2017年12月26日火曜日

ナスと唐辛子の共通点は?

2017年9月、セネガルに再びやってきた和田による研修が、プロジェクトを実施している3つの村で行われました。だんだんと農業味を帯びてきた研修の様子を少しお伝えします。

バガナ村での研修。
ファシリテーター和田からの課題で、参加者たちは一人一人が自分の畑で過去5年間に栽培した作物を思い出して書いていきます。

「稗(ヒエ)-稗ー稗―稗―稗」…ある人は一つの畑で5年間同じ作物を育てました。
「ピーマンーミントー唐辛子―玉ねぎーオクラ」…ある人は年ごとに違う作物を栽培していました。
こうして、農民たちの作物栽培状況が見えてきました。

和田「では、この栽培方法はなんと言いますか?」
「ナスー唐辛子―トマトーピーマンージャガイモ…」と、和田が板書していきます。

みなさんは、何だかわかりますか?
参加者の一人が「これは連作だ!」と声を上げます。
和田「どうして?」
村人「同じ科に属しているから。」
そうなのです。違う植物であっても、同じ科に属していると連作と見なされるのですね。私も初めて知りました。
村人たちが書き出した作物の例を使って、「連作」(同じ土地に1種類の作物を栽培し続けること)と「輪作」(同じ土地に異なる種類の作物を交代して繰り返し栽培すること)の概念を確認したわけです。

それから和田は、連作に耐性のない作物の「連作障害」を説明していきます。
・特定の栄養分が欠乏する
・寄生虫、害虫、病気が増える
この連作障害を避けるため、作物ごとの「科」と、特定の作物栽培に必要な休耕年数を学んでいきます。

こういった知識は、農業の基本のはずなのですが、気づかずに農業をしてきた参加者も多いようで、みな頭をフル回転させながら聞いていました。

次の作業は、自分たちが5年間で栽培した作物をもう一度振り返り、それらを「科」と必要な休耕年数ごとに分類していきます。
こうした作業を通して、作物の栽培手法が適切かどうかを、こちらが指摘しなくても自分たちで判断することができるようになるのです。














(セネガル駐在 菊地綾乃)

★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)

セネガルの農家を応援してください!募金キャンペーン実施中
http://muranomirai.org/2017bokin


2017年12月19日火曜日

「なにかあったの?」でつくるグループの雰囲気


 はじめまして、ムラのミライ関西事務所でボランティアをさせて頂くことになりました。黒崎です。

 大学では今年設立されたとあるサークルで代表をしております。
サークルなどの組織運営は、構成員であるメンバーの主体的なコミットが求められています。
しかし、メンバーに主体性を促すのは至難の業です。


 つい先日、メタファシリテーション入門講座を受け、
メンバーに主体性を促すヒントを得ました。


想像してみてほしいことがあります。
 あなたが所属している会社や組織のミーティングに参加できなくなりました。
その際、下記①・②の質問をされたとき、どのように感じますか?


①「なんで来ないの?」


②「何かあったの?」


①は詰められているようなネガティブなイメージを受けますが
②は過去に起こった事実を聞かれているだけで
詰められているような感じがしませんね。

この二つの大きな違いは

  “Why” と “What”  です。

 「なんで来ないの?」は理由を聞いていますが、必ずしも事実で答えられるとは限りません。(≠事実質問)
しかし、「何かあったの?」は過去に起こった事実を聞いております。(=事実質問)

メタファシリテーション入門講座を受ける前、
私は「Why?」のようなネガティブな印象を受ける質問を
サークルメンバーにしていたかもしれません。

ひとつ現在進行形で起こっているネガティブな事例を挙げましょう。

大学の授業では、グループワークをする事が度々あります。
今学期受けている授業で、三回ほどグループで発表する機会があり、
その発表は授業外でも集まらないとなかなか進めることができないものでした。

グループにはリーダーがいるのですが、
そのリーダーが先日連絡も無く、集まりに来ませんでした。

ーーー「何で来なかったの?」
と集まりのあとに連絡をしたところ、二日後に

「バイトだった。」
と連絡がきました。

同じ週の発表日、リーダーは授業に来ず。
授業後、同じように理由を聞いたところ、

「寝坊した。」
と連絡が来ました。
この一連の出来事からグループメンバーはリーダーに対し、
そもそもプレゼンをする気がないんじゃないか?と不信感が募っています。
あと一回プレゼンの機会があるのですが、このままだと大変です。

