2019年4月9日火曜日

1杯の紅茶から見えるネパール ースタディツアー参加レポート

 2019年2月に参加した「ネパール・スタディツアー」の様子の一部をお伝えしたいと思います。氷点下10度の北海道札幌市から、夏のような日差しが照りつけるネパールの首都カトマンズまで移動すること約20時間。トリブバン国際空港に到着した時の高ぶる気持ちは、今でも鮮明に覚えています。

 現地で、私が設定した調査テーマは「ネパールの人々の職業や業種」です。今回はツアー後半に訪れたデシェ村の食料品雑貨店でのインタビューのひとコマをご紹介します。

 ムラへ行く前には、いろんな質問の準備をしました。実際にどのような風景・場面でのインタビューになるのか、事前にはわかりませんので、30個ほどの質問を考えました。例えば、農作業場であれば、「今は何の作物を栽培しているのですか。」「この道具は何に使うのですか。」、家の中であれば、「今、一緒に住んでいる家族は何名いますか。」「今日の午前中は何をしていましたか。」といったような具合です。もちろんお店の場合の質問も考えていました。移動の車中では、期待と不安が入り混じりながら、過ごしていました。移動中に見えるムラの風景や、人々の様子も貴重なヒントになります。

 ムラに到着し、「今日はここでお話を聞きますよ。」と言われた場所は、なんと商店でした!まずは、販売商品の種類と店頭在庫の数量をざっと確認。

まずは店舗の様子を見学。質問のきっかけが見つかる場合も
 そして案内された場所は店舗裏の小部屋でした。
「おっ、ここは何のスペースなんだろう。ぜひ、質問してみよう。壁に掛かっている紙袋には何が入ってるのかな、気になるなぁ。」といろんな想像が脳内を駆け巡ります。そしてインタビューへ。
 最初は「今日、私たちが訪問するまでに何名のお客さんが来ましたか。」と質問しました。その後は「来店したお客さんは何を買いましたか。」「皆さん現金払いでしたか。」と話を続けたことで、少しずつ商売の全体像が明らかになりました。そこで、いよいよ小部屋について聞いてみることに!

私「このスペースは何の場所ですか。」
店主「ここは休憩場や作業場として使っています。でも、昔はここで喫茶店をやっていたんだ。」
私「そうなんですか(おっ、新たな情報だ。喫茶店についても、聞いてみるぞ!)。」
店主「そうそう。でもね5年前にやめたんだ。紅茶や砂糖の値段がどんどん上がって儲からなくなったんだ。20年前に2ルピーだった紅茶(1杯)の値段も、今や20ルピーになってしまった。」

 その後もやり取りは続きました。物価上昇の話に始まり、当時から現在に至るまでのムラの様子の変化等、いろいろな話が次々に出てくるではありませんか。特に後半は、私から質問する機会が減ったように覚えています。気が付くと1時間半が経過していました。

インタビューが始まると、あとは流れに身を任せます
 一番大事なことは、綿密な準備をしつつも、会話の流れに身を任せて、臨機応変な対応をすることです。デシェ村でのやり取りのように、ひとつの質問が触媒となり、突如として化学反応を起こすこともあるのです。

 帰国後は、ネパールの紅茶価格の変動について調べています。紅茶はネパールを代表する消費財のひとつです。紅茶価格の動向は、ネパールの歴史の縮図であり、経済・社会の変遷を捉えていくうえで、ひとつの補助線になるのではないかと考えています。この考えのきっかけとなったのは、現地でのひとつの事実質問です。シンプルな対話を積み重ねるメタファシリテーション。その奥深さを日増しに感じるようになっています。

(伊藤 慎時 北海道大学公共政策大学院)


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