2014年12月23日火曜日

相手からの質問こそ、ビッグチャンス

相手の思い込みではなく事実を聞きだす手法として、これまで事実質問を紹介してきました。この事実質問を使ってやりとりをしていると、相手から逆に質問をされることがあります。それまで質問することばかりに意識を向けていただけに、返せなくなってしまうこともあるかもしれません。しかし、事実質問におけるポイントさえ押さえていれば、相手から質問を受けたこの状況も、相手に気付きを促すチャンスへと変わります。

相手から質問された場合、出来る限り簡潔に要点のみをまとめて返答しなければなりません。特に相手の質問が思い込みを含む場合、正面からその質問に答えてしまうと空中戦に突入してしまいます。事実質問で相手に尋ねるときと同様、注意して返答するようにしましょう。

答えにくい質問で尋ねられたときこそ、ビッグチャンス到来です。
その状況をふたつの場合に分けて、以下詳しく見ていきましょう。

まずひとつめ、それまでのやりとりに相手が納得していない、分かりにくさを感じている場合。この場合、あなたに再度説明するチャンスが訪れたことになります。それまでのやりとりが少しあやふやで、相手にしっかりと伝わっていなかったのでしょう。それまでのやりとりを素直に振り返り、相手とのやりとりを再出発させましょう。

そしてふたつめ、相手の質問が明確でなかったり、そもそもの流れを相手が勘違いしてしまっている場合。この場合こそ、相手の質問を逆手にとり、相手に気付きを促すことができるチャンスです。質問のずれを生じさせた原因を探り、答え方を工夫しましょう。

書籍『途上国の人々との話し方』より、ひとつ例をご紹介します。
実際にあった例ではなく、「私」が研修で課題としておこなったロールプレイの一場面です。

私「A団体では、井戸掘りボランティアの話のようなパターンを避けるために、プロジェクトを持たずに村に入るようスタッフやボランティアに強く指導している。ボランティアたち一行も、それに従って、特定の課題を用意せず、白紙の状態で村人と話しあうつもりで臨もうとした。ところが村の入り口に着くや否や、彼らの姿を見つけた村人数人が寄ってきて、『A団体の方ですね。あなたたちは、この村でいったいどんなプログラムをやってくれるのですか』と機先を制する質問を投げかけてきたのである。そこで問題。こんなとき、あなたはどのように対応するか」
研修生たちからは「いや、私たちは村のことを学ぶために来たのであって、何か決まった援助をするために来たのではありません」など、ありきたりでとても通用しないようなアイデアしか出てこなかった。
私「もしもこれが和田さんであったら、次のように対応したに違いありません。『ほー、これは素晴らしい。プログラムですか。これまで、この村にはどんなプログラムが入ってきたか、教えてくださいませんか』」

これに対してその村人が明確に答えられなかったとすれば、それは、その村人がプログラムについてイメージを持っていないにも関わらず、プログラムを求めているということ。そのことに本人が気付くようにことを運んだら、ひとまずその話は打ち切ることができる。その上で、そこから仕切りなおせばいい。
逆に、プログラムについて明確な例を挙げることができたのであれば、今度はそれについてこちらから事実質問をつなげながら、相手の経験分析の作業を手助けすればいい。インフラであれば、今も役に立っているかどうかが分かるような質問をしていく。「あんまり役に立っていないな」ということになったのであれば、冗談めかして「私たちにもそんなプログラムをしてほしいのですか」とでも応じれば、そこから仕切り直すことが可能になるだろう。

相手からの質問は「私はこう思う」という意見でもあります。意見の中に含まれた思い込みを突いてあげることで、気付きを促すことができるのですね。


2014年度インターン 山下)