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2025年7月18日金曜日

18年ぶりの世代交代(3)名前のついていない時代に、橋をかける

 “空白の時代”を生きる私たちができること
経済、コミュニティ、環境のあいだに橋をかける――メタファシリテーションを片手に、“名前のついていないミライ”をつくる仲間を募ります!

分断を越えて橋をかける
こうした「ケアの危機」、「環境の危機」は、もはや未来の話ではなく、「今ここにある危機」です。私たちムラのミライは、そうした危機の最前線で、地域の実践者とともに取り組みを続けてきました。一人一人の力では決して背負いきれないその重みに向き合う仲間として、理事や監事、認定トレーナー、会員やサポーターのみなさんの存在があります。


 写真:セネガル・ンディアンダ村のため池。乾季に入っても水をたたえ、周囲の井戸水も干上がっていない。

“空白の時代”をつなぐ
イタリアの思想家アントニオ・グラムシが、20世紀前半に語った言葉です。
「古いものは死にかけていて、新しいものはまだ生まれていない。」まさにいま、私たちはその「空白の時代」を生きています。ムラのミライが目指すのは、この空白を“つなぐ”こと。あちらこちらで分断されてしまった領域のあいだに橋をかけることです。そして、その橋をかける技術が、メタファシリテーションです。

(出典:アントニオ・グラムシ『グラムシ獄中ノート』(三一書房、1978年/大月書店、1981年)原文:The old world is dying, and the new world struggles to be born.)


無視されてきた声に耳をすます
設立から32年間、ムラのミライが取り組んできたのは、インドやネパールでの水や森の保全、スラムの女性による信用金庫の立ち上げ、西宮での産前産後の家族支援の仕組みづくり、セネガルでの大地の再生、日本各地での子ども支援団体やひとり親家庭の支援団体との協働、そして公共の制度への働きかけなど、いずれも「無視されてきた声」に耳を傾け、そこから人びとが立ち上がっていく支援でした。

そして、これからも、就労困難を抱えた若者支援、子どもの権利を軸とした子ども支援団体・海外ルーツの子ども支援団体への伴走、ひとり親家庭の実態と可能性に関する調査、国内外でのメタファシリテーション研修や認定トレーナー等育成、自然資源の再生への取り組みなど、複数の現場で展開していきます。

橋をかけるという挑戦
昨年、前代表の中田は年次報告の中でこう語りました。「いま求められているのは、“自助”と“公助”のあいだに橋をかける試み」

その橋をどうかけるか——これは、いま私たちが直面する問いです。

ムラのミライは、まだ名前のついていない時代へ、迷いながらも一歩ずつ、仲間とともに歩んでいきます。これからも、名前のついていないミライづくりへのご参加、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

 写真:京都の会場で参加してくださった新旧役員・会員・サポーターの皆さん

(原康子 ムラのミライ代表理事)

■サポーター会員募集中:一人ひとりの「小さな声」を社会の変化につなげるために


2025年7月11日金曜日

18年ぶりの世代交代(2)グラスを洗いながら思った誕生日

新しい理事・監事との出会い
総会では、新しく選ばれた理事、監事の挨拶がありました。ベテランのライター、フェアトレードの先駆者、伝統野菜を使った企業の経営者、企業CSR部門で長年NPO支援をしてきた方など。この日は欠席でしたが、メディアで活躍する記者も新しく理事に加わってくれました。彼女たちと一緒に、新しいスタートが切れることが嬉しくてワクワクが止まりませんでした。また再任された河合監事は、「ここは気をつけないと!」と毎年ビシッと背筋を伸ばすのを手伝ってくださる組織基盤強化のプロフェッショナルです。新しい理事・監事たちに向けて「NPO法人の理事って?監事ってどんな役割、ムラのミライでは何をする?」という勉強会も予定しています。とっても心強い皆さんなのです。

話を元に戻すと、会場に集まった新旧の会員やサポーターの新理事、監事の皆さんは、初対面の方が多いとは思えない空気感。なんというか「お久しぶり!」という雰囲気で、オンライン参加の皆さんも含め、なんともいえないほんわかした空気が会場に満ちていました。

 


グラスを洗いながら思ったこと
総会後の理事会も無事終わり、ほっとして会場の後片付けをしている時ことです。流し台で、使ったグラスを洗っているとき「あっ、今日は新しいムラのミライの誕生日だ!」という気持ちになりました。グラスを洗う手を止めた途端、その場にはおられないけれど、何十年も支えてくださった正会員や、サポーターの皆さんの顔が、浮かんできました。そのおかげなのかどうか、グラスをよく割る私も、その日は1つもグラスを割らずに片付けることができました(「誕生日!」と私がぼーっとしている間に、新理事の一人が素早く洗ってくれましたし)。

“見えないもの”と向き合う
少しだけ、認定トレーナーの現場で起きていることの続きを、そして新理事・監事のみなさんの専門分野にも共通するテーマについて触れたいと思います。
私たちは「資本主義」という巨大な構造の中にいます。この仕組みを成り立たせてきたのは、本来は不可欠であるにもかかわらず、ずっと“見えないもの”とされ、正当に評価されてこなかった存在たちです。たとえば、植民地主義の名残として奪われた土地や資源、女性が担うものとされてきた再生産(ケア労働)、一方的に搾取・収奪されてきた生態系、そして国家が支える制度やインフラ。これらは「便利な土台」として当然のように資本主義社会で消費され続け、疲弊しきってしまっています。


写真:セネガルの土壌の塩化が進む大地(白い水玉模様の箇所が塩化している部分)

「今ここにある」危機の現実
その影響は、私たちの活動地でも危機的でした。たとえばセネガルでは、過酷な植民地時代を経てなお、今も土地と水資源の枯渇が猛スピードで進んでいます。そんな中、2024年度にはンディアンダ村から「よみがえる大地」の報告が届きました。動画もありますのでぜひご覧ください。

一方、日本では148カ国中118位というジェンダーギャップのなか、母親ひとりによる子育てが極めて困難な現実があります。そして、10〜19歳の死因の1位が「自殺」であること。2024年度には小中高生の自殺者が529人と過去最多となり、女子が初めて男子を上回ったことなどです。女性や子ども、若者にとって、どれほどこの国が生きづらいか、数字でも突きつけられています。さらに、高齢化の進行により、国民の5人に1人が75歳以上という時代に入り、医療・介護体制の整備は待ったなしの課題となっています。続きは3回目で!


