「ムラのミライの海外事業地へ行く和田さんに同行し、ファシリテーションスキルを見てみたい!」
ということを和田さんに伝えると、OKの返事をいただいたので和田さんと原さんの渡航に合わせてセネガル農村部で行っている持続可能な農業プロジェクト地を訪問させてもらいました。
セネガルの農村部では、近代農業の普及と人口増加が自然環境に負担をかけ、農業が続けられない状況が広がっています。若者たちは希望を求めて都市部に移り住み、農村は活力を失いつつあります。
そんな中で、ムラのミライは地域資源を活用し、雨水を効率的に土壌に浸透させる技術を導入することで、作物の生産性を向上させるプロジェクトを推進しています。
このプロジェクトが始まって3年、住民たちはその成果を実感し始めていました。
訪問の目的は、プロジェクトを遂行する中でどのようにメタファシリテーションを使っているのかを学ぶことでした。
実際に和田さんの質問を聞けたのは、村の関係者による会議に参加したときのことです。
プロジェクトが来年初めに終了するため、ため池を管理するための土壌保全委員会の結成について話し合っていました。
村人たちは新しい委員会を作るべきか、他に方法はないかと議論していましたが、和田さんはその間、ずっと耳を傾けているだけでした。
そのうちに、既存の村落自治委員会で管理はできないかという提案がありました。
和田さんはそこでもただ聞いていましたが、最後にこう質問しました。
「その定款を最後に読んだのは誰ですか?」
村人たちは「読んでない」「どこにある?」と話し始め、最終的には「次回のミーティングまでに定款を読んでおきます」という結論に。
和田さんは「ではそうしましょう。次回のミーティングはいつにしましょうか?」と確認して会議は終了しました。
「その定款を最後に読んだのは誰ですか?」と和田さんが聞いた時、ただ「事実を確認する質問」に見えますが、実は自分も知らないことを知りたいという姿勢がそこにあると思います。
この質問により、村人たちは「自分たちがやるべきこと」を自然に意識し始め、和田さんが答えを押し付けるのではなく、彼ら自身で気づきを得る場となりました。
会議後、和田さんにこの対話について聞いたところ「質問というのは、自分がわからないことを聞くことだ」とおっしゃっていました。
この言葉はシンプルですが非常に重要です。
メタファシリテーションでは、相手に気づきを与えることだけでなく、相手を知ろうとする姿勢が欠かせません。
事実に基づいた質問をすることで信頼関係が築かれ、対話は自然と深まり、相手との関係も強くなっていくのです。
もしあなたが誰かに自分のことを聞いてもらう場を想像してみてください。質問してくる相手が本当に自分のことを知ろうとしてくれる、その気持ちが伝わると嬉しいですよね!
相手を知ろうとする気持ちから生まれる質問は、決して上から目線ではなく、対等な対話の中で生まれるものなのです。
次回のブログでは、セネガルで学んだもう一つの重要なポイント、「要素を分解すること」について具体的な対話事例を用いてお話しします。
特に、相手の話を聞きながら、どのように重要なポイントを見極めて深掘りするか、そのプロセスについてご紹介します。
お楽しみに!
(松浦史典 ムラのミライ認定トレーナー)