2019年9月20日金曜日

モノを入り口に、相手を知る

ある日の研修会場。
参加者同士で自己紹介も済ませ、最初の1時間半ほどが終わり、休憩時間となりました。
トイレに行って、席に戻ってきて、ちょっと手持無沙汰です。
隣の席のAさんに何か話しかけようかな・・・と、ふと見ると、Aさんの座っている机の上には、研修資料の他に、ペンケースと眼鏡ケースが出してあります。素材は異なりますが、どちらも色は赤だと気づきました。

私        ペンケースもメガネケースも赤なんですね。赤が好きなんですか?
Aさん    うーん、特に赤が好きということはないですね・・・
私        ・・・あ、そうなんですね・・・
(沈黙)

「二つも赤いグッズを持っているから、赤が好きなのに違いない」「持ち物を選ぶ時に、好みを優先して選ぶに違いない」という、私の思い込みが反映された質問です。結果、それらの思い込みは当たっておらず、どうも話は弾まずに終わってしまいました。

では、事実質問を使って「経緯を時系列でさかのぼる」ことをしてみましょう。

私        ペンケースもメガネケースも赤なんですね。このペンケースは、ご自身で買われたんですか?
Aさん    いえ、これは2年ほど前にプレゼントでもらったんです。
私        そうですか。

まずペンケースに対象を絞って、そのペンケースがAさんの元にやってきた経緯を聞きました。
そうすると、プレゼントでもらったという事実が出てきました。
いつ誰にプレゼントされたのかを聞いて行ってもいいですが、ここではまず、「Aさんのペンケースの歴史」の方を聞いてみることにします。

私        そうですか。その前は、別のペンケースをお使いでしたか?
Aさん    はい、十年以上、黒の革のペンケースを・・・結構良いやつです。それは今も自宅にあります。
(あ、という表情になって)そうそう、黒の方はとても気に入ってるんですけど、これ(赤いペンケース)をもらった時「せっかく頂いたんだし・・・」と思って、外出する時に一度使ってみたんです。
そしたら、カバンから取り出すとき、赤が目立って取り出しやすいなってことに気づいて・・・それ以来、意識して赤い小物をいくつか買いました。
このメガネケースもそうなんですよ・・・

「取り出しやすい色か~なるほどね!」と、自分も使えそうな知恵を手に入れることができました。

モノを入り口にして事実質問をする時、何度も買い替えてきた可能性がありそうなモノの場合は、この事例のように「今のコレ、の前に使っていたモノ」についても聞いてみます。
眼鏡、名刺入れ、ランニングシューズ、パソコンなど・・・替えることを検討し始めた時、決断した時、購入した(もらった/支給された)時、使い始めた時・・・それぞれ、いつ、誰と(どこで)、何を検討材料としたのか、あるいは替えることを余儀なくされたのか・・・使うモノを替えた時に、相手がどんな物事に影響されて、何を考えて替えたのか。
相手自身も忘れていたような、その人なりの工夫や発見を思い出すことにつながると楽しいですね。

宮下和佳 ムラのミライ専務理事)


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