2016年5月24日火曜日

ジグソーパズルの枠とピース



前回の続きです。前回、時間軸を引いてみる、ということを書きましたね。そう、縦軸と横軸です。
 
そして、縦軸にとりあえず要素に分解した「トピック:話題」を置いておく、という話をしました。話の糸口は、何でもいいのです。ま、後の話を続けやすいものが望ましいのは当然ですが。例えば、牛。日本では、畜産農家以外で牛の話が出ることはないと思いますが、いわゆる途上国の農村では、牛はまだまだ「現役の」存在であり続けています。インドやネパールでは、別に農村でなくとも、町中で牛を見かけるのは日常茶飯事のことです。はい。牛を、とっかかりの話題にしました。「途上国の人々との話し方—国際協力メタファシリテーションの手法」を読んだ方なら、中田さんと私は、こういうとっかかりの話題を「エントリーポイント」と名付けていたのをご存知ですね。さて、牛をどう要素に分解するか、です。サーロインとかテンダーロインとかに切り分けるのとは、ちょっと違いますね。どうしますか。私なら、とりあえず「雄か雌か」、「牛の年齢」、「どこでいつ買ったか、あるいは自分のところで交配し生まれたか」、「買値で幾らか」、「用途は何か」、「餌は何だ」、「餌はどこで手に入れるのか」、「牛を飼育し始めたのはいつか」、などなどに分解してみます。分解したら、どうするのでしたっけ。そうです。縦軸に、ペタッと分解した要素を貼り付けます。これで、後は一つ一つ丁寧に聞いていけばいいのでしたね。こうやっておけば、後で何回も同じ要素に戻ってくることができます。これを、前述の中田さんと私の本では、「リカバリーポイント」と呼んでいました。質問が躓いたら、戻ってこられるというのがミソですね。別の言い方をすれば、いつも参照できるところを作っておくということです。
 
さて、こうして縦軸を確保しておくと、その一つ一つについて、百パーセントとは言いませんが、過去に遡ることができますね。すると、分解した一つ一つの要素について、物語が浮かび上がってきます。ちょうど、縦軸と横軸というフレームの中に、ジグソーパズルのピースを置いていくような作業です。このとき、大事なことは、極力頭の中を真っ白にしておくこと。知っているつもりにならないこと。何にも知らないという前提で、こんなことを聞いたらバカだと思われるんじゃないか、ということも、ちゃんと聞いてください。「バカだ」と思われるんじゃないか、という質問は、大概が簡単な質問です。答える方も、簡単に答えられます。すると、そういう質問を繰り返していると、やりとりにリズムが生まれてきます。私の経験からすると、こんな初歩的な、常識的な、と自分で思ってしまうような質問ほど、意外な答えが返ってきます。そこで気づくんですね。ああ、この世界と(つまり今あなたが、質問をするために身を置いている場所)、自分の属する世界では常識が違うんだと。

インドネシア・ロンボク島でインタビュー 「お父さんが生きてた頃のコーヒー栽培は・・・」


よく、和田さんのように村のこと(インドのこと、ネパールのこと、インドネシアのことなどなど、行く先々で)を知っているから沢山質問ができるんだなどと言われますが、それは違います。知らないことを素直に聞く(私のように腹黒い人間が、このときだけは素直になります)だけです。そして、聞いてそのとき理解したことは、すぐに忘れます。私は、こうしてその場限りの、行き当たりばったりの人生を送っています。
 縦軸にペタッと付箋を付けておく。こういう癖を付けてください。これは、大分訓練が要ります。ここまで書くと、お分かりかと思いますが、この付箋が多ければ多いほど、ジグソーパズルのピースが増えていきます。つまり、描く絵の密度が高くなっていくのですね。ざっとしたスケッチだったものが、ディテールが描き込まれた濃密な油絵(ちょっと古いか)のようになっていく。

ところで、相手に話を聞くときは、なるべくノートをとらないようにしてくださいね。これも訓練です。ノートをとると、相手が緊張します。自分の言ってることがためになるから、ノートをとっているんだな、なんて思うのは脳天気な私くらいなもので、普通は、身構えます。できるだけ自然に、自然に。

