2015年7月28日火曜日

「これは何ですか?」で練習しましょう


対話型ファシリテーション基礎講座を受講した皆さん、講座でやった「これは何ですか」と聞き合った練習のことを覚えていますか。二人一組になり、相手の持ち物の中からひとつを選んで聞き始める練習です。
手法の創設者である和田さんは、常々「メタファシリテーションは技術です。その柱は簡単な事実質問であり、これは練習なしには身に付きません」と強調しています。とはいえ、国際協力、教育、福祉、コンサルティングなどの現場で日々活動している方はともかく、日本で普通の日常を送っている方は、かなり意識的に練習の機会を作らない限り、簡単には場数を踏めないのも現実です。
ムラのミライでは、昨年から今年にかけて中級講座あるいはそれに相当する研修を何度か開催したのですが、受講者の中には、理屈の上では手法をよく理解しているのに、あまり練習ができていないままに参加してきた方が少なくありませんでした。基礎講座で練習の大切さをずいぶん強調したつもりだったのですが、もっと徹底して伝えるべきだったと反省しています。
 そこで練習方法なのですが、もっとも簡単かつ有効なのは、やはり例の「これは何ですか?」に尽きます。最近の講座で、例の「改めたい習慣」の練習を挟んで、「これは何ですか?」と聞きあう練習を前後2回やってみたところ、2回目の練習では1回目よりずいぶん聞きやすくなったという声が参加者の中から多く上がりました。
 「練習できてないな~」、と感じておられる皆さんは、身近で遠慮の要らない人を見つけて「練習台になって下さい」とお願いし、10分かそこらの聞取りを改めてやってみてはいかがでしょうか。2,3回もやれば、質問のコツが掴めるとともに、聞き始める対象つまり「これ」の選び方もわかってくるはずです。少し自信がついたら、久々に会った友人や知人を前にして、興味深い持ち物や、素敵なアクセサリーなどを指して、「これいいね。どうしたの?自分で買ったの?」などと自然に聞き始められるに違いありません。
 この練習を何度かしていくうちには、「次はどちらに向かって聞いて行こうか」、「この質問はあいまいで答えにくいかな」などの判断も身に付いていくこと請け合いです。そのうちに、友人や親族から「ちょっと相談に乗ってくれない」と言われたら、肩の力を抜いて、「私でよければ。まずはどういうことなのか、教えてくれない」とまずは応じます。そうして、例えば「それが気になり始めたのは何時頃からだったか、覚えてる?」と聞き込んでいくわけです。
 メタファシリテーションの核心である「簡単な事実質問」の練習は、「これは何ですか?」に始まり、「これは何ですか?」に終わる。そう肝に銘じて練習に励んでください。必ずや「違った景色」が見えてきます。
(代表理事 中田 豊一