写真:困難を抱える若者の就労応援プログラム(休眠預金等活用事業カウンターパート団体 一般社団法人nimo alcamo開催@京都)

(
原康子 ムラのミライ代表理事)

■サポーター会員募集中:一人ひとりの「小さな声」を社会の変化につなげるために

2025年7月4日金曜日

18年ぶりの世代交代(1)出演者ほぼ総入れ替えから始まる新シリーズ

「代表就任の日、もうマンゴーラッシーしか喉を通らない!?」

2025年6月、ムラのミライに訪れた18年ぶりの世代交代。プレッシャーに押しつぶされそうになりつつのぞんだ代表就任日の出来事を3回にわけてお伝えします。

代表就任のご挨拶

みなさん、こんにちは。このたび、認定NPO法人ムラのミライの代表理事に就任しました原康子です。2025年6月、18年間にわたって代表を務めてくださった中田豊一に続いて、代表理事のバトンを受け取りました。また10年〜30年の長きにわたって支えてくださった理事・監事の皆さんの多くが任期満了で退任されていきました。これはもう、ドラマなら最終回どころか「出演者ほぼ総入れ替え」の衝撃展開なのですが、ムラのミライはここで終わりません。むしろ、ここからが新シリーズのはじまりなのです。


プレッシャーとラッシーと代表初日

そんなわけで、人生初の代表挨拶を書いているのですが、あまりの緊張で喉を通るのはマンゴーラッシーくらい。大手出版社から本を出されたばかりの中田の後の代表挨拶ですよ。中田さんの前なんて、ムラのミライ創設者の和田信明の挨拶だったのですよ。お二人の代表挨拶や年次報告書の巻頭言は、いつも読みやすくて、簡潔で、知性と教養にあふれていて…。(たまに小難しすぎて読み飛ばしていたのは、私です。すみません。)

そんな二人に続く代表理事が、どれだけ大きなプレッシャーか!?胃をキリキリさせながら、代表理事就任の日となる2025年6月14日の活動報告会・総会・理事会にのぞみました。


 写真:一番暑いときが一番おいしいマンゴー


全国各地のトレーナーたちの実践

当日は22名もの方が(オンライン5名含む)参加してくださいました。朝からの雨にも関わらず、遠方から参加くださった方も多数おられました。彼女/彼らたちは、私の心細さやプレッシャーなどを吹っ飛ばしてくれた面々でした。その日は、活動報告会と総会、理事会と朝から丸一日がかり。まずは午前中の認定メタファシリテーション®トレーナーによる活動報告会でした。その報告会を皮切りに、私の胃の痛みは次第に消えていきました。

青森県、秋田県、福島県、東京都、神奈川県、兵庫県と各地で活躍する8人の認定トレーナーたち。子ども支援、高齢者向けのアートサロン、上司と部下のコミュニケーション、福祉系の大学の授業、農村の獣害対策、日本語教室、まちづくり、中間支援NPO、と多様な現場でメタファシリテーションを駆使している報告がされました。認定トレーナーたちの活躍ぶりに圧倒されたのと同時に、メタファシリテーションが使われている現場の意味を考え、その感動でウルウルしてしまいました。「現場の意味」については、後述します。

次回、新しい理事、監事との出会いに続きます。

写真:6月14日認定トレーナー活動報告会開始前の様子

(原康子 ムラのミライ代表理事)

2022年10月31日月曜日

事実質問で話を聴かれた子どもたち

普段は少ない「事実で話を聴く」ケース

メタファシリテーション®講座に参加した皆さんのなかで、特に初めて対話練習をした際に、「だいたいは〜」とか「いつもは〜」、「みなさんは〜」「○○は好きですか?」という、事実は聞けない質問を無意識に連発してしまった記憶のある方は多いことでしょう。

YouTube、テレビ、ラジオにアクセスすれば、相手の「考え」を聞いているインタビューや、出演者のやりとりにあふれています。一度試しに「事実で話を聞くスイッチ」を入れて、耳から入ってくる情報を注意して聴いてみてください。「事実」を聞いている質問がどれだけあるでしょう?そして「事実」でこたえているケースもかなり少ないことに気づかれると思います。

「事実で話を聞くスイッチは通常オフになっている」という理解でいると、「ここは詳しく聞きたい」という場面で、スイッチを入れねば〜と切り替えることができます。
ただスイッチを入れたからといって、すぐ事実だけで聞けるかというと、そういうわけではないのは講座に参加された皆さんはよくご存知で、やはり日々の練習次第にはなるのですが…。


「事実」を聞かれることに慣れた子どもは...

さて、講座などで繰り返し「事実を聞く質問(以下、事実質問)」について話している私ですが、家にいるときも、常に「事実質問スイッチ」をオンにしているわけではありません。
とはいえ、子どもの話を聴くときはなるべく家にいてもスイッチをオンにしようとは心がけています。

来年15歳になる息子は、生まれたときからかなり長い時間、親から「事実質問」で話を聞かれ続け、聞かれることにも、答えることに慣れています。おまけに彼は、ムラのミライの認定トレーナーたちからも、言葉を覚え始めた時から、事実質問でたくさん話を聞いてもらって育っています。小さな頃は各地の出張に連れて行っていましたから、各地の研修先で、研修参加者からもあれこれと事実質問で話を聞いてもらってきました。

ある日、「事実質問スイッチ」を完全オフにした私(親)は、息子に「期末テストどうだった?」と聞いてしまいました。「あ、しまった!」とすぐに気づきましたが、時すでに遅し。ため息混じりの息子から逆に聞かれたのは次のような質問でした。

・「何日間か期末テストはあったけど、いつの試験のことを聞きたいの?今日の試験のこと?」
・「今日も何科目か試験あったけど、どの科目のこと?」
・「その科目の前回の期末テストと今回のテストの点数の違いが聞きたいの?」

私の「どうだった?」という質問では、「期末テストの何が知りたいのか?」が明確でなかったことがわかり、おまけに…
・「◯◯というサイトを見るとテスト結果がわかるけど、もうそのサイトみた?」
と、これまでに私が彼のテスト結果を知るためにやってみたことがあるかどうか(経験)を
も確認されました。

それらの質問に息子が答えたり、私が学校のサイトを見たりしているうちに、息子の期末テストの結果はわかりました。
私の「どうだった?」にしばらく付き合った後、息子は「過去はもう振り返らない、前しか見ない。」と言い残し、自分の部屋に入っていきました。


「どうだった?」質問に慣れると...

