2018年12月26日水曜日

「自分の意図どおりに通訳してくれない」そんな時には

2016年の冬のある日のネパール。
この時期、エコレンジャー養成研修を修了した地域住民が、近隣の村でゴミ減量をテーマにした研修を実施し、それをムラのミライ/ソムニード・ネパールがサポートしていました。 そんな、エコレンジャーたちによる研修で起こった出来事です。

研修のようす

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エコレンジャーに研修には、研修のモニタリングや、必要な文房具の貸し出しのためにムラのミライとソムニード・ネパールのスタッフが同席させてもらっていました。
事前に「11時に研修開始だからね」と言われていたので、私はソムニード・ネパールのスタッフKさんと一緒に、11時に間に合うように研修場所へ行きました。

ですが、研修開始時間の11時になっても人が来ません。
本日の研修講師のエコレンジャーAさんが、事前にやり取りをしていた村の人に話を聞きに行って戻ってきました。

Aさん:参加者たち、もうすぐ来るって言っているから、もう少しだけ待ってもらえますか?
(※補足:研修開始予定時刻から15分が過ぎると、研修はキャンセルにしようというルールを事前に決めていました)

私:村の人たちには何時にここへ来てねって言ったの?
Aさん:10時半
私:10時半?えー、私は11時って聞いたはずだったけど。では、遅れたのは私たちでしたか・・・ごめんなさい。
Bさん:いやいや、研修の開始時間は11時なんですよ。だから大丈夫。(※補足:Bさんはもう一人の研修講師)
私:え??
Bさん:11時開始って言ったら、開始時間には来ないでしょう?だから村の人たちには10時半って言っておいたのよ。そうしたらボチボチ集まってきて、11時にいい具合に開始できるかな…と。
私:で、10時半には研修実施メンバーの誰かがここに来てたんですか?
Bさん:いや・・・私たちも11時に間に合うように来たから・・・

そんなやりとりをしている間に、参加者が集まってきたので、研修を開始してもらいました。

Bさんが言っていることはとてもよくわかるんです。
日本じゃ子どものころから5分前行動を叩き込まれるけれど、ビスターレの国ネパールでは15分や20分くらい遅れるのは日常茶飯事。
でも、村の人を自分に置き換えたらどうでしょうか?
10時半と聞かされていて、時間通りに行って、誰もいなかったら?
「今日は研修がキャンセルになったのかな?」と家に帰るに違いありません。主な参加者は家事や子育てを担う女性たち。時間があるなら、家でやりたいことはたくさんあるでしょう。 私なら帰ります。
それはエコレンジャーのオバチャン達も同じはずだし、何より約束した時間に来るっていうことは、研修に参加する人たちへの最低限の礼儀じゃないかと思ったのです。

私:まー、エコレンジャーのオバチャン達の言うこともわかるけど、やっぱり10時半って言ったらその時間に誰かはスタンバイしてないといけないよねぇ。時間通りに行って、誰もいなかったら、自分だったら帰っちゃうよね。

と後ろでこっそりKさんにこぼしつつ、研修の様子を見ていました。

さて、研修終了後。Kさんを連れ出して、後片付けがあらかた終わったエコレンジャーたちのところへ行きました。彼女たちはある程度、私の話す英語(+つたないネパール語)もわかるのですが、念のためにKさんに通訳をお願いしました。 

後片付け。※写真は別の日に別のエコレンジャーたちを撮影したものです。

私:みなさん、今日もおつかれさまでした!今日は、研修のここが面白かったですね!導入のやり方を前回と変えましたか? 
(その後、研修の中身に関するやり取りが少し続く)
私:ところで・・・今日は村の人たちには10時半って伝えていたそうですね。
うーん、気持ちはとてもよくわかる。10時半って言っても始まるのは11時・・・ってあるあるですよね。でもどうでしょう?もし、みなさんが村の人たちだとして、聞いていた時間に行っても誰も待っていなかったら・・・どうでしょうかね?

すると、Kさんが先ほどの私の言ったことは訳さず、「10時半って言ったんだったら、その時間に来なきゃだめじゃないか」と言い出したのです。
(※補足:ネパール語は流暢に話せなくても、ある程度聞き取ることはできる筆者)

エコレンジャーのオバチャン達に、ムラのミライやソムニード・ネパールのスタッフが言うからではなく、自分に置き換えてみて「そりゃそうだよなぁ」と思ってほしくて質問をしたのですが、どうも、Kさんは私が回りくどく言っていると思ったらしいのです。 (さっき「時間どおりに来なきゃねぇ」と話していたからでもあります。)

結局、オバチャン達は少ししゅんとした様子で「村の人と決めた時間には行かなきゃね。次はそうします」と言ってはくれました。
(その時の気まずさは察していただければ・・・)

私は何と続けていいか迷って、とりあえず「時間のことは、そうですね。次はそんな感じでよろしくお願いします。研修はどんどん面白くなっていっているので、また次も楽しみにしてますよ!」と言って別れました。 
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いろいろ「質問がまずいんじゃない?」「そこでそんなこと言う?」などツッコミどころはありましょうが、通訳をしてくれる人が、(おそらくは)良かれと思って、いろいろ自分なりの解釈をつけて話してしまう…という出来事でした。

そうしてしまったのは、私がこの時、シンプルな質問にできていなかったからなんですよね。
例えば、和田さんがどこかの村にいって、通訳を挟んで村の人たちにインタビューをしているとき。とってもテンポよく会話が進んでいきますし、通訳の人が自分の解釈を入れる余地がないんですよね。

和田さんと村人との会話については、過去にこんな記事を投稿しました。
ネパールの村で見た、和田さんの神業ファシリテーション

質問のシンプルさの違いが一目瞭然ですね。。。
そういうところでも事実質問の腕が試されているんだなということを痛感した出来事でした。

ここまでの失敗談はないかもしれませんが、通訳を挟むと、うまいこと事実質問でのやりとりができないんだよなぁ、と私と同じようなことをお悩みの方。
もっともっと、自分が思うよりシンプルに質問してみることを試してみられるとスムーズにやり取りができるかも!?

(田中十紀恵 ムラのミライ事務局長)

→ネパールでゴミ問題に取り組む人たちに会いに行く、フィールドツアー
 ネパールツアー情報
→まずは知りたいという方へ:2時間で知るメタファシリテーション1,000円セミナー
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→本気でメタファシリテーションの実践スキルを身につけたい方へ:ステップバイステップ・丸1日の本格講座
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