2014年4月22日火曜日

なぜと質問せずに理由を尋ねる方法②

今回は、「なぜ」と質問せずに理由を尋ねる方法をもう一つご紹介します。
相手の話を聞いていて、複数の選択肢の中から、その選択肢を選んだ理由を聞いてみたくなることがあります。
この場合も、「なぜ」と尋ねない方がよいのですが、どうすればよいでしょうか。

例えば、就職面接の際、企業側がこの会社に応募した理由を尋ねれば、応募者のアピール力、理路整然と考えを述べられるかは分かるかもしれません。

しかし、その奥にある、この会社に応募した本当の理由が知りたい場合、
応募者は他の選択肢との間で選択をしているはずですから、その選択肢を尋ねてみましょう。

「他に選択肢はなかったのか?」
「どのような選択肢があったのか?」

就職面接を受けていると、「他にどんな会社に応募してるの?」と聞かれることがありますよね。
それは、志望動機の裏にあるものを知りたいのかもしれません。

(2013年度インターン 藤川真之介)

2014年4月15日火曜日

なぜと質問せずに理由を尋ねる方法①

事実を聞くときに重要なことの一つが、「なぜ?」を使わないこと。
それは相手の考え(perception)を聞くことになるからです。
今回は、相手の過去の行動の理由について、
「なぜ」と質問せずに聞く方法の一つを紹介します。



■考えさせるな、思い出させろ
過去の行動の理由を尋ねる時に「なぜ」と聞いてはいけないのは、
相手に過去の行動について思い出させることなく、
相手の現時点での考えを引き出してしまうリスクがあるからです。
過去を時系列に沿って聞いていき、相手に事実を思い出させることが大事です。


■時系列に沿って聞いていく
過去の講座から、転職の理由を聞くやり取りを例に挙げます。

「現在の会社に就職したのはいつですか?」
「前の会社を辞めたのはいつですか?」
「最初に転職したいと思ったのはいつか覚えていますか?いつですか?」
「会社を辞めるまでどれくらいの期間、勤めていましたか?」
「入社後、どこに配属されたのですか?」
「その部署でどれくらいの期間、勤めていましたたか?」
「その後は、どの部署に異動したのですか?」
「配属は望んで変わったのですか?」
「他にやってみたいことがあったのですか?」・・・

この事例でお伝えしたいのは、時系列の大切さです。
時系列が分からないと、過去の事実を正確に捉えられないので、過去の行動の理由を聞くことなど到底覚束ないのです。

次回は、過去の事実を具体的に話してもらうために、どのように質問を工夫すればよいのかについて、紹介します。

(2013年度インターン 藤川真之介)

2014年4月8日火曜日

どこの国でも基本は同じ

おススメの一冊:「ローマ法王に米を食べさせた男~過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?」(高野誠鮮 著)












今、南インドの農村では流域管理プロジェクトを実施中で、2013年度は有機農業への転換となる農業を実施し、水や土壌の使い方のカイゼンにも取り組んできました。
誰が?
村人たちが、です。
 一言で、「村人たちが取り組んできた」と言っても、一筋縄ではいきません。村の人たちにとって初めての事(畝を作る、稲の苗は4・5本で一株ではなく1・2本で一株にして植える、その株と株の間も密集させずに25センチ間隔にする、ミミズを使ったたい肥を作る等々)には不安が先立ち、どのようにすれば慣行栽培からカイゼンできるのか、意識改革から行動に移すまでには多少のプロセスが必要でした。














ご紹介する本でも、従来の農家としての意識から脱皮していく様子が、細かく面白く描かれています。
この本の舞台は、石川県羽咋(はくい)市の限界集落地と言われていた神子原(みこはら)地区で、農業の担い手もほとんどが高齢者という状況にありました。
「若者がいない」
「農業では食っていけない」
「農家が物を売れるわけがない(ビジネスなんかできない)」と、
「ないない尽くし」の嘆き節が至るところに噴き出ています。そのような環境で、著者が市役所職員としてどう関わり、どのように神子原地区の農家の人たちが自信を醸成し、行動変化へと移していったのか。
痛快なエピソードがあちこちに散りばめられているのですが、

 例えば、若者を他都市から呼び込む際には、神子原地区の住人に若者を「選ばせる」。
多くの過疎高齢化地域への若者移住の推進は、その地域の人たちが知らない所で若者が選ばれ、準備され、送り込まれますが、著者が神子原地区の人たちと行ったのは「お願いだから来てください」ではなく、「来るんだったらどうぞ、その代り試験します」というもの。
 その試験を経て(3次試験まで!)移り住んだ若者は、過疎高齢化の進む地区に来た「外部者」から、地区の課題にも取り組んでいく「当事者」へと変化していきます。

