2017年9月26日火曜日

机の上が散らかっているのが悩み…それってホント?

みなさん、おひさしぶりです。
ムラのミライ関西事務所インターン生の稲垣です。
 
ムラのミライが生み出した「メタ・ファシリテーション」は、「Why」や「How」を使わない事実質問を行うことで、当事者自身による気づきや行動の変化をもたらします。
 
うーん、これだけ聞いても、なんだかよく分からないですね。
そこで、今回は「メタ・ファシリテーションって何?実際にはどのように使うの?」と思っていらっしゃる方々に、メタ・ファシリテーションを使った具体例をご紹介します!
 
ムラのミライでは、『途上国の人々との話し方』という著書を出しています。本書の中で、ムラのミライ代表理事である中田さんがファシリテーター講座での様子を執筆しています。
メタ・ファシリテーションによって、講座の受講者の方が悩みを解決したときの「なるほど!!」感がとても伝わってきますので、ここで本書の一部抜粋をみなさんにご紹介したいと思います。
 
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私のファシリテーター講座での事実質問の練習中の一こまである。ファシリテーション手法の実践的な練習として、「改めたい習慣」について相手にたずねていきながら、問題解決のための気づきを与えることを目的に、二人一組で互いにインタビューしあうという作業を行った。
 
ある国際協力団体の女性スタッフ池田さん(仮名)と講座の主催者側のアシスタント杉山さん(仮名)がひとつのペアになった。池田さんが挙げた自分の問題は「職場の机の上にいつも書類が乱雑に積み上げられていて、ぜんぜん片付かないこと」であった。すでにファシリテーションの訓練を受けていた聞き役である杉山さんは、講座で教えているインタビューの公式に沿って要領よく彼女の問題の分析を進めていった。
 
杉山さんはまず、「机の上が片付かないことで、仕事の効率が落ちているのか」と質問した。つまり「それで誰がどのように困っているか」を尋ねてみた。そうしたところ、彼女は、「よく考えてみればそれほど落ちているわけではない」と答えた。「じゃ、どうして私はこんなに気にしているのだろう」と自問する彼女にかまわず、彼は次の質問をした。「では、職場の同僚で、机の上がきれいに片付いている人がいますか?」と。彼女はしばらく考えてから、「います」と答えたのだが、あいにくそこで時間切れになり、やり取りを終えなくてはならなかった。
 
講座の次のステップとして、それぞれのペアによるやり取りの振り返りが始まった。彼女の番になった時、彼女は、興奮気味に語り始めた。「私わかったんです。職場の同僚で机の上が片付いている人がいますか、と聞かれたときに。実は、いつもきれいに片付けている人は、男性職員だったんです。それを思い出した時、私、はっと気がついたんです。男性があんなにきれいに片付けているのに、女である私が乱雑にしていることに、私はコンプレックスを感じているんだ。だから、そのことがあんなに気になるんだ、と」
 
つまり、池田さんの本当の問題は、机の上が片付かないという物理的な状態ではなく、「女のくせに」とつい考えてしまう彼女の偏見、いわゆる「ジェンダーバイアス」だったのである。ファシリテーションの公式にしたがって、聞き手が「それで何がどう困っているのか」、困ったことがないようだったら、「それを解決している人が誰かいるのか」という具合に対話を進めていった結果として、池田さん自身が自らこのことに気付いた。
 
それで机の上が片付かないという問題が解決できたわけではないが、少なくとも前ほど苦にならなくなったという。さらに、その後、より収納スペースの大きな机の導入を提案するなど、現実的な対策を進めたとのことであった。
 
杉山さんの「机が片付いている職場の同僚はいますか」と質問の次は「それは誰ですか」となるはずだった。ところが、練習が時間切れになったので、池田さんは自分の中でその続きをやった。そうしているうちに、彼女の内面で新たな気付きが起こり、それを彼女は皆に言わないではいられなかった。
 
ここでひとつ注意しておく必要があるのは、杉山さんが最後の質問をしてから、池田さんの気付きが起こるまで、少々の時間的な経過があったということである。この働きかけから気付きに至るまでの間の時間的なずれの存在は、ファシリテーション手法において極めて重要な要素なので、後でじっくりと述べることとする。
 
(『途上国の人々との話し方』p5859より一部抜粋)
 
 
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うーん、なるほど!まさか、「机が片付かない問題」の根幹に「ジェンダーバイアス」という問題が潜んでいたとは
 
メタ・ファシリテーションは事実のみを聞く(「Why」「How」といった考えや自己認識を問う質問は封印する)ことで、相手に状況などを鮮明に思い出させて、新たな「気づき」を促します。
 
 このようなメタ・ファシリテーション講座をムラのミライでは提供しています。ぜひ、一度ホームページをのぞいてくださいね。私も絶賛修行中です!みなさんと勉強させていただけることを心待ちにしています! 
 
