2019年12月4日水曜日

自分の畑を知ること

こんにちは。セネガル駐在員の菊地綾乃です。

日本では本格的な冬が始まる12月、セネガルでは短い雨季が終わり、また長い乾季が始まっています。
セネガルの9ヶ月ほど続く乾季には、雨がほとんど降りません。ですので、雨季の雨がとてもとても貴重です。

雨季には人々が広い農地で、雨水で育つ穀物を中心とした栽培を行います。ヒエ、モロコシ、落花生、豆、とうもろこしなどの畑が大地いっぱいに広がります。
一方で乾季には雨がないので、作物を育てるには水やりをしなくてはいけません。ただ、この水やりが農民にとっては悩みの種です。


過去二年間のセネガルの降水量はそれ以前に比べて少なく、雨季の栽培だけでなく、乾季の水源確保にも影響を与えました。というのも、セネガルの村の農業は井戸を主な水源としています。この井戸にどれだけ水が溜まるかというのが、農業を成功させるカギとなるのです。

さて、この「水」ですが、いったいどこから来るのでしょうか?

セネガルの信仰深い人であれば「神からの恵み」と言うかもしれません。たしかに、セネガル人の前でそれは否めません。ただ、シンプルに理科の知識で考えると、水は循環していると言えます。そして、地表を潤す水は、空から雨として降ってくるのです。

単純には、この水をどれだけ地中に蓄えられるかがポイントになります。なぜなら、地表に降ってきた水はその後、川に合流して海に流れていくか、蒸発または蒸散によって空気中に放出されるか、地中に浸み込んで地下水となるかのいずれかですので、地中に浸み込む量が多くなれば良いのですね。

ムラのミライのセネガル研修では、そういった水の動きや土の役割を説明しながら、村の現状を村人とともに歩いてたしかめていきました。そうすると、雨水の多くが地中に浸み込まないで流れ、あるいは蒸発してしまっている状況が見えてきました。これは地表に草木がなく大地が剥き出しになっていたり、土が長い間かけて劣化したりした結果だということを説明しながら、研修生の村人と気づきを共有していきます。

ここで気づいたこと、理解したことを研修生たちが自分たちの畑で実践していました。

それまでは刈っていた雑草を刈らずに土の保水性を上げようとした人、小さな土手を作って流水を食い止めようとした人、そして、水やりの水が蒸発しにくいように藁で地表を覆いながら栽培をしている人。少しずつですが、新しいことに挑戦したり、栽培の方法を少しずつかえたりして、研修で理解したことを自分のものにしようとする研修生たちの姿がありました。


私たちはその他にも、研修生がしている栽培状況を把握するための収支計算や、収支計算に必要な畑の測量、病気や不作を防ぐため植物の科の知識、土の栄養素の知識について、研修生たちがしてきたことを振り返りながら確認しました。

このようなこと総合的に考えることができれば、自分の畑の状況を把握することができる。把握ができれば、どれだけの収穫量を得るためにどれだけの投資をすべきか、計画することができる。計画ができれば、自分たちの生活を回していくための見通しができる。見通しができればたくさんの選択肢が生まれる・・・

自分の現状に気づくことが、自分たちの生活ひいては子供たちの生活、そして「村の未来」を作っていく大きな可能性を持っています。

研修を受けたある村人が言いました。
「いままでは市場の価格に左右されて栽培する作物を決めていました。でも研修を受けてからは、自分の畑でよく育つものを考えて計画をした作物を栽培しています」

自分の畑を知ることは、主体性を生み出す。

ムラのミライはこうした主体性を引き出すことを、小さな気づきをもたらすところから始めます。
いつかこの気づきが、時代を先見する大きな動きになっていくことを信じて。

今後も日本のみなさんとセネガルでの体験を分かち合いながら、双方向の気づきが生まれることを願っています。


(セネガル事務所 菊地綾乃)


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