2021年9月24日金曜日

「聞く」ことは、職場の人間関係を良くする方法

製造業で働く浅井さん(仮名)は、3年ほど前に講座を受講されて以来、メタファシリテーションを使い職場で良好な人間関係の構築に取り組んでおり、その成果やインパクトについて定期的に進捗報告をしてくれています。

「納期に追われ、みんなが病んでいき、職場に活気もなくやばいんです!」

浅井さんが講座を受講時に話してくれた職場の問題です。

 

具体的には、

      トップダウンの社風が根強い

     職場改善をしようと集まって意見を出し合うものの、その場しのぎの意見ばかりで、会議が終わったあとのアクションに繋がらない

     部下を思って提案をするものの、響いてないみたい

 

課長である浅井さんは上司とのやりとりにも苦労しつつ、部下とのやりとりにも悩んでいました。
浅井さんいわく、部下には仕事の指示は明確に伝え、ミスした時は「なぜミスをしたのか」をしっかり問いただすことで同じミスをしないように指導してきたと。
部下と良好な関係を作るために、雑談をしようとするも、あたりさわりのない会話で終わり、本音で話してくれているのかわからないともおっしゃっていました。

 

では受講前と受講後で、浅井さんの質問がどのように変わったのでしょうか。

 

シチュエーション:昨日納期であったが、まだ納品していない部下の渡辺さんとの会話

Before

浅井:まだ納品してなかったの?

渡辺:はい、すみません。

浅井:なんで遅れたの?

渡辺:B社とのプロジェクトに関する業務で忙しく、納品先のA社は比較的納期に寛容なので後回しにしています。

浅井:なんで後回しにするの?納期守るのは当たり前でしょ!?A社も大事な取引先だから、先方が大丈夫っていっても約束は守らなきゃだめだよ!

渡辺:はい、気をつけます・・・・

 

After

浅井:昨日の作業は朝から何してた?

渡辺:8時に出社後、B社との打ち合わせのあとに、見積書作成などしていたら15時くらいになってしまって。16時納期指定のA社に納品するパーツのチェックをしていたところ、破損箇所が見つかって。

浅井:その後どうしたの?

渡辺:A社の担当者の松田さんに電話して事情を説明したところ、ちょうど在庫を保管する場所がないから、来週月曜日納品でも良いと言われました。

浅井:そうか、それならよかった。最近オンラインでの打ち合わせが増えたけど、松田さんに最後に会ったのっていつ?

渡辺:先月末の31日です。実は、松田さんとはオンラインでの打ち合わせは行っていないんです。回数は減らしても、会って話したいと。会って話すと雑談することもできて、先日会った時に、こんな話もしていたんです。」

 

浅井さんは失敗を重ねながらこのようなやりとりを続け、少しずつコツをつかんでいったようです。
結果、部下から話に来てくれたり、仕事の提案をしてくれることも増えたようです。
関係性が良くなるだけではなく、それによってお互いモヤモヤしとした気持ちを抱えず仕事が効率的にできてきたとおっしゃっていました。

浅井さんが自らのコミュニケーション方法を見直し、気づいたことを教えてくれました。

「今までは相手の話を聞いているようで、聞いてなかった。相手の状況を聞くことが、”言い訳”だとおもっていたけど、実は違った。事実を聞くことで、自分が知らないこともたくさんあったし、相手が課題整理できるのだと気づいた。」 

 

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)

 

 

海外の活動地での筆者

 

2021年9月13日月曜日

国を問わず、業種も問わず

2011年12月、海外研修で初めてムラのミライのインドでの事業地を訪れた時の話。
まずは座学にてメタファシリテーション(以下メタファシ)の手法を学び、3つくらいの村に
て事実質問の練習をすることで体感することができた。
それと同時に、シンプルな事実質問で構成する対話手法は理解できたものの、簡単に習得できるスキルではないことも実感した。(村人に事実質問をする際、どんだけ振り絞っても質問が2個くらいしかでてこなかった・・・・・)

研修も終わりに差し掛かった時、当時働いていた企業でも、村でおこっていることと類似し
たコミュニケーションの問題があることに気づいた。そして、この手法は国際協力のみなら
ず企業でも使える手法だ!と思ったことを覚えている。

インド研修の最後に集合写真をパチリ

それから実践練習と勉強を重ね、2015年にメタファシリテーション体験セミナーにて講師デビュー。
その当時、参加者の8割程度はNPOなどのソーシャルセクターの人であった。
だんだんと参加者層も変わっていき、企業で勤める人の割合も高くなってきた。業種や国
などが違っても、多くの人がコミュニケーション、対人関係の問題を抱えていることがわか
った。

ある時、講座に参加していただいた某企業の人事部で働くAさんが職場の悩みを話してく
れた。
「離職する社員が多くて・・・・ 社員の悩みや職場での問題をヒアリングするのですが何
が問題なのかわからないんです」

詳しく話を聞くと、次のような事実を知ることができた
●人事部の役割の1つ:社員の問題を把握し解決する。そして離職率を下げる
●新入社員には、入社3ヶ月後に面談をおこなっており、何か問題がないか?困った
ことはないか?などの質問をしている
●面談の目的は、上記の「離職率を下げる」為に新入社員の抱える問題を早めに察知
し解決に導くこと
●ヒアリング内容は人事評価に影響しないことは社員に伝えてある

まさにメタファシが使えるシチュエーション!と思い、このような具体的な相談によって、企業のどのような場面で使えるのかが見えてきた。

その後もAさんのような相談が増え、それにフィードバックを続けることで小さいな成功
事例もでてくるようになってきた。
その1つに、職場で部下との関係に悩んでいたが改善することができたというBさんがこ
のように話してくれた。
「今まで相手の話をきいているようで、自分の考えを押し付けたり、相手の話を何も聞いて
なかったことに気づきました」
課題の当事者に解決方法を気づかせる対話手法であるメタファシだが、まずは相手の話をし
っかりと聞くことが大事である。

10年前、メタファシは企業でも使える!というざっくりした思いから始まり、企業(主には
人事関係)での課題を把握し、現場でメタファシが有効であると証明される成功事例もうま
れた。
国際協力の現場で生まれたこの手法は、国内でも福祉、子育て、医療など様々な現場で有効
的に使われるようになり、今後企業でも広まっていくだろう。

松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)