2014年1月21日火曜日

最後の一言は相手に言わせるべし①


対話型ファシリテーションとは、思い込み質問を避けて簡単な事実質問で組み立て、最後の一言は相手に言わせるべしと繰り返し教えてきたものの、後輩たちを前に頼まれもしない提案、つまり説教を垂れたり、家族に対してあいまいな質問をしてひんしゅくを買うこともないわけではありませんから。

はいえ、こういうことを他人様に教えている手前、ここが勝負時だと意識した際には、できる限り忠実に手法を駆使してやるように心がけています。

 ファシリテーションは基本的に外部者、利害関係の小さい第三者のための技能ですので、身近な人間に対するほど使うのは難しくなる傾向があります。その意味では一番難しいのは家族に対した時です。正直、妻とは未だに空中戦を戦うことが多く、夫婦とは所詮そんなものと半分開き直っています。

 ただし、子どもたちには、そうは行きません。私には、大学三年生の娘と、高校三年生の息子がいます。彼らの人生の大事な場面で、相談を持ちかけられることがたまにはあり、その際には、できるだけファシリテーターモードで対するよう努めています。

 息子は、中学高校とずっとサッカー部に所属していて、夏前に引退するまで、毎日遅くまで練習していましたが、お世辞にもうまいとは言えず、レギュラーにはほど遠いようでした。
 加えて、家で勉強している姿を見ることはめったになく、成績も普通の県立高校で真ん中より下でした。大学に行くつもりなんだろうか、それとも他の道を考えているのだろうかといよいよ気になり始めたこの3月頃のことです。

練習から帰った息子と雑談していたら、ふと次のようなことを言いだしました。

「今日は、S君と途中までいっしょに帰って来たんや。S君は、サッカーもうまいし、勉強もとてもよくできるんで、聞いてみたんや。『こんなに練習が厳しくて僕なんか毎日へとへとで勉強する気にもなれへんのに、どうやって勉強してるん?』って。そしたら、『1日2時間、必ず勉強すると決めて、実行してるんや。転がって単語帳見るんでもいいし、何でもいいけど、とにかく2時間は勉強する。でもそれ以上はやらないと決めて実行してるんや』って教えてくれたんや。えらいよな」

 もしあなたが私の立場にいたら、次はどんな言葉を息子にかけるでしょうか。

 実を言えば私も、「せっかくS君がわざわざ教えてくれたんやから、お前も同じようにやったらどうや」とか、「人のことに感心するばかりで、なんで自分でもやろうと思わんのや(…関西弁ですみません)」などいう「提案型の説教」が喉まで出かかったのですが、ここは踏ん張り時と思い直して、事実質問に徹することにしました。とすると私の次の質問は、何だったと思いますか。

続きは次週。

(ムラのミライ共同代表 中田 豊一)