2008年3月12日水曜日

水・森・土・人 よもやま通信 第5号「オラが指導員&初めての地図作り」

 

目次

1.  オラが指導員!~村人から村人への技術移転~
1-1 マーミディジョーラ村のオヤジたち ~カアチャンたちは不在でオッケー?~
1-2 ゴトゥッパリ村のオバチャンたち ~アタシたちも色んなこと知ってるんだから!~
1-3 がんばったポガダヴァリ村の指導員
2.  初めての地図づくり
2-1 オラたちが話し合いでみつけた村の課題
2-2 人が生きていくには何が必要なんだ?
3.  オラたちの村へいらっしゃ~い

 

1. オラが指導員!~村人から村人への技術移転~



マーミディジョーラ村とゴトゥッパリ村の人たちも、図鑑作りに興味があるから作り方の研修をしてくれ、と言われたのを機に、前号で、指導員となる研修を受けることになったポガダヴァリ村の6名。

「私たちが指導員なんて、一体どんなことを話せばいいの?」

「みなさんは、どうして植物図鑑を作り始めたのですか?なぜ作るのか、どのように使うのか、まずはそれを振り返ってみましょう。」

「そうか、そういうことを、マーミディジョーラ村の人たちやゴトゥッパリ村の人たちにも伝えたらいいんだね。」

「でも、解説したらダメですよ。みなさんが考えたようなことを、彼らにも考えてもらうんです。」

「どうやって~~~???」
もしかしたら、図鑑作りの指示を待っているだけかもしれない(!)二つの村の人たちが、自分たちで作ろうと思うようになるには、どんな問いかけをすればいいのか、どういう時間配分にすればいいのか、考えるポガダヴァリ村の指導員たち。研修後には、隣近所の人たちを相手に、何十回もシミュレーションをして、あぁでもないこうでもないとお互いに試行錯誤して、準備は万端!


1-1 マーミディジョーラ村のオヤジたち ~カアチャンたちは不在でオッケー?~

最初の2日間は、マーミディジョーラ村。

3名の指導員が、研修に必要な模造紙や筆記具、ホワイトボードなどを、ソムニード(現ムラのミライ)オフィスで自分たちで準備して、いざ出発。

マーミディジョーラ村は、ポンガル祭り(収穫祭)の休暇明けで、子どもを寄宿学校へ送り届けるために、オカアチャンたちは大忙しで、研修場所に集まっているのはオジサンばかり。


「あの~、女性の研修生はいないのですか?」と聞くポガダヴァリ村の指導員。

「あぁ、だって、カアチャンたちは皆、子どもを寄宿舎まで送っていくのに忙しいからね。今日はムリ。でも、オレたちだけで大丈夫だから。ハハハー。」

「そうそう、またいつか、カアチャンたちも来るだろうから、今回はまぁいいんじゃないの?」
指導員たちは、なんとなく納得できないものの、気を取り直して最初の質問。

「あなたちは、なぜ植物図鑑を作りたいのですか?」

目をまん丸にして、(なぜって言われても・・・)と考えるマーミディジョーラ村のオジサンたち。

「あなたたちは、図鑑を作った後に、どのように活用するつもりですか?」

「どうやってって・・・、どうしよう?」と、考えるオジサンたち。
指導員は、ただ単に「こうやりなさい、ああしなさい」と言うのではなく、村の人たちが「やっぱり作りたい、だって図鑑があれば、アレもできるし、コレにも使えるし・・・」と、思って初めて、図鑑作りの細かな過程に入っていける。
そのために、何度も、オジサンたちに分かったかどうか確かめて、研修をすすめる指導員たち。見過ごしてきた植物、ジイチャンから聞いてるけど今もあるかどうかわからない植物、製薬のために仲買人に買われていくけど、どうやって薬にするのか知らない植物、市場で売ったり食用にする植物、etc、etc。
思いつくだけ挙げた、マーミディジョーラ村の植物図鑑に記録したい植物は110種類。まずは、その内20種類ほどを、マーミディジョーラ村用にさらに改良した図鑑の様式を使って、記録し始めることに。


1-2 ゴトゥッパリ村のオバチャンたち ~アタシたちも色んなこと知ってるんだから!~

所変わって、ゴトゥッパリ村。この村は山の裾野から頂上まで、20以上の集落が集まって構成されていて、今日の会場はその内の一つ、裾野から少し入ったところにあるプッラグダ集落。
右手と右足を同時に出しそうなほど緊張して、別の指導員3名がやって来た。そして、マーミディジョーラ村からも1人が参加することに。図らずしも、これが、3つの村(ポガダヴァリ村、マーミディジョーラ村、ゴトゥッパリ村)の人たちの、初顔合わせ!
女性と男性がほぼ半々に集まった外会場でも、やっぱり「なぜ作りたいのか」、「どうやって活用していくのか」という質問から始まる。


