修内容や参加者の声をご紹介します。お楽しみに! 

山岡 美翔 ムラのミライ事務局長)
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2021年9月24日金曜日

「聞く」ことは、職場の人間関係を良くする方法

製造業で働く浅井さん(仮名)は、3年ほど前に講座を受講されて以来、メタファシリテーションを使い職場で良好な人間関係の構築に取り組んでおり、その成果やインパクトについて定期的に進捗報告をしてくれています。

「納期に追われ、みんなが病んでいき、職場に活気もなくやばいんです!」

浅井さんが講座を受講時に話してくれた職場の問題です。

 

具体的には、

      トップダウンの社風が根強い

     職場改善をしようと集まって意見を出し合うものの、その場しのぎの意見ばかりで、会議が終わったあとのアクションに繋がらない

     部下を思って提案をするものの、響いてないみたい

 

課長である浅井さんは上司とのやりとりにも苦労しつつ、部下とのやりとりにも悩んでいました。
浅井さんいわく、部下には仕事の指示は明確に伝え、ミスした時は「なぜミスをしたのか」をしっかり問いただすことで同じミスをしないように指導してきたと。
部下と良好な関係を作るために、雑談をしようとするも、あたりさわりのない会話で終わり、本音で話してくれているのかわからないともおっしゃっていました。

 

では受講前と受講後で、浅井さんの質問がどのように変わったのでしょうか。

 

シチュエーション:昨日納期であったが、まだ納品していない部下の渡辺さんとの会話

Before

浅井:まだ納品してなかったの?

渡辺:はい、すみません。

浅井:なんで遅れたの?

渡辺:B社とのプロジェクトに関する業務で忙しく、納品先のA社は比較的納期に寛容なので後回しにしています。

浅井:なんで後回しにするの?納期守るのは当たり前でしょ!?A社も大事な取引先だから、先方が大丈夫っていっても約束は守らなきゃだめだよ!

渡辺:はい、気をつけます・・・・

 

After

浅井:昨日の作業は朝から何してた?

渡辺:8時に出社後、B社との打ち合わせのあとに、見積書作成などしていたら15時くらいになってしまって。16時納期指定のA社に納品するパーツのチェックをしていたところ、破損箇所が見つかって。

浅井:その後どうしたの?

渡辺:A社の担当者の松田さんに電話して事情を説明したところ、ちょうど在庫を保管する場所がないから、来週月曜日納品でも良いと言われました。

浅井:そうか、それならよかった。最近オンラインでの打ち合わせが増えたけど、松田さんに最後に会ったのっていつ?

渡辺:先月末の31日です。実は、松田さんとはオンラインでの打ち合わせは行っていないんです。回数は減らしても、会って話したいと。会って話すと雑談することもできて、先日会った時に、こんな話もしていたんです。」

 

浅井さんは失敗を重ねながらこのようなやりとりを続け、少しずつコツをつかんでいったようです。
結果、部下から話に来てくれたり、仕事の提案をしてくれることも増えたようです。
関係性が良くなるだけではなく、それによってお互いモヤモヤしとした気持ちを抱えず仕事が効率的にできてきたとおっしゃっていました。

浅井さんが自らのコミュニケーション方法を見直し、気づいたことを教えてくれました。

「今までは相手の話を聞いているようで、聞いてなかった。相手の状況を聞くことが、”言い訳”だとおもっていたけど、実は違った。事実を聞くことで、自分が知らないこともたくさんあったし、相手が課題整理できるのだと気づいた。」 

 

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)

 

 

海外の活動地での筆者

 

2021年9月13日月曜日

国を問わず、業種も問わず

2011年12月、海外研修で初めてムラのミライのインドでの事業地を訪れた時の話。
まずは座学にてメタファシリテーション(以下メタファシ)の手法を学び、3つくらいの村に
て事実質問の練習をすることで体感することができた。
それと同時に、シンプルな事実質問で構成する対話手法は理解できたものの、簡単に習得できるスキルではないことも実感した。(村人に事実質問をする際、どんだけ振り絞っても質問が2個くらいしかでてこなかった・・・・・)