 
 
(ムラのミライ 関西事務所インターン 稲垣玲



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2017年9月19日火曜日

絶賛勉強中!初めてのメタファシリテーション~目からウロコの基本のき その2「尊重」~

こんにちは。
投稿2回目の菊地です。今回もセネガルよりお届けします。

最初の投稿にも書きましたが、私はまだまだメタファシリテーション初心者中の初心者です。そんな私が、メタファシリテーションの生みの親である、和田さんや中田さんのお側で見聞きし、これはヒントになる!と思った「基本のき」をまた一つご紹介したいと思います。

前回は、セルフエスティーム(自尊心)を高めるようなエントリーポイントの選び方のお話をしました。この自尊心に関連して次のようなストーリーをお話しします。

セネガルでのモデル農家養成研修中。私は、どのような流れで研修が進むのか興味がありました。

私が知っている研修、特に他のNGOなどが主催している研修には、もちろん「流れ」がありました。事前にきちんと原稿を作り、一字一句話す内容が決まっていました。あるいはパワーポイントやレジュメが用意されていました。

しかし、このセネガルでの研修では、どのように進むのかを私は事前に知らされていませんでした。それもそのはず、和田さんも中田さんも、流れを知らなかったのです!

さて、お二人とも流れを持っていないセネガルの研修はどうなったでしょうか。
ある村での研修の様子です。

まずは、農業をする前提として、自分たちの村のどこに、どれくらいの水があるのかを確認するため、村の地図を作成した農民たち。地図の説明をしながら、
農民「この井戸はすでに干上がっています。」
和田「(最年長の村人に)何年に掘られたか覚えていますか?」
村人2「1980年くらいかな」
和田「では、一番新しい井戸は?」
村人1「2016年に掘られました。でもすでに塩化しているので飲めません」
和田「その前に掘られた井戸は?」
村人1「2015年に掘られました。この井戸もすでにしょっぱくなっています。」

会話の終わりに「もうこれは病気のようなものです」と和田さんが言うと、村人たちは苦笑。
しかしこの後、どういう現象で井戸水が塩化するのか、水が土に浸透するメカニズムや土壌の性質変化の過程など(これらの説明はちゃんと用意しています。)の関係で説明していくと、村人たちの顔は真剣になっていくのでした。

極めつけに和田さんが「このままでは10年か20年でこの村はなくなってしまうでしょう。行動を起こすかどうかはあなたたち次第です。」と言うと、それまでの話によってスイッチの入った村人たちは、まだ何も言われないのに、さっそく対策について自ら議論を始めます。それを忍耐強く見守る和田さんなのでした。














お分かりでしょうか。ここまで来たらしめたものです。
ここがメタファシリテーションのミソとも言えるのではないでしょうか。

つまり、相手が話しやすいこと、相手が自ら関わったり、帰属しているもの、あるいは知っていることについて聞き、セルフエスティームを持ち上げた後に、少しの情報・テクニックを加えることで、スイッチが入ったように相手の主体性ややる気を引き出すという方法。それがまさに、メタファシリテーションの技術の基本なのでしょう。

研修生たちは、自分たち自らが対策について話し合っているように思っていたでしょうが、ここまでの流れをうまく作ったのは、実はファシリテーターだったのです。あるいは、話し手の流れにうまく乗ったとも言えるのでしょうか。

セネガルでの研修は、こうして無事に成功し、シメシメと思われた和田さん、中田さんだったでしょう。けれど、この「流れ」を持ち込まないという方法が成功するかどうかは、本番一度きりではなく、それまでに積み重ねられた練習と技術の賜物でしょう。

メタファシリテーションの使い手になるにはまだまだと、実感する私なのでした。

(セネガル事務所 菊地綾乃


★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)

セネガルの農家を応援してください!募金キャンペーン実施中
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2017年9月12日火曜日