私の場合、この縦軸に付箋を置いていく、ということを丁寧に(と自分では思っている)やります。これから姿を現してくる物語の土台ですからね。周囲で聞いている方としては、一体こいつ、何を聞こうとしているんだろう、と思うでしょう。時間がかかってもいいから、土台作りは丁寧に。


和田信明 ムラのミライ 海外事業統括/ネパール事務所)


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2016年5月17日火曜日

事業後半なのに右肩下がり!? 南国信金おばちゃん信金ができる前


20167月に、ビシャカパトナム市スラムに暮らす女性たちが運営する信用金庫「VVK」を舞台にした、フィールドワーク研修を開催します。それを機に、ちょっとだけVVKにまつわるファシリテーションの記憶を振り返ってみました。

私がVVKのオバチャンたちと初めて会ったのは、200510月。私自身はムラのミライ(当時はソムニード)のインターン(見習い職員)で、とにかく「インドで仕事をする」という状況に慣れるのに必死でした。オバチャンたちも、7つのSHGSelf Help Group相互扶助グループ)で始めたVVKを、もっと大きくするわよと必死。

2005年の年末に一度帰国し、年が明けてから正職員として心新たに再び渡印することになった時には、3年間事業のちょうど折り返し地点である1年半が経っていました。駐在員として初めてVVK事務所を訪れ、和田さんや原さん、ラマラジュさんという師匠や大先輩の研修を見る日が数日続いた頃、ふと気づいたのです。 

VVK7つのSHGが集まって作られた連合体で(当時はまだ正式な信用金庫ではなかった)、もっと加入グループ数を増やすことを目標にしていました。なのに、私が日本にちょっと帰っていた間に加入グループは6つになり、そしてとうとう4つしか残っていない。

繰り返しになりますが、20061月は、3年間の事業のちょうど折り返し時点である1年半が経ったころ。
「プロジェクトって、いろいろ成果が右肩上がりになるものですよね・・?え、今、1年半・・・え、あと1年半・・??え、右肩下がり・・?あれ??」と、一瞬混乱に陥った私。そして、和田さんに思わず聞いていました。
「これがゼロになったら、どうするんですか?」

返ってきた答えは、「まぁ見ておれ」 

覚えていませんが、もしかしたら「ゼロにならないように、何かしなくてもいいんですか?」とも聞いていたかもしれない。でもやっぱり答えは「まぁ、見ておれ」だったでしょう。何しろ当時の和田さんの言葉といえば、このセリフしか記憶にないのだから。
「見ておれ」というのは、私が和田さんたちの仕掛けを見る、ということではなく、和田さんも原さんもラマラジュさんも、すべてのスタッフが「見ていた」のは、VVKに残った4グループの動静でした。

つまり、それが「待つ」ということ。

スタッフ側から、「残り4つになっちゃったよ、どうするの?」という煽るような問いかけもしない。「グループ数を増やすって言ってたじゃない、ほら頑張りなさいよ」という声援も送らない。

残った4つのグループが「どうしよう、このままじゃヤバイ。何とかしてグループ数を増やさないと」と言い出すまで、何もしなかった。

ただ、言い出すまでの期間は、それほど長くなかったような気がします。1か月も経たない内に、残った4グループが、「他のグループを勧誘して、確実に入ってもらうためにはどうすればいい?」、「VVKに入る前に、SHGとしての基本的なコトを実行してもらうためにも、研修をしないと」と、色々なことを考えてはスタッフたちに研修要請をしてきました。

それを、和田さんや原さん、ラマラジュさんは当然のように受け止め、次々と研修を展開していったのでした。私は、そうした研修をビデオに録り、写真を撮り、メモを取りまくり、師匠や大先輩たちの姿を見ていたのでした。

あの時、右肩下がりの数字に一人あせりまくっていたひよっこの私を尻目に、ベンガル湾に浮かぶタンカーのようにどーんと構えていた和田さんたちでしたが、どーんと待っていられたのも、それまでの仕掛け、もといファシリテーションの連続があったから。それがなければ、待ってても何も起きないのは火を見るよりも明らかです。

