「相手に過去の出来事を思い出してもらうときには、時系列で、詳しく聞いていく」
というメタファシリテーションのセオリー、どのくらい詳しく聞くべきなんだろうと迷ったことがありました。
中田さん(注)によると、「その当時、その場面の絵を描けるように聞いていくとよい」のだそうです。
例えば、数年前にネパールでフィールドワークを行ったAさんに、当時のことを聞くのであれば、
・フィールドワークに行ったのはいつか覚えていますか?
・その日は、何時ごろに村に到着しましたか?
・その時のフィールドワークのメンバーは覚えていますか?誰でしたか?
・その時の天気は覚えていますか?季節は?
・どの場所から歩き始めましたか?どちらの方向に向かって…?
・歩き始めた時、誰か村の人が案内してくれましたか?
・・・などなど、フィールドワークを始めるまでの場面でもたくさんの質問が出てきます。そうすると、質問者(私)が当時のことを詳しく知ることができるだけではなく、Aさんが当時のことを詳しく思い出し、どんどん自分から語ってくれるようになるんだそうです。
スタッフ:ミーティングに参加して、自分の活動やアイデアを話したら、みんな賛成してくれたよ。
(私の心の声:何のミーティング?みんなって誰?)
【今までのパターン】
私:そう、よかったじゃない!
→これで会話は終了。どんなミーティングだったのか、誰がどんなふうに賛成してくれたのかはわからずじまい。
【細かく聞いていくよう事実質問にトライ】
私:どこでミーティングがあったの?
スタッフ:公民館の会議スペース
私:そのミーティングは、何時からはじまったの?
スタッフ 7時に集合の予定で、私は7時に着くように行ったんだけど、始まったのは8時になってから。平日で参加者が忙しかったので、9時には終わったよ。
(私:朝7時の予定だったということは、参加者が仕事に行く前のミーティングなので、忙しかっただろうなぁ。落ち着いて話ができたんだろうか?)
私:あら~朝早かったんですね。始まった時には何人来ていたの?どんな人が参加していたか覚えてる?
スタッフ:10人くらい。公民館の館長さん、スタッフ…(指折り数える。名前を挙げるが、すべて男性の名前。)。
(私:なるほど、ミーティングの参加者は男性ばかりだったのか。)
私:どういう話題から始まったの?
スタッフ:お互いの近況報告から始まって、この公民館の利用状況とか…(と話が続く)
私:誰かがあなたのアイデアに対してコメントしてくれたの?
スタッフ:タパ(仮名)さん。この人は、私の地域のリーダーなんだ。
私:その人のコメントの内容を覚えている?もし覚えてたら教えてくれる?
スタッフ:確か、「あなたのアイデアは素晴らしい。こういう活動をどんどん続けていってほしい」って言ってくれたよ。
(確かにポジティブなコメントだけれど、別に自分がアクションを起こしたいような発言ではないなぁ)
私:他の人からはコメントあった?
スタッフ:コメントはタパ(仮名)さんだけだけど、他の人もうなずいてたよ。
(じゃあ、実際のコメントは一人だったんだ。うなずいていたからみんなってわけね。)
→自分がその場面を想像できるように、事実質問で会話を続けてみると、質問相手が自らどんどん語る…というところまでには至りませんでしたが、「ミーティングに出て、自分のアイデアを話したら、みんな賛成してくれたよ。」という言葉から、私が想像した(参加者がとっても乗り気で、活動にも参加してくれそう)のとはちょっと違う風景が見えました。
こういう会話をしたことで、ネパール人スタッフが、もし、その活動を本気でしたいなら、「みんな賛成してくれた」で終わらせず、次に誰にどう話していけばいいのかを考えるきっかけになっていたのなら、嬉しいのですが。
事実質問を使った会話の強みの一つは、こうして過去の出来事を浮かび上がらせることだと思います。とはいえ、細かく聞いて行くと、時間もそれなりに必要なので、ちょっと落ち着いて会話をしてみようか~という時があれば、「絵を描く」を試してみてください。
(ムラのミライ 事務局長 田中十紀恵)事実質問を使った会話の強みの一つは、こうして過去の出来事を浮かび上がらせることだと思います。とはいえ、細かく聞いて行くと、時間もそれなりに必要なので、ちょっと落ち着いて会話をしてみようか~という時があれば、「絵を描く」を試してみてください。
注:中田さん:ムラのミライ代表理事で、メタファシリテーション手法を築き上げた二人のうちの一人である、中田豊一。
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