2017年3月14日火曜日

何のために、私は質問をしているの?




日本より一足早く、春の訪れを感じるカトマンズからこんにちは。

ネパールでの活動の一つに、村人がトレーナー(この活動では、エコレンジャーと呼んでいます)として、家庭や地域でできるゴミ処理について、他の村の人々に伝える研修があります。日々、家庭で出るゴミをどう処理するか、という問題に直面しているからでしょうか、8回にわたる厳しい(!?)エコレンジャー養成研修を修了し、アクティブに研修をしているのは村のオバチャンたち。

今回は、そんなエコレンジャーとのやりとりの失敗談をお伝えします。


エコレンジャーが研修を実施するときには、私やSOMNEED Nepalのスタッフが写真・映像記録&モニタリングに行っています。そして、研修の最後には、スタッフが、参加者たちに研修の内容についての質問をする時間をもらっています。

ここのキモは、研修を実施したエコレンジャーが、私たちと参加者のやり取りを聞いていること。もし、このやり取りを聞いていて、自分の伝えたいことがうまく伝わってなかったなーと自ら気づけば、次から改善のための工夫をしてくるはず。



このとき、研修を実施したのはラクシュミさん(仮名)。研修参加者のオバチャンたちはとても元気で、誰かひとりが話し出せば、その人の話が終わらないうちに、あっちこっちから話し出す…という具合でした。
そんなワイワイガヤガヤした研修の終盤、私は、研修内容のメモを見返して、23の質問を考え、「今だ!」とばかりにラクシュミさんのところに行きました。


私「ラクシュミさん、ちょっと時間をもらってもいいですか?」


ラクシュミさん「いいですよー」


私「もしもーし、みなさん!あ、ちょっと聞いてください!今日は研修を見せてくれてありがとうございました。みなさん、たくさんのことを議論されてましたね。で、今日の研修の内容について12つ、みなさんに質問してもいいでしょうか?時間はありますか?」


相変わらずガヤガヤしつつも、質問?何々?という感じでこちらに目を向けた参加者のオバチャンたち。さっそく研修の内容についての質問を始めました。


・・・が

ふと見ると隣にいたはずのラクシュミさんがいなくなっています。
あれ?どこに行ったん?と探すと、向こうのほうで、一仕事終えた感じでお茶を飲んでいるのが見えました。これでは全く意味がない。慌てる筆者。


私「ちょっとラクシュミさん!まだ終わってませんよ、こっちに来て!」


ラ「いやーもう、今日のオバチャンたち元気だから疲れちゃって、一休みしてたのよ」
と笑いながら戻ってくるラクシュミさん。


その後も質問を一つ二つしたのですが、口々に話し出す参加者のオバチャンと、すでに一仕事終えた感のラクシュミさん…と、見事に話を聞いてもらう空気づくりに失敗してしまったわけです。

最大の反省点は、ラクシュミさんが聞く準備をしていないのに、参加者とのやり取りを始めてしまったところ。研修を見ていて、トレーナーも参加者も集中しづらい雰囲気だな、と感じていたので、どう対策をとるかを考えておくべきでした。

私が参加者にどう質問するかばかりに気をとられていて、さらに言えば、「ラクシュミさんは参加者の回答が気になるだろうから横で話を聞いてくれる」とばかり思い込んでいたので、肝心の彼女の様子には気を向けていなかったのです。

今回のケースでは、たまたまですが、ラクシュミさんは英語が堪能なので、彼女に回答をネパール語から英語に通訳してもらうといった工夫が有効だったかもしれません。
(もちろん、私の質問内容がまずく、彼女の興味をひかなかったということもあったかもしれませんが、ここでは割愛します。)
質問を考えていると、どうしても全体の流れや、状況を客観的に見て軌道修正をするのが難しいですよね。でも、「何のためにやっているのか」を常に頭に置いておかないと、この失敗談のように見事に玉砕してしまう可能性大です。この、次の一歩をクリアするためにも、誰かと対話するときには、質問をすることだけに頭を100%使うのではなく、自分に余裕を持つことを心掛けていきたいと思います。
(拙文ですが、以前、「余裕」をテーマに和田さん観察日記(のようなもの)を書いています。もし、気になる方がいらっしゃれば、過去記事をご覧くださいませ。)



(ネパールオフィス   田中十紀恵



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