2015年2月3日火曜日

トークイベントでも、ファシリテーション

ムラのミライで共に働く仲間シリーズ(勝手に命名)、今回私(宮下)がご紹介するのは、海外プロジェクトチーフの前川香子さんです。(ブログですので、普段呼んでいる通り、以下「香子さん」と書きます。)

香子さんは20151月現在、海外プロジェクトや海外での研修全般の企画運営を見つつ(中間管理職というやつです)、インド農村部での「かっこいいムラづくり」をプロジェクトマネージャーとして統括しています。普段はインドの山奥や現地事務所で、村の人たちやスタッフを相手に、日々地道な、そして時には鮮やかなファシリテーションをおこなう香子さん。その活躍の様子はプロジェクトを詳細に描いた「よもやま通信」でお読み頂けます・・・が、今回は「よもやま通信」には掲載されることのない、日本事務所でのエピソードをご紹介します。

それは、インドとネパールに駐在するスタッフが帰国する時期に合わせて、活動紹介をするトークイベントを実施した時のことでした。参加者からの質疑応答の時間。ある人がこんな質問をしました。

「インドはカースト制などの古い習慣がまだまだ残っていますし、文化も日本とは大きく違います。そうした文化や習慣の違いによって活動がうまくいかなかった、難しかったということはありますか?」

私はこれを聞いて
「あーやっぱり出たね、この手の質問。文化が違う、宗教が違う、カースト制がどうの・・・という質問、インドやネパールでの活動報告をすると、ほんとよく出るよなー。文化や生活が違ったって、人間そうそう変わらないっつーの」
などと内心やや毒づいておりました(ガラが悪くてすみません)。
というのは、「カースト制のような身分制度を保持する遅れた社会」「宗教に大きく生活を左右される、近代化されていない社会」だから支援してあげないと・・・という思い込みにはうんざりしているからなのですが、さてこの質問に、香子さんがどう答えたか。

「うーん、文化や習慣の違いが原因で難しいな、と感じたことは覚えていませんね。でも、私やスタッフから(村の人へ)の投げかけ・働きかけがまずいせいでうまくいかなかったな・・・もうちょっとこう働きかけたら良かったな・・・と思ったことはたくさんあります。」

私は声には出さず「お見事!」とつぶやきました。質問者の思い込みを正面から否定しないでおきつつ、「活動がうまくいかないのを相手のせいにするのは簡単ですけどね・・・そうじゃないんですよ」というのを示した、この回答。
思い込みにとらわれた空中戦をせず、事実を丹念に検証する。それが対話型ファシリテーションの基本の一つですが、空中戦にはまってしまう要因の一つとして、「人は自分にとって心地の良い言い訳を求める」というものがあります。「文化が違うから・・・」「カーストがあるから・・・」という言い訳をするのは簡単。でも事実は、こちらからの働きかけ方がうまくなかったから、かもしれない。それを検証するのが先ですよ、ということを示す、見事な返し方でした。


(事務局長代行 宮下和佳)