最初の自己紹介の時、自分の名前でさえもモゴモゴと呟いていた女性たちだが、ポガダヴァリ村の女性指導員の迫力に押されて、少しずつ喋り出す。
そして、どういう図鑑の様式にするか、何の植物を記録していくか、という議題に移ると、オバチャンたちのおしゃべりは止まらない。

「うちの子が熱出したらね、煎じて飲ませる植物があるのよ」

「あぁ、知ってるわ。○○っていう植物の葉っぱも、熱さましにいいのよ。」

「◆◆の実って、食後に食べさせると身体にいいって」
薬草に限らず、特に子どもの栄養になる植物について、名前に限らずその作り方なども話していく彼女たちを、感心して見つめるマーミディジョーラ村から参加したオジサン。

「オバチャンたちも、植物のことよく知ってるねー?」と水を向けると、

「そうですね、キョーコさん。カアチャンたちも、男性たちに負けず劣らず、色んなことを知っていて、そして話しますね。やっぱり、ボク達の村でも、カアチャンたちが参加したほうが良いですね。」と、マジメに答えるマーミディジョーラ村のオジサン。

ゴトゥッパリ村では、125種類のリストが挙がるが、隅っこでずっと、眠っているかのように研修を聞いていたご老人が、この時は堰が切れたように喋り出し、そして、ポガダヴァリ村でもマーミディジョーラ村でもわからなかった山岳少数民族の言葉、サワラ語での植物名を、次々と記憶の底から引っ張り出してくれた。


1-3 がんばったポガダヴァリ村の指導員

二つの村で、研修のファシリテーターを見事に務めたポガダヴァリ村の6名は、「キンチョーしたけど、とっても嬉しかった」と口々に言い、「今まで、他のNGOのミーティングとかだと、自分の名前を言うのすらオッカナビックリって感じだけど、この2日間は、自分が今まで習ったことを、他の人たちと共有することができて、ほんと楽しかったわ。」「でももっと、指導員として腕を磨いていかないと!」と満足気。

村から村への技術移転の第一弾が終わり、プロマネに研修の様子をラマラジュと報告すると、プロマネから一言(が、一言でなくなり・・・・・)。

「マーミディジョーラ村では、全くオバチャンたちの参加がなかったけど、ゴトゥッパリ村で、元気のいいオバチャンたちを見て、マーミディジョーラ村から来たオジサンが、自分で『オラの村でもゴトゥッパリ村のように、カアチャンたちも植物図鑑作りに参加してもらわんと』と言ったのは良かったね。
キョーコやラマラジュが、『女性の参加が必要だ』と100回言っても意味無いからねぇ。オジサンが、自分で気づくというのがいいよね。そんな風に水を向けたキョーコとラマラジュのファシリテーションがよかったねぇ。
それから、研修の日時や場所を、村の人たちが決めるのは最もだけど、今度からは、学校行事関係も確認しながら、オバチャンたちも参加できるように、日時を設定する、ということを忘れないようにしないとね。」
確かに、男性ばかりの参加者のマーミディジョーラ村から、ゴトゥッパリ村での研修に参加した村人が、自ずから「カアチャンたちも、研修に参加しないと」と気づいてもらったのは、大きな収穫だった。
また、とにかく「自分たちで決めさせる」ことばかりに気をとられていて、ミーティングの日が女性が参加できないような行事と重なることには気づかなかった筆者とラマラジュ。


2. 初めての地図づくり

そして、この植物図鑑について、3ヶ村合同ミーティングをしようではないか、という話が村から出て、調整に調整を重ねて、ついに開催。

2月末、だんだん気温が上がってきているのを感じながら、ミーティングも熱くなるか、と期待しながら、久しぶりに黄門様の登場です。
ミーティング場所となった建物「チャイタニヤ・バワン」の研修室の中は、黄門様用のひな壇と、それに向かい合って配列されたイスがズラーッと並んでいる。
とりあえず、ひな壇を撤収し、円を描く様に配置しなおしたイスに全員が座って、黄門様の一言。


「コレは、お前さんたちのミーティングじゃ。自分たちが、話しやすいように座れ。イスがいいか?ゴザの上がいいか?円になって話すか?」

「いや~、いつもゴザの上に胡坐をかいているから、その方が気楽に話せていいですよ。」
ウン、ウンとうなずきながら、全員でイスを撤収し、ゴザを敷き、胡坐をかいて、ほどよく緊張の解けた顔の参加者たち。