「何も考えずに期末テストどうだった?」と聞いていたことを、みるみる質問した人(私)に気づかせていくこの質問の数々。期末テストの結果はともかく、さすがこれまで事実質問で聞かれ続けているだけあるなあ〜と感心してしまったのでした。

私が14、15歳だった頃、「期末テストどうだった?」と親に聞かれれば、真っ先に親を心配させないように、細かくテストのことを聞かれないように、という類のことを一瞬で考え、「まあまあがんばったよ」と当たり障りのないように答えていたかと思います。

その「一瞬で考える」作業は、期末テスト以外でも、「最近友だちとどう?うまくやってる?」「体の調子はどう?」「最近、部活はどう?」「進路どうするの?」「新しい担任の先生どう?」「○○検定どうだった?」「体育祭どうだった?」「今日のご飯どうだった?」などなど、「どう?」と聞かれる度に繰り返され、反射神経のようになってきます。相手のことを忖度した回答を一瞬で考えて、当たり障りのないように答える、これを繰り返すと、どうなるでしょう。

そうです、習慣になってしまい、相手への忖度なしで返事ができなくなっていくのです。反射神経が鍛えられ、「どう?」と聞かれたら一瞬で、相手が期待することを考えて答える癖がついてくると、恐ろしいことに相手の忖度した答えが、自分の「答え」のように思えてきてしまうのです。一つ一つのやりとりは、大したダメージを与えませんが、何年も繰り返されれば、忖度に疲れてしまい、「誰とも話したくない」「誰も私のことは聞いてくれない」「忖度する直前の自分の答えがわからいない」となっていきます。


事実質問で鍛えられる、子どもの「相手と分かり合う力」

周りの複数の大人から、「どう?」と聞かれ続けてきた10代の頃の私とは対象的に、事実質問で聞かれ続けてきた息子のような子どもは、相手が細分化せずに、ぼんやり聞いてくる質問にも、事実で答える、質問を確認する、クセがついているようです。

それは言葉を覚え始める年齢から始まるようで、事実で話を聞く訓練を重ねてきた人たちの周りの子どもたちにも共通しているようです。そうした子どもたちに、ついうっかりと「どう?」「なんで?」「みんなもそう?」「すぐ○○するね」などと言ってしまったとき、認定トレーナーや訓練を繰り返してきた講座参加者の周りにいる子どもたちは、私と同じような目に合い、子どものほうから質問されてしまうのです。
・「調子、どう?」というのは、今の状態?それとも朝学校に出かける前のこと?
・「宿題終わった?」と聞いてきたけど、今日は何と何が宿題にあって、そのうち今の時点で、何が終わって、何が終わってないかを聞いてくれたら答えるよ。
・「みんなもそう?」というけど、「みんな」ではないよ、Aさんと、Bさんだけだよ、
・「すぐ帰るね」って、「何時くらいに帰れそうってこと?」
という具合です。

どの子も、相手と事実で分かり合う癖がついています。まだ私の実体験と、認定トレーナーや講座受講者の声がちらほら聞こえてきただけの状態ですから、そういう子どもの数は多くはないのですが、大人の事実を聞く訓練の成果が、子どもからもわかります。


自分で考え、自分で解決策をみつける練習

「どうだった?」以外にも、「なんで?」「〜が好きなの?」「毎日〜しているんだね」「あなたの考えは?」「今の気持ちは?」といった「考え」や「感情」を聞く質問を繰り返しされても、子どもは、大人に忖度して答えることはできるようになっても、それらに的確に答えられるようにはなりません。

一方で、大人に事実で聞かれてきた機会が多い子どもは、生まれながら性格や能力といった部分に大きく頼ることなく、毎日の繰り返しで、知らず知らずのうちに、相手と事実で共通理解を得る力が鍛えられていきます。これは大人が事実を聞く質問で自らのメタ認知を鍛えているのと同時に、子どものメタ認知力も鍛えられている、と言えるのではないかと思います。

大人の質問に答える、子どもも質問する、大人もそれに答える、というこの対話の時間の長さが、そのまま信頼関係につながります。大人から聞かれる事実質問に答えていくうちに、子どもが自然とそのときの考えも感情も的確に伝えられるようになっていきます。

この普段からの積み重ねは、やがて子どもが何らかの問題に直面したときに、問題が生じた背景を事実で細分化し、細分化した部分のどこに解決策があるのか、自分で考え、周りの人からの助言を求めてゆくことにつながると思います。


子どもの話が聴ける大人を増やしたい

ムラのミライでは、大人も子どもも圧倒的に一般的な質問にあふれた環境のなかで、1人でも多くの大人が、子どもの話を事実で「聴ける」ようになるにはどんな方法がよいのか、試行錯誤が続いています。

そんな試行錯誤の一つが、コープともしびボランティア振興財団に助成いただいた「子どもの話を聴く技術 体験プログラム」です。
学童保育や子どもの居場所、スポーツクラブなど、子どもと接することが多い人にこそ、この「聴く」技術を身につけてほしいと思っています。90分の講座(オンラインと対面)、個別フォローアップ(事実だけで話を聞いてもらう体験もできます)、動画(マイクロラーニング)をセットになったプログラムです。この体験プログラムは、兵庫県の子ども支援者の方限定ではありますが、11月、12月にはオンラインで全国の子ども支援者の方たちを対象にした講座も予定しています。

引き続き、講座の様子や受講された方たちの声、事実質問をされた子どもたちのお話などもご報告していきますので、お楽しみに。 

原康子(ムラのミライ研修事業チーフ)

イラスト:Moto

2021年12月8日水曜日

「子どもが安心して話せる大人を増やそう」プロジェクトの始まり

始まりは子育て中の親を対象にした小さな子ども向けの講座

2016年から2019年くらいまで、親しい友人から「子育てに使えるようなメタファシリテーションを教えてほしい」と言われたことをきっかけに、子どもをもつ親のためのコミュニケーション講座を試験的に岐阜県や京都府で何度か開催しました。

その間、2018年から3年間、兵庫県西宮市で、NPO法人a littleと一緒に、妊婦とその家族、そして小さな子どもを持つ親、その支援者向けのコミュニケーション講座を実施してきました。

このような講座を受講してくれた小さな子ども(10歳以下)を持つ親たちからは、「子どもの話が聞けるようなった」「子どもの方からどんどん話してくれるようになった」などの反響がありました。

また支援者からは、「支援者も支援される側も楽になる対話を学べた」などの声が聞けました。その一方で、思春期の子どもを持つ親からは、「このやり方では子どもとのコミュニケーションは改善しない」という声も寄せられました。



 中田代表による思春期コミュニケーション講座での「2つの鉄則」

その思春期の親を対象とした「思春期の子どもとのコミュニケーション」連続講座を2019年以降始めたのが、メタファシリテーション手法を編み出した中田豊一(ムラのミライ代表理事)です。自身の子育てや身近な人々の子育てについてのさまざまな相談に、メタファシリテーション手法で対応してきた経験を元に組み立てたのがこの連続講座でした。