それ以前のことは、私も書類や当時の通信、そして「南国港町おばちゃん信金」でしか知り得ません。どんなファシリテーションをしていたのかは、3年間のプロジェクト通信や「南国港町おばちゃん信金」を読んでみてください。

ただもう一つ、和田さんの「見ておれ」という言葉は、「残り4グループの動静を見る」という意味と、やっぱり「和田さんたちの仕掛け(=待つ)を見て学べ」の二つの意味があったんだろうな、と振り返って思うのです。
 

前川香子 ムラのミライ 事務局次長/海外事業チーフ)


おばちゃんたちに学ぶフィールド研修ツアーはこちら
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2016年5月10日火曜日

相手の答えを待つ余裕

ネパールで働き始めて約10か月。
「やっぱり和田さんの研修は自分たちがやるのとなんか違うよね!」
と何度かネパール人の同僚から聞いたことがあります。
「おー、やっぱり気づいているとは!さすがソムニード・ネパールのスタッフだな~」と感心したのですが、その違いって何でしょうか?

それは、「待つ」ことができるかどうか。
最近、マスターファシリテーターたる和田さんと、私たちスタッフとの一番の違いはここなんじゃないかと思うようになってきました。
(他にもいろいろあるでしょうけれど、それは一旦おいておきます)

外から刺激を与えることはできるが(これがファシリテーション)、変化は常に内側から起こるもの。
その信頼と主に「よい時期に適度に突つく」ことができたというファシリテーターとしての自己の腕に対する自信がなければ、待つことができず、ついつい突つきすぎてしまう。つまり相手が自分で気付く前に「提案」してしまう。
(『途上国の人々との話し方』p.292より引用)

まさにこれ。
書籍では「自己の腕に対する自信」と表現されていますが、「どんな答えが返ってきても次の質問につなげられるという余裕」がないとできないことだと私は思うのです。

例えば、現在建設中のDEWATS(分散型排水処理施設)をこれから維持・管理していく村人たちへの研修の準備をしていた時のこと。
研修の最後にDEWATS建設のアクション・プランを共有しようという話になりました。
(→アクション・プランについてはこちら)

工程や予算、スケジュール、必要な資材や労働力が記入されたアクション・プランを渡したあと、村人に投げかける質問は何でしょう?
ソムニード・ネパールのスタッフから出てきたのは、“まずは簡単にプランの読み方を説明して、「何かわからないことはありませんか?」と聞いてみる”ことでした。
私は「何かわからないことはありませんか?」では、何も質問が出てこないんじゃないかと思いましたが、じゃあ、最初の質問はどう投げかけるべきか?と考えあぐねていました。

このやりとりを聞いていて「そうじゃないだろう」という表情の和田さん。
和田さんは“「このアクション・プランから何がわかる?」と聞くことから始めていく”と言うのです。

和田さんのやり方は、村人自身に「このアクション・プランには何が書いてあるのか、何のために必要なのか」を考えさせることにつながるやりとりです。
どんな答えが出てくるのかわからない、でも相手の答えを待つ余裕があれば、こういう質問を投げかけても村人とのやりとりができます。
対して、ソムニード・ネパールのスタッフのやり方だと、自分たちで考えさせることなくこちらから説明してしまいますので、「何か質問はありませんか?」と聞いても何も出てこないでしょう。
相手の答えを待つ余裕のなさが、自分たちから一方的に伝えたいことを喋ることにつながってしまっています。

では、その「余裕」はどこから出てくるんでしょうか?

場数を踏むことはもちろんですが、準備をすることだと思います。
要は村人たちに「何に気づいてもらいたいか」というゴールを設定する。
そのためにどんな質問を投げかければいいか、どんな答えが返ってくるか、それに対してどう切り返すか。いくつもパターンを想定する。(先ほどの例でも、ある程度の答えのバリエーションは想定できます。)

実は、和田さんでさえ、カンペを準備しているところを見たことがあります。でも、研修本番となったら、カンペをちらりと見ることもなく進めていくのです。
この準備を飛ばすと、対応できない余裕のなさから、自分の伝えたいことを言うだけ。
一見、“参加型”のやり取りをしているように見えても、村人にしてみれば脳みそを使うことなく聞かされているだけのやりとりになってしまいます。