2-1 オラたちが話し合いでみつけた村の課題

「それじゃぁ、ゴトゥッパリ村の連中はまだ来ていないけど、マーミディジョーラ村とポガダヴァリ村の人たちで始めるとするかのう。では、誰でもいいから、今までに何をしてきたのか、ちょいと話してみてくれんかの?」
ドキドキしながら顔を見合わせる一同。ゴソゴソと模造紙を広げ始めたポガダヴァリ村から参加したオバチャン、パドマが「では、私が」、と話し始める。
7月のチャタジーさんの来訪から始まり、ソムニードスタッフから「植物のことを教えてほしい」と言ってきたこと、それから植物図鑑作りを始めて、指導員として研修にも行ったことなど、細かく模造紙に書いてきていた。

発表後、自然と拍手が沸き起こる。
ソムニードスタッフたちは、事前にプレゼン資料を用意しておくように彼女たちに言ったのかどうか、コソコソと確認しあうが、もちろんそんなことは無く、改めて、彼女を始めポガダヴァリ村の人たちの自発性と、プレゼン内容の凄さに脱帽する。

「ようわかった。では、今日は何についてこの場で話し合いたいのか、グループに分かれて、その議題を考えてみてくれるかの」

「(えっ、オラたちが、何を話し合うか決めるの?黄門様じゃなくて???)」
ドギマギしながら、ポガダヴァリで1グループとし、マーミディジョーラ村を二つに分けて、それぞれで、何について話し合おうかなぁ、と考える。



出てきた議題。

・ 植物図鑑の更なる改良について。

・ 土について。

・ 水について。

・ 森について。

・ 村の発展について。

「植物図鑑の更なる改良とは、どういうことじゃ?今までどのように使ってきておるのじゃ?」

「データを取り始めたのですが、村の色んな人たちにインタビューしている間、収入向上にどのように結びつくのか、とか、仲買人が製薬材料として買っていく植物の使い方が分かるようになるのか、とか、そういうことを聞かれて、どうすればいいのかわからないんです。」

「ふ~ん。なるほど。では、村の発展って、何じゃ?」

「えっと、村が発展することです。って、え~っと、その、あの、えっと何だっけ・・・・・」

「よし、では、今日は10時から3時までが良い、とお前さんたちは言っていたし、もう時間も過ぎていっているから、この短い時間に、今日の内に話し合いたいことは何か、今度は全員で決めなさい。だけど、今日話し合えない議題も、これから先、いつでもまた話し合えるんだから、心配しなくてもいいぞ。そうそう、まずは議長が必要だな?」

「議長って?」

「話し合いをする時に、誰も蚊帳の外になっていないかどうか目配りをするのが議長で、みんなは発言をしたいときには、議長に許可を求めるのじゃ。一度に何人もの人が話すと、何がなんだかわからなくなるじゃろう?」

「たしかに。じゃぁ、議長は・・・・・パドマさん、ぜひあなたがしてください」

「そうそう、今までやってきた事についても、さっきはすごく堂々と発表していたし。あなたが良いですよ。」
男性しか参加していないマーミディジョーラ村の参加者たちから推薦されて、うれしハズカシそうに真ん中に座るパドマ。

書記も決まり、早速話し合いが進む。議長のパドマも、彼女をぐるりと囲んで座る参加者たちも、議長だ書記だ、という役割が割り振られてのミーティングは初めてで、ぎこちなく手を挙げてみては「やっぱ、後にする」と手を降ろす人も。
だんだんと話が熱くなってきて、あっちからもこっちからも意見を言い合い、ギャーギャーと騒がしくなっては、「はっ、そうだ。手を挙げて、議長に許可をもらわないと!」と気付くのだけど、再び、あっちでこっちで話し込む。

NGOのおエライさんがいても、ひな壇は無しで、おエライさんの話を聞くのではなく、自分たちの話しやすい場を自分たちで設定して、話し合う中身も自分たちで決める、というミーティングの場を体験している村の人たち。
そして、議長によって話し合いを進めるというミーティングの形式を初めてまかされたのだから、いきなり全員が「ハイ!議長、意見がアリマス!」なんて挙手をしながら話し合えるハズがない。
今日のところは、「議長って何だ?」という体験ができたので良し。


2-2 人が生きていくには何が必要なんだ?

