2019年3月22日金曜日

ネパールのオバチャン達は忙しい


ナマステ!
今回は、私がネパール駐在中に出会った村のオバチャン達との会話から。
まずは3つのエピソードをご覧ください。
(ムラのミライの活動に関わってくれた村の女性たちを、ここでは親しみを込めて「オバチャン」とよんでいます。)

<エピソード1>
エコレンジャーのオバチャン達への研修の時の出来事です。
私「それじゃあ、今日はこのあたりにしましょうか。次の研修はいつにしましょうか?場所は今回と同じところでも大丈夫ですか?」
オバチャンA「そうね~、来週の水曜日はどう?」
オバチャンB「その日、ちょうどパンづくりの研修があって・・・私は行けないわ~」
私「あら、そうですか。じゃあ、その次の日はどうです?あいていますか?」
オバチャンC「ああ~その日はアナウンスの研修があって都合がつかないわ。」
「私も」「私も」とうなずきあうオバチャン達。
私「えっ、ここにいるみなさん参加しているじゃないですか!アナウンスの研修ってどんな研修ですか?」
オバチャンC「スピーチの方法を学ぶのよ。発声の方法とか、姿勢とか。」
私「へー、どこが研修を提供しているんですか?」
オバチャンB「自治体がやってるのよ」(・・・と話は続いていく)

<エピソード2
エコレンジャーのオバチャン達が各地で研修していた時のこと。研修後にちょっとした打合せのため、とある建物に入りました。
私「あれ?この建物は、おうちじゃないですよね」
オバチャンD「ここ、私たちがメンバーになっている女性グループの集会所の建物なのよ。」
私「おおー、そうなんですか。(山積みになっているサンダルに気づく)これ、なんですか?」
オバチャンD「このサンダル、私たちで作ったのよ!ほら、そこにミシンもあるでしょう。」
私「(サンダルを手に取りながら)結構しっかりした作りですねぇ。作り方は誰かに教わったんですか?」
オバチャンD「そう、研修を受けてね。これから販路を開拓していきたいんだけどね~」
私「じゃあ、これは販売用なんですね。あら、いろんなデザインがあるじゃないですか。」
オバチャンE「ちょっとトキエさん、試してみなさいよ!あら、これならサイズぴったりじゃない!このデザインだとクルタスルワールによく合うわよ~。」
(と周りから囲んでいくオバチャン)
私「(心の声:まあ、サンダルが欲しいと思っていたところだし)うーん、じゃあ一足もらいましょうかね。いくらですか?」
オバチャンE「ちょっとオマケしてあげる。200ルピーね。」

<エピソード3
先日、ネパールで開催したスタディツアーでの出来事。オバチャン達に案内してもらいながら、村を歩いていた時のことです。
道沿いにビニールハウスのトマト畑を発見。
オバチャンF「ここ、トマト畑なのよ」
ツアー講師H「へー、いつからここでトマトを植えているか知ってますか?」
オバチャンF5年ほど前かしら。ちょうどその時にトマト栽培の研修があって、その研修に参加した人が始めたのよ」
オバチャンG「私も参加したわ!」

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ここまで読んで、「うわー、このオバチャン達、いろんな研修を受けてるな~」と思った方、そのとおり!
何気ない会話ばかりではありますが、こういった話は他にもあって、まとめていくと
アナウンス、サンダルづくり、トマト栽培、他にもプラスチック包装を使ったクラフトづくり、クッションづくり、パンづくり、コンポストづくり、マイクロクレジット・・・実に多種多様な研修を受けているオバチャン達の姿が浮かび上がってきました。


クラフトづくりの研修の成果を見せてもらう

こういう話をしたオバチャンの顔を思い浮かべると、せいぜい10人くらいです。もっと多くのオバチャンに話を聞くと、もっといろいろな研修が出てきたかもしれませんね。
とにかく、オバチャン達は「女性のスキルアップ」や「収入向上」の名のもと、自治体やNGOが提供する多種多様な研修に参加していて、ムラのミライが実施していたゴミ処理に関する研修も、オバチャン達にとってはone of themの研修だったというわけです。
実は、ゴミ処理の研修もムラのミライに限らず様々な団体がやっていたりします。

ムラのミライの研修で地図づくり中のオバチャン達

食事の準備と後片付け、洗濯、掃除、親戚のお見舞い、女性グループの活動、仕事、そして上記のような研修への参加。ネパールで私が出会ったオバチャン達は、とても忙しい毎日を非常に精力的にこなしていました。忙しい毎日の一部をムラのミライの活動に割いてくれていたのです。

村を訪問すると、ニコニコと付き合ってくれて、「お茶でも飲んでいきな」と親切にしてくれるオバチャン達。
ネパールに駐在した当初は、彼女たちがとてものんびり日々を過ごしているように見えていたのですが、だんだんと、それが思い込みだったことに気づいていきました。
そう、ネパールのオバチャン達は、忙しいんです。

現場ではプロジェクトを進めることに手いっぱいになって、プロジェクトと関わっている部分でしか村の人を見ることができなくなってしまいがち。その狭い領域で「うまくいった」「うまくいかない」と一喜一憂する日々でした。
でも、ちょっとそこから視線をずらし、何気ない会話をしながら「ネパールの●●村に住む、◎◎さん」の暮らしのリアルが見えてくることで、村の人たちとの関わりがずっと楽しいものになっていきました。
こんなふうに、「個人の暮らしのリアルを見る」経験を積み重ねていくことが、村の人/NGOワーカー双方にとって、具体的で、ワクワクして、長続きする活動を組み立てていくヒントになるんじゃないかと、ネパールに住んでいた2年を振り返ってみて思うのです。

(田中十紀恵 ムラのミライ事務局長)






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