2019年2月26日火曜日

村のミーティングをファシリテーション!?新人NGOワーカーの苦闘@農村開発プロジェクト その1

あれは私がまだムラのミライに入って2年目くらい、南インドの農村での自然資源管理事業が始まって10か月くらいのことでした・・・

当時は、村の人たちの生活圏だった森の中やその周辺にある植物について、村の人たちが「植物図鑑」を作り始め、そして50年程前と現在を比べて、土壌や小川、湧き水などがどのように変化してきたのか、そしてその間に、土壌や水に対して何か対処してきていたのか、ということを村で考え始めていた時でした。

村での研修のファシリテーターは、主に和田さんやインド人名ファシリテーターのラマラジュさんが務めて、私はもっぱら記録取りやお二人のサポートをする程度。なのに、ある日突然、和田さんもラマラジュさんも、用事ができて研修に出られなくなって急遽私が研修をすることになったのです。

30人くらいの村の人たちと、これまでしてきたことを振り返り、分かった事を共有していく中で、メビウスの輪となる会話が始まったのでした。

村人A 「今まで調べてきたことを、一度、地図に描こうと思います!」
前川  「それは良いですね。でも、(なぜ(Why)って聞いてはいけないから)地図作りは何のためにですか(For what)?」
村人A 「Rural Development(村の発展)のためです!」(自信満々に)
前川  「へぇ・・Rural Developmentって、何ですか?」
村人A 「村を良くすることです!」(嬉しそうに)
前川  「村を良くするって、どういう事ですか?」
村人A 「つまり、貧困が減って村が発展することで、Rural Development なんです!」(困った顔で)
前川  「えーっと・・・(汗だらだら)」




Aさんは、ムラのミライの事業をする前は、別のNGOによる「農村開発事業」でアニメーター(NGOスタッフの補助をする村人)として従事していたので、いわゆる「開発用語」を熟知していました。

この時、和田さんもラマラジュさんもいない研修で、ひよっこの私しかいない研修を助けようと思ったのか何なのか、率先して意見を言い、上記のような「NGOスタッフが喜びそうな単語」を並べてきたのでした。

皆さんの想像にも難くないでしょうが、他の村の人たちから醸し出される、同情のような視線や空気の痛い事・・・
和田さんも今でも「白鳥のように見えないところでもがいている」と聞いたことがありますが、この時の私はだれの目にも明らかにもがいていて、しかも溺れていたのでした。

さて、上記の会話を「メタファシリテーション」の基本の事実質問にするならば、あなたはどこをどう直しますか?

続きはこちら

(前川香子 ムラのミライ海外事業チーフ)




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2019年2月19日火曜日

「保育園に行きたくない!」の、本当の理由とは

日常のここぞ、と言うときにとても便利な「いつ」を使った事実質問。
みなさんは、「何で」と聞かない事実質問で、相手のリアリティを知ることが出来た経験はあるでしょうか。
もし、とっておきのエピソードがあればメールやお会いした時に教えてくださいね。
さて今日は、保育園へ通う子どもに保育園に行きたくない「本当の理由」を聞いたお話です。

横で寝ていた子どもが、珍しく朝起きるなり「保育園に行きたくない!」と言い始めました。
「行きたくない時もあるよね。」と言うと、
「そうなんや、今日はお家で遊びたい気分なんや。」と答えました。
翌朝も、同じように目が覚めるなり、「保育園に行きたくない。」と言い始めました。
連日保育園を嫌だと言うことは珍しく、よほど嫌なことがあったのかと心配になり、今日こそは保育園に行きたくないと言う理由を聞かなくてはと思い、子どもを送り出しました。
その日の夕方は、保育園の友達と遊具で遊んでいて、いつもより帰りが遅くなりました。
夜ご飯を食べていた時に、子どもが
「明日は保育園休みたい」と言うので、思わず
「さっきまであんなに保育園から帰りたくないと言ってたのに、何で休みたいの?」
と言いそうになるのをぐっと堪えました。

以前に「何で保育園嫌なの?」と聞いて失敗したことが教訓になっていたからです。
その時子どもからの答えは、保育園は楽しくないから、ママがいないから、お家のおもちゃが好きだからなどと、言い訳ばかり。
それもそのはず。
何で嫌なの?と聞くから、子どもはその場しのぎの嫌な理由を並べただけという、Why質問の典型的なダメダメ質問パターンでした。
だからこそ、今回は事実質問で、本当の理由を聞いてみようと思ったのです。