そして決まった今日の議題。

(1)植物図鑑の詳細について

(2)村の発展について

(3)土について
さっきは答えられなかった「村の発展とはなんぞや?」と言う問いに、今度は「植物図鑑から、収入向上とか耕作の改良とかできたら、みんなの暮らしも良くなるし、村がもっと良くなるかなって思います。」と答える。
それを補足するように「そのために図鑑に必要な項目が、もしかしてあるのかもしれないし、今度は土について考えようかと思って・・・」と別の人が続けた。

「人が生きていくには何が必要かの?」と、問いかける黄門様。「(いったい何の話!?)」と、ビックリのオジサンたちとオバチャンたち。

「食べ物、水、服・・・」

「家も!」

「そうじゃな、家もあった方がいいな。で、人間が飲む以外にも、食べ物を作るのにも水が要るな。土もいる。服を作る材料にも、家を作るのにも水や土はいるな。」

「(ウン、ウンとうなずく参加者たち)」

「植物も同じじゃよ。食べ物、水、服、家、そういうのは育つのに必要じゃな。植物の服って何じゃ?家って何じゃ?」

「(お互いを見渡し、首をかしげる参加者たち)」

「服っていうのは、葉っぱや花や実に当たらんかの?家っていうのは、その植物が育つのに適した場所じゃないかの?」

「そうですね~」と声を揃える参加者たち。

「で、人間がよく働くためには、食べ物と言っても栄養のあるものを食べんといかんじゃろう?だけど、食べ過ぎても、糖尿病や高血圧なんかの病気になってしまう。植物も一緒じゃ。栄養のある食べ物を、必要なときに必要な量をとらねばならん。では、植物の栄養ってどこから採る?」

「土です。」「太陽の光も。」

「そうじゃな。実がたくさんなって高く売れて収入が増えて・・・と植物の育て方を考えたいなら、植物そのものがどうやって育つか、というのを見なくては何も始まらん。そして、どうやって育つか、というのはお前さんたちが作っている植物図鑑から分かるじゃろう」

「でも、山の下の方では、上から流れ落ちて来る雨水が溜まるから良いけど、斜面とかだと、水と土が一緒に流れていって、育つにも育たないですよ」

「そうそう、オラのところでもそう!」

「だから、灌漑設備も作りたいんです。ため池とか、土砂が流れるのを防ぐものとか」

「ええかの、土壌が流れるのを止めるやり方は、何通りもある。潅木を斜面の上側に育てて自然の柵を作るやり方、植物の周りに半月状の堤をつくってせき止めるやり方、他にも場所によって状況によって違う、というのは分かるかの?水を溜めるのもそうじゃよ。何通りもやり方はある。」

「分かってます・・・」

「じゃぁ、どこの場所にどのやり方をすればいいのか、わかるかの?」

「分かりません・・・」

「そこでじゃ、お前さんたちの村の中のどこにどういう植物が生えているのか、一目で分かる地図を作ってみてはどうだろうかの?」

「地図!?」

「そうじゃ。山の上から裾野まで、どこにその植物があって、そして水はどこからどのように流れていっているのか、そういうのが分かる地図があると、お前さんたちが言う灌漑施設やら土壌の流出を防ぐやり方やらも、見えてくるんじゃないかの?」

「おぉ、なるほど。いいですね~」

「作りましょう!で、どうやって作るんですか?」

「いきなり全部の植物について地図に書くのは大変じゃから、まずは植物図鑑にも書いている用途の中で、どの植物について地図を作るかの?」

「では、薬になる植物について!!で、どうやって作るんですか?」

「そうじゃの、では、薬になる植物について、水の流れや土の様子もわかる地図を描くために、どういう作業が必要か、考えてみてくれるか?」

「は?????」

「お前さんたちは、真っ白な模造紙を目の前にして、すぐに地図が描けるのか?」

「(首を横に振る参加者たち)」

「じゃぁ、どういうことをすれば、あるいは用意すれば、地図が描けるかの?」
再びパドマを議長にして、頭を抱え、挙手して発言することも忘れて、話し合う参加者たち。

「村でまずみんなと共有して、薬の植物をリストアップして、地図を描くための作業に誰がするのか役割分担を決めて、フツーの紙より丈夫な分厚い紙を用意して・・・・・」

「ちょっとええかの。そういうことも、必要じゃ。だけど、例えば、郡の地図に小学校の位置を書く時、小学校の近くにバス停はあるのかとか、目印にどんな建物があるのかとか、そういうのがあると便利じゃの?薬になる植物の地図も、その植物の周りがどうなっているか、そういうことも描いておくといいんじゃないか?」

「(そういうもんか・・・)」

「ところで、チャタジーさんを覚えておるか?チャタジーさんは、いわば植物のお医者さんじゃ。お前さんたちが知りたがっている、どうやって植物を上手に育てるか、植物に必要な栄養をどうやって与えるか、ということを教えてくれる。だけど、お前さんたちは、自分の身体のどこがどう調子が悪いのか良いのか、分からないままに医者に行って、『薬をくれ』、と言うか?」