 国際協力の場でも「参加型」が連呼されて久しいですが、活動に参加するのは誰でしょうか?
もちろん、途上国の村の人たちやスラムの住人ではなく、外部から来た私たちの方です。
なので、私たちは研修を行う時、農業を実施する時、そこに来る人たちを私たちが選んだりはしません。誰を研修に送り込むか、活動に参加するかは、村の人たちで決めてもらいます。

私たちは、呼ばれる限り研修に赴きますが、そこで何が起こっているのかについては、ぜひムラのミライ(旧称ソムニード)のHPにある「土・森・水・人~よもやま通信 第1部第2部」をご覧ください。



 












他にも、この本で紹介してあるエピソード「会社を作って直売所を開いて売る」というくだりでは、
「会社を作るといっても、倒産したらどうするげん?」
「失敗したら、誰が責任とるがいや!」
「赤字になったら役所が全額補てんしろ!」
と、初めて行うことに対して、農家の不満と不安が爆発します。
そんなネガティブな失敗予測ばかりの集会が何十回と続きますが、著者は最終的に、一人の農家に「1日パチンコ2万円負けたと思って150世帯集まってみんか?」と言わせて、地区の農家たちによる自分たちの会社設立へと動き出します。

JAも市も1円も出さずに、農家たちだけで、自分たちの製品を扱う会社を設立・運営していく様は、歳も学歴もオッチャンもオバチャンも関係なく農家たちで出来るという、著者の強い信念と農家たちとの信頼関係に基づいているのが分かります。
 
 そして、神子原地区の農産物のブランド化のために、次から次へと動いていく著者の行動と結果は、痛快の極みです。
現在、神子原地区のお米を完全に自然栽培にシフトする試みが続けられているようですが、南インドのブータラグダ村の人たちの姿と重なります。

 コミュニティに関わって活動していく時の基本的スタンス、そしてマーケティングの基本的なことなどについて、そして農家(村の人)の不安や気持ちなど、日本だから途上国だからと関係なく共通する部分を、一冊を通して実感します。


(事務局次長/海外事業部チーフ 前川 香子

2014年4月1日火曜日

たった一つの質問が「力」を持つ

「この地域で1年に何回米を収穫できるか知ってる?」
農村での移動中、プロジェクトマネージャーの前川から投げかけられたシンプルな質問。


1回じゃないんですか?」

「この時期(2月初旬)、田んぼによって何か違いがある?」


辺りには12月に収穫を終えた田んぼが広がっています。
村に到着するまでこれらの田んぼをじっくりと見渡すと、
私が今まで田んぼのことを全く気にしていなかったことがわかってきました。
見えてくるのは苗床がある田んぼと無い田んぼ。
そして、苗床がある田んぼの近くには水があることにも気付きます。
水を確保出来さえすれば、通常この地域では年に2回の稲作が行われるのです。


この質問が私にとっての重要なのは、
1年に何回稲作が行われるか?」という問いへの答えそのものではなく、
私が今まで、いかに「観察」を疎かにしていたかという点です。
この質問は、既に農村部での駐在が7ヶ月目に入った私は当然知らなければならないことですが、
私はこの答えを知りませんでした。

この質問を投げかけられたのが赴任一ヶ月目だったら、
この質問は単純に知識を伝えるだけの質問だったかもしれません。
私が正しい答えを知っていたら、この質問から多くのことは伝わって来なかったかもしれません。
この質問を都市部の事務所で聞かれていたら、
「そういえば知らなかったなぁ」で終わりだったかもしれません。

しかし、実際には私はこのシンプルな問いに対して答えられず、
それが一面に広がる田園風景に重り、
私が今までいかに「観察」をしていなかったかを気付かせました。
たった一つの質問が、それほどの力を持っていたのです。


ムラのミライが誇るファシリテーター達と共にインド農村部の地域開発に関わる中で、
ファシリテーションとは質問力そのものではなく、
総合的な対話のスキルだと考えるようになりました。
ここで総合的というのは、対話のための要素をしっかり準備して、
うまく整理して、適切なタイミングで繰り出すスキル。
そして、その準備を日頃から行う心がけだと考えます。


まずは「誰に何を伝えたいか」が明確でなければファシリテーションは出来ません。
そして、そのためにいつ、どこで、誰に、どんな質問をする必要があるかを
考えられる力がファシリテーションのスキルということではないでしょうか。
その総合力を意識しなければ、ある特定のスキルだけが向上しても、
それをファシリテーションとして使うことは出来ないのかもしれません。
そんな総合的な対話のスキルを身につけるべく、一歩ずつ進んで行けたらと思います。


(海外事業コーディネーター  實方博章 )