2018年1月23日火曜日

セネガル・プロジェクト一問一答

2017年11月29日に開催した「NGO駐在員が見た、セネガルの農村と暮らし:循環型農業プロジェクト報告会」。当日は、学生、民間企業にお勤めの方、国際協力分野の関係者などなど、幅広い方にご参加いただきました。ありがとうございました!
さて、この記事では、当日のQ&Aセッションの中で、私が「ブログの読者のみなさんにも紹介したい!」と思ったやりとりをピックアップしました。
ムラのミライが、どういう視点でセネガルでの事業を実施しているのかがわかるやり取りだと思います。
(報告会全体の内容については、ムラのミライウェブサイトhttp://muranomirai.org/senegal20171129reportをご覧ください。当日のスライドも公開しています。)

【その1】
Q:プロジェクト報告では、セネガルでは出稼ぎの若者が多いという事でした。この事業が目指す「農業で食べていける暮らし」とは、自給自足を目指すのでしょうか?それとも現金収入向上を目指すのでしょうか?

菊地:どちらでも構わないと思っています。この事業では「食べていける農業」を目指していますが、決めるのは農家たちです。

中田:「どう決めたら良いのか」という部分を、研修を通して教えています。自分たちの生活、つまり物事の考え方を、事業では提供しているのです。

和田:セネガルの農業でも「自分たちで育てた作物から種を取る、翌年そこから栽培する」という時代は過ぎました。なぜか?これは、世界中で起こっている事ですが、「種は買うモノ」となり、しかもF1(一世代限りの種)が増えているからです。この事業の農家たちは、もう親や祖父の代から「自分たちで育てた作物からとった種を植える」という農業をしていないんです。「種を買う」ということは、短期的には収穫量が増えます。けれども長期的には土壌劣化が進み、やがて村は衰退していく。
将来は彼らが決めることではありますが、今と同じ農業を続けていると、これから10年くらいで村は消滅するよ、と。これを知らないといけない。土壌流出が起き、水不足になり、農業ができなくなる。それでいいの?と。
塩化もこの地では起きていますが、塩化は土壌の窒素過多と地下水の問題です。このサイクルを知らないと、「食べていける農業」がどういうものかも分からない。だからこうした研修をおこなっているのです。
19世紀にピーナッツが宗主国からやって来ました。つまり、自分たちで農業を組み立てる、という事が失われた。水と土壌は人の生活に必須です。では、どうやってそれらを保全するのか?ひいては、将来どんな村で暮らしていたいのか?という問いになるわけで、現在はこの部分を研修でおこなっているのです。














【その2】
Q:このプロジェクトでは、農業を実施するにあたっての必要な種は配っているのでしょうか?

菊地:配りません。今は研修と研修の間の期間に、出された課題の進捗をモニタリングしに村を訪れていますが、持って行くのは紙とペンだけ。この課題も、したくなければしなくていい。但し、次回の研修からは参加できない、というようにしています。

和田:基本的に、研修には来たい人だけ来ればいい。我々が提供できるのは研修だけど、興味があればどうぞ来てください。なければ別にいいですよ、と。人々は援助慣れしてしまっているんですよね。彼らが理解できないこと以上の物は提供しない。これが基本です。
ひと昔前までは、耕作地の範囲は馬を走らせて決めていた。だけどこの20~30年は人口が増えて、農機も使う。ハイブリッドの種を使う。化学肥料も使う。つまり、土地は広がるけど、劣化した土壌も広がっている。
写真で、雨季の大地は緑が多くなっている画があったけど、確かに雨が降るごとに緑は増えています。緑が増えるので、雨さえ降れば大丈夫と勘違いしてしまう。けれど、実際には雨が降り、土壌流出が起きている。土壌流出がすでに起こった土地に植物が生えているにすぎない。つまり、雨季の前に土壌保全の対策をしないといけなくて、こういう事を自分で考えることができるようにならないといけないんです。














いかがでしたでしょうか?
今後のセネガルでの事業のようすは、随時、このブログや、ムラのミライウェブサイト、Facebookページでアップデート予定です。
ぜひ、ご覧ください。

(田中十紀恵 ムラのミライ事務局長)

★プロジェクトについて
プロジェクト名:地域資源の循環による農村コミュニティ生計向上プロジェクト~農村青年層のための「ファーマーズ・スクール」
JICA草の根技術協力事業(パートナー型)

セネガルの農家を応援してください!募金キャンペーン実施中
http://muranomirai.org/2017bokin