「言わないね~」

「これも同じじゃ。植物がどういう状態でどこに生えているのか知らないままに、チャタジーさんに何か頼めるかの?」

「(首を振る参加者たち)」

「この地図は、お前さんたちの村の中で、植物やその周りがどういう状態なのかを知るためのものじゃの。」
そして、黄門様から、各植物ごとに状態を知るための調査項目の提案があった。

「へ~、なるほど。これを調べれば確かに、地図が描けそうな気がする!」
と、意気込む参加者たち。

「この作業をしていると、地図に載せるべき必要な情報は何か、見えてくるかもしれんの。ホホ。だけど、ワシが出した項目が、必要ないと思ったり、他に必要なものが出てきたら、またそれはお前さんたちで変えてくれ。」
20日間あれば、すでに植物図鑑にリストアップした薬に使う植物30~40種類について、黄門様が提案した項目を調べられると豪語する参加者たち。
途中でソムニードのアドバイスや手助けが必要になったら、いつでも呼んでくれというメッセージを伝え、会場を後にする黄門様とスタッフ。

植物図鑑作りを通して、自分たちの植物資源を一つひとつ、改めて見つめなおした村の人たちだが、今度は少し視野を広げて、その植物資源のまわりを見ることになる。
今までは、座って一部を見ていたような感じだが、今度は鳥の目で全体を見て、灌漑施設や土壌の改善などの必要性を村の人たちで探り、そこから再び、一つひとつ、自分たちの村の、森や土や水をどうやって使って、創って、守っていくのかを、考えていくのだ。

「オラたちがやった」と言い切る植物図鑑。

お米の収穫作業も一段落し、農作業も特に忙しくないこの時期は、夏の始まりをジワジワと感じ始める時期でもある。気温の上昇と共に、村の人たちのやる気もグングン上がりつつあるが、はてさて20日後、どのような地図作りの材料が集まるか!?


3. オラたちの村へいらっしゃ~い

2月のとある涼しい日。ポガダヴァリ村へ、日本から若者たちが10名近くやって来た。名古屋NGOセンターが主催する研修の一環だが、「あなたの村のことを教えてください!」と鼻息荒く村人たちの前に座るNGOスタッフを目指す彼らに、村が今までどのように変わってきたか、話していた。

老若男女、何人かが若者たちの質問に答え、植物図鑑についても、「ボクたちが作ったんです!」と、どうして図鑑を作り始めたのか、中には何を記録しているのか、これからどうやって使っていくのかを、自信満々に伝えるポガダヴァリ村の人たち。

「アタシん家、寄って行きなさい~」

「コレ、食べてごらんよ」と、村の中をあっちこっち見せてもらいながら、「この村の人たちは、ナゼこんなにハッキリと自信有り気に話ができるんだろう?」と考え続けた若者たち。
もう、当たり前のように、誰にでも植物図鑑を紹介できる村の人たちですが、誰でもオラたちの村へおいで、と腕を広げて待ってます。


4. 注意書き

キョーコさん=前川香子。新しい枕で寝たら、顔をダニに噛まれた、この便りの筆者。今までどんなに古臭いマットや枕で寝ようともなんともなかったのに、インド生活初のダニ体験。

プロまね=原康子。筆者からインド映画DVDを押し付けられても、見る暇も無い忙しい日々。アイスだチョコだインドのお菓子だと食べ続け、とうとうインドのお菓子で甘さ控えめと感じるようになった、驚異の舌の持ち主。

ラマラジュ=家を引っ越したばかりで、上を下への大騒ぎな家の中。しかし、仕事関係のものは真っ先にきちんとスペースを確保して、インド映画をネットでダウンロードしては、筆者に情報提供をしてくれるいい人。

黄門様=和田信明。泣く子も黙る巧みな会話術が、ソムニードのフィールド事務所の番犬バンティ(生後約10ヶ月)には、まだ通じないことが判明。ソムニードの共同代表。

チャイタニヤ・バワン=チャイタニヤ・バヴァン。「プロジェクトの道のりPCUR-LINK便り(インド)」に登場するSHG(女性自助グループ)の連合体VVKと村の人たちで名付けた、農村部に建てられた生産・物流センター。センター内の一室を、様々な研修に使用している。

チャタジーさん=本通信の第1号から登場する、歩く百科事典のような、水・森・土に関する専門家。インド国内の言葉の多くを操り、日本語も堪能で、デスクトップ並みに重いノートブック・パソコンを軽々と肩に担ぐスゴイ人。