2015年6月9日火曜日

事実質問失敗アルアル

2015425日に引き続き、512日にもマグニチュード7レベルの巨大地震がネパールを襲いました。多くの犠牲者と建物の倒壊など物理的・精神的に大打撃を受けましたが、いち早く届けてくださった皆様からの支援金で、雨季に備えた住宅の復興作業が始まっています。

震災の9日前。
対話型ファシリテーションの第一人者・和田によるスタッフ研修に参加していた私と同僚のウジャール君。「事実を問う質問か、そうでないか」という最初の一歩を理解した私たちではあるのですが、その次のステップである「事実を問う質問のみで途切れることなく構成された会話」への発展ができず足踏みをしている状態の二人です。「これは何ですか?」というお決まりのフレーズから出発する会話練習をしてみました。ウジャール君が、私に質問をするという設定で進めてみましたが、会話が盛り上がりません。何がいけなかったのでしょうか。

ウジャール「これは何と呼びますか?」(1)
私「わかんない。でも、私はブランケットって呼んでるけど」
ウジャール「いつ買ったの?」(2)
私「2012年か2013年」
ウジャール「どこで買ったの?」(3)
私「ファブ・インディア」
ウジャール「インドで買ったの?」
私「違う。カトマンズ市内。ファブ・インディアっていうブランド名のお店で買った。」
ウジャール「いくらで買ったの?」
私「あまり覚えてないけど、多分3,000ルピーとか4,000ルピーとか。高かったよ。他の2枚のドレスと一緒に買ったの」
ウジャール「他の2枚のドレスにはいくら使ったの?」
私「結構高かった。覚えてない。」
ウジャール「お店にはどうやって行ったの?」
私「タクシーで行った。」
ウジャール「タクシーにはいくら使ったの?」
私「多分500ルピーいくかいかないか」
ウジャール「それ、片道?」
私「そう。片道。」
ウジャール「買い物にはどれくらいの時間かかったの?」
私「うーん、多分2時間程度?」
ウジャール「何の目的でそのブランケットを購入したの?」
私「え。寒かったから。」
ウジャール「いつの季節に買ったの?」
私「ん~、多分秋か冬?」
ウジャール「どうやって家に帰ってきたの?」
私「タクシー」
ウジャール「帰ったのは夕方ですか?」
私「覚えてない」
ウジャール「誰かと一緒に買い物に行ったんですか?」
私「ひとりで行った。」
(そろそろ飽きてきた私)
「まぁ、これくらいにしときましょうか。おしまい」

ウジャール君の全ての質問に対して答えを返す私。聞かれたことにシンプルに答えながら、一体この会話はどこにつながるのだろう・・・何が聞きたいのだろう・・・という疑問を私に抱かせたまま、そのまま私に強制終了させられた会話でした。

彼の質問は、私の意見や感情を問うものではなく、事実に基づいた相手(私)に思い出させる質問であることは間違いありません。事実質問です。しかし、全ての質問に流れがなく、ブツ切れた質問。聞いている方も、聞かれている方もおもしろくなくて当然ですし、この会話からは何もみえてきません。

それではどうすればいいのでしょうか。
例えば最初に、(1)特定のモノの名前(2)購入時期(3)購入した場所の3つのトピックについて聞いています。(1)から(2)へ行くまでの間、そして(2)から(3)へいくまでの間、より細かい質問をしていくことは可能です。(1)でモノの名前を聞いた後、「ブランケット」という答えが返ってきました。次に、「ブランケットの購入時期」を聞くのではなく、例えば、このブランケットを使う前に、他のブランケットを使っていたのかどうか、あるいは初めて使ったブランケットであったのかどうかを問うてみるのです。それから、(3)場所の質問に行く前に、2012年か2013年という答えに対して、買った季節がいつであったかという問いをここでしてみて、相手に思い出してもらうというのも有効な質問です。次の事実質問を作る鍵は、その直前の事実質問の答えの中にあるということです。つまり、新しい質問トピックは考えるまでもなく、インタビュー相手の答えの中に秘められています。

プロのサッカー選手を志す子供達は、たった一回のシュートを試合で決めるために、毎日毎日練習を重ねます。それと同じで、事実質問のみで構成された意味ある会話を紡ぐには、日々の練習(空振り)こそがものをいうのです。
日々の練習の大切さ(フリー素材より)