2017年4月18日火曜日

「自分の身は自分で守る」子になる対話って?(解説ありバージョン)



前回のブログでは、対話型ファシリテーションを使った息子とのやりとりを解説なしでお届けしました。
今回は、解説付きでご紹介します。



私「今日は全部お弁当、食べた?[1]
<解説1:「どうしたの、暗い顔して?」と手っ取り早くHOWを使ってしまうと、息子の「気持ち」が返事として返ってきて、「なにが原因だったのか?」はなかなか出てこない。気持ちは聞かなくても、自分から話してくれることが多い。ここでは、何があったのか「事実」に絞って聞いてゆく。また「お弁当」を話題にした理由は、家では大食いなのに学校では毎日お弁当を残してくる⇒学校で何かあったとしたらお弁当の時間の確率が高い、という仮説があったから。>

息子「半分食べた。あんまりお腹がすいてなかったから[2]。」
<解説2:息子は食べることが大好きで、好き嫌いもほとんどない。父親が作った料理は、ゆっくり時間をかけて、たくさん食べる日がほとんどだ。「今日はあまり食べないな」という時は、きまって私が味付けに失敗したとき。この日のお弁当は父親作で、息子の好きなおかずが多かった。>

私「今日のお弁当は誰と一緒に食べたの?」
息子「A君とB君。」
私「A君とB君もお弁当を残してた?」
息子「2人は全部食べたよ。」
私「C君(他のお友だち)も全部食べてた?」
息子「C君はボクよりずっと早く食べてしまっていたよ。」
私「C君は食べた後、何をしていたの?」
息子「ボクのところに来て、お弁当を食べるのを邪魔した[3]。」
<解説3:「邪魔」と聞いてわかった気にならず、「彼にとっての邪魔される」とは具体的に何をされることか、を理解する>

私「何をされたの?」
息子「今日は、ボクの弁当箱の中に唾を飛ばしてきた。それでもう食べたくなくなって残した。」
私「昨日は?[4]
<解説4:「いつもお弁当を残す理由は邪魔されるから?」と一括りにしない。具体的に「昨日は?」「その前は?」と聞いてゆくと、思い出しやすい。相手に「考えさせる」のではなく、「思い出させる」ことが大事。>

息子「昨日は、お弁当を食べているボクの頭を後ろからいきなり殴ってきた。ゲホッと食べたものをはき出してしまって、まだ途中だったけど、もう食べたくなくなった。」
私「殴られたのは昨日が初めて?[5]
<解説5:「最近の出来事」からだんだん遡っていく方法や、起点(最初にあったこと)を思い出してもらう方法で思い出してもらう方法がある。>

息子「そんなことない、一昨日も殴られたし、お弁当の時間以外でもC君に殴られたことは何度もあるよ。」
私「C君はあなたのことだけ殴るの?[6]
<解説6:息子だけがC君の対象になっているのか、そうではないのかを把握>
息子「A君とB君のこともときどき殴られているけど、ボクが殴られることのほうが多いよ。」

私「昨日、殴られたことを誰かに言った?[7]
<解説7:「C君に殴られる」ことに対して、自ら行動を起こしていることがあるのか、ないのかを把握。また学校側が状況を把握し、どんな対応をしているかを息子から確認。この日の夕方に、担任の先生に「C君が原因でお弁当を2カ月以上もちゃんと食べられていない、毎日殴られ、家で泣くまでしんどい思いをしている事実」をメールで伝えると、翌日にはすぐ面談。事実の共有と今後の対応について先生と共通の理解を持った。先生はすぐに息子とC君に話しをした。息子は先生を信じて、今まで以上に話すようになった。>

息子「昨日だけでなくて、殴られる度に先生に言うけど、先生もC君のことを無茶苦茶叱ったり、忙しくてボクを無視したり。C君は先生に怒られてもすぐ殴ってくるんだ。」
私「あなたはC君を殴り返したり、C君以外でも誰かを殴ったことはある[8]?」
<解説8:「?したことはありますか」と経験を聞く質問。殴られるだけでなく、息子が誰かを殴ったことはないか、を聞く>


息子「ない。」
私「先生に言う以外に、何かしたことはある?[9]
<解説9:「先生に言う」こと以外の問題解決のための行動を把握する。>

息子「お弁当のときにC君のそばに座らないようにしている。でもC君はお弁当を早く食べてしまうと、ボクのところに来て必ず邪魔をするんだ。」
私「その他には?」
息子「邪魔するなってC君に言った。でも全然聞いてくれないで、邪魔ばかりする。実は、ボクも怒って少しだけC君を殴ったことがある[10]。でも強く殴るとC君が痛いだろうと思って、痛くないようにそおっと殴った。ボクは誰も殴りたくないんだ。」(このとき、涙声)
<解説10:「自分は全然殴ったことがない」と「実は殴り返したことがあった」など、矛盾する話になることは多々あるが、着地点「息子が殴られたり、お弁当を邪魔されなくなるにはどうしたらよいか」に絞って事実質問をつなげていくことが大事。>

私「“殴りたくない”というのはとてもいいことだね。あなたはスゴイね。世の中の偉い人は、誰のことも殴らない人だよ[11] 。」
<解説11:「誰のことも殴りたくないし、殴るときもC君が痛くないように加減して殴る」という息子は、「殴らない」ことが勇気ある行動の1つだということを理解しておらず、殴られてばかりの自分に自尊感情が低くなっていた。母親から思いもかけず「殴らないことがスゴイ」と言われ、自尊感情が上がる。上記の対話では省略しているが、インドのマハトマ・ガンディーの非暴力運動の例も説明した。>


息子「でも痛いのはイヤだし、お弁当を邪魔されるのもイヤだ。」
私「殴られそうになって避けたことはある[12]?」
<解説12:「殴りたくない」・「殴られたくない」という要求を満たしながら問題(弁当を邪魔される)を解決する手段を考え、「避ける」という行動をとったことがあるか聞く。「避ける」のも大事な行動の1つだが、息子の中では「避ける」=「格好良くない・大したことではない」という「思い込み」がある様子。>

息子「昨日も避けようとしたけど、C君はすごく素早く殴ってきてよけられなかった。」
私「殴られたくないし、殴り返したくない、避けることも難しい。じゃあ、どうしたらいいかな?[13]
<解説13:ここまでずっと「過去」のことについて質問してきたが、初めて「これからどうしたいか」という「未来・考え」を聞く。>

息子「素早く避けられればいい?」
私「どうやったら素早く避けられるようになるかな?」
息子「練習する?[14]
<解説14:「○○を習ったら?」という提案をなるべく避けて、相手が考える時間をとり、「○○したい」と言うのを待つ。>


私「そうだね、練習しないとダメだろうね。どうやって練習する?」
息子「空手とか柔道とか習う?」
私「家のすぐ近くに合気道の道場があるけど、見学に行ってみる?合気道は、相手の力を使う武道だから、避けることを教えてくれると思うよ。[15]
<解説15:「合気道」の基礎知識がないと提案できないが、合気道をやっていた人から聞いていたことと、息子の「殴りたくない」が一致し。>
息子「うん、行く、行く。[16]
<解説16:必ず「相手」に決めさせるようにする。>



原 康子 ムラノミライ認定メタファシリテーション講師)


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