2015年10月6日火曜日

事実質問を鍛えぬいたやり取りの先にあるもの


カトマンズの北東部、ムラのミライのプロジェクト地域にあるMartyr’s Memorial Park8月のある日、この公園が実施するゴミ分別研修にソムニード・ネパールのディベンドラとウジャールが講師として招かれ、私も研修に参加させてもらいました。

研修に招いてくれたのは、この公園運営に関わっているスミ校長先生とビスタ理事、ゴビンダ校長先生。バグマティ川再生プロジェクトで一緒に活動している先生たちです。

今日は、そのなかのスミ校長先生から聞いた話をご紹介します。

スミ校長先生については、こちらをご覧ください→



「ゴミ分別研修をやる」とは聞いていたものの、公園のことも、この研修のこともあまり詳しく知らなかった私、休憩時間に二人並んでチヤ(紅茶)を飲みながら、スミ校長先生に質問してみました。

「今日は研修に招いていただいてありがとうございました。参加者のみなさんがとても活発にディベンドラさんともやり取りしていてびっくりしました!この研修に参加しているのはどんな方たちですか?」

「なるほど、この公園の会員やスタッフなんですね。ちなみに、会員になるにはどんな手続きをすればいいんですか?」

「今日の研修が6日間の研修の最終日だということですが、これまでの5日間はどんな研修だったんですか?」

などと聞いていくうちに、スミ校長先生がこんな話を始めてくれました。


「これまでの5日間の研修では、どういう植物を公園に植えるか、といった植林がメインでした。でも、私はゴミの分別についても取り扱いたいと思っていて。その希望が実現したんです。この公園はカトマンズの中心部からも近くて、絶好のピクニックポイントなんですよ。なので、夏(雨季)が終われば、ピクニックを楽しむためにたくさんの人がやってきます。当然、ポイ捨てされるゴミも多くなる。だから夏のうちからゴミの回収・分別に取り組みたいと思ったんです。」


「公園のオフィスでは、ゴミ分別ボックスの設置を提案し、1ヶ月前から試験的に導入しています。ゴミを分別したり、利用できる葉っぱを集めています。それにね、実家に帰るたびに、母に、自分がやっているゴミ分別について話してみたんです。そうすると、ある時から母が自分でゴミ分別をするようになったんですよ!」


彼女は、この話を伝えたかったのだろうと思います。私があれこれ聞かずとも、彼女は話をしてくれたでしょう。嬉しい体験や成功体験は、思わず誰かに話したくなりますよね。


さて、『途上国の人々との話し方』の中にこんな一節があります。

「行動変化とは、習慣を変えることだ。習慣を変えるにはそれまでとは違う行動を続け、かつその成果が実感できなくてはならない。そうして初めて習慣が変わってくる。」

(『途上国の人々との話し方』p.283より)


当事者が自分で考え抜き、課題解決のための行動変化を起こすこと。それを促すためのツールである対話型ファシリテーション。


スミ校長先生たちは、ムラのミライの研修を受けたことで自分が変わったと言います。

研修で考えたことや気づいたことを学校で実践してみて手ごたえを感じたからこそ、家庭でも学校の外でも実践し、他の人に広げようとしているのでしょう。

 上で紹介した一節を体現しているような、スミ校長先生たちの活動。


ムラのミライについて、いろいろな人から話を聞いていくうちに「なんだかこれはスゴイ団体かも!」と興味を持ち始めてから数年。

スミ校長先生の話を聞いて、事実質問を鍛えぬいたやり取りの先にあるもの、私がムラのミライを始めて知ったときに「なんだかスゴイ!」と思ったのはこれなんだということに改めて気づきました。

いつか、この「なんだかスゴイ!」を意図して起こすことのできるファシリテーターになりたいですね。
スミ校長先生
 
オフィスゴミ分別
(研修事業・海外事業コーディネーター 田中 十紀恵

ネパールでの活動を綴ったでこぼこ通信はこちらから↓