2022年6月8日水曜日

「片づけして」では、子どもに伝わらない?

みなさん、こんにちは。
1月に講師をした「子どもの話を聴く技術」体験セミナーで、参加者の方から「片づけをさせたいけれど、全然できるようにならなくて。」という質問をいただきました。
メタファシリテーションはあくまで「自発的な行動を促す」技術ですから、「何かを無理にやらせる」という技術ではありません。
特に「片づけ」は、大人はやらせたいけれど、子どもにとってはやる意味が分からない行動です。子どもの発達に合わせて分かる言葉で「子どもが何をすることか」について共通理解を積んでいくことが、行動を促す第一歩です。



では、子どもが分かる言葉にするためには、何をすればいいでしょうか。
まずは、その子どもが片づけができたときの様子を観察してみて、その行動を細かく書き出してみることをおすすめします。例えば、セミナーでは「はさみの片づけ」を細分化して紹介しました。

行動の細分化:子ども園でのはさみの片づけ

お道具箱をロッカーから取り出し机に置く
→はさみをお道具箱から出す
→折り紙を切る
→はさみを机に置く
→折り紙でウサギを折る
→ウサギを先生や友達に見せる
→「お片付けの時間です」と言った先生の声が聞こえる
→はさみをお道具箱に入れる
→ウサギで遊ぶ
→片づけを始める友達の姿を見る
→お道具箱があった場所を思い出す
→ロッカーまで行く
→お道具箱をロッカーに入れる

 

私たち自身が、これだけの行動が「片づけをする」ということだと理解して初めて、子どもに分かる言葉で「片づけとは何をすることか」を伝えることができます。
子どもの「片づけ」を促したいときには、まずは上記の行動で今できていた部分(例えば「ウサギさん完成したね。はさみはお道具箱にしまえたね。」)を言葉にします。そして、まだウサギで遊ぶようであれば、「お道具箱はどこから取ってきたか覚えているかな」と一緒に教室を見渡しながら、次の行動(友達の姿を見る→お道具箱があった場所を思い出す)を一緒に確認します。


家庭の場合だと、片づけの場所は棚でも机の中でも、危険がなければ良いわけですから、「はさみを置く場所」を一緒に決めることから始めると、はさみを戻す場所を思い出しやすくなります。さらに未就学児の場合、一人でやるより、誰かをお手本にしながら一緒にやることで、一つ一つの行動を自分で思い出しつつ、片づけを進めていくことができます。
日によっては大人と一緒に、できそうな時には一人で、できた時にはできた行動を言葉にして伝える、これだけで子どもにとって「片づけ」のハードルは低くなるはずです。

体験セミナー参加者からは、「片づけして、は具体的な指示だと思っていた」という声が多く聞かれました。
忙しい時には、つい、まるっとした言葉で「片づけして」ということがよくあります。毎回でなくて構いませんので、自分にも子どもにも時間がたっぷりあるときを見つけて、試しにやってみていただければ嬉しいです。
支援現場やご家庭で実践されてみたエピソードがありましたら、メールにてお便りをいただけましたら幸いです。


次回の「子どもの話を聴く技術」体験セミナーは6月26日です。今回は「子ども支援者」を対象に開催しますので、子どもの居場所支援、学校や地域で子どもと接する機会がある方、これから子ども支援に携わってみたい方はぜひご参加ください。

山岡美翔 ムラのミライ理事/事務局長代行)