わたしが以前、兵庫県内の、とある「限界集落」とされている地域に伺った時のことです。
地域おこしイベントのお手伝いとしてお邪魔した私。
イベント途中、ちょっと時間が空いたな・・・と、会場となっていたコミュニティセンター内をウロウロしていました。
すると、あるお部屋の一角に、高さ15センチから20センチほどの、きれいな木の細工物が置かれてあるのが目に留まりました。
お家の形をしています。
足を止めて見入っていると、地域の方(60代から70代にかけてくらいかな?と思える男性=以下、おっちゃん)が近づいてきてきました。
わたし:こんにちは。これ素敵ですねえ。どなたかが作られたんですか?
おっちゃん:(笑顔)実は私が作ったんですよ
わたし:ええーすごいですね、こんな細かな細工。他にも作られたんですか?
おっちゃん:そうやねえ。いくつも作ったよ
(と、どんなものを作って、誰に贈ったり、どこに飾ったりしているという話をひとしきり聞いたあと)
わたし:(目の前の細工物を指して)これって、何なんですか?お家ですか?
おっちゃん:そうそう、これはねえ、この地域にあった民家の模型なんや
わたし:へえー民家。実際にあった民家がモデルだったんですね。どこらへんにあったお家ですか?
おっちゃん:(地域のどのへんにあった・・・という説明をしたあと)茅葺き屋根の、ええ家やったよ
わたし:茅葺き屋根!きれいですよねえ。そのお家、今もあるんですか?
おっちゃん:今もあるけど、今はもう屋根は茅葺きちがうなあ
わたし:そうですか。どんな屋根なんですか、今は
おっちゃん:洋風の瓦あるやろ、あんなんやなあ
わたし:〇〇さん(おっちゃんの名前)のお家の屋根は、どんなお屋根ですか?
おっちゃん:瓦やな。
わたし:茅葺きだったこともありましたか?
おっちゃん:ああ・・・もうだいぶ前やけどな・・・
わたし:いつ頃まで茅葺きだったか覚えていますか?
おっちゃん:サラリーマンしてた頃にローン組んで建て替えたんやけど、その時に瓦にしたから・・・もう20年以上前やな。茅葺きは、葺き替えるのが大変やからなあ
わたし:葺き替えの作業をしたことはありますか?
おっちゃん:あるで。若い頃やけど
わたし:萱はどこから調達してたんですか?
おっちゃん:昔は川から切ってきてたんやけど、途中から買うようになったなあ
この後、おっちゃん自身が経験した葺き替え作業のことを話してもらいながら、川・水辺の環境が変わってきたことや、共同作業をする機会が減ってきたことが浮かび上がってきたのでした。
おっちゃんは話しながら記憶をたどり、かつてその地域にあった水辺環境や共同作業の仕組み、そしてその変化を思いだし、再発見していったということになります。
「地域の強み・弱みを教えてください」「この地域のいちばん大きな課題は何だと思いますか?」といった問いかけ、「これがない」「あれが足りない」「それが課題」という話題から話を始めるのではなく、「これって何ですか?」から、そこに暮らす人の記憶・経験を呼び覚ます。
地域での最初の一歩を、メタファシリテーション方式で踏み出した会話でした。
地方創生、地域活性化、まちづくり、村おこし・・・様々な活動や調査で、よその地域を訪れる機会のある方も多くいらっしゃると思います。
出迎えてくださった地域の人と、みなさんなら、どのように会話を始めますか?
(宮下和佳 ムラのミライ専務理事)
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