2016年4月19日火曜日

すっぽりとハマったMの罠

ネパールからナマステ!
地震、燃料不足の影響でスタート遅れに遅れたうえに、豪雨の影響で建設地を変えざるを得ないというトラブルにも見舞われつつ、現在絶賛建設中のDEWATS(分散型排水処理施設)。
詳しくはこちら(プロジェクト通信)

そんな建設と同時並行で進めているのが、DEWATSを設置する、バスネット村の地図作成と世帯調査です。村人たち自身に村のことを知ってもらうために、村の8人のオバチャンたちに協力してもらって作業を進めています。

そんなオバチャンたちとの作業を任されることになった私。(実際にはソムニード・ネパールのスタッフが通訳兼見守り役でいつも同行してくれていますが)
完成品のイメージはこちらから提供しつつも、実際の作業の進め方や細かいルールづくりはオバチャンたちにやってもらうように、和田さんのアドバイスをもらいながら、ミーティングの進め方のカンペを作ったり、想定問答集を作ったりして、オバチャンたちとのミーティングに臨んでいました。
へっぽこながらもなんとかオバチャンたちとのミーティングを進めていたそんなある日の出来事です。

さて、この世帯調査のキモは、DEWATSを利用する村人の人数をヌケ・モレ・重複なく正確に把握すること。そのためには、オバチャンたち自身が作成した地図をもとに、一軒一軒の家を調査に回り、家族構成を本人に聞くことが重要だと考え、調査フォームには「本人サイン欄」を作成していました。
オバチャンたちに、調査のときには、その家に住む人に家族構成を確認し、その家の人から確認のためのサインをもらうことを念押しするべく、こんな質問を投げかけました。

私「ねぇねぇ、確認ために家を訪問したら、誰もいなかった。どうする?サインもらえないけど、他人が勝手にサインしてもいい?」
村のオバチャンたちだって、他人に勝手にサインされちゃうのは気持ちが悪いんじゃないかと思い、きっと「それはアカンやろ~」という答えが出てくるであろうと、それ以上の問答は準備していませんでした。
ところが。

オバチャン「えー、家族構成をよく知っている家なら、自分(調査員)がサインしてもいいんとちゃう?」
予想外の答えで、頭が真っ白になり、うまい切り返しが思い浮かびません。
どう切り返そう?としどろもどろになりつつも、話を先に進めなければと、あまり意味のない質問を出す私。

そんな私のようすを見て、ほかのオバチャンたちが「あー、(筆者は)他人がサインをすることを良しと思ってないんだな」と察したのでしょう。
「ちゃんと一軒一軒回って、本人に確認してもらって、サインするで!」と言わせてしまいました。
その言葉を聞いた瞬間に「あーあ、やってしもた…」と思いましたが、まさにMの罠。
オバチャンたちは私の顔色を見て、それが「私の望まないことである」と察してしまったのですから。

ちなみに、このやりとりを通訳してくれていたソムニード・ネパールの同僚は、途端にしどろもどろになった私には気づいたようでしたが、なぜそうなったのかには気づいていないようす。(原因がわかっていれば、あれこれとネパール語でフォローに回るので。)
きっと、オバチャンたちと一緒で「何でアカンの?」と思っていたのでしょう。

さて、そんな敗北感いっぱいのミーティングのあと、和田さんに
「もし、和田さんだったらどう切り返しますか?」と聞いてみたところ、
「まだまだオバチャン度が足りなかったんだねー」と笑いつつ、答えてくれたのは
・「ふーん、じゃあそうすれば?」と突き放す
・「勝手に他人にサインして、借金背負わされたらどうなんだ?」と返す
などなど…「オバチャンたちを突き放す」という回答。
一番思いもつかなかった、私にとってはまだまだ怖くて切り出せない奥の手です。

和田さんのように、オバチャンたちを突き放すのはすぐにマネできないかもしれませんが、次にやるときには、ここぞというところで頭が真っ白にならないよう、「ここがポイント!」というところでは、最もあり得なさそうなやりとりのパターンも想定して臨む。それでも、頭が真っ白になる場面に出くわしたら、無理して先に話を進めずに、話の立て直しに注力しようと思いました。(もちろん、頭が真っ白なんてことは表情に出さないようにしながら)
その積み重ねで、頭の引き出しからいろんなやりとりのパターンが引き出せるようになれれば、ちょっとは成長したかな?と思える日が来るかもしれません。

田中十紀恵 ムラのミライ 海外事業・研修事業コーディネーター/ネパール事務所)


バスネット村のオバチャン達と付き合い始めた頃のエピソードは下記リンクのプロジェクト通信でもお読み頂けます
http://muranomirai.org/dekoboko-22