2016年4月5日火曜日

植林するのは、山の斜面?それとも平地?

2009年から毎年年に2回、実施している「コミュニティ・ファシリテーター研修」(2015年度は3回実施!)、これまでに延べ50人の方が、南インドの農村で、あるいはスラムで、事実質問の実践に挑戦してこられました。

同じ村に行っても、各人の関心事から掘り下げる(掘り下げたい)トピックは、農業からプロジェクトのこと、教育からゴミのことなど様々。今日は、そんな研修中での事実質問や観察についてのエピソードを、いくつかご紹介します。

◆トンボから池の整備年数を当てる!
ある年に、驚異的な動体視力をお持ちで、しかも学生時代はトンボを研究していた、というNGO職員の方が参加されました。

この方の「この池はいつ作ったのですか?」という質問に、「3年前かな」と答える村のおっちゃん。

それを聞いて「やっぱり」とつぶやく。
何が「やっぱり?」と疑問に思ったところ、「先ほどここを飛んでいたトンボは、比較的新しい水を好む種類で、池ができてから3年くらいまでの処に生息するのです」とのこと。

そして、「今さっきのトンボの羽は、こういう色と模様でしたよね?」と聞かれ、村のオッチャンオバチャンたちも、びっくり仰天。
「あんた、ピュッと飛んだトンボの羽が見えるんかい?」

観察と質問を組み合わせて物事の事実をつかみ取るフィールドワークで、究極的な観察眼を見せてくれました。

◆下痢ってナニ?
村での病気について興味のあった参加者は「最近、下痢になった人はいますか?」とある村で聞きました。
「いや、無いかな」という答え。

「最後に、村で下痢になった人を知っていますか?それはいつですか?」と質問を変えたところ、「10年ほど前に、子どもや年寄りが下痢になって、病院に駆け込んだことがあったかな」と、記憶をたどる村の人たち。

食べ物やら水の状況などを聞いて、とりあえず「この村では10年前から下痢の人はいなさそうだ」という結論を出されました。

ところが、山のふもとを歩いてみれば、「青空トイレ」の跡がそこかしこに。
そして、そこに落ちているものはまさしく「下痢」やそれに近いものばかり(尾籠な話でごめんなさい!)。

村の人たちにとっては、そういうお腹の調子が「普通」なので「下痢」とは認識していなかった、のです。質問だけに頼ってては不十分、という経験でした。


◆Simple Fact Questionの逆攻め
とある村での植林について話が及んだとき、ある参加者が「植林するときに、まず最初にすることは何ですか?」と聞きました。
すると、村の兄ちゃんは「あなたは山の斜面にしたいのか?それとも平地か?」と逆に質問してきました。

「え~っと、山の斜面かな」という参加者の答えに対して、「そこは小川とか水に近いところか?それとも全く水のないところか?」と更に質問。
「え~っと、水のないところ」
「岩だらけか?それとも土はあるのか?」
「ちょっとあるかな」
「じゃぁ、植える種類としては『釈迦頭(カスタード・アップルとも言う)』やカシューナッツの樹がいいかもな」と、まずは植える樹の『選定』をし、それから「カシューナッツの場合、苗木だとまずは30センチ四方の穴を掘り・・」と植林方法について、説明をしてくれたのでした。

投げかけた質問自体があやふやなものだったということもありますが、そこを村の兄ちゃんが上手く突いて「Simple Fact Question」を畳みかけてきたわけです。
また、彼らの逆質問から、この村での植林地のタイプや彼らの樹の選定方法などが垣間見える、という刺激的なシーンでもありました。

最近発行された、中田豊一著『対話型ファシリテーションの手ほどき』にも登場する、南インドの村の人たち。村の成り立ちから、最近の結婚式事情まで、いろんなことを話してくれます。
ただし、それは聞き方次第!

前川香子 ムラのミライ 事務局次長/海外事業チーフ)