「私って本当に、ダメダメお母さん?」メタファシリテーションで自分の課題を整理する(後編)

さて、前回の質問の続きです。(前編はこちらから)
あなたが子育てや仕事がうまくいかず「私、何をやってもダメダメで…。」と思い込んでいる時、それぞれの質問に何と答えるでしょうか?
【質問】
1.え?何でそう思うの?
2.どうしたの?何でも話聞くよ。
3.最近、子育てのことで誰かに何か言われたの?
実は、1、2の質問は、子育てに自信を失っていた私へ、実際に問いかけられた質問です。それぞれの質問に私は、こうリアクションしました。

1.「だって、赤ちゃんの体重も増えないし、寝かしつけもできないし…。」と、ダメダメエピソード(だと思い込んでいる話)を始めた。

2.「ありがとうございます。えっと色々悩みはあるんですけど…。最近、人と話す機会がなくてコミュニケーション能力が低くなっていて。」と、頭の中が未整理で何から話せばいいか分からなくなった。

みなさんにもこのような経験はあるでしょうか?
自信をなくし、頭の中も未整理の状態で、「何で」と理由を尋ねられても、「何でも話して」と抽象的に尋ねられても、答えるのにとてもエネルギーがいりました。
結果、「何が悩みか」の検証もできず、さらに悩みを深めることになりました。
そこで、3番のような質問を自分自身に問いかけてみました。さて、これは、何を聞く質問でしょうか?
    事実
    意見
    感情

答えは、①事実です。もちろん相手が元気な時なら1,2の質問で問題ありませんが、メタファシリテーションでは、本当に悩んでいる相手の助けになりたいとき、相手の本音を引き出したいなら、相手が答えやすい「事実質問」(When、Who、Where、What)を用いて、過去の経験を思い出させ共通理解を積んでいきます。


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その日、私はママ友と別れ、帰宅後に自分の悩みを事実質問で分析してみました。少し長文ですので、時間がない方は【分析】を読み飛ばしてくださいね。

【分析:「本当に私はダメダメお母さん?」】(ファシリテーターとしての質問→回答)
・最近、子育てのことで誰かに何か言われたの?→先月、健診の時に保健師に「体重なかなか増えていないようですね」と言われた
・他には何を言われたか?→「体重は月単位の増え方を見るから、毎日測らなくてもいい」と言われたが、不安で毎日測っていた
・誰かにその悩みを話したか?→母親に話したら、私や兄弟も赤ちゃんのころ、同じような発育で体重がなかなか増えなかったが、その後の発育は問題なかったと聞いた
・他には、子育てのことを誰かに指摘されたことは?
→電車に乗るとき、急な雨でおばあさんに「そんな小さな赤ちゃんを雨にぬらして」と言われた。他にもあったし、自分でも「ダメダメお母さん」と思うことがある。
・最近いつ「ダメダメお母さん」と思ったのか?
→家にいるとき、時間をもて余して、スマホ検索したとき、寝かしつけに時間がかかる時
・スマホ検索では何を調べていたか
→『赤ちゃん 遊び方 楽しい』とか『赤ちゃん 寝かしつけ 攻略法』など
・赤ちゃんとの遊び方について、誰かに相談したことはありますか?
→ママ友に相談したら、「え?保育士の経験があるかと思うくらい上手だよ。」と言われたことがある
・寝かしつけのことは?誰かに相談した?
→家族や保健師に相談したが、悩みは晴れなかった
・その他に相談できるところを知っているか?
→行政の子育て相談窓口、NPOや企業の子育て悩みサポート窓口もあるみたいだけど使ったことがない
・他に、例えば体重が増えない悩みの時は誰に相談したか?
→体重のことはあまり同じような悩みのある人がいなかった。寝かしつけはママ友にも同じような状況の人がいて、お互いに情報交換をしている。来月からベビーサークルの回数も増えるので他のママ友にも相談できる


















ここまで事実質問をしてみて、私は以下のことに気が付きました。
【当時の悩み→気づいたこと】
       「ダメダメお母さん」→誰も私のことを「ダメダメお母さん」とは言っていない
       赤ちゃんの体重が増えない→不安で赤ちゃんの体重計測を毎日することで、逆に悩みの種を増やしていた。
       寝かしつけがうまくできない→ママ友以外の相談窓口については知らない
       どうやって遊んだらいいか分からない→ママ友に褒められるぐらい上手
       赤ちゃんを連れまわせないから、誰とも会えない、人と話したい→来月からベビーサークルの回数が増え、ママ友と話す機会が増える