事実質問の練習をしてみるときに、個々の質問が事実を聞くものであればいいというだけではなく、一つの大きな流れを意識する。
相手がどう答えるだろうか、それに対して私はどう切り返せばいいだろうか。
 想定されるケースをできるだけ多く挙げておく。

それが、相手の答えを「待つ」余裕を生むための練習の一つになるかもしれません。
私も、仕事で他のスタッフに交渉して何かを決めなければならないとき、「●●さんだったらこう答えるだろうから、こう質問してみようかな~」など、少し意識的に、やり取りのパターンを多めに想定するよう心がけています。

田中十紀恵 ムラのミライ 海外事業・研修事業コーディネーター/ネパール事務所)

http://muranomirai.org/trg2016bgnepal

2016年5月3日火曜日

頭の中に時間軸を引く

今回は、どういうふうに事実質問を組み立てるのか、そういうことを書いてみます。

4月26日のこの対話型ファシリテーション自主学習ブログに、近藤美沙子さんが、この3月のロンボクでの研修のことを書いています。事実質問を投げかける対話の中で、①どうしたらゴールを設定できるのか、そのためには質問を投げかけながら、②同時にどう相手とのやり取りをシミュレーションしていくのか、そのことへの気づきを書いてありましたね。その辺りを、解きほぐしてみたいと思います。ただし、余計分からなくなった、なんてことになったら、中田さんにSOSを出してください。この方法論を練り上げたのは、中田さんなので、難しい質問はいつも中田さんへ、という気持ちを持つことを忘れないでください。

 (写真 イランにて 真ん中左=和田信明 真ん中右=中田豊一)

では、まずおさらいです。事実質問って何だ?ということを一言で言えば、現象をかみ砕く(現象っていうと、なんか哲学的ですが、例えば、あ、今朝学校に遅刻しちゃったとか、宿題を忘れちゃったとか、何か今日は気分が落ち込んでいるとか、逆に今気分がやたら昂揚しているとか、そういうことですね)ということです。中田さんが教えてくれたのは、特に現象がネガティブな場合、「なぜ」と聞くと、言い訳を誘発しやすいということでしたね。もっともらしい言い訳で「なぜ」と聞いた方が納得しても、実は聞いた方も言い訳した方も、まさに「なぜそうなった?」ということが分からないまま終わってしまうことが多いのですね。でも、その現象にいたる過程を、一つ一つ事実に分解して聞いていけば、二つ得します。つまり、一挙両得ですね。一つは、相手が、具体的に何が起こったか思い出すことで、原因が明らかになる可能性が大きい。二つ目は、聞き手と話し手の共通理解が生まれる、ということです。あ、あなたと私は、あることに対して同じ認識を持っている、という状態を作り出すのがコミュニケーションの意味でしたね。つまり、この「一挙両得」の状態が、コミュニケーションということです。

ただ、この一挙両得事実質問がし易いのは、あ、宿題忘れた、とか、遅刻した、とか(こいつ、持ち出す例えが乏しいから、自分の学校時代のことばかり言ってるな、と思った方、大当たりです)、何が問題になっているのか分かっている場合ですね。村にぶらっと行って、誰かをつかまえてインタビューするときは、そうはいきません。この場合は、相手に話を聞きながら自分が何を聞きたいのか(なんだかややこしいですね)、探らなければいけないので、うまく質問を組み立てていかなければ、「えーと、私は何を聞きたかったんでしょう」、で終わってしまう可能性があります。つまり、ゲームが成立する前に、あらぬ方向にボールを打ったり蹴ったりすることで終わっちゃった、なんてことになります。ところが、「ゲームを作る」というのが難しい。そのとき、何をするのか。

まずするのは、自分の頭の中に時間軸を引いてみることです。はい。過去、現在、未来の横軸です。さて、横軸が引けたら、今度は現在の所に縦軸を引いてください。この縦軸の、向かって右側が未来、左側が過去になります。この右側の部分は、常に空白です。神のみぞ知る、という領域です。神ならぬ私たちは、縦軸上と縦軸より左側で作業をしていきます。さて、これで準備ができました。