この講座に参加した親たちに、講座で教わった通りに子どもへの対応を変えると、子どもとの関係が劇的に改善したという成果が現れ始めました。中田はこの講座の最初に必ず「理屈はともかく“2つの鉄則“をやってみよう。必ず相手との関係が変わる」と伝えます。それは、次の「2つの投げかけをやめる」ということでした。

 「なぜ○○できなかったの?」

 「○○すればいいのに」

10代の子どもを持つ親として、またあるときは記録係として、私はこの中田の講座に繰り返し参加し、どうやって親の子どもへの対応を変え、行動変化につなげていくのか、そのやり方をどのように親に伝えるのかを学びました。

そのような過程を経て、私自身も、思春期の子どもや身近な人とのコミュニケーションについての講座の依頼がPTAなどからあれば受けるようになりました。そのような講座は、中田のように、「2つの鉄則」から始めるようにしてきました。

単発の講座ばかりではありますが、教え方や紹介する事例は、回を追うごとに、参加者の理解と実践を助けるようなものになってきた、との手応えを感じています。

 

講座参加者の発言に20代のころの自分が蘇る

2020年から続くコロナ禍で、対面での講座はなかなか実現せず、しばらくはオンラインでの講座が続いていましたが、この2021年12月、久しぶりに実現した対面での講座を実施しました。ある地方自治体が開催した「身近な人とのコミュニケーション」講座では、30名ほどの市民が参加しました。

その講座の最後に参加者からのコメントや質問を受ける時間を設けたのですが、その時、ある20代の女性がこうコメントしました。

『 「なぜ○○できなかったの?」、  「○○すればいいのに」講座の中で「この二つを最近誰かに言ったことはありますか?」と講師に聞かれたとき、私はハッとしました。私は、誰でもない「私」自身に、昨日も今日も「なぜ○○できなかったの?」や「○○すればいいのに」と言っていたのです。そして、この2つの言葉が私自身をずっと苦しめていたことがわかりました。
 私が親から言われ続けてきたことを、大人になった今、今度は心の中の「私」が私に言い続けて、私をとても辛くさせていることに気づきました。今日の講座を受けて、もし私がこの2つの言葉を「私」に言うのをやめたら、すごく楽になるんじゃないかと思いました。』

少し俯き加減で発言するこの女性の顔を見ながら私が気づいたのは、目の前の彼女はまさに20代のときの私自身だということでした。なぜ私が2016年から試行錯誤しながら、子どもや身近な人とのコミュニケーションをテーマにして講座を続けてきた理由がわかった瞬間でもありました。

私自身が、この
2つの言葉に長い間苦しめられてきたのです。長い時間をかけて克服したつもりでも、時々フラッシュバックのように「○○できないだめな私」という、「根拠なき自己嫌悪の悪循環」に陥ってしまうことがあります。私も、2つのNG投げかけを自分にするのをやめて楽になりたかったのです。そして楽になる人を1人でも増やしたかったのです。

 私が当事者「子どもが安心して話せる大人を増やそうプロジェクト」

 現在ムラのミライでは、子ども・若者の支援に関わる20代・30代の支援者に向けて、「子どもが安心して話せる大人を増やそうプロジェクト」を準備中です。

「なぜ○○できなかったの?」、「○○すればいいのに」の2つの投げかけをやめてみよう、子どもの話が聞ける質問をしてみよう、という教材作りからスタートさせる予定です。
メタファシリテーションの技術をわかりやすく伝えることで、子どもの話が聞ける大人を1人、2人と増やしていこう、というプロジェクトです。

この2つの投げかけに苦しめられた10代、20代の「私」を1人でも減らしたい。子どもの話を聞ける大人が増えることで、楽になるのは子ども・若者たちだけではないと思います。
私も含め、多くの大人が、子どもの話を聞けるようになれば、子どもの頃から苦しんできた言葉の数々から自由になる、そんなヒントが得られるはずです。言うなれば、「子どもが安心して話せる大人を増やそうプロジェクト」は、むかし子どもだった「私」が当事者です。話を聞いてもらえなかった多くの大人も「当事者」となるプロジェクトなのです。「むかし、子どもだった大人」も当事者として結果として支援されるような、「支援する側」にも「支援される側」にもなるプロジェクトです。

これから折に触れてプロジェクトの内容や進捗をお伝えしていく予定ですが、ぜひ1人でも多くの「むかし子どもだった」たくさんの大人の参加をお願いしたいと思っています。

(原康子 ムラのミライ 研修事業チーフ)

 


2020年3月10日火曜日

地域で助け合う、子育ての輪_第8話_【記録】ファミリ―スタートをスタート

【記録】ファミリ―スタートをスタート~半径1.5キロで徒歩や自転車で会いに来てくれる人がいる安心~(プロジェクトの記録 第8話)

In 608プロジェクト通信 西宮「地域で助け合う、子育ての輪」 by master2020年3月10日

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」の記録

第8話(2020年3月10日号)ファミリ―スタートをスタート~半径1.5キロで徒歩や自転車で会いに来てくれる人がいる安心~

執筆=原康子 ムラのミライ研修事業チーフ

春休み前の、突然の一斉休校で、日々の暮らしが一変してしまった方も多いかと思います。
この原稿を書いている今(2020年3月8日)も新型コロナウィルス感染症の治療薬は開発されておらず、西宮プロジェクトでも、妊婦さんが参加される講座や小さなお子さんの託児を必要とする2月と3月に予定していたいくつかの講座を延期としました。
一日も感染コントロールがされることを願うばかりです。
さて年度末の3月ということで、2019年度の西宮プロジェクトのご報告です。今回は2019年度の活動(文末一覧をご覧ください)の中から、今年度スタートした「ファミリ―スタート」についてご報告します。

目次

ファミリ―スタートってどんな活動?
プロジェクトのタイトルに関する疑問
「地域ってどこ?」
「助け合うってナニ?」
助け合わなくていいです
徒歩で行ける場所、自転車で会いに来てくれる人

ファミリ―スタートってどんな活動?

