前回の”「自分のことは自分でやる」子になる対話って? 前編”の続きです!
まだ読まれていない方はぜひ前回の記事を読んでからお読みください!
■メタの部分:「ワタシ」を見るワタシ■
「どうしたら次回から(将来から)息子が○○する(しない)ようになるか、そのために今なにを伝えればよいか」を考えていない「ワタシ」、という点に自分で気づくことができるかどうか、ココが「メタ」の部分です。
人(相手)に行動変化を促す投げかけをする前に、まず自分で自分の行動(言動)を認識する、これが出来て初めて相手への投げかけが出来るようになります。
原はこれまで「支援しない技術」というタイトルで何度か講演をしてきましたが、その際には「インドのおばちゃんたちを支援しようとするワタシは一体、ナニサマなのか?」を自分で自分に問いかけた、という話をします。
「今」起こっていることを分析し「それ以外の何か」を相手に提案する際、「それ以外の何か」が果たして「’今’起こっていることに勝る価値があるのか?」
そうした自分への問いかけなしに、相手への働きかけるということは、「ワタシは持っている(知っている)、アナタは持っていない(知らない)、だから与える(教える)」になりがちです。
私は常々、将来息子には掃除・洗濯・炊事などの毎日の家事が大事なことで、顔を洗ったり、歯を磨いたりするのと同じくらい「当たり前のこと」としてできる大人になってほしいと思っていますが、最初のやりとりには、これを実現するための投げかけは一切ありませんでした。
ワタシが優先したのは「ワタシの都合」です。
さて、このくらいで分析はやめておきます。
中田さんならこのわずかな会話からも、私の10倍くらいの分析をしてくれそうですが、そこまでは私には出来ません。
「よくまあこんなつまらない日常会話をグダグダと分析するもんだ」と思われる方もおられるでしょうが、この「分析」ができないと、息子に「手がベタベタになったら洗う」という行動変化を促すような投げかけはできないのです。
しかし、これを1時間かけて分析しても、1日後に分析をしても、その場(この場合は朝ご飯後テーブルと椅子の回りがベタベタしていることに気づいた時)で息子への的確な投げかけはできません。
難しいのは、ベタベタの手、机、テーブル、息子を目の前にして、一気に(数秒で)上記の分析をし、その場で的確な投げかけをしていかねばならない、ということです。
以前、このブログで出ていたかと思いますが、「分析」というのは、ギリシア語の「分解する」という語源を持っています。分解(分析)を瞬時に行い、相手が「決める」ように投げかけてゆくのが、メタファシリテーションの事実質問です。
さて分析の次は、冒頭のやりとり以外の「ワタシ」の投げかけをシュミレーションしてみましょう。
〜朝食後、息子の椅子の縁や机の周りがベタベタなことに気づくワタシ〜
ワタシ「自分の周りの椅子とか机と触ってごらん」
ボク「あれ〜ベタベタしてる〜」
ワタシ「まず、何をする?」
ボク「手、洗ってくるわ。」
ワタシ「それがいいね。」
手洗い後、おもちゃで遊び出す息子。
ワタシ「手はきれいになったね、じゃあ椅子や机は?」
ボク「まだベタベタしてる。お母さんが代わりに拭いておいて。」
ワタシ「”お腹が空いたから、お母さんが代わりにご飯食べておいて”と言う?拭いてあげてもいいけど、昼ご飯も代わりに食べてあげるね。」
ボク「じゃあ自分で拭く」
ワタシ「布巾、上手に絞ったね。自分でベタベタにしたところを、自分できれいにして、偉かったね。」
ボク「次も自分で拭くよ」
上の例は正解ではありませんので、「こんなシュミレーションもあるよ〜」という方は是非、教えてください。次の朝食後に実践してみます!
「冒頭のやりとりとの違いは何だったか?」皆さんはもうお気づきですね。
そうです、「ワタシ」は机も椅子も拭いてません!
上のシュミレーションで、「ワタシ」がやったことは次のことです。
・ベタベタしていることをまず観察。
・息子に自分で机や椅子を触らせてその状態に気づかせる。
・「まず何をするか?」を息子に決めさせる。
・「手を洗う」という息子の決断を肯定する。
・机や椅子の状態をもう一度、息子に確認させる。
・例え話「お腹が空いたら代わりにお母さんが食べる」を使う。
・「拭く」という行為を観察し、息子が一人でできたことをまず誉める。(例:布巾を上手に絞った)
・「自分で拭いた」という行為を誉める。
最後に「次も自分で拭こうね」とは言ってはいけません。
息が言うのを待つ。たとえ息子が「次も自分で拭くよ」と言わなくても、次回、同じことが起こった時に、違うやりとりを考え、「自分のことは自分でやる」を当たり前にしてゆくまで、繰り返し投げかけを続けなければなりません。
一度の事実質問や一度の働きかけで大きく変わることは滅多にありません。
しかし「毎日の家事はとても大事で当たり前のこととして出来る大人になってほしい」と願い続ける「ワタシ」がいれば、息子が「自分で動く」ように働きかけてゆくことは可能です。
ここでブレてはいけないのは、息子でなく、ワタシなのです。
メタファシリテーションで問われているのは
「事実質問をつなげ、相手に気づかせ、相手の行動変化を起こしてゆく」技術だけではなく、「それを相手に投げかけるワタシはどうしたいのか?」を対人支援や子育ての一瞬、一瞬の場で自分に問いかけ、相手に投げかける、という技術が含まれています。
いつも脱力の文章を書いている私にしては、精一杯、理屈っぽいことを書いた今回のお話。
慣れない文章を書いて、疲れてしまったので、この辺でやめておきます。次回はいつも通り、肩の力を抜いた話をお伝えしますので、お楽しみに~
(原康子 ムラのミライ認定メタファシリテーション講師)
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このブログ記事の筆者=原康子も各地で講師として登場します!