2016年9月13日火曜日

「自分のことは自分でやる」子になる対話って? 前編

こんにちは、メタファシリテーション基礎講座で、講師をしている原康子です。
この夏、4年暮らしたネパールから引越し、16年ぶりに日本で暮らし始めたばかり。
見た目は日本人ですし、日本語もできるので、わかりにくいのですが、中身は現在日本事情をなかなかキャッチアップできておらず、外国から日本にやってきたばかりでオロオロする方々の気持ちに近いと思います。
 
しばらくは京都を拠点にして、西へ東へ、南へ北へと、国内外のメタファシリテーション講座で皆さまにお目にかかる機会も増えそうで、今から楽しみにしております。
 

さて今日は「ムラのミライ認定メタファシリテーション講師」という私の肩書の「認定」部分を削除されそうな、メタファシリテーションを使ってない日常をまずご紹介します。

 
ある夏休みの朝食後、食器を片付けていると、息子(8歳)が座っていたテーブルと椅子の周りがベタベタしていることに気づいた私。

ワタシ(原)「なんで(なぜ)アンタが座っていた周りだけこんなにベタベタしてるの?」
ボク(息子)「だって、さっき食べたグレープフレーツで、手がベタベタになっちゃったんだ。
お母さん、なんでもっと食べやすく切ってくれなかったの?
それにボク、椅子は触ってないから、なんでベタベタか知らないよ」
ワタシ「もおお〜、食べたらすぐ手、洗わないとダメでしょう!ベタベタした手でなんにも触らないで!」と言ってテーブルと椅子を拭いた私。

あまりご紹介したくない朝の一コマです。
「WHY(なぜ)を使わない対話術」と、講座で皆さんに伝えておきながら、しっかり「WHY(なぜ)」から始める息子との会話。
 
このブログの記事が原因で
「’認定”が取り消されたどうしよう~」
と、おっかなびっくり書いております。
 
それはさておき、ここで、メタファシリテーション基礎講座や入門講座を受けた皆さんにエクササイズを2つ。

1:上の会話を分析してみてください。
2:1の分析をベースにして、メタファシリテーション・スイッチ(そんなスイッチがあれば、ですが)を入れて、ボク(息子)が「次回からベタベタの手でテーブルや椅子を触らなくなるような」投げかけをシュミレーションしてみてください。

「忙しい朝に、息子とのやりとりでメタファシリテーションなんて使っていられないよ」
というのも本音ですが、普段から気を付けているといないとでは大違いなのです。

まずは、この会話を分析してみましょう
「こんなつまらない会話を分析してど〜すんの?」と思われる人も多いでしょう。
しかしこの世の中、本当に「つまらない」ことは実はヒジョーにわずかです。
一見「つまらない」日常の中に、様々な課題の解決策は隠れていますので、「こんなつまらない」という”思い込み”は、要注意です。

さて、私と息子のやりとりを、以下の3つに分けて分析してみましょう。最初は「対話」、次は「行動」、最後にメタファシリテーションの「メタな部分」についてです。



■  対話について ■

ワタシ「なんでアンタが座っていた周りだけこんなにベタベタしてるの?」
最初から「なぜ」を使っているワタシ(原)。
これ以外にもまだまだあります。
・    (靴下が片方だけ洗濯機の底からみつかって)「なんで(なぜ)靴下、片方しかないの?」
・    (道で転んだ息子に)「なんで(なぜ)よく下をみて歩かないの?」
毎日の生活で「なぜ」の使用を禁止してみると、意外にしんどいのは、皆さんはもうご経験すみでしょう。
 
お約束通り、「なぜ」の後には「だって」が続きます。
息子「だって、さっき食べたグレープフレーツで、手がベタベタになっちゃったんだ。
お母さん、なんでもっと食べやすく切ってくれなかったの?
それにボク、椅子は触ってないから、なんでベタベタか知らないよ」
 
「だって」の後に続くのは、「言い訳」。ボクは悪くない、悪いのは「グレープフルーツ」か「お母さん」というのがボクの言い分です。
「なぜ?」→「言い訳」→「悪いのは自分以外」と続きます。
 
そのうえ、もし「ワタシ」が「なんでワタシが悪いの?」と続ければ、延々と言い争いは続きます。
「もおお〜、食べたらすぐ手、洗わないとダメでしょう。
ベタベタした手でなんにも触らないで!」と息子にしてほしいことを、ワタシが言ってしまっていますね。
 
If I hear it, I will forget it. (人に言われたことは忘れる)の典型パターンです。
息子は、ベタベタの手であちこち無意識に触っているわけで、別にそれが問題(悪い)とは全く思っていません。
「食べたら手をすぐ洗う、ベタベタの手で何も触るな」と母親から言われだけでは、なかなか息子は「ベタベタの手でものを触ってなぜいけないのか?」が理解できないでしょう。
自ら「これはやめないと、変えないといけない」と気づいていないことで、息子の行動変化を望むのは難しいことです。
 
せいぜい「母親がガミガミうるさいから、手を洗っておくか」という程度は思うかもしれませんが、自発的に続けられません。
 
しかし、母親の投げ方次第では、息子の行動変化は可能です。
それは、母親による「なぜ(なんで)で始まる」以外の投げかけに大きな鍵がありますが、まずは母親自身も「なぜ(なんで)以外の投げかけがある」という事実を知らなければ始まりません。
 
幸い、このブログの読者の皆さんは講座に出られた方が多いので、具体的に「どのように投げかけたらよいか」はともかく、「なぜ(なんで)以外の投げかけがある」ということはご理解いただいていると思います。
 
さあ「対話の分析」の次に、「行動の分析」ですが、皆さん、どのように分析されましたか?



■  行動について ■

ワタシ「もう〜、食べたらすぐ手を洗ってよ。ベタベタした手でなんにも触らないで!」
と言って、テーブルと椅子を拭いた私。
 
これでわかるように、ベタベタになったところを拭いたのは母親です。
息子は、ベタベタの手でどこを触ろうと特に困ることはなく、母親だけが困っています。
息子もそのうちテーブルや椅子がベタベタで困ることがでてくるかもしれませんが、困る前に母親が拭いてくれているのですから、当面「困る」ことはなさそうです。
 
この「ワタシ」の行動から、彼女がここで「大事にしていること」は何だったと思いますか?
 
それは「息子に注意すること」と「テーブルをさっさと拭いてベタベタをなくしてしまうこと」です。

「どうしたら次からベタベタの手で息子があちこち触らなくなるか?」
「どうしたらベタベタの手を自分から洗いに行くようになるか?」
「どうしたらベタベタの場所を自分で拭くようになるか?」などは、「ワタシ」は考えていません。



原康子 ムラのミライ認定メタファシリテーション講師)


気になる”メタファシリテーションの「メタな部分」”については
次週の”「自分のことは自分でやる」子になる対話って?後編”でお届けいたします!
お楽しみに~!


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この記事の作者=原康子も各地で講師として登場します!

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