さて、みなさんなら家族や同僚が珍しく
「会社や学校に行きたくない」と言ってきた時、どんな事実質問を投げかければ、相手が本当の理由を答えてくれるでしょうか。

実践できたえた技を、講座でお伝えしています

私は、保育園を休みたいという子どもに
「あなたがそんなに嫌ならいつでもお迎えに行けるよ。たとえば今日は、いつお迎えに来て欲しかったの?」と聞いてみました。
子どもはすぐに、
「お昼寝のときに来て欲しかった」と言いました。

私「そっか。家で寝るときは2人で一緒のベッドで寝るもんね。」
子ども「そうなんや。明日はお家で寝たいなぁ。」
私「寝る前?起きた時?どっちが寂しかったの?」
子ども「起きた時。」
私「そっか。他には寂しかったことあった?お昼寝の前は何してたの?」
子ども「寂しくなかった。〇〇ちゃんと遊んでたから、面白かったよ。」
私「じゃお昼寝のあとは何したの?」
子ども「お昼寝の時間が終わるまで、お布団で待ってた。」
私「そっか、待てて偉かったね。他のお友達より早く目が覚めたんだね。」
子ども「うん。目を開けておしゃべりしないで、待ってた。」
私「そうだよね、お家ならすぐに話せるもんね。お昼寝の時間が終わって、お布団を片付けたあとは何したの?」
子ども「先生と折り紙したんや。上手やから、すごいねって褒めてもらった!」
と話してくれました。



園での出来事を聞く会話のラリーが何度か続いたあと、子どもが
「もうすぐ鬼が来るかもしれへんから、心配なんや。」
とポツリ。
保育園では、今週から折り紙で鬼をつくる練習をしているそう。
そろそろ現れそうな鬼の気配を感じる季節に、お昼寝の時間が終わるのを一人静かに待つのは、いつも以上に不安だったんだなと、子どものリアリティを知ることができました。

それでは、今年も研修や講座でお会いできるのを楽しみにしています。
山岡 美翔 ムラのミライ 理事)



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2019年2月12日火曜日

抽象論にさようなら ワイワイ話せる会議をつくる質問

先日、環境再生保全機構さんが主催されている「若手プロジェクトリーダー研修」に招いて頂き、1日講師&アドバイザーを務めてきました。これは、地球環境基金から助成金を受けて活動しているNGO/NPOの若手スタッフが年に数回集まり、様々なテーマに関する研修を受講することで、実施中のプロジェクトをさらにブラッシュアップしていこうというものです。

今回は「合意形成」というテーマで、6名の方々が参加されていました。
限られた時間内で私から何をお伝えできるだろう・・・と考え、「研修翌日以降、団体内外の誰かと話しをする具体的な一場面で、今までとは違うやり取りになる」可能性がある質問を、研修生おひとり一つ持ち帰ってもらえたらいいな・・・という目標を立てていました。

研修の中で、各自が抱えている合意形成に関する悩みを共有し、アドバイスをするというセッションがありました。
その中で、ある研修生から、こんな悩みが共有されました。
「何度も会議やワークショップをおこなって団体の今後の方針について話し合うが、どうも具体的な話になっていかない。ある人は“会員の満足度を重視すべき”と言うし、ある人は“もっと多様なステークホルダーを巻き込んでいきたい”と言うし・・・なかなか議論が収れんしない」

ふむふむ。
これって、NPOに限らず様々な会議や打ち合わせの「あるある」かもしれませんね。
みなさんなら、この抽象論を、どうやって具体的な話し合い=地上戦に持って行きますか?

真面目な研修や会議も、時に笑いながら…

メタファシリテーションでは、課題解決に携わる当事者(たち)の経験を大切に、やり取りを進めていきます。
上記のような状況なら
「この会員さんは満足度が高いな・・・と感じた時のことで、ぱっと思い出せるのが何かありますか?」
「最近、会員さんに満足してもらえたな~と実感したことがありましたか?」
といった質問をしながら、“会員の満足度”という一言がどんなことを指しているのかということをお互いの実体験をもとに共有していくかな、と思います。
NGO/NPOの活動って、「志のあるメンバーが、同じ活動目的に向かってがんばっている・・・」はず、という思い込みがままありますが、実は言葉ひとつとっても、思い浮かべている具体的な内容がまったくすれ違っている、ということが起こり得ます。
シンプルな質問で互いの実体験を出し合い、「そういえば、あの時・・・」「こんなことがあったよ」と、ワイワイ話せる会議になれば・・・参加メンバーの経験を出し合う中で、それぞれの大事にしていることがキラリと光り、「あぁそこを重視してるんだね」と共通認識を持てるかもしれませんよ!



宮下和佳 ムラのミライ専務理事)




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