2014年4月1日火曜日

たった一つの質問が「力」を持つ

「この地域で1年に何回米を収穫できるか知ってる?」
農村での移動中、プロジェクトマネージャーの前川から投げかけられたシンプルな質問。


1回じゃないんですか?」

「この時期(2月初旬)、田んぼによって何か違いがある?」


辺りには12月に収穫を終えた田んぼが広がっています。
村に到着するまでこれらの田んぼをじっくりと見渡すと、
私が今まで田んぼのことを全く気にしていなかったことがわかってきました。
見えてくるのは苗床がある田んぼと無い田んぼ。
そして、苗床がある田んぼの近くには水があることにも気付きます。
水を確保出来さえすれば、通常この地域では年に2回の稲作が行われるのです。


この質問が私にとっての重要なのは、
1年に何回稲作が行われるか?」という問いへの答えそのものではなく、
私が今まで、いかに「観察」を疎かにしていたかという点です。
この質問は、既に農村部での駐在が7ヶ月目に入った私は当然知らなければならないことですが、
私はこの答えを知りませんでした。

この質問を投げかけられたのが赴任一ヶ月目だったら、
この質問は単純に知識を伝えるだけの質問だったかもしれません。
私が正しい答えを知っていたら、この質問から多くのことは伝わって来なかったかもしれません。
この質問を都市部の事務所で聞かれていたら、
「そういえば知らなかったなぁ」で終わりだったかもしれません。

しかし、実際には私はこのシンプルな問いに対して答えられず、
それが一面に広がる田園風景に重り、
私が今までいかに「観察」をしていなかったかを気付かせました。
たった一つの質問が、それほどの力を持っていたのです。


ムラのミライが誇るファシリテーター達と共にインド農村部の地域開発に関わる中で、
ファシリテーションとは質問力そのものではなく、
総合的な対話のスキルだと考えるようになりました。
ここで総合的というのは、対話のための要素をしっかり準備して、
うまく整理して、適切なタイミングで繰り出すスキル。
そして、その準備を日頃から行う心がけだと考えます。


まずは「誰に何を伝えたいか」が明確でなければファシリテーションは出来ません。
そして、そのためにいつ、どこで、誰に、どんな質問をする必要があるかを
考えられる力がファシリテーションのスキルということではないでしょうか。
その総合力を意識しなければ、ある特定のスキルだけが向上しても、
それをファシリテーションとして使うことは出来ないのかもしれません。
そんな総合的な対話のスキルを身につけるべく、一歩ずつ進んで行けたらと思います。


(海外事業コーディネーター  實方博章 )