研修も終わりに差し掛かった時、当時働いていた企業でも、村でおこっていることと類似し
たコミュニケーションの問題があることに気づいた。そして、この手法は国際協力のみなら
ず企業でも使える手法だ!と思ったことを覚えている。

インド研修の最後に集合写真をパチリ

それから実践練習と勉強を重ね、2015年にメタファシリテーション体験セミナーにて講師デビュー。
その当時、参加者の8割程度はNPOなどのソーシャルセクターの人であった。
だんだんと参加者層も変わっていき、企業で勤める人の割合も高くなってきた。業種や国
などが違っても、多くの人がコミュニケーション、対人関係の問題を抱えていることがわか
った。

ある時、講座に参加していただいた某企業の人事部で働くAさんが職場の悩みを話してく
れた。
「離職する社員が多くて・・・・ 社員の悩みや職場での問題をヒアリングするのですが何
が問題なのかわからないんです」

詳しく話を聞くと、次のような事実を知ることができた
●人事部の役割の1つ:社員の問題を把握し解決する。そして離職率を下げる
●新入社員には、入社3ヶ月後に面談をおこなっており、何か問題がないか?困った
ことはないか?などの質問をしている
●面談の目的は、上記の「離職率を下げる」為に新入社員の抱える問題を早めに察知
し解決に導くこと
●ヒアリング内容は人事評価に影響しないことは社員に伝えてある

まさにメタファシが使えるシチュエーション!と思い、このような具体的な相談によって、企業のどのような場面で使えるのかが見えてきた。

その後もAさんのような相談が増え、それにフィードバックを続けることで小さいな成功
事例もでてくるようになってきた。
その1つに、職場で部下との関係に悩んでいたが改善することができたというBさんがこ
のように話してくれた。
「今まで相手の話をきいているようで、自分の考えを押し付けたり、相手の話を何も聞いて
なかったことに気づきました」
課題の当事者に解決方法を気づかせる対話手法であるメタファシだが、まずは相手の話をし
っかりと聞くことが大事である。

10年前、メタファシは企業でも使える!というざっくりした思いから始まり、企業(主には
人事関係)での課題を把握し、現場でメタファシが有効であると証明される成功事例もうま
れた。
国際協力の現場で生まれたこの手法は、国内でも福祉、子育て、医療など様々な現場で有効
的に使われるようになり、今後企業でも広まっていくだろう。

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)

2020年4月22日水曜日

Zoomでメタファシ体験セミナー!

4/19(日)に、ムラのミライの香子さんによるメタファシ体験セミナーに参加しました。

午前は青年海外協力隊向け、午後は対象を定めない講座でした。
人に中々会えない状況の中、久しぶりの講座ということで少し緊張していましたが、Zoomを使うと他の方の名前が一目で確認できたり、二人ずつなどのグループ分けができたりなど、その便利さに感心するばかりでした。

午前の協力隊向けセミナーでは、ムラのミライのメタファシのきっかけとなったインドの村での青年ガンガイヤとのエピソードを紹介しました。
土地なしの「かわいそうな村人」という思い込みフィルターが“What”を使った事実質問をすることで剥がれ、唐辛子を山で自作する「リアルな彼の姿」を浮かび上がらせたのです。

また、午後のセミナーでは、香子さんが事実質問のみの対話、「なぜ」「どう」のNGワードを使った対話を二名の方と実践しました。会話の切り口は今日のお昼に食べたもので、どちらもにこやかで自然な会話でした。

二つの対話の唯一の違いは事実質問のみか、そうではないかということ。何気ない日常会話であれば、「どうして」「どうだった」などの思い込み質問を織り交ぜることもあります。ただ、課題解決において、相手と自分との話していることの認識を一致させる必要があるとき、これらの言葉は事実を曖昧にしてしまう落とし穴になりかねません。

