2017年12月19日火曜日

事実を一つずつ聞いていく、その意味

 メタファシリテーションの基礎を覚えてしまえば、どんなテーマの研修にも使えます。
セネガルで農村の青年たちを対象とした研修でも、メタファシリテーションが活躍します。基本は、事実質問です。研修でも、事実だけを問いかけていきます。そして、答は決してこちらから与えることはしません。ただ、青年たちが考えるために必要な情報は提供します。
 このセネガルでの農村の青年たちへの研修では、まず、最初に植物のタネを半分に割った横断面のイラストをホワイトボードに描きます。そして、青年たちに尋ねます。

 「これは何ですか?」











 


この問いに対して、すぐには答は返ってきません。なぜなら、彼らはタネを割って中身を見たことがないからです。それでも、誰かは昔学校で理科の時間に習ったことを思い出すのか、「それはマメを割ったところかな」、「いや、タネかな」とぼつぼつ答が出始めます。答が出尽くしたところで、「そうですね。これはタネです」と答えておいて、こんどはタネを地面に埋めたイラストを描きます。そして問いかけます。

 「タネを地面に埋めました。そうするとどうなりますか?」

 この問いには、すぐに答が返ってきます。「発芽する!」
 この答えに対し、「では、発芽するためには何が必要かな?」とさらに問いかけます。すると、「肥料」、「水」といろいろな答が活発に返ってきますが、「温度」、「水分」という答が返ってくるまで、さらに待ちます。そして、正しい答が返ってきたところで、「タネは発芽するまで、すでに蓄えてある栄養で生きるのですね」と説明します。そして、発芽するときに地下では何が起きているかを尋ねます。すると、「根が生える」という答が返ってきます。それに対して、「根は何をするのかな?」と尋ねます。「水を吸う」、「栄養を吸う」と青年たちは答えます。「では、根はどうやって水を『吸う』のかな?」とさらに問います。
 こうして、発芽から、根を下ろし、茎と葉ができるまでの過程を辿りながら、次第に主題である「水」と「土」の問題を導入していきます。

 このように、事実を、ステップを外さずに一つずつ聞いていくのには、意味があります。それは、研修を受ける青年たちが、自分たちが何を確実に知っていて何を曖昧にしか知らないか、何をこれまで考えたことがなかったかに気付いてもらうということです。それは、研修をする私も研修を受ける青年たちも、「ああ、それなら知ってる知ってる」という思い込みを排し、確実に情報を共有していく過程でもあります。















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★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)

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http://muranomirai.org/2017bokin