2018年からスタートした西宮プロジェクト。

1年目の産前産後の支援を必要する方と、彼・彼女たちへの支援を希望する方への講座、西宮市の産前・産後の実態調査などを経て、2019年度は、本格的に半径1.5キロメートルという徒歩や自転車で無理なく移動できる距離で、子育てを助け合っていけるような活動を開始しました。

プロジェクト2年目に、新たに始まった活動のひとつが「ファミリ―スタート」。

訪問ボランティアによる子育て中の方のご自宅に家庭訪問をする活動です。

訪問ボランティアは、1年目から続いている「地域子育てサポーター養成講座」で、助産師や臨床心理士から産前産後の女性の心と身体の変化のこと、子どもの発達のことを学んだり、ムラのミライの対話型ファシリテーションを学んだ方たちが中心です。

彼女たち(今のところ受講生全員が女性なのです)訪問ボランティアが、妊娠中や産後の子育て中で、なかなか外出できない方のお家を訪問するのがファミリ―スタートです。

1回、1時間から2時間くらい、一緒に過ごし、おしゃべりをします。

おしゃべりのなかで、近所でどんな子育てサポートがあるかお伝えすることもあります。


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プロジェクトのタイトルに関する疑問

ファミリ―スタートのご報告に入る前に、プロジェクト通信連載8回目になって、今さらなのですが、この西宮プロジェクトのタイトルをよくご覧ください。

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」とありますね。

2018年の事業開始前に付けたタイトルなのですが、「西宮」はともかく、こんな疑問が湧いてきました。

「地域ってどこ?」
「助け合うってナニ?」

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「地域ってどこ?」

まず「地域ってどこ?」から始めましょう。

もちろん西宮市内での活動です。

それでもまだ漠然としています。

では西宮市の城ヶ堀町内とか甲子園の周りなど、そういう「場所」を指しているかというと、そういう「地域」を指しているのでもありません。

前述の2018年の調査の結果、「自宅から半径1.5キロ」という産前、産後に無理なく歩いていける距離で、ちょっと話をしたり、ちょっと相談できたりする人がいるかが、「助け合う子育て」の鍵ということが浮かび上がってきました。

子育て中の人たちが、自宅から半径1.5キロ圏内の「地域」で、「助け合う子育て」を実現させていこう、そのために必要な知識や技術を「助ける側」も「助けてもらう側」にも両方に伝えてゆこう、ということになりました。

2019年度の講座の内容は、前年度よりかなり焦点が絞られ、その教材も完成しつつあります(2020年度に教材を完成させる予定です)。

「地域」が絞られたところで、次に「助け合う」についての疑問です。

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「助け合うってナニ?」

ここまでの文章中も、何度も何度も「助け合う子育て」とでてきますが、実は「助け合う」のはなかなかハードルが高いのです。

ここで、読者の皆さんに4つほど質問です。

1)ご自宅から半径1.5キロの圏内(徒歩20分以内)で、苗字も名前も知っている方は、何人いますか?

2)一戸建にお住まいの方は同じ町内(同じ班か同じ組)で、集合住宅なら同じビルや敷地内で、小学校入学前のお子さんが何人いるかご存じですか?

3)その中で何人のお子さんの名前が言えますか?

4)上記2)で挙がったお子さんのいる方と、この1週間で15分以上、話をしたことはありますか?


1)から4)の答えが、「0人」「知らない」「話してない」という方がほとんどの現状で、自宅から半径1.5キロ圏内で誰かを助けたり、誰かに助けられたりすることを実現しようとすると、助けたい方も助けてほしい方も、「どこにいるの?」と途方に暮れてしまうのです。

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助け合わなくていいです

そこで、ひとまず「助け合う」を脇に置きました。

助け合わなくていいです。

まずは、母親1人だけで子育てしなくていいのに、助けが必要なのに、「“助けて”と言ってはいけないと思っている人」と「子育ての手助けをしたいと思っている人」をつなげよう、とファミリースタートは始まりました。

始めたのは、1年目の講座や調査に参加した女性たち。

利用の手続きも簡単です。

「ファミリースタートを利用したいです」とア・リトルに連絡して、訪問ボランティアにお家に来てもらったら、ただおしゃべりするだけ。

「よその人が来るから~」と片づけたり(片づけ好きな人を敢えて止めはしませんが)、子どもがうるさくしないよう事前に絵本、おもちゃ、ビデオなどを用意したり、そんな準備は一切不要です。

おしゃべりしながら、気になる家事があれば手を動かせばいいですし、お子さんが泣き出したら、おしゃべりしながら、子どもの相手をしていていいのです。

ファミリースタートは、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループの助成をいただいているので、利用料は無料です。


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徒歩で行ける場所、自転車で会いに来てくれる人

2019年度にスタートしたばかりのファミリ―スタートは、まだ利用者も少なく、家庭訪問をする訪問ボランティアも今は6人です(2020年3月現在)。

自宅から半径1.5キロ圏内の徒歩圏でのつながりを目指していますが、まだ1.5キロという近距離は難しく、ファミリースタートの利用者の自宅から訪問ボランティアの自宅まで3~5キロくらい。歩いてゆくにはしんどいけど、自転車ならば、という距離です。


ファミリ―スタートを利用した方たちからこんな声が届いています。

  • 「夫以外の大人(訪問ボランティア)と話せてホッとした。しかも家がわりと近所の方が来てくれて安心できた。」
  • 「日中、自宅に子どもと二人だけでいないで、訪問ボランティアさんに教えてもらった○○という集まりに出かけてみた。」
  • 「妊婦の知り合いに(西宮プロジェクトの)産前の講座のことを勧めてみた。」
  • 「友だちにファミリ―スタートを紹介した。」
  • 「家事・子育ての負担を減らすにはどうしたらよいか、夫と相談して、訪問ボランティアさんに手続きの方法を聞きながら、ア・リトルの家事・子育てシェアや西宮市のファミリーサポートを使ってみた」

なかには、「自分は産後に孤立した子育てをして、とても苦労した。もし託児をしてもらえるなら、地域子育てサポーター養成講座(*)にでて、訪問ボランティアになりたい。」という方もいて、実際に講座にも参加してくれました。(*地域子育てサポーター養成講座は全講座託児つき)

気楽に徒歩や自転車で、近所の人の家を行き来して、おしゃべりするのが当たり前になる。そんな暮らしは、はるか彼方のキラキラしてみえるどこかの誰かの話でなく、あなたの、私のものになる。

そんな一歩になれるよう、2020年度もファミリ―スタートを続けます。

訪問ボランティアのメンバーは、もちろん「子育てを手助けしたい」と思う方たちですが、気持だけでなく、対話の技術を向上させ(メタファシリテーション定期練習会や講座の参加、産前や産後の心と身体についての知識、西宮市で利用な可能な子育て支援の情報など、今日も知識や技術をアップデート中です。