最初の質問は、なんでもいいのです。定番通り「これはなんですか?」で、結構です。「これは何ですか?」と聞くネタがなければ、相手の家族のことから聞き始めても結構です。ただ、ネタが全くないというのも寂しいので、私や中田さんがいつも言うように、それまでに目を皿のようにして辺りの風景を見ておいてください。そして、そのとき、頭の中で素早くしなければいけないのは、そのネタ、最初の質問事項を縦軸に貼り付けることです。ペタッと、頭の中で音がしましたか。しっかりと、落ちないように貼り付けてくださいね。そして、丁寧にそのネタを分解してください。まず、ネタをかみ砕くんですよ。

例えば、「家族」。「あなたの家族のことを教えてください」。このとき、まず、「今妻(夫)と娘(息子)、そして両親と一緒に住んでいますが・・・」とか、言ってから始めるといいですね。

さて、相手から答が返ってきます。例えば、「妻と子どもが5人」。もう、この時点で、次の質問のヒントが答の中にありますね。「あなたの奥さんは、男ですか、女ですか」なんてのも、可能性としてはありですが、あまりしない方が賢明です。でも、「男のお子さんは何人、女のお子さんは何人ですか」というのは、苦労しなくても出てくる質問で、ここで「男の子3人、女の子2人」なんて答が返ってきたら、ここで、縦軸に、「夫、妻、男の子1、2、3、女の子1、2」と、またペタッと貼り付けておきます。

ここまでで、一体何が起こったのでしょうね。実は、などともったいぶって書くことでもないですが、何が起こったか、あるいは、何を無意識にしていたかというと、「家族」を要素に分解する、この場合は家族の構成メンバーという要素に分解するということをやったわけです。冒頭に書いた「かみ砕く」とは、まさにこのことですね。要素に分解する。事実質問の鉄則です。

さて、この時点で、すでに質問の大項目だけでも7つ揃ったことになりますね。分かりますか。さらに、補足的に、「あなたのご両親は」とか、「奥さんのご両親は」とか、聞くことができますね。すると、まだ両方の両親とも達者だ、なんてこともあるわけで、ここで、7つの大項目に、さらに4つ項目が足されたということができます。これだけでも、最低11個は質問が作れるわけで、あなたの前途は洋々たるものです。縦軸での話を、もうちょっと書きますよ。

次ぎに、この縦軸での展開をするときに、子どもたちが今何をしているか、それぞれの子どもについて聞くことができますね。一番上の子は男の子で、すでに父ちゃんと一緒に仕事をしているとか、まだ高校に行ってるとか、あるいは、一番上の子は女の子でもう結婚してるとか、いろいろな可能性がありますね。この辺りから空間的要素を入れ込みます。なんて言うと、難しそうですが、子どもたちが、年齢にもよりますが、今どこに住んでいるかという質問ができるということです。ついでに、奥さんはどこから嫁に来たかとか、両親は今どこに住んでいるか、とか、後々役に立つような、布石とも言えるような質問がいっぱいできますよ。すでに、ここまでで、ここは突っ込んでみたい、ということが少なくとも二つや三つは出てきているはずです。え、何もなかったって? それは困りましたね。ま、あきらめずにセンスを磨いてください。

さて、この辺りから、過去の方に少し当たりをつけ出します。いいですか。誰だろうと、いきなりぽこっと、現在存在しているわけではありません。必ず過去があります。家族全員の、個人史を聞くことも可能です。また、過去のエピソードのある部分を、集中的に聞いていくこともできます。また、当然ながら、過去にも、それぞれの出来事の空間的な展開があります。しつこいようですが、次の質問のヒントは、必ず相手の答の中にあります。だけど、気になる情報は、必ず、この縦軸と横軸にちゃんと貼り付けておいてくださいね。はい、ペタッ。これが、基本です。これを、その場で、一瞬でできるように訓練する、それがメタファシリテーションの手法の初歩です。

和田信明 ムラのミライ 海外事業統括/ネパール事務所)


 (写真 イランにて移動中 右=和田信明 左=中田豊一)

http://muranomirai.org/basic2trg201605