でこぼこ通信第25号「ゴミに向き合う第一歩」前編(スタッフ編)2017年3月1日発行
目次
1.あらためて、ネパールでの生活をとりまくゴミについて
2.エコレンジャーの活動スタート!
3.ラマラジュさんとキョーコさんのこと
4.これは誰の研修なのか?
日本より一足早く春を迎えるネパール。
オフィスの隣の家に植えられている桃の花も満開が過ぎ、すでに葉っぱが出てきている。
前回の記事から約1年と、すっかり間が空いてしまったが、今回はその間にスタートした新しい活動についてお伝えしたい。
1.あらためて、ネパールでの生活をとりまくゴミについて
本通信を再開するにあたって、あらためて、ネパール(カトマンズ盆地)のゴミ事情についてざっとお伝えしたい。(ネパールの都市部を訪れたことのある方は、ぜひその光景を思い出していただきたい。)
私たちが主に活動しているのは、カトマンズ市の北東に位置するゴカルネショール市(※1)。控えめに言っても道端にゴミがあふれている。
ゴミの収集は地方自治体の責任となっているが、いまだ一部でしか実現していない。また、ゴミ収集民間業者が参画してはいるものの、市の定める回収料金など、いろいろな基準をクリアしながら事業を継続するのは難しいとのこと。ちなみに、ゴミが回収されるとしても、分別回収はおこなわれておらず、プラスチックも燃えるゴミも生ゴミも、すべてがごっちゃになって回収され、最終的には埋め立て地へと運ばれる。
では、回収されないゴミはどうなるか。正直なところ、どうしようもないのである。ある家庭ではピット(コンクリートで囲んだ穴)を作ってそこにゴミを貯め、一定量がたまれば燃やす。もしくは道端にゴミを貯めて燃やす。それか、人目につかない時を狙って、道端や河原に放置する。そんな具合でゴミが道端や河原にどんどん溜まっていく。バグマティ川が汚れてしまった原因の一つだ。
2.エコレンジャーの活動スタート!
さて、そんなあふれるゴミ問題を筆頭に、バグマティ川周辺や、村の環境問題をどうにかしたい!という人を対象に、和田さんによるエコレンジャー養成研修を実施した。この活動はトヨタ環境活動助成プログラムによる助成で活動。この研修を修了し、地域一体となって環境を守る活動をファシリテートできる人材を「エコレンジャー」と呼ぶこととした。
いずれはムラのミライもネパールでの活動を終了するときが来る。ソムニード・ネパールだって永遠に活動を続けるわけではないだろう。
一方で、ゴミや環境問題に直面するのは、その地域に暮らし続ける人たち。だからこそ、この地域に暮らす人たちの中から、地域一体となって環境を守る活動をファシリテートできる人=エコレンジャーを養成するのが、この活動の狙いである。
エコレンジャー養成研修は終了し、現在は、この研修を修了した人が、近隣の地域を飛び回り、家庭や地域でできるゴミ処理の研修を実施することをサポートしている。
日々、家庭で出るゴミをどう処理するかという問題に直面しているからであろうか、和田さんによる厳しい(!?)エコレンジャー養成研修を修了し、アクティブに研修をしている人のほとんどは村のオバチャンたちであった。
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3.ラマラジュさんとキョーコさんのこと
この間、ネパールオフィスの体制に大きな動きがあった。
2016年7月に、和田さんが新しいプロジェクトの準備のために、帰国することになった。残るはソムニード・ネパールのスタッフたちと筆者(※2)。
そこで、強力な助っ人に来てもらうことになった。ラマラジュさん(※3)にコンサルタントとして協力してもらうこととなったのだ。また、キョーコさんも他業務の合間をぬって年に数回ネパールに来てくれることになった。
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4.これは誰の研修なのか?
さて、エコレンジャーたちによる研修が始まる直前、ラマラジュさんとキョーコさんがネパールを訪問し、私たちネパールオフィスのスタッフへのトレーニングをおこなっていた8月のこと。「研修に挑むエコレンジャーたちに対して、私たちはどう関わっていけるか?」という話題になった。
ウジャール(※4)「始めのほうは私たちがファシリテートしなければならないと思います。」
ラマラジュさん「ファシリテートって?」
ウジャール「彼女たちが研修をする前に、研修のポイントを押さえたり…」
ラマラジュさん「準備段階でこちらが手を出してしまうと、次から誰も準備しなくなりますよ。そんな手出しはいらない。ソムニード・ネパールのスタッフはエコレンジャーの研修に同行してノートをとるだけ。あとは、モニタリングが必要ですね。」
ウジャール「アクションプランがきちんとできていればいいんですけど…」
ラマラジュさん「彼女たちはできると信じていますよ。いくつかのポイントは抜けていたりするかもしれないけど、まずはとにかく彼女たちにやらせること。これが重要です。」
ディベンドラ「ウジャールが言っているのは、抜けているポイントがあれば、彼女たちに指摘して、付け足さなければならないということです。」
ラマラジュさん「それをトレーニングの途中にやるんですか?そうすると、参加者はウジャールのトレーニングだと思ってしまいますよ。エコレンジャーたちが失敗するならそれでいいんです。もし、ビデオカメラがあるなら研修の様子を撮影して、良くなったところ/改善すべきポイントを自分たちで発見してもらいましょう。ディベンドラ、ウジャール、あなたたちはエコレンジャーに対して、“これはあなたのトレーニング。ソムニード・ネパールのスタッフは座ってノートをとるだけ”という姿勢を貫いてください。もちろん、エコレンジャーどうしでは、いろいろ指摘してお互いに学びあえたらいいですね。」
思い返せば、これまで学校の先生たちがモデル・レッスンやグリーンマップづくり、また保護者への研修をおこなうとき、「重要なポイントが抜けている」などと言って、自分が先生たちの前に出て、よく手や口を出している様子を見た。
そういう態度で接してしまうと、結果、ラマラジュさんが指摘したように、先生たちも「これってソムニード・ネパールの研修だよね」「次は何をすればいいのかしら?(指示待ち)」となってしまう。
そのことについて、以前に話題にしてみたこともあったが、彼らは先生が「間違った知識」を伝えてしまわないかを気にするあまり、先生が「自分たちでやって経験を積む、失敗しても、その経験から学ぶ」ということはあまり考えていなかったようだった。(つまり、私からの投げかけは見事に失敗したのである)
例えば、補助輪を外して自転車に乗る練習をしていたとしたら。こけそうになった時にいつでも自転車を支えてもらっていたら、いつまでたっても自力で補助輪なしの自転車には乗れない。そして、いつまでも誰かが補助輪の代わりをしてくれるなんてことはないのだ。
先ほどラマラジュさんがずばっと指摘したことは、ディベンドラやウジャール(というかネパール事業に関わるスタッフたち)にとって、事業終盤に向かってのとても大きなチャレンジなのである。
後編(オバチャン編)へつづく!
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注意書き
※1 2014年12月の地方自治体再編により、活動地域の大部分がカトマンズ市からゴカルネショール市に所属することとなった
※2 筆者(もしくは私)=ムラのミライスタッフ田中十紀恵。駐在2年目が終わろうという今更、バクタプールのヨーグルト(ズーズー・ダウ)にハマり中。昔ながらの素焼きの容器は、プラスチックよりも土にやさしいかもしれない。
※3 インド・よもやま通信第一部からおなじみの名ファシリテーター。現在はビシャカパトナム市にてムラのミライ・コンサルタントとしてプロジェクトや研修事業に従事。詳しくはこちら
※4 ディベンドラ、ウジャール=ソムニード・ネパールのスタッフ
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