新年明けましておめでとうございます。ムラのミライスタッフの山岡です。2022年は、メルマガやブログを読んで下さりありがとうございました。本年もムラのミライをどうぞよろしくお願いいたします。
2023年4月で、ムラのミライは設立30周年を迎えます。今年は、国際協力の分野に加え、新たに子ども支援や職場、医療・福祉分野での研修や報告会を企画しています。皆様とお目にかかれる機会が増えることを、今からとても楽しみにしています。
子ども支援者へのプログラムスタート
2022年10月から兵庫県の子ども支援者を対象として「子どもの話を聴く技術 体験プログラム」を実施しています。11月には、メタファシリテーション体験セミナー受講後の参加者の実践や疑問をヒアリングしました。今回は、フリーで子ども支援の活動に携わっているAさんの現場でのお話をご紹介します。
Aさんのお話を聞いたのは、一緒に体験プログラムを担当しているすずめさん(こどもサポートステーション・たねとしずく代表 大和陽子さんの呼び名※)で、私は記録を担当しました。Aさんとすずめさんのやりとりのなかで、特に印象に残っている2つのお話を皆さんにもご紹介したいと思います。
聞きたいことを脇に置いて、まず子どもの話を聴く
Aさん(子ども支援者):調味料づくりのワークショップに参加した小学生と作業しながら、この作業が生活とリンクしているのを知って欲しくて、相手の生活の事を意識して聞きました。
ずずめさん:どんなことを聞きましたか?
Aさん:「何か調味料を手作りしたことはある?」、「それは誰とつくったの?」という感じで聞きました。
すずめさん:その子は、醤油絞りをしたことがあったのですか?
Aさん:はい、フリースクールでやったことがあるそうで、すでにどんな作業があるか知っていました。
すずめさん:他には、どんな質問をしましたか?
Aさん:「家でも醤油絞りをしてみた?」とか。そうそう、私が聞きたかったこと(普段の暮ら)を聞く前に、以前だったら「どうでもいい」と思っていた話がたくさんできたんです!「今日は何を食べたの?」「ここには何に乗ってきたの?」「車には何人乗ってたの?」と事実で聞けたのです。
「私が聞きたいこと」をまず脇において、子どもの話をじっくり聞く時間が大切なんだなと感じました。
Aさんのお話を聞き、これまでもこうして子どもの話を丁寧に聞いてこられた経験があって、事実質問を知り細かく聞くことでより共通理解を深めることができたんだなと感じました。
Aさんに質問がないか聞いたところ、「空想の話は事実ではないから、どうやって話を聞けばいいんですか」と質問をして下さいました。
子どもの世界に入って話を聴くことが安心感に
Aさん:低学年で想像の世界が大きい子だと、空想の話ばかりしてきます。そういう子にはどう話を聞いたらいいでしょうか。
すずめさん:話を「なぁに?」と聞くことが子どもの安心感に繋がります。『Aさんだったら、空想の話を聞いてくれる』ということが安心感になる。子どもは発達段階に応じて現実の話をする日がくるし、相手が大人でも想像の話を聞く存在は必要だと思います。
事実質問を使えば、子どもにとっては答えやすく、会話の練習にもなります。支援者は、子どもから空想の答えが返ってきたら、それについていつ、どこ、誰とさらに聞き、キャッチボールを繰り返します。子どもの話したい世界に、大人が入っていく。いつ、誰と質問をすることはあくまで手段で、目的は子どもとの信頼関係をつくることです。
Aさん:それはよく分かります。いつ、どこで、とかそれだけに捕らわれると手法だけになってしまって、「寄り添う」とか、「子どもの世界に入って聞く」という姿勢を忘れてしまいそうになります。
すずめさん:メタファシリテーションの目的は、信頼関係を築いて行動変容に導くことなので、Aさんの気付きがとても嬉しいです。
Aさん:その言葉を一番聞きたかったです。手法に陥るのが不安でした。何が不安かは分からなかったけど、今の言葉を聞いて安心しました。子どもの世界に自分が入って、事実質問をしてみるというのが納得できました。
お二人のやりとりを聞いて、Aさんが率直に事実質問への不安を聞かせて下さり、その疑問が晴れたことがとても嬉しかったです。
また、すずめさんの「子どもの世界に入って聞く」という言葉が、「子どもの目線で」や「対等に」と言った言葉よりも、ずっと分かりやすい表現で、私自身の学びにもなりました。
「子どもの話を聴く技術体験プログラム」活動報告会を開催
個別フォローアップでは、Aさん以外の参加者からも「子どもの話を聞けた話」や、「現場での課題」について聞くことができました。2023年3月に「子どもの話を聴く技術体験プログラム」活動報告会をオンラインで開催しますので、子ども支援者の方の気づきを皆さんにも聞いていただければ嬉しいです。
2023年も、子ども支援現場での研修を通して、子どもの話をじっくり聴ける大人が増え、「子どもが安心して自分の意見を言える場所」を増やしていきたいと思っています。本年も皆様のご理解・ご協力をいただければ幸いです。
(ムラのミライ 事務局長代行 山岡美翔)
※西宮での子育て支援プロジェクトでご一緒した大和陽子さんが、2022年、こどもサポートステーション・たねとしずくを設立されました。大和さんには、本プログラムの企画・運営にご協力いただいています。