こんにちは、ムラのミライの前川香子です。
8月23日(土)にセネガル事業報告会をオンラインで開催しました。その一部を、3回に分けてお伝えしたいと思います。
私の報告会の当日の担当は、司会進行でした。
スピーカーは2人のセネガル事業担当者。
1人は、和田信明さん(ムラのミライ シニアコンサルタント)、そしてもう1人は、菊地綾乃さん(元セネガル駐在員、ムラのミライ認定メタファシリテーション®トレーナー)でした。菊地さんは、ムラのミライ入職前にJICAの海外協力隊としてベナンでの活動経験がありました。(なので、菊地さんは駐在前からフランス語が堪能で、駐在中に現地語のウォロフ語も話せるようになりました)
では、報告会レポート前編です。
そもそも、なぜセネガルに??
「なんでムラのミライがセネガルで事業をするの?」
セネガル事業をするにあたって現地調査を始めた2012年、私は海外事業チーフとして主にインドやネパールの事業担当だったのですが、あちらこちらで聞かれました。
報告会でも、この部分に触れています。
菊地:ムラのミライって、セネガル事業の前まで20年近く、インドやネパールといった南アジアが活動拠点でしたよね?私もムラのミライ=南アジア、というイメージでした。「セネガルで」というのは、誰が最初に言い出したのですか?
和田:僕と中田(前代表の中田豊一)の2人です。2人とも時期は違うのですが、フランスに留学経験があって、西アフリカならフランス語が使えるかなと思ったのです。そこは、一種のノスタルジーですね。
あと、僕と中田で開発した方法論(メタファシリテーション®)が、南アジア以外でも、汎用性を持つのか、というのも試してみたかったんです。インドでは、水資源を管理できる範囲で(1つの村)、水と土と森を村人が管理できるようにしていこうという事業をやっていました。村人はいわゆる家族で農業を営む小規模農家(以下、小農)の人たちです。この小農って、全世界の農家人口の85%を占めているんです。アフリカは全人口の51%が農民で、その大多数が小農。だから彼らが水や森を管理できないとなると、地球環境的にも大変なことになります。もうあちこちで猛スピードで大洪水や干ばつで大変なことになっていますよね。だからこそ、小農の彼らが使える資源を適切に活用して、水や土を再生していくよう方法論を確立したいという思いで、セネガルでの事業をスタートしたんですよ。
菊地:そうだったのですね。
和田:西アフリカといっても広いからね。最初からセネガルだった訳ではなく、ブルキナファソやマリも検討しました。でも、治安上の問題や、何よりこの方法論を理解してくれるセネガルの現地NGOに出会えたことで、最終的にセネガルとなったのです。
カウンターパート団体との共通認識のつくり方
和田さんから、セネガル現地NGOの話が出ましたが、それが、セネガル現地NGOアンテルモンドの代表ママドゥさんです。
和田さんや中田さんがママドゥさんに出会ってすぐに、セネガルでの事業がスタートしたわけではありません。まずは2014年、2015年とアンテルモンドのママドゥさんとメラニーさん、それと中田さん、和田さんの4人でセネガルの5州を巡り、ローカルNGOや農民の話を聞き、現地の様子を見ました。2016年には、ママドゥさんとメラニーさんにインドの事業地に来てもらい、村人による小規模流域管理事業を見てもらうことになりました。
ママドゥさんたちはいくつかの村を訪れ、「流域管理委員会」のメンバーである村人たちから、ため池や土壌流出防止のための石垣や植林地について、そして今後の計画についての説明を受けました。(ムラのミライのスタッフは、村では事業の説明をせず、ママドゥさんたちの通訳をしたり、村人の説明に少し補足説明をしたりするくらいです。)
『村にある知識やノウハウと、土壌・水保全の科学的な知識を結び付ける』そして『外から来たNGOが一方的に押し付けるのではなく、農民自身が考えて決める(自己決定)』というムラのミライのアプローチに、ママドゥさんたちは、大変驚きました。
そうして、「同じように土や水の問題を抱えるセネガルで、ムラのミライとぜひ一緒に事業がしたい!」とセネガルでの活動が始まりました。
セネガル事業開始エピソード続き、報告会では、「セネガルでムラのミライは何をしたの、何をしなかったの?」という話に続きます。続きは後編で。
村人による小規模流域管理事業(インド)とは
2007年から2015年まで、2つのフェーズ(プロジェクト)に分けて取り組んだ事業。
2010年代半ばのインドの平均降水量は1165ミリ。場所は、高温多湿の熱帯モンスーン気候の南インドの山岳地域でした。6月から8月と10月から11月の2回の雨季に集中的に降るため、それ以降の月日は乾燥した気候にはなるものの、日本に比べても圧倒的に降水量が少ないわけではありません。しかしながら、山岳地帯の村に暮らす農民たちは、「水がない、水がないから農業ができない」と2007年の事業当初から言っていました。つまり、水の管理ができていない状況でした。
そこで、単にため池や井戸を掘ったりするのではなく、「流域管理」という概念と必用な技術をもって、村の人たちと事業を進めました。(詳細は、プロジェクト紹介HPをご覧ください)