コロナ禍で中断
コロナ禍以前から、思春期に入った(入る直前の)お子さんとどう接していいのか、戸惑っている方の声を、私の周囲ではかなり頻繁に耳にしていました。
成長過程での一過性の問題で済む場合がほとんどなのでしょうが、この時期の親子のコミュニケーションの齟齬が、運悪くお子さんの心に傷を残したり、親子関係を将来にわたって損ねたりすることも少なくない現実を垣間見てきました。
ムラのミライの子ども・子育て支援チームの講師たちは、国際協力の現場では最強のコミュニケーションツールとして知られるメタファシリテーション(R)手法を使って、日本国内で子育てに悩む親御さん向けに研修を開催し、2016年以降、子どもとのコミュニケーションでも大きな成果を挙げてきました。特に小学校低学年くらいまでのお子さんを持つ保護者を対象にしたものは、コロナ禍の間もいろいろな形を取って続けてきました。
しかし、思春期の子どもたちとのコミュニケーションを扱う講座は、2020年以来中断されてきました。そこには、オンラインだけでは微妙なニュアンスを伝えにくいとい事情があったためです。
しかしながら、一般のメタファシリテーション(R)講座(ステップ1〜3)や子ども・子育て支援者向けの講座の参加者などから、思春期の子どもとのコミュニケーションに特化した講座を開催してほしいとの要望が多く寄せられて来たことを受けて、対面での講座が可能になった今、思春期の子どもとのコミュニケーション講座(以下略、思春期講座)を再開することになりました。
2019年から2020年にかけての思春期講座でわかったこと
2019年から2020年にかけて、コースごとに回数などは違うものの、合計3コース、延べ20名(講座回数、受講人数要確認)の講座を実施したところ、少なめに見積もって半分以上の参加者が、3回目の講座までに、お子さんとの関係がはっきり変わり始め、回を重ねるうちには、不登校などいくつかの深刻なケースにおいても、顕著な進展が見られたとの報告を受けています。
この手法をお伝えすることで、よりよい親子関係を築くための一助になること、そして、それによってお子さんの心身の成長に少しでもお役に立てると、関係者一同、強く思うようになってきました。
新講座をお勧めしたい保護者の皆さん
新思春期講座は、10歳から20歳くらいまでのお子さんとのよりよいコミュニケーションを望む保護者の方にお勧めしたいと思っています。
お一人の参加も、パートナーとの参加もどちらでも歓迎いたします。
講座で扱う内容は、親子間の日常的・一般的なコミュニケーションで、コミュニケーションや関係作りが深刻な状況にある場合も想定しています。
但し、不登校、引きこもり、DV、知的障害、発達障害などがある場合は、既に専門の支援機関に相談し、何らかの対処を始めているケースに限ることにさせていただきます。
それがまだの場合、個別の対応が必要となり、大きな時間とエネルギーを割かざるを得ない可能性があります。
他の受講者の方とのバランスを考慮して、この講座へのご参加は残念ながら遠慮願うこともありますが、該当するかどうか明確でない場合は、まずはご相談ください。
学習支援など、思春期のお子さんたちの居場所に勤務されておられる方や、教育、福祉などの専門職の方も、ご自身で養育されている思春期のお子さんとのコミュニケーションに実践していただける場合に限って、ご参加いただけます。
新講座の3つの特徴
講義・練習・互いの実践内容の共有と検討を繰り返しながら、コミュニケーション技術を習得していきます。少人数(定員4人)で丁寧に進めていく予定です。
1) 自己肯定感を高める対話の仕方を学ぶ
「事実質問」を使って質問を組み立てることで、お子さんの自己肯定感を高め、信頼関係を築くことができます。それが、主体性を育むことにも繋がります。
講座では、まず「自己肯定感を下げるやりとり」と「自己肯定感を高めるやりとり」を識別できるようになり、次によりよいものに変換していくための考え方と対話術を習得します。
たとえば、「どうして〇〇しなかったの?」のような質問の形を取った押し付けや非難を止め、当人の気づきを促すことができるような質問に変えていくスキルと関わり方を学びます。これまで無自覚だった自らのコミュニケーションのクセに自覚的になることさえできれば、誰でも習得でき、実践できる技能で、構成されており、この部分が講座の中心になります。
2)コミュニケーションの場の作り方を学ぶ
思春期に入ると、親子のコミュニケーションの時間が少なくなるのは自然です。
それに従って親はせっかくの機会を、提案や助言、場合によっては、何かを問いただすために使いがちですが、前のめり過ぎると、両者の距離をかえって遠ざけることになります。
講座では、コミュニケーションの場を意識的かつ計画的に作り出し、活用する技術を学びます。
3)感情的になった場合の対処方法を学ぶ
メタファシリテーション(R)の基本的な姿勢は、感情的にならないで、自分のコミュニケーションのあり方を冷静に観ることにあります。
とはいうものの、よそ行きの顔をする必要がない家族を相手にすると、つい感情的になるのは自然なことです。
しかしいつもそうだと対話は深まりません。講座では、冷静にお子さんと向かい合うためのセルフモニタリングとセルフコントロールの方法を、メタファシリテーション(R)手法の原理に基づいてお伝えします。
以上の3つを数回の講座で、すべて詳しくやるには時間的に無理があるものの、参加者の皆さんの実際の状況などを材料に使わせていただきながら、最低限のことは、具体的かつ実践的にお伝えします。
講座の日程や参加費などはホームページをご覧ください。
思春期のお子さんを持つ保護者の皆さんのご参加をお待ちしています。
中田 豊一(ムラのミライ 代表理事)