このように「ダメダメお母さん」という思い込みに気が付き、課題を整理できたのは以下3つのことが大きかったと思います。
    ママ友と話したことで、自己肯定感をあげることができ課題解決に向かうエネルギーをもらえたこと
    メタファシリテーションによって自己認知のゆがみに気付くことができた
    さらに、遊びが上手と褒められた成功体験や気軽に相談できる友人などの社会的資源を思い出し自尊心を取り戻せた


















この記事を書く前、ムラのミライの講師に「よくそんな時期に自分の力でメタファシリテーションができたね。」と言われ、よくよく振り返ってみるとママ友との会話が大きなきっかけになっていたことを思い出しました。改めて「成功は、自分のおかげ」にしてしまうものだなと振り返りの大切さを感じました。

(ムラのミライ 理事 山岡美翔


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2017年9月5日火曜日

「私って本当に、ダメダメお母さん?」メタファシリテーションで自分の課題を整理する(前編)

みなさま、お久しぶりです。ムラのミライ理事の山岡です。

夏休みも終わり、「あれ?最近メタファシリテーション使ってないな」という方や、「何か最近あれも、これもうまく行かない」とモヤモヤしている方、改めて事実質問を使って自己分析してみませんか?

今回は私自身に対するメタファシリテーションで、子育てのモヤモヤを晴らした経験をご紹介します。


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私の娘が生後間もない頃、私は初めての育児に翻弄されていました。娘は、生まれた時の体重は平均でしたが、そこからみるみる体重が伸び悩み、発育曲線を下回るすれすれのところを推移するようになっていました。

【当時の主な悩み】
• 赤ちゃんの体重が増えない
• 寝かしつけがうまくできない
• 家事もできていないのに一日が終わった
• どうやって遊んだらいいか分からない
• 産後、新生児を連れまわせないから、誰とも会えない、人と話したい

ついには、こんな良い母親ではない私のことを、赤ちゃんは好きじゃないのでは?と思うようになりました。とはいえ、抵抗力の弱い小さな赤ちゃんを連れて外出することもできず、悩んだ時に頼りになるのは、スマホ検索でした。

『子育て 初めて 分からない』とか『母親 自信ない 今後』とか検索すれば、私と同じような意見ばかりが目に入り、一時は安心するもののモヤモヤは晴れません。

そんな時、初めてのベビーサークルであるママ友に出会いました。私は彼女にこう聞きました。


私:「子育って、めっちゃしんどいよね?寝不足だし、うまくいかないし、初めてのことで分からないことだらけで不安だし。何をやってもダメダメな気がして…。」

ママ友:「うん、確かにしんどいけど、私は人生で今が一番幸せ。赤ちゃんは可愛いし、うまくいかなくてもこの子が笑ってくれているだけでいいの。ほら、あなたの赤ちゃんもとっても幸せそうによく笑うじゃない。」

予想外の答えに、私はびっくりしました。そして、「あれ?私ってダメダメじゃないかも?私の悩みって、思い込みだったんじゃ…。」としばらく子育てに翻弄され、封印していたメタファシリテーションを使ってみることにしました。

今振り返ると、しばらく家族以外の誰からも評価されない環境で子育てがうまく行かずモヤモヤとした状況から、ママ友と話し評価されたことで自己肯定感をあげることができ、課題解決に向かうエネルギーを蓄えることができたのですね。おかげで、今でもこの時のことを鮮明に覚えています。


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さて、みなさんなら、友人や同僚が「私、何をやってもダメダメで…。」と自信を失っている時に声をかけるとしたら、何と聞きますか?1~3から選んでみてください。

1.え?何でそう思うの?
2.どうしたの?何でも話聞くよ。
3.最近、子育てのことで誰かに何か言われたの?

さて、ここでヒントです。
もし、あなたが自信を失っているとき、答えるならどの質問が一番答えやすいですか?
過去にこのような経験があればぜひ思い出してみて下さい。
私はそれぞれの質問にどうやって答えたのでしょうか…次回へ続きます。


(ムラのミライ 理事 山岡美翔




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