しかし、グループメンバーのリーダーに対する不信感は、私にも原因があるのかもしれません。
もし、私が「何でこないの?」「何で来なかったの?」と聞かずに

「なにかあったの?」だったり「昨日の夜なにかあったの?」と聞いていたら、
リーダーも答えやすかったかもしれませんし、メンバーも今ほど不信感を抱かなかっただろうと思います。

後日談としては、
リーダーに「寝坊したってことは、前の日の晩、夜遅くまで何かしてたの?」と聞いたところ
「発表のプレゼン資料づくりを朝五時までしてた。」といい、
結局使えなかったけど、とプレゼン資料を見せてくれました。


先日受けた「メタファシリテーション入門講座」は
「途上国の人々との話し方」をテーマにしていましたが、
日常的に自分の身近にいる人々にも使えるんだ!と実感しました。


ネガティブな要素は組織から人を遠ざけてしまう要素にもなりかねません。

皆様も、「事実質問」を通して、ネガティブな印象を受けない対話を実践してみませんか?

(ボランティア/ 黒崎 のえみ)


→こちら、私が参加したメタファシリテーション入門講座です!

http://muranomirai.org/intro201604

事実を一つずつ聞いていく、その意味

 メタファシリテーションの基礎を覚えてしまえば、どんなテーマの研修にも使えます。
セネガルで農村の青年たちを対象とした研修でも、メタファシリテーションが活躍します。基本は、事実質問です。研修でも、事実だけを問いかけていきます。そして、答は決してこちらから与えることはしません。ただ、青年たちが考えるために必要な情報は提供します。
 このセネガルでの農村の青年たちへの研修では、まず、最初に植物のタネを半分に割った横断面のイラストをホワイトボードに描きます。そして、青年たちに尋ねます。

 「これは何ですか?」











 


この問いに対して、すぐには答は返ってきません。なぜなら、彼らはタネを割って中身を見たことがないからです。それでも、誰かは昔学校で理科の時間に習ったことを思い出すのか、「それはマメを割ったところかな」、「いや、タネかな」とぼつぼつ答が出始めます。答が出尽くしたところで、「そうですね。これはタネです」と答えておいて、こんどはタネを地面に埋めたイラストを描きます。そして問いかけます。

 「タネを地面に埋めました。そうするとどうなりますか?」

 この問いには、すぐに答が返ってきます。「発芽する!」
 この答えに対し、「では、発芽するためには何が必要かな?」とさらに問いかけます。すると、「肥料」、「水」といろいろな答が活発に返ってきますが、「温度」、「水分」という答が返ってくるまで、さらに待ちます。そして、正しい答が返ってきたところで、「タネは発芽するまで、すでに蓄えてある栄養で生きるのですね」と説明します。そして、発芽するときに地下では何が起きているかを尋ねます。すると、「根が生える」という答が返ってきます。それに対して、「根は何をするのかな?」と尋ねます。「水を吸う」、「栄養を吸う」と青年たちは答えます。「では、根はどうやって水を『吸う』のかな?」とさらに問います。
 こうして、発芽から、根を下ろし、茎と葉ができるまでの過程を辿りながら、次第に主題である「水」と「土」の問題を導入していきます。

 このように、事実を、ステップを外さずに一つずつ聞いていくのには、意味があります。それは、研修を受ける青年たちが、自分たちが何を確実に知っていて何を曖昧にしか知らないか、何をこれまで考えたことがなかったかに気付いてもらうということです。それは、研修をする私も研修を受ける青年たちも、「ああ、それなら知ってる知ってる」という思い込みを排し、確実に情報を共有していく過程でもあります。















こちらも併せてお読みください
水やりのベストな時間は?水の動きのメカニズムを知り、農作業を見直す
http://somneedwest.blogspot.jp/2017/12/blog-post.html

★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)

セネガルの農家を応援してください!募金キャンペーン実施中
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2017年12月13日水曜日

