2015年8月11日火曜日

要はどういうこと?

前回の私の記事では、「ことばを噛み砕くこと」のエピソードについて書きましたが、今回は、「要はどういうこと?をおさえること」についてです。

舞台のA村は、2012年から流域管理の活動に参加し、これまで隣のP村の指導員たちから流域管理のコンセプトと計画、実践について習ってきました。そして、そのモニタリングのために、私もA村には何度も足を運びました。
6月末日、事業評価のために2名のJICAスタッフの方と、和田元代表が事業地に訪れました。これまでの活動を紹介するA村の村人たち、話のなかでは「ウォーターシェッド(流域)」という言葉が飛び交います。そこで、和田さんがこんな質問をしました。

「ウォーターシェッドとは何だい?」
すると、若い村人たちがA村の模型を指さしながらしきりに説明します。
「ここに雨が降って、水が山をつたって川に流れて、、、」
「三つのゾーンに分かれて、、、」
和田さんは、続けます。
「ウォーターシェッドってのは何だい?」
今度は別の村人がウォーターシェッドについて同じような説明します。それでも、まだ和田さんは、「ウォーターシェッドとは何だ?」と質問を繰り返します。
 また若い村人たちが説明をくりかえし、年配の村人たちは黙っています。すると、和田さんが1人の村人にたとえ話を始めました。
「山に農作業に行って、すごく喉が渇いているとき、そこに小川を見つけたらどうやって水を飲む?」※
オッチャンは両手を合わせて、水をすくうしぐさをしました。そのとき
「それがウォーターシェッドだ。」
和田さんがそう言った瞬間、村人は皆
「はー」
と、村人たちは、何かが頭の中にストンッ、と入ってきた表情を見せました。そのとき私も村人たちと同じ顔をしていたに違いありません。
この一連の対話の更にすごいところは、「ウォーターシェッドって、要はなんだ?」ということA村の人たちに理解させるのと同時に、モニタリングを行ってきた私自身が、「要はどういうこと?」を上手くおさえることが出来ていなかったことに気付かせる点です。このやりとりを見ながら、私は途上国の人々の話し方で登場するクマールさんのことを考えていました。
村の若者たちが話した「ウォーターシェッド」の定義が、全て間違っていたわけではありません。A村にも、良く理解して説明できる村人はいます。ただ、このコンセプトを10歳のこどもから80歳のお年寄りまでが共有して、村全体での継続的な活動につなげるには、辞書の定義やプロジェクトの言葉ではなく、本当の意味で「ウォーターシェッドとは何だ?」「それはあなたにとって何だ?」ということに、気付いてもらう必要があります。そして、そのためには、まず自分自身が「要はどういうこと?」を理解していることが大前提です。
 前回の「ことばを噛み砕くこと」に加えて、「要はどういうことか?をおさえること」この二つは常に意識して活動を続けていきます。


文字数の関係でやりとりを短くしています。

(海外事業コーディネーター 實方

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