2016年7月26日火曜日

過去を知ることで、考えはじめる未来 地域でのインタビューの先にあるスキルとは?

ムラのミライ初の沖縄・久高島でのフィールド研修では、講師の和田が島のオバァに短い時間でしたがお話を聞くことができました。

翌日のクラスルーム・セッション後半では、和田がどういう意図でオバァへの質問を組み立てていたのかをふりかえりましたが、その一部をご紹介します。



挨拶や自己紹介をした後、オバァがつけていた金の指輪について「素敵な指輪をされていますね」というところから始めました。

薬指ではなく中指にはめてらしたのを見て、
「この島にも結婚指輪をする習慣があるのかな?」
と、興味がわいたという和田。
一緒にいたもう一人のオバァもプラチナの指輪をつけていたのを、ちゃんと見てとっていました。

-指輪をするという習慣が昔からこの島にあったのか、それとも、どこかの時点で入ってきたのか。

指輪ひとつを入り口(エントリーポイント)に、色んな視点で仮説を立てることができます。
メタファシリテーションの入門セミナー基礎講座でも練習する「これは何ですか?」から始まる事実質問の応用編ですね。
これができるようになるために、平素から、ひとつのモノに対して、一瞬にして30くらいの要素について仮説を立てる訓練をしてみましょう。

たとえば、仮に経済圏という要素について仮説を立てるとすると・・・
指輪は明らかに、久高島では作っていない。また、宝石店も見当たらなかった。そうすると、指輪は外部から持ち込まれたモノと推測できます。
久高島を中心として、どれだけの範囲まで経済圏として広がるか。オバァの話から、この輪=経済圏の範囲を広げていくことができます。
もし仮に南城市の○○ショッピングモールで買ったとしたら、○○ショッピングモールができるまではどこで買っていたのか・・・と、聞いていきます。


指輪にも、オバァの人生にも、何にでも歴史があります。
指輪であれば、どこで作られ、どこで売られ、誰が買い・・・(時間軸)。
そして、どちらも、この久高島というコンテキストの中で展開したということ(空間軸)。

ふたつの軸を頭の中に描きながら、
「自分がこのオバァだったら・・・」
と想定すると、聞くことはいくらでも出てきます。

過去が明らかにならない限り、未来を推測することはできません。
過去を聞いていくと、いくつものランドマークが出てきます。

たとえば、買い物袋。(和田は少し前から、常にエコバッグを持ち歩き、買い物袋を極力断るようにしているのですが・・・)買い物袋ひとつとっても、過去、ある時期からスーパーマーケットでプラスチックの買い物袋をくれるようになりました。
これは、一つのランドマークですよね。

「思い出してみると、僕が8歳かそこらの時、母たちが『明日からメートル法になったから、これからは”味噌何グラム”と言って買わないといけないね~気をつけないとね~』・・・という会話をしていた記憶がある。つまりここに、それまでは量り売りだったのが、瓶や袋に詰めた状態で売られるようになったという、もう一つのランドマークがある。(僕らは、こういうランドマークになるできごとを単に「便利になった、進んだ」と表現してしまっているけど・・・)」



すべてのモノから歴史が見えます。

あのオバァへのインタビューを何回も繰り返したり、他の人にも聞いたり・・・としていくと、時間軸×空間軸というジグソーパズルのマス目が大きく・細かく埋まっていきます。
色や陰影のついた画が浮かび上がってきます。

そこまでやって初めて、その先=つまり、未来を考え始めることができるのです。


今回、台風が接近していたために久高島での滞在を短縮してしまい、過去から未来へ、島の方たちと一緒に考える時間を取ることができませんでした。島のあちこちを案内してもらい、お話を聞かせてもらっただけになってしまいました。
次回は台風オフシーズンに訪れて(または台風が来たら数日間は島にとどまれるスケジュールを組んで?)、島の方たちと一緒に、島の歴史地図を歩きたいと思っています。



宮下和佳 ムラのミライ専務理事/関西事務所)




今年後半~来年の国内外フィールド研修も準備中です

2016年7月12日火曜日

自分なら、どう暮らしを立てる? 地域づくり・地域おこしのファシリテーション第一歩

先週、ムラのミライ初の沖縄でのフィールド研修を開催。研修生6人、講師2人、スタッフ2人の総勢10人で沖縄・久高島を訪れました。


今回は、久高島でのフィールドワーク翌日、クラスルーム・セッションでのやり取りをご紹介します。

会場は、JICA沖縄国際センターの研修室。何とテラスから海が見える(!)ステキなお部屋。
朝9時過ぎからスタートしました。

まず、講師の和田から参加者みんなに質問が投げかけられます。

最初の質問
「フィールドワークで一番心がけないといけないのはナニ?」(長期滞在でなく短期訪問の場合)

参加者が答えたのは・・・
「外部の人間であることの自覚」
「相手との関係性をつくる」
「暮らしを尊重する」
「挨拶/自己紹介」
「目的(何を知りたいのか)をはっきりさせる」

講師からのコメントは・・・
「それらも、もちろん大切だし正解。
自分自身が心がまえとしているのは、自分がその場所にいたら、どう暮らすだろう、ということ。
その土地にはまだ誰も住んでいない、という仮定で”自分ならそこで暮らすためにどうするか””どういう風景を見てどう暮らし始めるか”という事を考える。」

そして、質問その2
「そういう風に考えるとすると、出会った方にどういう聞き方をするだろう?」

それは、”ここに何がありますか”ということ。
つまり、何をもって暮らしを立てているか(いたか)、ということ。
久高島で人が住み始めた時から今まで、どういう暮らしが営まれてきたのか。

これは、メタファシリテーションの基本視点「自分が相手の立場だったら」の応用編ともいえます。

実際に、昨日のフィールドワーク中、講師がこだわって質問していたことは何かというと・・・
・土
・水(どこから手に入れるか)
の2つでした。

たとえば、講師の和田が、島を案内してくださった内間さんに投げかけた質問のひとつ
「地下貯水槽があったことはありますか?」
なかった、との回答でした。
目にした雨水貯水槽は割と新しく(昭和になってから)設置され、使っていたものだが、今は使っていない、と。
今は本島から海底トンネルで水を運び、給水塔でくみ上げて給水している、と。

ここまで聞いていくと、心の中の「自分だったら」目線から、疑問が出てきます。
「じゃあ、ここに暮らし始めた人は、水をどうやっていたんだろう?特に食料生産=農業にかかる水をどうしていたんだろう?そもそも、どうしてこの島を選んで住みついたんだろう?」

はい、時間軸へのとっかかりがが出てきたところで、今回はこのへんで。
次回、オバァへのインタビューを通して、時間軸・空間軸の話をお届けしたいと思います。

宮下和佳 ムラのミライ専務理事/関西事務所)




インドやネパールでのフィールド研修も参加者募集中です