2017年12月13日水曜日

水やりのベストな時間は?水の動きのメカニズムを知り、農作業を見直す

2017年2月、ムラのミライは西アフリカの国、セネガルでの新しいプロジェクトを開始しました。
これから3年間、カウンターパートNGOの”Intermondes (アンテルモンド)"と一緒に、セネガルの村の人たちが、農業で生きていくための技術を身に着け、実践していくための研修をおこなっていきます。私たちが活動するのは、首都ダカールから南南東に150キロほど離れた、ンディアマーヌ、ンディアンダ、バガナという3つの集落です。

2月末に、マスターファシリテーターの和田・中田が現地入りし、最初の研修を実施しました。今日は、3つの村のうちの一つ、ンディアンダ村で研修をおこなった時のやりとりをご紹介します。

村人「僕たちは十分な水がないです。だから、水を節約するとか溜めるというのもムリです」
和田「どれだけの水があるのか、知っているのか?」
村人「いいえ」
和田「知らなくて、どうやって”足りない”とか”節水できない”とか言えるの?」
村人「・・・」
和田「お金と一緒だよね。どれだけお金があるのか分かれば、どれだけ使う、どれだけ貯める、というのも考えられるよね」

こうしたやり取りに、明らかに村の人たちは衝撃を受けている様子。だけどとても真剣に、和田の一言一句に耳を傾けているのでした。
この村の水のことから、やがて話は「土の中でのエネルギー」に移りました。つまり、水がどのように土にしみこみ、そして植物が水を吸い上げているのか、その基本的な構造についてです。
一通りの説明が終わった後、和田が尋ねました。

和田「で、植物への水やりは、いつするのが良いのだ?」
村人1「朝」
村人2「午後」
読者の皆さんは、分かりますか?そして、それがなぜその時間帯が良いのか、土の中での水の変動の観点から、説明することができますか?
私(筆者;セネガル同行職員の前川)は、今までの経験から地表の温度との関連で朝と日没後がベスト、とは思っていましたが、地中の水の変動については考えてもみませんでした。和田と村人のやり取りは続きます。

和田「土壌の中では何が感じられる?」
村人「湿り気。水。」
和田「水はどこから来るんだ?」
村人「上から(頭上を指さして)」
和田「お湯を沸かしたい時には燃料がいる。じゃぁ植物には、土中の水を温めたい時に何が要る?」
村人「?」
和田「太陽が昇ると何が起きる?」
村人「光が出てくる。明るくなる。」
和田「光とは何だ?太陽光、つまり紫外線や放射熱だ。自然の奇跡によって、太陽光は
土に入るとエネルギーになる。太陽光は土壌や水、空気にエネルギーを与えてくれる。
暖かい空気は上に行くよな?同じことが土の中でも起こっている。朝の太陽光の熱はまず土に当たり、土中に入っていく。朝は気温が低い。水はより下方へ浸透する。お昼頃になるとそのスピードはとても遅くなる。つまり、植物の根っこがある深さまで水が浸透するまでに時間がかかる。そして午後になると、今度は逆にとても速いスピードで水は上に向かって移動する。
(真剣な表情で、模造紙に描かれる絵を見つめる村人たち。)
和田「つまり、水にとっては何が重要なんだ?水が土中で上に向かって移動する時に、植物は水を吸い上げている。水の入ったコップにティッシュを浸すと、ティッシュが水を吸い上げるだろう?それと同じだ。
(中田がティッシュとコップを使って実演する)
和田「朝に気温が下がっている時に水はより下方へ浸透し、午後には上に向かう、つまり、どういうことだ?」
村人「早朝に水遣りをした方が良い?」
和田「つまり、水を最小限に抑えることができるということだ。このメカニズムが重要なんだよ。」


このようにして、村の人たちは利用可能な水について、彼らの経験に基づいて、2日間考え抜いたのでした。それらは、彼ら自身まだ知らなかった事、だけど農業をしていく上では、とても重要なことなのでした。

今回の研修の最後に、ある村人が言いました。「僕は、学校教育を受けました。だけど、今まで、まるで無学の人のような働き方をしてきた、ということに気づきました。今やっと、毎日何をすべきなのかが分かりました!」

和田と中田がにんまりとしていたのは、言うまでもありません。
だけどこれは事業の始まり、研修がようやくスタートしたに過ぎません。お決まりのように、和田と中田は参加者たちに、次回の二人の再訪(2017年5月)までにしておくべき課題を言い残して、村を去ったのでした。

(前川香子)


★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)

セネガルの農家を応援してください!募金キャンペーン実施中
http://muranomirai.org/2017bokin