徒歩で行ける場所、自転車で会いに来てくれる人を増やし、自宅から半径1.5キロメートルの安心をつくっていくファミリ―スタート。

ここまで読んでくださった方で、「ファミリ―スタート使ってみたいな」と思われた方は、こちらのサイトをのぞいてみてください。

「訪問ボランティアになりたいな」という方は、4月から「地域子育てサポーター養成講座」の新シリーズがスタート予定です。こちらのサイトをご覧いただければ、随時、講座予定をアップデートしていきます。

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2019年4月から2020年2月にかけての活動一覧

1)産前産後の女性とそのパートナーを対象にした講座

①産前の方向け講座:2回 (2019年7月、10月)
②産後の方向け講座:2回 (2019年6月、9月)
③父親向け料理講座:2回(2019年9月、12月)

2)地域子育てサポーター養成講座

連続講座:2回(2019年2月&2020年7月)

3)ファミリ―スタート

*2)の講座受講生が中心になり、1)の講座参加者やその知り合いや希望する家庭を訪問する
2020年7月からスタート: 延べ18回の家庭訪問(2020年1月末現在)

(番外編)もうひとつの両親学級(プロジェクト通信 第7回参照)

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 プロジェクト通信 第1話へ
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2020年1月9日木曜日

地域で助け合う、子育ての輪_第7話_頼りにする、頼りにされるネットワークの広がり

 

【記録】頼りにする、頼りにされるネットワークの広がり(プロジェクトの記録 第7話)

In 608プロジェクト通信 西宮「地域で助け合う、子育ての輪」 by master2020年1月9日

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」の記録

第7話(2020年1月9日号)頼りにする、頼りにされるネットワークの広がり

執筆=山岡美翔 ムラのミライ理事

新年を迎え、新しい目標を立てられた方もいらっしゃるでしょうか。西宮プロジェクトでは、2020年も西宮市で助け合う子育ての輪を広げようと、前話でお話ししたパートナーシップ講座、地域子育サポーター養成講座に向けた準備がすでに始まっています。
今回は、そんな講座のお知らせをするとともに、西宮プロジェクトのパートナーであるNPO法人a little(ア・リトル)と西宮市の初めての協働イベント「もうひとつの両親学級」についてのご報告です。11月30日に実施した「もうひとつの両親学級」では妊娠中のご夫婦を対象に、一人ひとりに寄り添ったバースプランづくりやマタニティヨガなどを行いました。
イベント後も参加者とア・リトルの間に「頼りにする、頼りにされる」新しいネットワークの広がりが生まれています。私たちの活動が、プロジェクト通信を読んで下さっている皆様の、がんばりすぎない暮らしのヒントになれば嬉しいです。

目次

「もうひとつ」の両親学級
新しい家族を迎えるための18の質問
「家族以外の話し相手は本当に必要でしょうか?」
夫婦で知っていること、知らないことを整理することが、子育てのスタートラインに
時間を忘れて相談できる保健師・助産師相談ブース
出汁を取らない料理講座?
「頼りにする、頼りにされる」ネットワークにあなたも参加しませんか?

「もうひとつ」の両親学級

「もうひとつの両親学級」は、2019年11月30日に西宮市未来づくりパートナー事業の一環として実施しました。行政との協働を通じて、昨年度私たちが出会えなかった初めて妊娠・出産を迎える方と出会い、繋がることが目的です。今回西宮市と協働イベントを実施したことで、例えば「家族以外の誰に頼ったらいいのか分からない」、「赤ちゃんと過ごせる場所は公園以外には思いつかない」という方にも多く出会うことができました。


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新しい家族を迎えるための18の質問

イベントは午前・午後の二部制で、妊娠中のご夫婦が①バースプランづくり、②保健師・助産師相談、③マタニティヨガ、④マタニティフォト、⑤ミニ料理講座の5つのブースを順番に回りました。ムラのミライの原と私は、最初のバースプランづくりブースの企画・進行を担当し、ア・リトルのゆうこさんがリソースパーソンとして産後の体験を話しました。


私たちが用意したのは、「新しい家族を迎えるための18の質問」です。一般のバースプランは、最初から計画に入りますが、まずは現状認識=「知らないことを知る」ことを目標にご夫婦で質問票に答えてもらいました。ご夫婦の妊娠・出産・子育てについての知識や経験、ネットワークを思い出し、現状の点数をつけ、出産までに準備することを整理していただくことができました。



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「家族以外の話し相手は本当に必要でしょうか?」

午後の部のバースプランづくりでは、時間に余裕があり参加者からたくさんの質問がありました。特に印象的だった質問は、参加男性から「産後家族以外の話し相手は本当に必要でしょうか?」と聞いていただいたこと。ア・リトルのゆうこさんが、産後ブルーや産後クライシスの実体験を話し、質問をされた男性は真剣にメモを取り、それ以外の参加者の方にとっても家族以外のネットワークがあるとき、ないときの違いについて知っていただく機会となりました。

私自身も、初めての妊娠のときには、結婚後に引っ越した街で、夫と職場の人以外の話し相手がいませんでした。妊娠による退職を機に職場の人とも話す機会がなくなり、産後は夫としか話せず、だんだんと苛立ちが募りました。でも、参加者の方と同じようにそもそも産前には、家族以外の子育て支援のネットワークがあることはもちろん、家族以外の人に頼っていいということすら知りませんでした。

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夫婦で知っていること、知らないことを整理することが、子育てのスタートラインに

参加者の方には、「新しい家族を迎えるための18の質問」に答えることで、「何を知らないのか」、「何を知っておくと頑張りすぎなくていいのか」についてご夫婦で持っている情報や知識には差があることを実感していただくことができました。こうして二人で足並みを揃えていただき、次は保健師・助産師相談ブースです。バースプランブースでも特に質問が多かった家族以外のネットワークやサポートについては、経験豊富な保健師、助産師から情報を提供していただいたほか、産後1か月を養生したア・リトルゆうこさんの部屋を再現し展示しました。

私も第二子を妊娠中だったので、ここからは参加者としてイベントに参加。相談ブースでは、地域子育てサポーター養成講座講師でもある助産師の森田さんに「第二子出産の不安」について質問をしました。

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時間を忘れて相談できる保健師・助産師相談ブース

私には、子ども園に通う娘がいます。私が第二子を妊娠してから、赤ちゃんを抱っこすることを一番の楽しみにしているのですが、首が座らないうちから幼児に赤ちゃんを抱っこできるのか不安でした。ちょうどイベントの前日も、私が「抱っこするのは、首が座ってからだから春になる頃かな。」と言うと、「そんなにたくさん待てないよ。すぐに抱っこしたいのに…。」と悲しそうな顔をしていました。