水やりのベストな時間は?水の動きのメカニズムを知り、農作業を見直す

2017年2月、ムラのミライは西アフリカの国、セネガルでの新しいプロジェクトを開始しました。
これから3年間、カウンターパートNGOの”Intermondes (アンテルモンド)"と一緒に、セネガルの村の人たちが、農業で生きていくための技術を身に着け、実践していくための研修をおこなっていきます。私たちが活動するのは、首都ダカールから南南東に150キロほど離れた、ンディアマーヌ、ンディアンダ、バガナという3つの集落です。

2月末に、マスターファシリテーターの和田・中田が現地入りし、最初の研修を実施しました。今日は、3つの村のうちの一つ、ンディアンダ村で研修をおこなった時のやりとりをご紹介します。

村人「僕たちは十分な水がないです。だから、水を節約するとか溜めるというのもムリです」
和田「どれだけの水があるのか、知っているのか?」
村人「いいえ」
和田「知らなくて、どうやって”足りない”とか”節水できない”とか言えるの?」
村人「・・・」
和田「お金と一緒だよね。どれだけお金があるのか分かれば、どれだけ使う、どれだけ貯める、というのも考えられるよね」

こうしたやり取りに、明らかに村の人たちは衝撃を受けている様子。だけどとても真剣に、和田の一言一句に耳を傾けているのでした。
この村の水のことから、やがて話は「土の中でのエネルギー」に移りました。つまり、水がどのように土にしみこみ、そして植物が水を吸い上げているのか、その基本的な構造についてです。
一通りの説明が終わった後、和田が尋ねました。

和田「で、植物への水やりは、いつするのが良いのだ?」
村人1「朝」
村人2「午後」
読者の皆さんは、分かりますか?そして、それがなぜその時間帯が良いのか、土の中での水の変動の観点から、説明することができますか?
私(筆者;セネガル同行職員の前川)は、今までの経験から地表の温度との関連で朝と日没後がベスト、とは思っていましたが、地中の水の変動については考えてもみませんでした。和田と村人のやり取りは続きます。

和田「土壌の中では何が感じられる?」
村人「湿り気。水。」
和田「水はどこから来るんだ?」
村人「上から(頭上を指さして)」
和田「お湯を沸かしたい時には燃料がいる。じゃぁ植物には、土中の水を温めたい時に何が要る?」
村人「?」
和田「太陽が昇ると何が起きる?」
村人「光が出てくる。明るくなる。」
和田「光とは何だ?太陽光、つまり紫外線や放射熱だ。自然の奇跡によって、太陽光は
土に入るとエネルギーになる。太陽光は土壌や水、空気にエネルギーを与えてくれる。
暖かい空気は上に行くよな?同じことが土の中でも起こっている。朝の太陽光の熱はまず土に当たり、土中に入っていく。朝は気温が低い。水はより下方へ浸透する。お昼頃になるとそのスピードはとても遅くなる。つまり、植物の根っこがある深さまで水が浸透するまでに時間がかかる。そして午後になると、今度は逆にとても速いスピードで水は上に向かって移動する。
(真剣な表情で、模造紙に描かれる絵を見つめる村人たち。)
和田「つまり、水にとっては何が重要なんだ?水が土中で上に向かって移動する時に、植物は水を吸い上げている。水の入ったコップにティッシュを浸すと、ティッシュが水を吸い上げるだろう?それと同じだ。
(中田がティッシュとコップを使って実演する)
和田「朝に気温が下がっている時に水はより下方へ浸透し、午後には上に向かう、つまり、どういうことだ?」
村人「早朝に水遣りをした方が良い?」
和田「つまり、水を最小限に抑えることができるということだ。このメカニズムが重要なんだよ。」


このようにして、村の人たちは利用可能な水について、彼らの経験に基づいて、2日間考え抜いたのでした。それらは、彼ら自身まだ知らなかった事、だけど農業をしていく上では、とても重要なことなのでした。

今回の研修の最後に、ある村人が言いました。「僕は、学校教育を受けました。だけど、今まで、まるで無学の人のような働き方をしてきた、ということに気づきました。今やっと、毎日何をすべきなのかが分かりました!」

和田と中田がにんまりとしていたのは、言うまでもありません。
だけどこれは事業の始まり、研修がようやくスタートしたに過ぎません。お決まりのように、和田と中田は参加者たちに、次回の二人の再訪(2017年5月)までにしておくべき課題を言い残して、村を去ったのでした。

(前川香子)


★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
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http://muranomirai.org/2017bokin