事実質問を使って事実を思い出すことで、自分にある人脈や経験などの資源を思い出し、自己肯定感をアップし、課題解決に前向きに取り組める。
「何かを解決したいとき、自己肯定感が高いほうがいいですよね」という香子さんの言葉に、その通りだと思いました。

出来ないことが多い状況の中でも前向きに過ごすためには、事実質問を使って自己肯定感をアップさせることがカギではないかなと思いました。

(笠見 友香 ムラのミライ認定メタファシリテーション・トレーナー)

2020年4月17日金曜日

親子のコミュニケーションをよくするためのコツ=鉄板の鉄則  実践編 後編~夫婦で練習してみる~




前号の「実践編 前編」に挑戦された皆さん、やってみて、いかがでしたか?
今回はいよいよ最終回「実践編 後編~夫婦で練習してみる」をお届けします。




時間がかかる事実質問を使った対話術

「夫婦で練習してみる」の前に、少し前回までの復習です。
これまでの入門編、実践編に挑戦された方はお気づきかとおもいますが、
正直なところ、事実質問を使った対話術を習得するには、かなりの練習が必要です。
事実質問が思いつかない場合は、率直に、
「お願いがあるんだけど、〇〇してくれない」とか、
「これはお母さんの意見なんだけど、君はどう思う?」というように、
こちらの意図を明確にした物言いをするのが有効であることもすでに実証されています。

この手法と練習方法を詳しく説明するとかなり長くなります。
本当に関心をお持ちの方は、このブログの最後にあるPDFをご覧になって下さい。
このPDFは、私が書いた「対話型ファシリテーションの手ほどき」という小冊子のダイジェスト版で、
今回のブログ(入門編2回+実践編2回)の読者のために再編集したものです。


夫婦でやってみませんか


4月16日、いよいよ全国にも緊急事態宣言が出され、子どもだけではなく、両親ともに自宅に留まらなければならなくなったご家庭が増えていることでしょう。
母子のやり取りを横から見ているお父さんの中には、「あんなにガミガミ言わなくてもいいのに」と思いながらも、触らぬ神に祟りなしと黙っている方もいらっしゃるでしょう。

普段は、母親任せにしているので急に割って入るのは難しいかもしれません。
そんなお父さんでも、進路選択に際しては、口を出さざるをえなくなる時が必ずやって来るのです。その時に備えて、このお子さんと接する時間が嫌でも増えている今、もう少し参加の度合いを高めるよう努力してはいかがでしょう。


「人の振り見て我が振り直せ」が早道

あるいは、この際なので、このエッセイを二人で読みながら、互いにどう見えているか意見交換してみる機会にするという手もあります。
自分の振る舞いに対して自ら意識的になるのは簡単ではありません。
「人の振り見て我が振り直せ」と昔から言うように互いに気付かせ合うのが早道です。
ただし、その際に大切なのは、頭ごなしに断定的な評価を下したり、上から目線で提案したり、助言したりすることを厳に慎むことです。これが夫婦の間でできなければ、子どもとの間でもできませんよね。
逆に言えば、シングルペアレントの場合、あなた一人が変わればいいだけなので、却って好都合と言えるかもしれませんね。


家にいる時間は自己訓練のチャンス

毎日家族だけで顔を突き合わせていると、互いに感情的になりやすいことを私自身痛感するこの頃です。だからこそ、自分を冷静に客観的に見て、必要な自己抑制をするための自己訓練が必要になります。そういう親の姿を見せることほど素晴らしい教育はないと私たちは確信しています。

最後になりましたが、4回シリーズのエッセイのほんの少しでも「これならできそうだな」というところからでいいので意識してやってみてください。
お子さんへの質問がちょっと変わり、お子さんにもそのことがちょっと伝わったら、とても嬉しいです。