森田さんに相談すると、「生まれたての赤ちゃんでも、どんどん上の子に抱っこしてもらって下さい。」と驚きの一言。抱っこの仕方は、まず親が上の子を抱っこし、その上に赤ちゃんをもたれさせるようにして親が支えるようにする、そうすることで上の子も抱っこできるだけではなく、自分が一番で、下の子が二番だという順序を実感し、安心するそうです。

参加者に対して保健師・助産師の数が多かったこともあり、時間を忘れて他にも何気なく疑問に思って誰にも聞けなかったことまで色々なことを相談することができました。産前は男女ともに、仕事をしていて相談窓口が開いている平日の時間帯には相談に行くことが難しく、産後も赤ちゃんの定期健診では、参加人数が多く、保健師・助産師さんと話す時間が限られているので、このように産前の週末に、ゆったりと夫婦で相談できる機会はとても貴重だと感じました。

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出汁を取らない料理講座?

私が参加して一番嬉しかったのは、最後のミニ料理講座。ちょうど、バースプランで頭を使い、マタニティヨガで心身ともに緩まり、心地のいい疲労感と空腹を感じていたときでした。料理講座と聞いて、調理実習があるのかと構えていたら、なんと美味しい炊き込みご飯とお味噌汁を食べながら話を聞くだけの30分。講師は、ア・リトル会員でもあるにしごやゆみこさん。短い時間で、産後養生のための栄養価の高く、簡単に作れるレシピを実演して下さいました。

紹介のあった産前産後の料理のポイントは、たった2つ。①食事作りの「合格ライン」をぐぐっと下げてみること。いつも通りを目指さず、一汁一菜や、大皿プレート料理を取り入れると洗い物も減り、男性でも簡単に料理に取り組むことができます。②「まごわやさしい」を意識すること。試食した炊き込みご飯の具材は、切り干し大根としらすだけ、みそ汁は玉ねぎ、人参、しめじだけだったのですが、栄養価の高い乾物や、魚・野菜のうまみのおかげで、出汁が入っていないのに大満足の料理でした。

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「頼りにする、頼りにされる」ネットワークにあなたも参加しませんか?

「もうひとつの両親学級」から二日後、参加したお一人の方から赤ちゃんが生まれたという嬉しい報告がありました。また他の参加者は、ア・リトルが毎週開催しているマタニティヨガに引き続き参加して下さったり、家事サポートの依頼があったりと、両親学級のあとも参加者が繋がり、「頼りにする、頼りにされる」ネットワークが広がっています。

2020年の講座は、いよいよ2月から始まります。3月には座談会も予定していますので、関西の方、お近くに来られる機会がある方のご参加をお待ちしています。

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*講座の詳細・お申し込みはこちらから
地域子育てサポーター養成講座(全4回)
産前産後のカップルを対象にした「パートナーシップと子育てのよい関係」講座

2019年10月12日土曜日

地域で助け合う、子育ての輪_第6話_産前産後のカップルに届けたい「パートナーシップ講座」

 【記録】産前産後のカップルに届けたい「パートナーシップ講座」(プロジェクトの記録 第6話)

In 608プロジェクト通信 西宮「地域で助け合う、子育ての輪」 by master2019年10月12日

「西宮で広げる、地域で助け合う 子育ての輪プロジェクト」の記録

第6話(2019年11月12日号)産前産後のカップルに届けたい「パートナーシップ講座」

執筆=原康子 ムラのミライ研修事業チーフ

10月の度重なる災害により亡くなられた方々のご冥福をお祈りしますととともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。避難所や被災したご自宅で、小さなお子さんと一緒にご苦労されている方々がまだまだいらっしゃるかと思います。一日も早く、おだやかな生活がもどってくることを願ってやみません。
第6話で、皆さんにご報告するのは、産前産後のカップルを対象にした「パートナーシップと子育てのよい関係」講座(以下略「パートナーシップ講座」)についてです。

目次

「アウェイ育児」と西宮プロジェクト
「パートナーシップ講座」で伝えたいこと
「夫婦だけで産後を乗り切らなくていい方法」有ります
パートナーシップ講座の課題

「アウェイ育児」と西宮プロジェクト

ところで「アウェイ育児」というのをご存じの方はいらっしゃいますか?『見知らぬ土地への転勤と激務で帰らぬ夫「アウェイ育児」に苦しむ妻』というネット記事によれば、「自分の育った市町村以外で子どもを育てること」だそうです。
*記事 11月5日付Yahoo!ニュース特集 取材:伊澤理江

この記事に登場する薫さん(30代・仮名)は、おそらく西宮市(もしくはその近郊)に夫の転勤で暮らすようになった女性です。2017年8月、全然泣き止まない生後6か月の息子さんを「もう、いい加減にして!」と叫びながら、1メートルほどの高さから薄い肌掛け布団めがけて投げつけてしまったそうです。

“見知らぬ土地での慣れない子育て。夫は激務で帰りが遅く、頼れる知人もいない。「アウェイ育児」に追い込まれた末のことだった”とこの記事は始まります。


もうすこし記事のご紹介を続けます。夫の転勤で引っ越してから、息子さんと二人だけで過ごす日々が続き、だんだん薫さんは育児ノイローゼになっていきます。6ヵ月健診、小児科、託児所などで、薫さんは何度も「このままでは息子を傷つけてしまう、誰か助けて」というSOSを発しますが、適切な支援には結びつかず、1年後にこの「赤ちゃん投げつけ事件」が起きました。

幸い、薫さんは、やっとのことでたどり着いたとある児童館で支援を受けることができ、今では保育園に子どもを預けながら働いているそうです。

復職後の薫さんの次の二つのコメントが印象的でした。一つ目は、“出産前には赤ちゃんのお風呂の入れ方やマタニティーヨガではなく、出産後にはこんな過酷な日々が待ち受けている、って教えてもらいたかった。泣きやまない子もいるんだよ、って。本やネットの情報に振り回されて比較しちゃいけない、って”。

二つ目は、 “仕事で帰れなかった夫に対しては、今も恨んでいます(中略)あの一番苦しいとき、家に帰ってきて助けてほしかった。あの恨みは一生消えないと思います”。
児童館で支援を受ける前の薫さんのような女性はまだまだたくさん西宮やその他の地域にいて、今この時も苦しんでいるかと思うと胸が痛みます。西宮プロジェクトは、薫さんのような女性を一人でも減らし、「大丈夫、大丈夫」と声をかけ合いながら、ご近所さん同士で子育て仲間を増やしていくプロジェクトなのだと改めてその重要性を実感しました。

今回、ご紹介する産前産後のカップルを対象にした「パートナーシップ講座」は、まさにこの記事に登場する薫さんとそのパートナーのような方たちに、産前や産後に参加してほしい講座です。もし、薫さんとそのパートナーがこの講座に参加していたら、赤ちゃんの世話が一番大変な時期を夫婦で一緒に、ときにはご近所さんの助けも借りて、乗り越えることが出来たのではないか、パートナーに対して「あの恨みは一生消えない」と言わなくても済んだのではないか、と思うのです。

まずは「パートナーシップ講座」とはどんな講座なのか、プロジェクト開始時からの経過と今年度の講座についてお伝えします。

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「パートナーシップ講座」で伝えたいこと

西宮プロジェクトの初年度(2018年度)は、妊娠中から出産後(6カ月くらい)のご家族、延べ33名に計3回のパートナーシップ講座にご参加いただきました。西宮市在住の助産師やア・リトルのメンバーのヨガインストラクターゆうこさんとやよいさんが講師となり、夫婦で一緒にバースプランを作ったり、産後のバースレビューをすることが主なテーマでした。

参加者からは
「パートナーの本音が聞けた」
「産後のよその家族のことがわかった」
「講座参加後に家庭で夫婦の会話が増えた」
「2人だけでは行き詰っていたことが解決できた」
とのお声をいただきました。


3回の講座を通じて、産前産後の夫婦の実情も見えてきました。それは、出産や産後の生活に関して夫婦間で情報格差が大きいこと(情報収集や準備の負担が妊婦に偏る)、産後をパートナーと二人だけで(プラス遠方に暮らす実母)乗り切ろうとしていることなどが明らかになりました。

そこで、本連載第4回でお伝えした調査結果も踏まえ、2019年度は産前のカップルには「産前産後を夫婦だけで乗り切ろうとしないこと、そのために産前から出来る準備は何があるか」ということを考えるワークを行うことになりました。 産後のカップルには「赤ちゃん中心の生活から立ち止まって、夫婦でゆっくり今の暮らしや夫婦関係を振り返る時間を持つこと」を講座の内容に含めました
産前、産後の講座共に一回3時間ですが、産後の講座では、同じ会場内の別室で託児を行います。この託児担当も西宮市内に住んでいる方たちです。

さてここでは、産前の講座のトピックについて、その資料も踏まえながらご紹介しましょう。

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「夫婦だけで産後を乗り切らなくていい方法」有ります

2019年度のパートナーシップ講座の講師はア・リトルのメンバーです。 写真はア・リトルのオリジナル教材、「産前産後リアル!事件簿ファイル」です。

前述の2018年度の講座参加者のコメントにあるように、なかなか他の家庭の産後の実情はわかりません。そこで2019年の講座では、ア・リトルのメンバー4人が自らの妊娠、出産、産後のことを
①妊娠中(初期、安定期、後期)
②出産(分娩前後の入院期間)
③産後1(退院から1カ月間)
④産後2(産後2カ月から1年)
に分けて、どんな出来事があったのか、そのときどんな気持ちだったのかをまとめたものを事件簿ファイルとして、講座の資料にしました。


4人とも全く異なる妊娠、出産、産後を過ごしているのが分かります。この教材を元に、参加者は4人から直接、それぞれの妊娠中から産後1年の間に実際に起きたことを聞きます。4人のなかには、実際に西宮で妊娠、出産を経験したばかりのメンバーもいました。

西宮で利用できる公的機関や民間団体の産後のサポートを総動員し、産後1カ月の産褥期にしっかり体を休めることができた、というア・リトルのメンバーの話は、出産後の子育てを西宮で予定しているカップルにはとても実践的です。参加者に産後のイメージを具体的にもってもらうことが出来たら、続いて夫婦でバースプランを作る時間が始まります。

出産はひとりひとり異なるものですが、産前から準備できることには共通のものがかなりあります。
このスコア表では「今できている準備」と「できていない準備」が一目で分かるようになっています。たとえこの講座を受けた時点で、とても低い点数だったとしても(例:ベビー用品をそろえただけの準備状態)、大丈夫です。なぜなら、出産までに出来る準備を夫婦で話し合い、「準備することリスト」の欄を一緒に埋めていけば、出産予定日1カ月前にもう一度、スコア表をつけてみたとき、必ず高得点になっているからです。高得点ということはそれだけ、産後の暮らしを夫婦や家族だけでなく、様々なサポートしてもらう体制が出来ている、ということになります。


2019年度の産前と産後の講座のご報告は、ア・リトルのサイトからご覧いただけます。

ア・リトルが西宮市と共催するイベント、「もうひとつの両親学級(2019年11月30日)」では、このア・リトルならではのスコア表の短縮バージョンを使った「バースプラン」のワークショップを行います。
*あと少し残席がありますので、ご参加をご希望される方は、リンク先からお申込みください。

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パートナーシップ講座の課題

この「もうひとつの両親学級」は、2018年度から続けてきた西宮プロジェクトの実績が西宮市に認められ、初めて同市との共催で実施することが出来た講座で、ア・リトルとムラのミライだけで情報発信していたときの何倍、何十倍の人たちに講座のご案内ができることになりました。一組でも多くの産前のカップルにこの講座を知っていただき、最初にご紹介した記事の薫さんのように一人で、そして夫婦二人だけで子育てに悩むことが減っていけばと、願っています。

一方で、「パートナーシップ講座」は、なかなか産前のカップルに開催についての情報をお届けできていないのが現状で、毎回参加者集めに苦労しています。今年はあと2回講座を予定していますし(参加お申込みはページ文末のフォームから)、2020年度も継続してゆく予定です。

あなたの近くにたくさん隠れている第2、第3の薫さんに「産前産後に一人で、夫婦だけで、悩まなくてもいいですよ。西宮には、あなたとあなたの家族と一緒に、ときには笑ったり、ときには泣いたりして子育てをしたい、という人がいますよ」ということを伝えるために記事&講座案内シェア、大歓迎です。


*バースプランとは:お産の計画や要望のこと。妊婦とそのパートナーが希望する出産の計画をたて、妊娠から産後の生活までを夫婦で話し合う材料とする
*バースレビューとは:出産体験を振り返ること。自分の出産体験を自由に語ってもらい、傾聴を基本的姿勢として受け止めていく援助のひとつ

2019年度のスケジュール

【産前講座】 2020年2/29(土)
【産後講座】 2020年3/7(日)
【申し込み先】フォームにご記入ください。


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